アラスカ:トランプ・プーチン会談

戦争犯罪人との取引き許さない
アラスカ先住民運動

 「アラスカの歴史はわれわれに、帝国主義とファシズムの破壊的な犠牲を教えている。わが土地のロシアによる占領からウクライナでのプーチンの戦争やパレスチナでの進行中の抑圧まで、われわれは暴力と抹殺からなる同じパターンを見ている。われわれは抵抗する者すべての側に立つ。真の自由は集団的なものだからだ。われわれの全員が自由になるまでは、われわれは誰も自由ではない」(エネイ・ベガイエ、先住民運動執行委員長)。

われわれの未来
への裏切りノー

【アラスカ、アンカレッジ】トランプ大統領がウクライナ危機を討論しようとアラスカで8月15日にウラジーミル・プーチン・ロシア大統領と会談する準備をしている中で、先住民運動は、アラスカの土地でロシアの戦争犯罪人を正統化するようなあらゆる試みを糾弾しているアラスカ人および国中の人々と共に立ち上がる。
 アラスカは、ロシア帝国主義の犠牲を知っている。1世紀以上の間、ロシア人入植者は土地を盗み搾り取り、暴力、疾病、奴隷化を通してアラスカの先住民住民を支配し、さらに宗教的至高性によってかれらの文化を消し去った。今日われわれは、ウクライナで帝国主義の同じ作業書を見ている。つまり、領土の併合、市民の標的化、ウクライナの子どもたち2万人の強制的な連れ去り――国際法下での戦争犯罪――などだ。
 ロシアの支配に基づくアラスカの歴史はわれわれを中立にはせず、むしろわれわれを連署人にする。戦争犯罪人のプーチンをアラスカの地で迎えるという決定は、わが歴史、およびウクライナ人や他の被占領民衆の苦しみが求める道義的明晰さに対する裏切りだ。
 先住民運動は、ウクライナに領土を力で譲らせ、侵略に報い、あるいはその暮らしが危うくなっている者たちの声を沈黙させるような、どのような取引にも反対を力一杯明らかにする。われわれは、あらゆるところでの――ウクライナであれパレスチナであれ、あるいはここアラスカであれ――ファシズムの台頭と暴力的な占領に反対して立ち上がる。われわれの全員が自由になるまでは、われわれは誰も自由ではないのだ。

自然の収奪
を許さない


 資源に駆り立てられた統治に関するアラスカ自身の経験は、原油の富がどれほど民主主義を腐食させるか、権威主義に力を与えるかを示している。それはまさにウクライナに対するロシアの戦争でわれわれが見ているものと同じだ。戦争犯罪人をアラスカで歓迎することは、われわれのコミュニティとわれわれの未来に対する裏切りだ。
 ロシアと米国のような石油国家は、採掘主義の暴力の上で帝国を築き上げてきた。石油の富は、高まる犯罪と政治的な腐敗と相互に関係している。アラスカの大きな軍事的存在は、コミュニティの安全にではなく、石油や天然ガスのインフラ、資源採掘、またもっと幅広い米国の経済的かつ軍事的な利害の防護に結びつけられている。
 その一方でロシアは、世界市場に孵化場育ちの鮭をあふれさせ、アラスカの漁業を低落させ、価格を不安定化し、野生の資源を脅かしている。サハリンとカムチャッカに集中するこれらの孵化場は、毎年鮭の幼魚数億匹を放流している。食糧、文化、また精神的行為として長い間鮭に依存してきた先住民コミュニティは、比例を失して影響を受けている。沖合漁獲は浪費であるだけではなく壊れたシステムの象徴でもある。
 米国とロシア内の規制は、複合的な生態的な害を無視し、先住民コミュニティに生態系保存の重荷すべてを負うよう強要し、一方で外部の投資家が利益を刈り取っている。
 したがってわれわれは、戦争、占領、あるいは気候破壊のどれを通すものであれ、採掘主義の暴力に報いるような取引を拒絶する。資源に駆り立てられた諸体制は、異論を沈黙させるだけではない。それらはジェンダーの不平等を深め、コミュニティの健康を腐食させている。石油国家はしばしば、石油の富を軸に国民の満足を築き、不平等と環境上の害を隠している。対照的に、先住民の文化は、自然に対する世話役的な仕事、互恵、また持続可能性に重きを置いている。

