オランダ 初めて歴史的なストライキ

移民の一時雇用労働者が決行
誰も可能だと信じなかったことが起きた!

ジョーン・コジン

移民の物流労働者が闘い開始

 6月25日以来、主にポーランド移民の一時雇用労働者約150人が、「インチキな労働協約」に抗議し平等な賃金支払いと処遇を求め、アルベルト・ヘイジン〔AH、オランダの大手スーパーマーケット・チェーン〕物流拠点でストライキに入っている。このストライキは2ヵ所の配送センターで同時に始まり、その後すぐさま他の2ヵ所に広がった。
 7月14日にはこのストライキが、ジャンボ〔オランダで2番目に大手のスーパーマーケット・チェーン〕の数カ所の配送センターに拡大した。ストライキ決行者数はおよそ3百人になった。
 このストライキは3週間後、運動の拡大を考慮に入れるため一時的に中断された。追加的に、要求のひとつである適切な労働協約を議論するための、職業斡旋業団体との協議が義務づけられた。その団体とはABU〔一時雇用斡旋業総協会〕とNBBU〔オランダ一時雇用斡旋業協会〕であり、協議は8月末に実現すると思われる。
 FNVフレックス・ユニオン〔オランダ労働組合連合非正規労働者部門〕指導者のひとりであるカリン・ヘインスディクに言わせれば「この3週間に、可能だとは誰も信じなかった何かが起きた。一時雇用労働者が、ほとんどすべてが移民の労働者がかれらの権利を守ろうと決起した。一時雇用斡旋業者からの恫喝にもかかわらず、労働力市場におけるかれらの不安定な立場にもかかわらず、さらにかれらが直面する金銭的なリスクにもかかわらずだ」ということだ。
 「一時雇用労働者がストライキに入ると自分自身で決めたのはこれが初めてだ。そしてそれ以上のこととして、かれらは全員移民だ」、FNV労組活動家のシハン・ウグラルはこう言明する。
 このストライキはFNVフレックス・ユニオンからの支援を受けてストライキ決行者自身によって組織された。パウリナ・ニエトゥプスカがストライキ指導者のひとりだ。彼女は、ティルブルグのAH配送センターで一助雇用労働者として9年間働いてきた。「人々は目覚めなければならない。われわれは奴隷ではない。われわれはここで税を納め、子どもたちを学校に送り出し、ここで暮らすためにやってきているのだ。われわれはオランダ人と同じだ」と彼女は語る。

「インチキ労働協約」への反対


 雇用主組織のABUとNBBUは以前に、小さなLBV労組〔あまり知られていないオランダの労組〕との間で労働協約を結んでいた。しかしこれは完全に不満足なものであり、ストライキ決行者からは「インチキ労働協約」と言われている。
 ストライキ前に出された最後通牒の中で労組は、同一労働同一賃金、労働条件に関する完全な透明性、さらに移民労働者に対するもっと良好な保護を規定する労働協約を要求した。FNV労組によれば、以前に署名された労働協約は一時雇用斡旋業者に、「何らかの検証可能な同等性不在の中で」条件をかれら自身で作り上げる余地を与えている。
 中央統計局(CBS)〔オランダの国家統計事務所〕によれば、「一時雇用労働者の稼ぎは平均で期限のない契約で働くかれらの同僚の37%だ。訓練や経験を考慮しても13%の違いが残る」。
 また他に、社会的給付の点でも違いがある。一時雇用労働者が受けるのは年当たり20から25日の休暇でしかない。さらにかれらは13ヵ月分を受け取っていない〔ボーナスとしての俸給1ヵ月分超過支払いが欧州共通の慣例〕。そして期限のない雇用契約の被雇用者には、2倍から3倍長い休みがある。そして4月には一時雇用労働者が、かれらのボーナスと休日が削られ、業務目標が引き上げられるような改訂を経験した。
 一時雇用労働者は多くの場合同じ場所で何年も――上述のようにパウリナの場合は9年、他の場合は10年から15年――働いている。その中ではこれは現実には期限のない雇用だ。
 そして次には住宅の問題がある。一時雇用斡旋業者への依存がすでにそれ自身で問題だ。いくつかの部屋はまともだが、しかし他は誰でも暮らしてはならないような本当に貧弱なしつらえしかない。たとえばかれらの部屋には窓がなかったり、日光を取り入れるものがなかったりする。健康には危険となるカビがつくのも頻繁だ。しかもそれは、市場の家賃よりも低いとはとても言えないような家賃を払ってのことなのだ。
 FNVのシハン・ウグラルは「問題が業務時間表であれ、賃金、休暇、あるいは病気中の賃金維持やその他であれ、かれらは日々期限のない契約の被雇用者との違いを見ている」と語り、この決起は極めて重要と確信している。

