第四インターナショナル世界大会に参加して(その4)
第18回世界大会で何が議論され、確認されたのか?
ここまで、第18回世界大会の討論内容や雰囲気について、国際情勢決議まで述べてきた。少し先を急いで、主な決議案で残るウクライナ決議、社会運動決議、党建設任務決議について駆け足で振り返ってみたい。
大きな議論を読んだウクライナ問題の討論
世界大会で最も議論が集中して展開されたのは、ウクライナ問題をめぐってだった。すでに本紙で掲載されたように、ウクライナ問題については、多数派の決議案とスペイン支部・ドイツ支部などによる対案(当初は、この二つの支部から別々の対案が出されていたが、採決の段階で一つに統合された)が提起され、多くの同志が発言に立った。これは他の決議案に見られたような多数派と国際少数派との間で対立する議論が展開され、それ以外に出された修正案や意見書は多数派の決議案を補足・補強するものであったのとはずいぶん様相が違っていた。つまり、多数派の内部において二つの決議案が出されたということになる。
二つの決議案の対立点は、ウクライナ戦争の性格において、ウクライナ人民の民族自決権をより重視するのか、それともロシアとNATOとの間の「代理戦争」という側面に重きを置くのか、という点についてだった。この対立は具体的には、ウクライナへの武器援助についてどのような態度をとるのか、という点に帰着した。双方ともに、ウクライナ人民との連帯について「労働運動、社会運動、左翼との具体的な連帯を作っていく」という点では一致していたのだが。
この討論には、ウクライナとロシアの同志も参加し、いずれも多数派決議案を支持する発言をおこなった。ウクライナ社会運動の同志は「ウクライナ人民は生存のために戦っている。われわれはもちろん平和を望んでいるが、それは自分たちの頭越しの交渉による『平和』ではない。それは帝国主義間での資源分割交渉でしかない。ロシア語話者が存在することはウクライナの構造の一部。訓練された軍隊に対して、民兵では戦えない。生き残るためには防御兵器は必要。『ロシアは出て行け、併合なき和平、民主的交渉を』がわれわれのスローガン。われわれは、世界各国での連帯行動とウクライナ人民への支援を必要としている」と発言した。やはり当事者である同志の発言は多くの代議員(私も含めて)に響いたのではないかと感じた。
一方、対案提出者は「NATOの拡張主義がこの戦争の背景の一つ。ウクライナ戦争は帝国主義間の代理戦争でもあるのはそのため。軍事的解決の可能性はないのだから、交渉による即時停戦が必要」(ドイツ支部)、「ウクライナの世論調査の結果から、動員に応じると答えるのは少数になっている。これ以上の戦争がオリガルヒの利益になるだけと考えているからだ。『プーチンNO! NATOは出て行け!』がわれわれのスローガンである」(スペイン支部)と自らの主張を述べた。
最終的に採決の段階では、多数派決議に賛成が96、対案に賛成が34と予想以上の差がついた。対案決議の中で、ヨーロッパの軍事化の動きがウクライナ人民の抵抗闘争のためと受け取られるような記述があったこと、ウクライナとロシアの同志のが多数派決議を支持したことが採決結果に反映されたのではないか、というのが個人的な感想である。
党建設任務決議と社会運動決議
今回の党建設任務決議では、これまでのような「広範な左翼政党」「有用な党」といったスローガン的な党建設方針は示されなかった。決議の内容は近日中に『かけはし』サイトに公開される予定なので、詳しくはそちらを見ていただきたいが、第四インターナショナルを具体的に強化していくための方策を提起したものだった。まさにこの点について、少数派は「第四インターナショナルの歴史上初めて大会に党建設の方針が提起されなかった」と批判していたが、提案者は「われわれの政治的伝統を放棄するのではなく、その上に立って『広範な党』として第四インターナショナルを建設しようとしてきた。社会を変える、すなわち革命を目指す党であることに変わりはない。若い世代が社会を変えるために登場してきている」と反論していた。近年になって、トロツキスト的な伝統を持たない、さまざまな左翼組織が第四インターナショナルに接近し、密接な組織的関係を持つようになっている。そうした組織的柔軟さと開かれた性格は今後とも重要だと感じた。議案は賛成106、反対14などで可決された。
