第4インターナショナル第18回世界大会で採択されたウクライナ決議(その1)

民衆連帯はどうあるべきか

1 2022年2月、プーチン大統領はウクライナをロシアの衛星国に変えようとして、ウクライナへの全面侵攻を開始した。この企てによって、数十万人の死傷者がすでに出ている。しかし、ロシア政権には長期にわたって、大ロシア拡張主義的帝国主義イデオロギーをいう特徴があった。それは、あらゆる可能な手段によって自らの勢力圏を拡大する権利が自らに授けられていると考えており、国際法という確立された常態に挑戦し、帝国主義的再分配の新たな時代を正当化している。ロシア政権にとって、自らの侵攻による人的損害が日々増加していることは、侵略をやめる理由にはならないのである。さらなる侵攻の激化はウクライナ人民を恐怖に陥れ、服従させるのに役立っている。

2 わずか数日以内にキーウ政権を倒すという「特別軍事作戦」とされたものは、3年間にわたって全面戦争をおこなうという苦境へと転化した。こうした事態の発展は、プーチンにとっても、西側諸大国にとっても想定外のことだった。バイデンは、ゼレンスキーの逃亡を助けるという提案すらしていたのである。プーチンの計画を今日に至るまで妨げてきたのは、何よりもウクライナ人による抵抗の決意と回復力だった。

3 ウクライナへの侵略は、資本主義的競争におけるロシアの役割を再び突出させようとする試みであるだけでなく、ロシア社会の支配を強化し、反対派を粉砕しようとする意図的な試みでもある。プーチン政権の権威主義的性格は、全面侵攻の開始以来さらに深まっている。反戦活動家は、捏造された罪状で起訴され、長期の懲役刑を宣告されてきた。「ロシア社会主義運動」のわが同志たちのような社会主義組織は解散させられ、同志たちは亡命を余儀なくされている。フェミニストたちは動員を続けているが、投獄の脅しを受けたり、戦争という言葉をささやかれたりさえして、継続した圧力にさらされている。

4 国際主義者として、われわれはウクライナ人民の自決権を擁護し、侵略に抵抗する権利を支持する。ウクライナ人民による運動はこの抵抗運動の不可欠な部分であり、占領者に対する闘いとゼンレンスキー政権に対する闘いという二つの戦線で闘争を繰り広げている。われわれは、この不平等な闘いにおいて、ウクライナの他の進歩勢力とも連帯する。われわれは国際主義左派に対し、ウクライナの労働組合活動家、社会活動家、民主主義活動家との政治的・物質的な連帯を築くよう呼びかける。第四インターナショナルは他の勢力とともに、とりわけ「ヨーロッパ・ウクライナ連帯ネットワーク」の枠組みの中で、ウクライナの左翼組織である「社会運動」と協力して、侵略が始まって以来こうしたことをおこなってきた。

5 われわれは再度、ウクライナ政府の性格について何ら幻想を抱いていないことを強調する。その政府は右翼的で、新自由主義政府であり、権力にとどまるために恐怖を動員することさえ厭わない。それは西側諸大国の要求に順応するという自らの能力を彼らに認めさせるのに熱心であるのと同じくらい、国内の資本家を満足させることに熱心なのである。その反社会的・反民主主義的な政策は、ウクライナ防衛という点では逆効果となるものである。なぜなら、それはウクライナの労働者階級の要求に反するもので、労働者の憤りをかき立て、社会的信頼を傷つけ、結果として、政府はますます権威主義的な手段に頼ることになるからである。このことによって、ウクライナの勤労者やその組織との連帯がますます重要になっている。彼らが懸命に連帯を必要としているときに、われわれは彼らを見捨てることはできない。とりわけわれわれの解放に関するビジョンが、下からの闘争というビジョンであるのなら、つまり人民が立ち上がり、権力や超大国から完全に独立して闘うというものであるのなら、なおさらのことである。

6 ロシアのウクライナ攻撃は、資本主義の世界的な危機、帝国主義間の緊張の高まり、極右と軍国主義の台頭の一部である。ロシア政府はウクライナ、アルメニア、ジョージア、カザフスタンに干渉し、バシャール・エル・アサドの反動政権を支援し、アフリカでの関与を増大させてきた。アメリカは南米、アジア太平洋、ヨーロッパ、アフリカで策略をめぐらし、イスラエルに武器を供給し続け、その侵略をすべて支援している。フランスはと言えばアフリカで勢力を維持しようとしており、カナック[ニューカレドニアの先住民族]の独立戦士を弾圧している。プーチンによる戦争が、「脳死状態にある」と言われていたNATOをいかに再活性化させ、西側主要大国がNATOを強化・拡大することをいかに可能にしたかは言うまでもないことである。

7 欧米では、政府はNATOを強化・拡大し、ウクライナが最終的にEUとNATOに加盟するための条件として、より新自由主義的な政策と市場開放をウクライナに押し付けている。これらの措置と軍事費増加は、ロシアの侵略を封じ込めるとりくみの一環として提示されている。

8 西側諸国政府はロシアの侵略を訴えることで、インフレとエネルギーコストの上昇に見舞われた人々を支援する力がないふりをして、そのことで彼らが訴える連帯を暗黙のうちに傷つけている。その一方で、右翼勢力はウクライナ難民をますます標的にしたり、ウクライナ難民と他の移民とを対立させたりしている。