われわれの
拒否と要求


 われわれは以下のような取引一切を拒否する。それは、戦争、占領、あるいは気候破壊のどれを通すものであれ、採掘主義の暴力に報い、暴力を通した領域獲得に報い、あらゆる戦争犯罪人を正統化し、その土地と暮らしが危うくなっている者たちの声を無視する、そうした取引だ。
 またわれわれは以下を要求する。すなわち、われわれの土の上で戦争犯罪人を正統化することノー。家族の下から盗まれたあらゆる子どもたちに正義を。領土的主権が外部の大国によって交渉されてはならないことを認めること。侵略への報いではなく、戦争犯罪に対する説明責任を。

アラスカ売却に
正当性は皆無だ


 ロシアと米国間の1867年の割譲条約は、多くの場合720万ドルでのアラスカ売却と叙述されている。しかしこの物語は、アラスカ先住諸民族の主権を消し去り、この地域におけるロシア人の存在を不正確に述べている。
 アラスカにおけるロシア人入植の足跡は限定的であり、かれらはアラスカ全体を全く支配も占領もしなかった。ロシア人入植者は、トゥリンギットとアートナの諸民族によって打ち破られ、僅かな交易個所といくつかの小区画に閉じ込められた。かれらは、彼らが主張する広大な領域を全面的に植民地化したり占領したりしたことは全くないのだ。
 割譲条約はアラスカの所有権の移転ではなかった。それは、法的な所有権ではなくロシアの主張を移しただけだ。先住民は長く続いた統治システムをもっていて、ロシアの主権を認めてはいなかった。米国財務省指揮官のチャールズ・ブリアントは1870年、トゥリンギットは「かれらの土地の所有者としてロシア人を決して認めなかった」と報告した。そしてロシアにはそれを売る権利は全くなかったと確信した。
 多くのアラスカ先住民の指導者たちは、この売却に抗議し、自分たちがこの土地の正当な世話役だと断言した。問題の条約は、先住民を「未開の部族」とふるい分けし、われわれがわれわれの文化を投げ捨て「白人の流儀」に同化しない限り市民権と法的な認知を否認する、とした。それは、われわれがこの土地を数千年世話し栄えた以上は、われわれの暮らしの流儀に同化するのは入植者の方でなければならなかった時代のことだ。このレイシスト的枠組みが、ジェノサイド、窃盗、そして文化的な抹殺に基礎を据えた。
 アラスカの売却は土地の法的な移転ではなく、先住民の主権を無視した植民地主義的取引だった。米国政府は、相談もない支配を当然と考えた。そしてアラスカ先住民は法的に無視された存在として残され、われわれ自身の伝統的な土地と領域、資源、そして自己決定権に対する諸権利を否認された。

抑圧との闘いに
共に合流しよう


 今日われわれは、この不法で倫理にもとる売却の遺産を拒絶する。われわれは、その世話役的機能が植民地化に先立ち、その権利が譲渡されずに維持されている元々のアラスカ先住民に敬意を払う。
 アラスカの先住民コミュニティ、ロシア帝国主義を生き延びた人々は、懸命に獲得した道義的権威を起点に発言する。われわれは、商品として扱われた土地、消費できるものとされた民衆、そして押収されてよい財産とされた子どもたちの苦痛を知っている。わが歴史はわれわれを、ウクライナ人、パレスチナ人、またその将来世代のための主権と正義を求めて闘っているあらゆる人々の闘いの連署人にしている。
 われわれはアラスカ人と世界のコミュニティに、ウクライナで、パレスチナで、あらゆるところでノーだ、二度とあってはならない、と語ってわれわれに加わるよう訴える。アラスカ人は、帝国主義とファシズムの犠牲を知っているがゆえに、ウクライナ人とあらゆる被抑圧人民の側に立つ。戦争犯罪人との取引ノー。(2025年8月14日、「先住民運動」より)

▼アラスカ先住民運動は、社会的公正と癒しを築き上げる運動に専心している。(「インターナショナルビューポイント」2025年8月19日)    

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