9・4荒川で狭山講演集会
事実調べを実現させ、再審開始を勝ち取ろう
【東京】9月4日、「狭山差別裁判の再審を勝ち取ろう!」と呼びかける集会が、東京・荒川区で開かれた。会場の区立さつき会館に都内各地から支援者らが集った。主催は「部落解放荒川区民共闘会議」。
開会あいさつは同会議の永井さん。「3者協議が開かれ、弁護団がプレゼンをした。だがそのつど検察が反論する。裁判を引き延ばしているとしか思えない。この秋が最大の山場だ。袴田裁判と共に無罪を勝ち取る第一歩が今日の集会だ」。
同会議の坂本繁夫議長が発言。「2006年の第三次再審請求から61回目の3者協議が行なわれた。次回の協議は11月中旬を予定している。署名活動では石川さん、袴田さんへの市民の好意的な反応を感じる。小さい力を積み重ねていく。今後ともよろしくお願いします」。
ビデオ上映では「石川一雄さんインタビュー(NHKおはよう日本)」と「石川早智子さん高裁前アピール」の2本の映像が流された。NHKの番組の内容は、「なぜ裁判が長引くのか」に焦点を当て、検察に証拠開示義務がないことの不当性をアピールした。いっぽうで事件そのものが当時の警察による部落差別と見込み捜査に端を発している。その経過や数々の証拠捏造に触れる部分はなかった。
希望を感じる講演内容
指宿昭一弁護士による講演は「最大の山場を迎えた狭山第三次再審の闘い」。狭山集会において同弁護士の講演を聞くのは、私は初めてだったが、希望が湧いてくる元気の出る内容だった(講演要旨別掲)。
講演後の質問では「今年4月の弁護団によるプレゼンへの反応は?」「万年筆インキの鑑定に裁判所は立ち会うのか?」などが出され、「裁判所側は身体を乗り出して頷きながら聞くなど、前向きな姿勢が好印象だった」。「インキの鑑定には裁判所は立ち会わない」などの応答があった。
集会の最後に、部落解放同盟東京都連荒川支部の小野崎篤書記長が発言した。
「今日は東京中から仲間が駆けつけてくれた。9月25日には東京集会が台東区である。26日は袴田裁判の判決だ。11月1日には日比谷で狭山集会がある。『袴田の次は狭山だ』を合言葉に、取り組みを強化しよう。明日から共に頑張っていきましょう」。 (佐藤隆)
指宿昭一弁護士の講演
「最大の山場を迎えた狭山第三次再審の闘い」
私はかつて袴田裁判と狭山裁判の両方を抱えていた。2023年3月の袴田再審開始決定(東京高裁)が出た時、電車の中で高校生が事件について話しているのを偶然耳にした。ニュースを見た子供たちは冤罪のひどさに憤っていた。これが世論だと思った。検察は抗告を断念した。姉ひで子さんの力だ。
来る9月26日の判決で必ず無罪になる。そしてこの無罪判決は狭山裁判にとってもチャンスになる。「次は狭山だ」と世間の注目を集めるはずだ。
狭山裁判の裁判長は定年間近の人ばかりがなる。昨年12月に大野勝則裁判長から家令和則裁判長に変わった。こうした人々は、いい意味では「しがらみ」がない。家令裁判長の定年は2026年の3月。この8月、弁護団は万年筆インクの「蛍光X線分析鑑定実施」を申し入れたが快く承諾した。裁判官も忙しいからか、抱える裁判が早く終わることを望んでいる。弁護団が証拠調べで主導権を取ることができればしめたもの。検察官についても、過去の判決にとらわれ、ダラダラと公判を引き延ばすのではなく「仕事をするタイプ」の人物に交代すれば流れも変わるだろう。事実調べは、現裁判長の下でかなり進むと思う。
メディアの狭山タブー
マスコミはこれまで「狭山」を肯定的に取り上げなかった。だが今年2月にNHKの朝の番組「おはよう日本」では狭山事件を取り上げた。内容の要点は狭山裁判の長期化とその原因について。再審請求では検察に証拠の開示義務がないことを問題視した。
番組の映像の中で指宿信氏(成城大学法学部教授・刑事訴訟法)は、証拠開示に関して「証拠は公共財である」との持論を展開、検察を批判した。朝の視聴者の多い時間帯に、全国津々浦々に流れるこの番組の影響力は大きい。テレビ界において「狭山タブー」が打ち破られ、他局も追随することがあるかも知れない。若い記者らが新鮮な気持ちで狭山事件に関心を持っている。
第3次再審請求での証拠調べは11人の専門家を選んだ。他にも石川さんの無実を裏付ける根拠は多くあるが、もはや裁判を長引かせる時間がない。弁護団が苦渋の決断で証拠と鑑定人を絞り込んだ結果だ。これまで何度も「今年が山場」と言ってきたが、前述のようにいよいよ終わりが近づいている。状況を打ち破るために必死で知恵を絞る。あきらめないことだ。(文責・編集部)

指宿昭一弁護士が狭山再審勝利へ講演(9.4)
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