キステム裁判控訴審の報告

多くの仲間が髙橋さんの意見陳述を見守る

星野憲太郎(同一労働同一賃金を求めて闘う契約社員髙橋さんを支援する会事務局長)

 【宮城】8月27日、盛岡地裁の不当判決取り消しを求める仙台高裁での控訴審を前にして、首都圏と現地から支援の仲間たち約30人が高裁の前の小公園に集まり、宮城合同労組及川副委員長の司会で前段集会がはじまった。支援する会星野事務局長が支援の御礼を述べた後、盛岡地裁判決の不当性とこのかんの闘いの報告を行った。
 続いて全労協の関口事務局長、同じく仙台高裁で11月の判決を予定している女川原発再稼働阻止訴訟原告団の日野事務局長と次々にマイクを握り髙橋さんを激励した。このあと担当の霜越弁護士から裁判状況の報告があり、最後に髙橋さんが心境と闘いの決意を述べ、仲間たちと共に15時から始まる高裁法廷に向かった。
 髙橋さんが証言台に着席し、意見陳述が始まった。「盛岡地裁が4月26日に下した判決は、会社が正社員に5・5カ月の賞与を支払い、同じ時間同じ仕事を行う契約社員たちには全く支給しないのも、不合理と言えないとした。契約社員たちの功労及び労働価値を否定する内容であり、けっして認められない」と最初に述べた。さらに、髙橋さんと正社員の職務の内容、責任の度合いに大きな差があるとした上司の証言が虚偽であることを淡々と訴えた。支援者たちは勝利を願いながらじっと見守った。 
 全国の高裁でこのところ見られるように、一回の弁論だけで結審してしまうことが懸念された。しかし、裁判官の協議で審理続行となり次回は10月29日に決まった。裁判終了後に報告集会が行われ、ここでも仲間たちが髙橋さんにエールを送った。
 不当判決を許さず共に闘い続けよう。

最高裁判決に追従した盛岡地裁判決

 一審盛岡地裁は判決文に、「2020年10月の(非正規労働者の賞与請求を全面棄却した)大阪医科薬科大学最高裁判決を判断の枠組みにする」とためらいもなく記載した。この最高裁判決に別事件であるキステム事件を無理やり押し込んで請求を棄却したのである。最高裁判決に習って、賞与の存在目的を「正社員確保のため」と判示した。どんな種類の賃金でも「正社員確保が目的」と言いくるめれば、同一労働でもそれらの賃金を非正規労働者に支給しなくともいいことになるし、著しい賃金格差も是認されることになる。形も中身もすべて最高裁に追従した盛岡地裁は裁判官の独立性を放棄した下級審の醜悪な姿である。

司法が「労使自治に不介入」の態度でいいのか

 盛岡地裁は、被告キステムの契約社員就業規則に「契約社員には賞与、退職金を支給しない」との記載があり長年運用されてきたことと、情報労連加盟の多数労組と協議して賃金関係全部を決定していることを取り上げて、「キステム社内の労使自治」を評価し、非正規労働者に対する賞与不支給を肯定した。「労使自治」は労使対等が前提である。加えて労働組合が企業から自立していることも必要である。
 今日、労基法による諸規制が時代に合わなくなったと批判して、法的規制を受けない例外を増やして「労使自治」に労働条件の決定を委ねようとする策略が経団連を先頭に練られている。司法の分野でも「労使自治」を美化し、使用者の意思が強く入り込む労使間の決定に司法が不介入の立場を強めれば、均等待遇・均衡待遇の原則が崩壊するのをはじめ、労働法が無力となる。このように盛岡地裁の不当判決との闘いは、労働分野における司法の在り方を問う重要な闘いとなっている。

髙橋さん5カ年の闘い

2012年2月 臨時社員として会社水沢営業所の事務担当者として働き始める。
19年4月 正社員と同じくフルタイム、週5日、月給制となる。
同年10月 営業所長に対し、質問書を提出。その後、正社員との待遇差を問題にして是正を要求。
21年2月 情報労連キステム労組に加入。会社の考えを髙橋さんに伝えるだけだったので7月に脱退。
同年9月 全国一般宮城合同労組に加入。団交を行い正社員と同一給与、同一賞与を要求。決裂する。
22年1月 労契法20条、パート有期法8、9条、14条違反で盛岡地裁に提訴。厚労省と盛岡で記者会見。
24年4月 盛岡地裁が髙橋さんの請求を全面棄却。抗議の記者会見で控訴を表明。
 8月 仙台高裁で第1回控訴審。10月に次回弁論を行う。

髙橋さんが支援御礼(8.27/仙台高裁前)

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