英国 ガザ連帯は反ユダヤ主義ではない
パレスチナ連帯、偽善に死を
労働党政府のパレスチナ連帯運動弾圧糾弾!!
デイヴ・ケラウェイ
ガザ住民およびパレスチナとの連帯を求める世界中の大衆運動は、反ユダヤ主義のレッテルを貼られ、パレスチナ連帯組織に対する禁止(たとえば、テロリストのレッテルを貼られた英国の「パレスチナ・アクション」やフランスの「火急のパレスチナ」に対する解散の脅し)により集団的に、また同時にガザでのジェノサイドを非難したことを理由に解雇された多くの研究者を含む諸個人への敵視としても、抑圧にさらされている。
もっとも新しいエピソードのひとつは、英国での大きな野外音楽祭、グラストンバリー音楽祭をめぐるものだ。親パレスチナのベルファストのラップグループ、クニーキャップは、このイベントのBBCライブ放送から締め出されることで早々と烙印を押された。しかしながら、デュオのボブ・ヴィランはライブ放送上にいた。そして、群集が受け取ったかれらの「IDF(イスラエル国防軍)に死を」の唱和が生放送された。
これがBBC会長の解任、警察の捜査、議会での問題視を求める叫びを伴って大騒動を巻き起こしている。その一方、ジェノサイドは続き、糾弾をほとんどまったく巻き起こしていない。
アンティキャピタリスト・レジスタンスのデイヴ・ケラウェイが、クニーキャップのひとりのメンバーの訴訟とテロリストとしてのパレスチナ・アクションに対する定義に続いた、「IDFに死を」唱和に対し、既成エリート、労働党政府、そして主流メディアがどのように対応してきたか、を説明している。(IV編集者)
デイリー・メール、BBC、リサ・ナンディー(文化相)、さらに主流メディアのほとんどは、彼の今では有名な「IDFに死を」唱和が反ユダヤ主義のヘイトスピーチという理由で、ミュージシャンのボビ・ヴィランに対する厳しい行動を求めてきた。実際デイリー・メールはその1面で、彼がイスラエル人に死を求めたと言うことで、嘘を書き、ヴィランを中傷した。
ここでは誰が反ユダヤ主義か?
反ユダヤ主義の定義を考え出しているIHRAの中で提供された少なくともふたつの事例にしたがえば、「IDFに死を」と主張することは反ユダヤ主義とすることは、それ自身で反ユダヤ主義だ。これは反ユダヤ主義は以下を含むと明言している。
•ひとりのユダヤ人やグループが犯した実際のあるいは想像上の悪行に、あるいは非ユダヤ人の行為に対してさえ、責任がある者たちとしてユダヤ人に罪を着せること。
•イスラエル国の諸行為に対し、ユダヤ人に集団的に責任を負わせること。
ボブ・ヴィランは、ひとつの人民としてのユダヤ人がIDFの悪行に責任がある、あるいはイスラエル国の行為に対しユダヤ人が集団的に責任がある、などと示したことは一度もない。彼がもしユダヤ人あるいはイスラエル人に死をと語っていれば、その時は一線が越えられていただろう。しかし彼はそうでなかった。
イスラエル国外のユダヤ人は多くが、IDFがその軍が支配する食糧配給所で食糧を求めて行列する何百人をも銃撃し、またその爆撃が何万人もの子どもを殺害している中で、IDFはユダヤ人民を全く代表していないと語っている。イスラエル内のユダヤ人少数派もまた、今IDFが行っていることに反対している。ジェノサイドに反対しているユダヤの人々は、IDFが今ガザと西岸で行っていることに対し何らかの形でかれらに責任が被せられることを激しく拒絶している。かれらは、「われわれの名前を使うな」と言っている。
イスラエル国はその歴史すべてを通じて自らを、ユダヤの宗教、社会そして文化と同義と描写してきた。結果として、それが行うことに対するあらゆる批判は自動的に反ユダヤ主義と定義される。
しかし、IDF隊員の全部近くがユダヤの信仰をもっているという理由だけでは、それをユダヤ人の実体にするわけではない。米軍部隊のほとんどはおそらくキリスト教とその文化を自らのものとしている。しかし、ベトナムからイラクにいたる彼らの行為に対する世界中の大規模な反対は、これまで決してそれをクリスチャンとして定義したわけではなかった。
政府とメディアがISIS破壊の訴えを認めた時、ISISメンバーがほとんどいつもイスラム教信者だとの理由だけで、それがイスラム嫌悪だったとは誰も主張しなかった。
実際、大騒ぎに続くボブ・ヴィランの声明の中でかれらは、この点を以下のように力を込めてはっきりさせている。
「われわれは、ユダヤ人、アラブ人、あるいは他のあらゆる人種や民族グループの死を求めてはいない」、「われわれが求めているのは、暴力的な軍事機械――その兵士が食糧を待つ無実な市民に対し「必要のない致死力」を使うよう命じられたひとつの機械、ガザの多くを破壊してしまったひとつの機械――の解体だ」、このデュオはインスタグラムの投稿でこう書いた。