9 アメリカと西側諸国の政府がウクライナに与えている支援が反植民地主義的観点にもとづくものでないことは、彼らがイスラエル植民地主義を野放しにしていることを考えれば明らかである。西側帝国主義諸大国は、対抗関係にあるロシアを弱体化させるために戦争を利用するとともに、同時にウクライナが援助を必要としていることを利用して、ウクライナに対して彼ら自身による支配を押し付けている。しかし、このことは、ウクライナ人民には必要であれば自らを防衛するためにあらゆる手段を受け取る資格があるときに、そのような手段を拒否したり、われわれがその供給を妨害したりする理由にはならない。

10 ウクライナ人民への支援が、新自由主義的措置の実施と深化を条件とするのではなく、無条件に与えられるよう動員し要求するのは左派の責任である。だからこそわれわれは、ウクライナ人民を支援し帝国主義勢力に反対する手段として、ウクライナの債務の即時かつ全面的な帳消し、労働法の尊重、公共サービスの維持、大資本家の没収、汚職との闘いを求めている。

11 今日の世界的な軍事支出の増大が示すものは、われわれがこれまで以上に、戦略的再軍備、特に核兵器再配備という常軌を逸した計画に反対するキャンペーン、ほとんどが独裁政権向けである武器取引に反対するキャンペーン、軍需産業の民主的管理(国有化)を求めるキャンペーンにとりくまなければならないということである。同時に、われわれは植民地化された諸人民が、武器をとることも含めて自衛する権利を支持する。

12 すでに述べているように、ロシアは新たな攻撃を始めている。町全体、インフラ、生態系全体の破壊は、大ロシア帝国主義の支配を強制する手段である。占領地における住民の強制移住、子どもの誘拐と強制養子縁組、ウクライナ文化の破壊、自由への抑圧も同様である。プーチンはあからさまにウクライナが頑強であるがゆえに懲罰することを要求している。つまり、不法な領土獲得の承認、「違法でナチである」ゼレンスキー政権の取り替え、ウクライナ軍の劇的な削減、NATOへの非加盟がそれである。

13 西側の極右の一部が、プーチンと共通の超反動主義のアジェンダを強化し、ウクライナを無力化・分裂させ、ロシアの新植民地に変えてしまうというプーチンとの合意を望んでいることは明らかである。中国政府はロシアに具体的な支援を提供しながら、交渉の提案としてウクライナが降伏するという要求を提示している。ヨーロッパとアメリカの支配階級の一部もまた、プーチンにいくらか満足感を与えながらも、ロシアや中国との国際関係を修復することになる和平に、ある時点で誘惑されるかもしれない。

14 トランプは今やウクライナ人に戦争の責任があると考えている。ウクライナの鉱物資源や希少金属(レアメタル)の50%、およびそのほかの将来の特権を確保することで、これまでのウクライナへの支援への「返済」を求めるという、彼の略奪的で、重商主義的スタンスは、この論理の並外れて冷酷で嫌悪すべき表現なのである。

15 自称反戦左派の一部はこれに同意しており、反米陣営主義、あるいは平和主義から、ウクライナをロシア政権の永久的な慈悲に委ねる用意がある。われわれは、そのような条件にもとづき、ウクライナ人民の意思に反して押し付けられるいかなる「平和」も、将来のさらなる占領と暴力の前兆にしかならないと考える。いまや左翼が大衆的参加と民主的統制に基礎をおく安全保障についての信頼できる戦略を構築すべきときである。このことは、トランプとプーチンの間での帝国主義間の「取引」に直面している中では、かつてなく重要となっている。

 この戦争に対する唯一の持続的な解決策は、次の点を通じて可能となる。

*併合を承認しないこと、およびロシア軍の完全撤退。
*いかなる交渉や合意も人民による民主的統制のもとにおくこと。
*将来のいかなる帝国主義的侵犯に対しても、ウクライナが自らを防衛する能力を保証すること。

 永続的な平和は、以下のことにもとづいている場合にのみ可能となる。

*ウクライナおよびウクライナを構成するマイノリティーが、外部からの圧力、オリガルヒ[新興富裕層]の利益、新自由主義的支配体制、極右イデオロギーとは独立して、自らの将来を自由に決定し、自らの文化を発展させる権利
*ストライキ、平和的な集会、自由選挙の権利を含む政治的・社会的権利や労働権の尊重
*全ての難民や戦争によって移住を余儀なくされた人々が帰還する、あるいは現在居住している国に定住する権利
*プーチン政権の解体とすべての政治犯や戦争捕虜の釈放

 われわれはウクライナにおける戦争に反対する自らの闘いを軍国主義と帝国主義に反対する闘いの一環と考えている。戦争に反対し、国際連帯を求める闘いは以下のことを要求する。

*すべての軍事ブロック-NATO、CSTO[旧ソ連構成国による軍事同盟]、AUKUS[アメリカ・イギリス・オーストラリアの軍事同盟]の解体。
*すべての国の平等、下からの統制、開かれた外交とあらゆる形態の帝国主義的・国家主義的攻撃への非難に基礎をおく国際関係システムの確立
*ウクライナの債務の帳消し
*ウクライナ人民の管理下での復興・防衛・生活環境改善のための基金の創設。その資金は、ロシア企業とビジネスをおこなっていた西側資本家の利益や、軍事企業など戦争から利益を得ている者の利益に対する特別課税、およびロシアとウクライナのオリガルヒの富の没収によってまかなわれる。