社会運動決議の討論においては、「社会運動を中心に据えた文書として重要。運動の交差性を重要な要素として挙げている。(少数派のように)労働者階級を理想化することは、労働組合以上に政府の攻撃と戦っている運動や動員を軽視することになる」「社会運動から、その領域における問題が何なのかを教えられる。気候運動の難しさは部分的な勝利をかちとれないところにある。それは(フランスなどの)空港反対運動の勝利と比べると明らか。社会運動を通じて、現在の社会のあり方、人々の意識などを知ることができる」「先住民運動などを通じて、エコ社会主義的見方が深まっている」「われわれは革命に向けた政治路線を持つとともに、社会運動に関与している。社会運動参加者のエコ社会主義に対する意識を高め、地域の人民の力を高め、日々の勝利を重ねることを社会主義行動へと結びつけることが重要」といった発言が印象的だった。各国支部から、その国や地域での社会運動への関わりと実践、社会運動の中でのエコ社会主義的要素に向けた胎動などについて、積極的な発言が続いた。とりわけラテンアメリカからの発言が目立った。さまざまな社会運動に関わる中での進歩主義政府との関係の整理、反資本主義・エコ社会主義に向けた動きをどう作るのかという問題意識が強いからだろうか。採決では、賛成107、反対12などで採択された。第四インターナショナルのサイトにアップされている社会運動決議には、補足として「フェミニスト女性運動」「LGBTIQA+の組織化」「反レイシズム」の3項目が付け加えられている。
ブラジル・社会主義左翼運動(MES)の加盟をめぐって
ウクライナ問題と並んで、大会で大きな論議を呼んだのは、ブラジルの社会主義左翼運動(MES)の加盟問題だった。MESは、2012年に第四インターナショナルのパーマネント・オブザーバーとなり、さらに2018年にはシンパ組織となっていたが、今回の世界大会に向けて第四インターナショナルへの加盟申請を提出していた。この問題の厄介な点は、従前のブラジル支部は2013年に結成されたが、その後の分裂を経て、世界大会前には異なる5つの組織から構成されるようになっていて(それ以外に、MESがシンパ組織、レジステンシア(抵抗)と社会主義人民行動(APS)がパーマネント・オブザーバー)、MESの加盟申請をめぐっても、この5組織で意見が対立していたところにあった。これら8つの組織はいずれもPSOL(社会主義と自由党)の内部で活動しており、世界大会にも参加していた。この対立の背景には、ルラ政権に対するスタンスの違いがある。ルラ政権を極右の攻撃から防衛する点では一致していても、ルラ政権を積極的に支持するのか、それともルラ政権から政治的に独立して、その政策について判断するのか、という違いである。PSOL自体が、前者の立場をとる多数派と後者の立場の少数派に分かれており、これら諸組織もそれぞれ、多数派と少数派に分かれて所属している。
MESの加盟を認めるかどうかは、ブラジル支部内での意見の違いにとどまらず、進歩主義政権に対する立場をめぐる議論とも微妙に重なり合って、第四インターナショナル内部の国際的な討論対象となり、さまざまな意見書が出された。第四インターナショナルは、近年になって、政治的・組織的原則の重大な逸脱がない限り、政治的立場の相違があり、組織的に別々の組織になっていたとしても、同一国の支部として認めるという「複数主義」的な組織原則をとってきた。したがって、世界大会での採決に際しては、「支部としての加盟にあたっては、既存の支部を構成する組織・メンバーの意向を尊重すべき」なのか、「支部としての加盟は世界大会の決定事項」なのかという点に絞られることになったのである。
採決の結果、前者の立場からこの大会では決定しないという決議案が賛成34で否決され、後者の立場から大会で加盟申請を承認するという決議案が賛成63で可決採択されることになった。ちなみに日本支部は後者の立場で加盟賛成の投票をおこなった。その上で、「MESを加えた6つの潮流が平等な立場で協議する場を作る」という決議が反対0、保留9、棄権3で可決された。この問題については、非常に緊張をはらんだ討論が展開され、代議員が難しい判断を迫られたことは事実で、今後もハレーションが残る可能性は否定できない。
インターナショナルを歌って大会を終える
この他にも、いくつかの国で新たな支部やシンパ組織、パーマネント・オブザーバーが承認された。また、獄中に囚われている同志への連帯と釈放を求める動議が採択され、財政報告の承認、新たな国際委員会メンバーの選出がおこなわれた。国際委員に占める女性の割合は44%となった。6日間にわたる第18回世界大会は、参加した同志たちが各国語で歌うインターナショナルの斉唱で幕を閉じた。
閉会後、昼食休憩を挟んで、新たに選出された国際委員会の初会合が開かれ、執行ビューローおよび国際書記局が選出された。参加した率直な感想としては、やはり「言葉の壁」を痛感し、集中力が続かない場面もあったものの、第四インターナショナルが「脱成長エコ社会主義」を明確に宣言した国際組織として、新たな出発点を築いた大会となったという実感を感じることのできた大会であった。今後のわれわれの課題は、「エコ社会主義」と現在的な「過渡的綱領」の内容を東アジア・日本において、どのように具体化していくのか、という挑戦になるだろう。 (終)
(大森)

大会の最後にインターナショナルを歌っている