ヴィランは確実に、反ユダヤ主義の罪を今彼に着せているデイリー・メールや他の者を訴えるための十分な根拠をもっている。
「死を」の唱和が意味するもの
家族や友人や隣人が何百人も爆撃され日々殺されるようなジェノサイド的な占領と読者が戦っているとすれば、みなさんを殺し続けているそうした兵士の敗北や死さえも求めることは、全く人間的で論理的な反応になる。これは確かに、第二次世界大戦の中で公的なイデオロギーがドイツ軍に対しどのように働いたか、を示すものだった。それは、必ずしもナチスやファシストと限定されたわけではないドイツを敵とする――死を、とする――戦争だった。
しかしヴィランは、植民地主義とその暴力的な抑圧を鋭く自覚しているひとりの黒人として、占領者に対決するパレスチナ人の正義の抵抗との連帯を表現していた。
スローガンとしての「死を」には、われわれがその中にこの残虐な軍の敗北とその終わりを欲するものとしても、ひとつの政治的な隠喩的意味がある。それは、イスラエル人に徴兵に応じないようにとの訴えと組にされることも可能だ。
イラン人が「アメリカに死を」と唱和する時、かれらは全体として、かれらが憎むのは普通の米国人ではなくその帝国主義政府と軍隊だ、と応じるだろう。
一般論として既成エリートや政府はこれまで、過激な言明と見られるものの芸術的、文化的脈絡は街頭デモや政治集会からは区別される、と受け入れてきた。ジョン・ベッジェマン(英国の詩人、作家:訳者)は戦後の詩で、スラウ(ロンドン西方20マイルにある土地:訳者)の爆破を求めた。いくつかの英国の理想として彼が大事にしたものをそれが破壊していると彼が考えたことが理由だ。
ボブ・ディランは、彼の曲の「戦争の親玉」で、好戦主義者の詩を祝っている。筆者が知る限り、これをヘイトスピーチとして彼の起訴を求めた者はいない。
大衆的連帯を求めるスローガン
パレスチナ連帯運動がそうしたスローガンを採用すべきか否かに関しては、完全に区別された議論が行われる必要がある。この種のスローガンは、民衆の広大な多数にとって必ずしも鮮明でなく理解可能でもない。占領に対する正当化できる抵抗の政治的な意味に近づく力もはるかに小さい。
パレスチナ連帯を求めるうまく機能する戦略はわれわれに、武装抵抗の権利やIDFの軍事的敗北であっても、それを人々に納得させることを求めない。はるかにもっと重要なことは、ボイコット、投資引き上げ、そして制裁を求める必要であり、われわれ自身の政府の政策を変えることだ。
ベトナム戦争の当時米国の連帯運動の中では、主なあるべきスローガンが「解放戦線に勝利を」か、「今すぐ部隊を家に帰せ」か、についての論争があった。
ボビ・ヴィランは、グラストンバリーでの彼の行動を理由に重い犠牲を払った。トランプは、彼のバンドの米国ツアーは止められると確言している。そしてかれらの代理人はかれらを積み木のように捨てた。
多分、彼らは活動を続けることができるだろう。クニーキャップのように、かれらへの攻撃はかれの立場――また彼のバンド――への支持と関心をもっと焚きつけただけだった。
テロリズムのブラシで汚名を
2003年、ジョシュ・リチャードが米軍に所属するひとつの基地で航空機に火をつけようと試みた。法廷で彼を弁護した弁護士は、彼の行動は正統であり、対イラク侵略戦争を止めるために必要とされた、と力説した。彼は、リチャードはテロリストでは全然ない、と語ることに自身を限定しなかった。彼はもっと進んで、彼の依頼人はいかなる類の犯罪者でもない、と力説した。その弁護士こそキア・スターマー(労働党の現首相:訳者)だった。
グリーナム・コモン米空軍基地外の女性平和活動家たちは基地ゲートに自らを縛り付け、ミサイルサイロによじ登った。その時ですらマーガレット・サッチャー首相は、彼女たちをテロリストと呼ぼうとは決してしなかった。
ラッダイト(機械打ち壊し:訳者)活動家からタフ・ヴェール(英国の労働法作成に、また労働党創設にも刺激を与え争議:訳者)のストライキ労働者まで、労働組合運動の全歴史は、財産への損害という要素を伴っていた。放火や窓のたたき割りのような、サフラジェッツ(女性参政権論者:訳者)のいくつかの行為は、パレスチナ・アクションが行ったことよりもっと悪質だった、と論じることもできるかもしれない。
しかし、財産への非暴力的損害を処罰する法律はすでに存在している。そしてすでに、長期刑に服しているエルビット13(親パレスチナ活動家たち:訳者)という形で、判決はもっと抑圧的になっている。