ストライキの拡大、行動の強化


 ストライキ決行者は当初配送センターに焦点を絞った。かれらはそこで集会を組織し、高度に見える形の行動を行い、かれらの境遇を同僚と分かち合った。かれらはまたバスで他の配送センターを訪れることも行った。
 しかし7月4日からかれらは、もっと見えるものにし、メディアの注意をもっと引きつけるために、かれらの外での行動も強化した。
 その日ストライキ決行者たちは、各地からロッテルダムのブイゼンパークに集まった。この公園は新しい移民記念館の隣に位置している。目的は二重だった。一方でかれらはその記念館に、ストライキ決行者が自分たちの名前を印した横断幕を贈呈することを企画した。実際、移民労働者は今このストライキで歴史の1ページを書いているのであり、いつの日かこの横断幕は記念館のひとつの品目になるだろう。他方かれらは、2週間のストライキを経て、さびれた工業地帯を一時離れて、皆で楽しい時を過ごしたかった。
 7月8日、ストライキ中のポーランド人一時雇用労働者百人以上が、雇用主組織のVNO―NCW〔オランダ産業・雇用主連合〕本部とハーグ〔オランダ政府所在地〕の社会問題・雇用省に向かった。「今すぐ平等賃金を! ずるい労働協約を止めろ」のスローガンの下に、かれらは、期限のない契約の労働者と同じやり方で処遇されるべきと、かれらの要求を聞かせた。
 VNO―NCWにはひとつの請願が提出され、それは次の文言で始まっている。つまり「私はうんざりだ! 私は期限のない契約の同僚と同じ仕事をやっている。しかし私が受け取っているのはもっと低い俸給であり、権利も少なく安全度も低い。これは公正ではない。私は等しい処遇を求める。そして私の労働条件について発言の機会をもちたい。そしてこれは正直な労働協約から始まる」と。この請願を提出した後、VNO―NCW指導者が一時雇用労働者に提案すべきものを知るために、ひとつの討論が行われなければならなかった。
 ストライキ労働者は次に社会雇用省に向かった。特にパウリナによる発言を通して、一時雇用労働者の状況が、エディ・ファン・ヒジュム長官のスポークスパーソンを含む二人の公務員に説明された。
 FNVが中でもバーベキューを組織したハーグのコエカムプ公園での2時間の昼休み後ストライキ労働者は行動を続け、ジャンボ配送センターでかれらの同僚にかれらのストライキについて情報を伝え、かれらをストライキに合流するよう促した。目的はストライキを広げそれを強化することだった。
 7月11日、ストライキ労働者はそこでの行動のためオットー〔大手一時雇用斡旋企業〕に向かうことになっていた。しかし、ポーランド人移民労働者を雇用する最も重要な一時雇用斡旋企業は、圧倒的にポーランド人であるストライキ労働者との議論を拒絶した。したがってストライキ労働者はABUに向かい、そこでイカサマ労働協約反対のデモを行うと決めた。しかしいかさま師たちはそこでもストライキ労働者と話すのを拒否した。

斡旋業者と雇用主の反撃

 オットーとAHはさまざまな恫喝戦術に頼り、ストライキに対抗するため偽の情報を広めている。たとえばかれらはある者たちに、ストライキに加われば解雇されるか移される可能性もある、ストライキ決行は「違法」、またかれらは実際にはすでに平等に処遇されていた、などと告げた。その上でかれらは、職員を他の配送センターからストライキが進行中だったセンターに移すことで、スト破りを使うことに訴えた。この行為は、すでに過去裁判所によって禁じられていたものだ。

