メキシコ 暴力と麻薬取引き

革命派の対応はどうあるべきか?

困難だが階級的展望を起点に

イルビン・ラディージョ・ムルグイア

米国の圧力下の「斬首作戦」強行

 2026年2月22日、メキシコ西部の町で軍と州兵が米国情報機関との協力の下に、ハリスコ・新世代カルテル(CJNG)に対する作戦を実行した。そしてそれは、その指導者、悪名高いネメシオ・オセグエラ、別名エル・メンチョの処刑という結果を残した。
 クラウディア・シャインバウム大統領は、この作戦は検事総長事務所が発行した逮捕状にしたがったもので、ワシントンからの指令ではないと語った。しかし、トランプのメキシコに対する関税および軍事的な脅迫がこの作戦実行に大きな圧力として作用したことは否定しようがない。
 この麻薬王の死は、この国の半分以上の州で、CJNGメンバーによる、道路を封鎖し、事業所、車両、またガソリンスタンドを焼き討ちする暴力の波に火を着けた。そしてそれは、新型コロナの時期のように、仕事や学校活動の取り止め、および住民のロックダウンに導いている。

暴力の引金引いた「麻薬戦争」


 メキシコでわれわれが今経験中の暴力状況は、2007年に始められたいわゆる「麻薬との戦争」が生み出した全体の流れを考慮しなければ理解は不可能だ。2006年12月、国民行動党(PAN、保守的右翼)のフェリペ・カルデロンが、進歩主義の代表者だったアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールを相手に不正選挙の後大統領になった。数百万人もの民衆が不正選挙を糾弾し、票再集計を要求して街頭に繰り出した。カルデロンは彼の正統性を確立しようと、着任僅か数週間後、「麻薬取引との戦争」を公表した。そしてその中で彼は、カルテルに立ち向かうために軍を兵舎から連れ出した。
 メキシコ社会へのメッセージは鮮明だった。つまり、君たちは君たちの側を選ばなければならない、政府と共にあるのか、犯罪者と共にあるのかのどちらかとして、と。
 カルデロンの任期は殺人行為の148%増、行方不明者1万7千人以上、暴力が理由になった避難23万人で終わり、同じく軍事化に基づく人権侵害と治安戦略がその後の大統領によって続行された。
 その上、カルデロンの公共治安相だったハナロ・ガルシア・ルナが、シナロア・カルテルとの結びつきが確定されたとして麻薬取引を理由に米国内で逮捕され、2024年に有罪宣告されたからには、このいわゆる「戦争」が、他を犠牲にして一部のカルテルを利するために、国家諸部隊を利用するだけのものだったということが示されたのだ。
 メキシコで暮らすわれわれのような者は、麻薬王の死は暴力の終わりを意味しない、と分かっている。「麻薬戦争」はわれわれに、ひとつのカルテルの斬首後には、暫定幹部間の継承を巡る権力闘争、さらにメキシコ国家に対する報復行為、およびこの弱体化の時期を影響を得るために利用する競合カルテルに対する攻撃、が起こると教えてきた。そしてこの理由は、エル・メンチョがたとえ倒れたとしても、これらの麻薬王を生み出し、育て、搾取する国家を超えた諸構造が今なおそのままだからだ。

