散骨

コラム「架橋」

 「海洋散骨をする場合・・・日本では散骨の手続きをする法律がない」(毎日新聞1/11)。まさに「ギョギョッ!」である。1948年に施行された墓地埋葬法では、埋葬・埋蔵は墓地以外の区域で行ってはならない(第4条)とされているが、それはあくまでも「公衆衛生」と「社会通念上の宗教的感情」を理由としている。
 要するに特定の場所に埋葬するわけではない散骨は、広い意味での究極の「自然葬」ということになるのだろう。したがって事件性がなく、火葬場できちんと焼かれた遺骨であれば、海に限らず、山や田畑や草原に散骨することも可能なのである。それでも「節度を持った散骨」を求める遺骨遺棄罪(刑法190条)というものがある。
 漁民の底引き網から頭蓋骨や大腿骨が上がったり、登山道に頭蓋骨が転がったりしているのは「まずい」というわけだ。事件性のない遺骨であっても「事件」になりかねないからだろう。それで散骨する場合、人骨だと視認できない程度にまで粉骨する必要があるようだが、その「程度」は定かではない。
 法律とは別に、自治体によっては条例によって規制をかけているところもある。陸地での散骨には北海道の岩見沢市、長野県の諏訪市、静岡県の御殿場市などが規制をかけており、海洋への散骨には宮城県の松島町、静岡県の熱海市、伊東市なども規制をかけている。法的な拘束力は無いので、喫煙と同様に「罰金」ということになる。海洋散骨を請け負っている業者は、加盟する協会などでガイドラインを策定して、骨の粉砕程度や散骨場所などを定めているようだが、それもあくまで「自主ルール」なのである。
 高額の費用で船を手配せずに、陸続きの堤防から散骨したり、山の頂上から散骨して手を合わせたりしても「節度を持った散骨」であれば罰せられることはない。「法律がない」のだから。
 近年、日本では毎年140万人ほどが亡くなっているが、約1%が散骨しているようだ。その理由はいろいろあるだろう。また散骨を希望してはいても、実際にはできていないというものはその何倍もあるという。
 私が現在介護している叔母は、両親と姉妹兄弟らの遺骨が納められている墓地への埋葬を希望している。散骨はあくまでも私が死んだらどうするのかということであり、娘が散骨してくれるのかも分からないのである。
(星)
 

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