新たな仲間たちがストに合流


 7月14、15日、ブレイスヴィジク(ジャンボ・オンライン)と3都市でジャンボ物流現場の一時雇用労働者がストライキに加わった。ピケットラインが数時間維持された。
 ジャンボのストライキ労働者もまた移民労働者だが、主にはブルガリア人とルーマニア人だ。ポーランド人のAHストライキ労働者との接触は、かれらが同じ労働者寮で暮らしているために作り上げられた。
 ジャンボでそれは初めてのストライキだったが、始まりに際してはいくつかの組織上の問題にぶつかった。しかし、ポーランド人ストライキ労働者とFNVフレックスからの支援によってそれらは解決が可能になった。

基盤拡大へストを一時停止

 7月11日、ストライキ労働者はABUだけではなくFNVにも向かった。FNVは実際夏季を理由にストライキの一時停止を願った。しかしストライキ労働者たちは、ストライキが他の企業も含め知られ始めつつあった中で、そうしたことと一切関係づけられないことを強く願った。それこそが、かれらがABUを訪れた後にFNV本部に向かった理由だ。ストライキ労働者は、かれらの観点を納得がいくように提起した後かれらのやり方を勝ち取り、したがってストライキは一時停止にはならないはずだった。
 しかしこの1週間の中で、現在のストライキがある種狭い基盤に支えられ、それを拡大することが必要、ということが明らかになった。それゆえ、他の一時雇用労働者との接触を広げる可能性をつくる目的の下、ストライキを30週(7月21日から同27日)から一時停止することが決定された。
 これが意味することは、職場と居住地で接触を作り上げることだ。そこから運動は拡大され、必要であれば強化されることが可能になる。
 良好な労働協約達成に向けた8月末に実現予定の交渉に関しては、最初の結果はすでに獲得済みだ。平行してオットーはその一時雇用労働者に、具体的な約束を含んだひとつの文書を配布済みだ。
 FNVは現在、ストライキの最初の局面に参加した一時雇用労働者向けに、緊急サービスを設立中だ。かれらが恫喝やかれらの職場内での他の道理を欠いた行為の犠牲者であるならば、ひとつの対応が即刻始められなければならないだろう。
 FNVフレックス指導者のカリン・ヘインスディクが言うように「この数週間にわれわれが築き上げたものは放棄されないだろう。われわれは組織されたままであり、依然可視化されて維持され、必要となればストライキを続行するだろう。8月後われわれは、もっと強くなってもっと多くの人々と共に戻るだろう」。
 ティルブルグのAH配送センターでオットーに雇用されたストライキ指導者のパウリナ・ニエトゥプスカは「われわれは同権を欲しているがゆえにストライキを決行した。つまり、期限のないスタッフと同じ仕事、同じ俸給、同じ保証だ。そしてわれわれはこれが解決されるまであきらめるつもりはない」と語っている。

移民労働者組織化へ連帯不可欠


 不安定かつ移民の労働者は多くの場合組織化が困難な、労働者階級の重要な部分を構成している。このストライキの成功はこの仕事にひとつの励ましを与えることができる。それゆえこのストライキを支援し強化する連帯を組織することが不可欠だ。
 しかし相互連帯はFNVと労働者階級の弱さのひとつだ。この連帯は組織化され励まされなければならない。「パレスチナとの連帯」ネットワーク労組メンバーたちは、「ポーランド人ストライキ連帯FNV」申し込み書創出によって最初の一歩を踏み出した。この申し込み書は誰もが入手できる。目的はこのグループを起点に連帯を組織し励ますことだ。
 運動を一時停止しているストライキ労働者は追加的な支援を本当に必要としている。一時雇用斡旋業者への、またAHやジャンボへの追加的な圧力は、良好な労働協約を得ることに力を貸す可能性も高めると思われる。(2025年7月19日、「グレンゼロス」よりESSF〈国境なき欧州連帯〉向けにアダム・ノヴァクが訳出)

▼筆者は気候運動で活動し、新しいフェースブックグループの「ポーランド人ストライキ連帯FNV」の一員、またSAP・グレンゼロス(第4インターナショナルオランダ支部)メンバー。(「インターナショナルビューポイント」2025年8月2日)      

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