資本主義と麻薬の構造的関係


 メキシコ内の主要な麻薬消費センターや兵器企業は、かれらが消費する物質を生産し、かれらの戦争製品の忠実な買い手であるような違法な諸組織を必要とする。麻薬取引と暴力にワシントンがたとえ怒っているとしても、諸々の事実は、カルテルの武器がこの国の黙認的立法を利用して米企業によって売られていた、と示している。
 2012年から2025年にメキシコ当局は、商業的なガンショップからではなく、ミズーリ州にある国有レイク・シティ軍用弾薬プラントから来た13万7千発分の弾薬を押収した。加えてクラウディア・シャインバウムは、エル・メンチョ作戦の中で押収された武器の85%は米国から来たものだったと語った。
 麻薬取引は、競争と利潤最大化を追い求める資本主義の法則によって統括されるある種の経済活動だ。諸々のカルテルは、非合法に活動することによってその最終的な結果に向けたそれらの経済的な力学を推し進め、こうして人類を単なる使い捨て労働力へと切り縮めるシステムの、もっとも暴力的な形態を目立つものにしている。
 麻薬の流通と市場取引を保証するような、強力な国際貿易ネットワークがある。加えて、諸々のカルテルは、非合法(人身売買、武器密輸、臓器売買、さらにゆすり)、合法(アボカド農業やレストランやレジャー部門)双方で、かれらの活動を他の経済部門へと拡張するまで多様化してきた。
 組織犯罪によって支配された多くの地域には、鉱山やダムといった鉱業の巨大開発構想がある。そしてこの組織犯罪は、組織労働者、ジャーナリスト、また環境活動家への襲撃に関与している。ほんの数日前、専門家のT―MECグループが、サカテカス州北部で操業しているカナダの鉱業企業であるカミノ・ロホが、全国鉱夫労組の労働者を脅すため麻薬取引集団を使った、と暴露した。彼らが同労組の労組選挙での勝利後のことだった。
 カルテルの社会的・政治的力は、その大きな経済力と自らの利益を確保するため行使する暴力行為に由来する。それらの例としては、資本注入、買収、また国家の治安部隊との共謀を通した、脅迫、暗殺、強制的な失踪、マネーロンダリング、違法な富裕化がある。
 新自由主義政策の数十年が、不安定化、移民、不安定労働、地方からの集団脱走と機会の喪失を深刻にしてきた。新自由主義が後押しした個人主義的理念、能力主義的理念、また容赦ない競争の考え方と組になった、先の困難な生活条件が多くの人々、特に若い人々を、より良い暮らしという希望の中で組織犯罪のために働くことに向かわせてきた。
 NAFTA(北米自由貿易協定)、次いでCUSMA(米国―カナダ―メキシコ自由貿易協定)下の国際貿易の規制解体、加えて北の大国に対するメキシコの従属が、わが国への大口径武器の流入を可能にし、米国内の麻薬市場への供給者になるようわれわれを導いた。

唯一の出口:システムとの決別

 組織犯罪と結びついた暴力が解決が容易な問題でないことははっきりしている。これが体系的な現象である以上、そのあらゆる複雑さの中でそれを分析することが第1歩であり、われわれはそれを、体系的な変革を通じてはじめて矯正できる。
 われわれはメキシコの革命的な左翼の立場で以下を確信している。つまり、われわれは、麻薬取引を生んでいるこの致死的な資本主義システムを破壊するために活動する中で、常に暴力の犠牲者の側に立ち、民衆諸階級から発するイニシアチブを支援しなければならないと。
 これこそが、われわれが行方不明者の母親たちの諸団体と接触を保ち、彼女たちの要求と決起の中で彼女たちを支援する理由だ。われわれはまた、平和を求め軍事化および米国の介入に反対するデモにも参加してきた。われわれは以下がわれわれの優先事項だと確信している。

◦暴力からわれわれ自身を守るためコミュニティの結びつきを強めること。
◦国境のこちら側の安全性のなさを政治的にも経済的にも利用している米国のような帝国主義大国の偽善と責任を糾弾すること。
◦武力に依存した治安戦略がもたらす危険性を非難すること。そうした戦略は人権侵害を引き起こし、政治の権力を少しずつ軍部へと明け渡すことにつながるからだ。。
◦グエッレロ州(メキシコ南部)の山岳地域と沿岸地域におけるコミュニティ警察、あるいはサパティスタの「カラコレス」といった、コミュニティが設定した他の治安戦略を研究すること。
◦労働者階級を麻薬取引者と描くことでかれらを犯罪視しかれらに烙印を押すような主張を拒否すること。治安の危機をいわゆる「家族の価値の喪失」――右翼はそれを、女性やLGBTIQ+の権利における前進のせいにしている――に結びつける右翼によるもくろみも拒絶すること。
◦犠牲者やかれらの親類との連帯を示し、かれらが行おうと決定する諸行動の中でかれらに寄り添い、政治的な意識と自信の強化に力を貸し、さらに平和と安全を求める要求に基づき、左翼的な組織化プロセスを鼓舞すること。
◦階級的な展望から問題に取り組み、十分に詳細な分析が不在な中でも、その理解を助けること。(2026年2月、「ルヴュ・ランティカピタリスト」より)

▼筆者は民衆の力社会主義運動(MSP、第四インターナショナルメキシコ支部を構成する組織の一つ)の活動家。(「インターナショナルビューポイント」2026年6月17日) 

米の情報機関との共同作戦が強行された

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