本当に皮肉なことは、彼女に一貫性があったとしたら、イヴェット・クーパー内相はおそらく、初期の労働党メンバーや労組活動家をテロリストと定めなければならなかっただろう、ということだ。
パレスチナ・アクションは、主に軍の標的や軍需企業に対する非暴力の直接行動を組織している。新しいところでは、ふたりの活動家がブライズ・ノートン空軍基地に入り込み、ジェット戦闘機に赤ペンキを塗りつけた。かれらが見とがめられずに出入りしたという事実は、内務相のような人間の対応は極端、ということを意味していた。
そのできごとで彼女は、福祉法案をめぐる混乱後に陥っていたかもしれない状態よりもおそらくもっと神経質になっていた。クーパーはパレスチナ・アクション禁止を、白人至上主義者でネオナチ組織のマニアックス・マーダー・カルトや、白人至上主義の民族主義組織のロシア帝国運動と組にした。反対投票は26人だけ――元労働議員や労働党左派の社会主義キャンペーングループの全員ですらなく――だった。
さまざまな反攻が進行中
しかしながら、これまでに何ほどかのはね返しが起き、パレスチナ・アクションは手続きを遅らせる臨時命令を得た。そしてこれに関する裁判所の聴聞が近々行われる予定だ。内相へのふたつの別々の手紙で、警察監視ネットワーク(Netpol)弁護士グループ、およびひとつの社会主義弁護士会は、同グループ禁止は危険な前例を作るだろう、と書いた。もっぱらガーディアン紙で披露されたNetpol弁護士グループの手紙には、266人の事務弁護士、法廷弁護士、法研究者が署名し、そこには11人の勅撰弁護士と11人の法学教授が含まれている。
それは「パレスチナ・アクションの直接行動禁止にテロ法を使うことは、この法の乱用、および抵抗権への干渉になると思われる。抗議グループに対しこのやり方でテロ法を誤用することは危険な前例を作り、われわれの民主的な権利を脅かし、われわれの市民的自由に恐るべき打撃になると思われる」と述べた。
前記社会主義弁護士会の署名者には著名弁護士の他に、数千人が加わり、そこには政治家のキャロライン・ルーカス(緑の党)、ジェレミー・コービン、ジョン・マクドネル(労働党左派)、俳優のアディール・アクラツとジュリエット・スティーブンソン、さらに教員や牧師が含まれている。
その手紙は「禁止は公衆の多くの成員を脆弱にすると思われる――たとえば「私はパレスチナ・アクションを支持する」と書かれたTシャツを着るだけで禁止違反と見られ、対応行動が必要となるように――」と書いている。
国連の代表者たちもまた、その方策を非難した。元労働党司法長官のファルコナー男爵でさえ、彼らをテロリストと呼ぶことは誤った動きになるだろう、と語っている。
連帯運動と左翼への攻撃
いったんテロリストと思われれば、その方策は連帯運動と急進的左翼を掘り崩すために利用される可能性もあるだろう。ウェブサイトは閉鎖され、指導者は起訴され、重い罰金が課される可能性もある。
政府は明確に心配している。パレスチナ運動は時間と共に弱まるどころか代わりに、強いままとどまり、英国社会にもっと根付くようになりつつあるのでは、と。有権者はすでにパレスチナに関する労働党の政策を理由に、かれらが緑の党、無所属、あるいはもっと左に投票するだろうと示しているのだ。
グラストンバリーでのクニーキャップの出番はBBCに禁止された。しかしひとりの女性によって燃えるような熱で勇ましく保存されたライブ放送は、150万以上の視聴を獲得した。労働党は、進歩的な心をもつ人々の一世代を失う過程にある。
われわれは活動家女優のジュリエット・スティーブンソンに最後の言葉を託すことができる。つまり、2000年のテロ法内で展開されたテロリズムの定義は明確で、「財産への深刻な損害」を含んでいる。金属に赤ペンキを塗ることは深刻な損害になるのだろうか?
イヴェット・クーパー内相によって表現されたような、航空機へのこの赤ペンキ塗布に対する糾弾は、ガザのテント壁に塗られた赤い血に対する彼女によるあらゆる同等の糾弾には釣り合わないように見える。(2025年7月3日、「アンティキャピタリスト・レジスタンス」より)
▼筆者はアンティキャピタリスト・レジスタンス内の、ソーシャリスト・レジスタンスと第4インターナショナルの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2025年7月5日)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


