カンボジアとラオスの「特殊詐欺拠点」捜査
グローバル資本主義とAI技術が生み出した
奴隷労働からの救済・解放のための国際連帯が問われる
マイケル・G・ヴァン
カンボジア政府は6月24日、「25年7月から26年4月にかけて、特殊詐欺に関与した計約1万3千人の外国人(中国人、タイ人、ベトナム人、日本人など)を強制送還した。今後も摘発の強化を続ける」と発表した。アムネスティ・インターナショナルが6月26日に発表した報告書(「私は他人の所有物だった:カンボジアの詐欺施設における奴隷制、人身売買、拷問」(https://www.amnesty.org/en/documents/asa23/9447/2025/en/)はカンボジアでの取材をもとに犯罪ネットワークが運営する刑務所のような施設内で起こっている虐待・人権侵害についての多くの証言を収録している。以下は『ジャコバン』誌7月10日付に掲載されたマイケル・G・ヴァン『「特殊詐欺集団」はグローバル資本主義が生み出した』の抄訳である。筆者はカリフォルニア州立大学サクラメント校教授(東南アジア史など)。
列強による東南アジア収奪の歴史が今も繰り返されている
東南アジアは、グローバル資本主義の容赦ない利益追求の犠牲となってきた長い歴史を持つ。この地域の交易ネットワークは何世紀にもわたって、貴重な香辛料、芳香を放つ白檀、沿岸のサンゴ礁や鬱蒼とした熱帯雨林で採取された希少な品々を世界経済に供給してきた。
16世紀から17世紀にかけてポルトガルとオランダからの侵略者たちは、伝説の香料諸島を容赦なく略奪した。オランダ東インド会社は虐殺と暴力を使ってグローバル規模の独占体を築きつつ、株式を投資家に販売することで近代的な企業組織の先駆けとなった。
帝国主義が隆盛を極めた時代、植民地の農園では労働者たちは奴隷労働に近い劣悪な環境下でコーヒー、砂糖、ゴムなどの換金作物の栽培に使役された。外国資本が所有する鉱山では、英国領マラヤで錫が、フランス領インドシナで石炭が採掘された。
このパターンは現在まで続いている。アリゾナ州に本社を置くフリーポート・マクモラン社は、インドネシア占領下のパプアにおいて、世界最大の金・銅鉱山であるグラスバーグ鉱山を、厳重に軍事化された「国家内国家」として運営している。
その一方で、カンボジアとラオスの一部地域は、弱い立場の労働者を容赦なく搾取する詐欺産業の作業現場となっている。国連の報告書はこの状況を人権の危機と表現している。
カジノ・「経済特区」・不動産投機から「ハイテク詐欺産業」への転換
この地域全体で、かつてのカジノ街、経済特区や投機的な不動産開発地が、グローバル・サウスの貧困化された諸国から人身売買で連行されてきた数万人の労働者が使役される要塞化された複合施設へと変貌を遂げている。労働者たちは暗号通貨アドバイザー、恋愛のパートナー、投資ブローカー、カスタマーサービス担当者になりすまして日々を過ごしている。
仕事の相手はグローバル・ノースの比較的裕福な人々である。雇用主は国際的な犯罪組織であり、職場は暴力的な刑務所である。政府はこれらの活動を組織犯罪と呼ぶが、人権団体は単に現代奴隷制の一形態だと断じている。
カンボジアとラオスで広範に活動している詐欺集団は、グローバル資本主義が生み出した最新の成長産業のひとつであり、金融投機、デジタル技術、人工知能、人身売買、そして極端な労働搾取が融合したものである。それは資本主義の原初的な本能である利益追求という衝動と最新技術を駆使したツールが出会った時に何が起こるのかを如実に示している。
アムネスティ・インターナショナルによる衝撃的なレポート
アムネスティ・インターナショナルが最近発表した膨大なレポートは、大々的に報道されているカンボジアにおける詐欺業界への取り締まりの惨憺たる状況を描き出している。政府は数百カ所に及ぶ犯罪拠点を閉鎖し、数千人の容疑者を逮捕したと発表しているが、その後も数十の拠点で人身売買、強制労働、拷問、強姦、奴隷労働が行われている証拠がある。
アムネスティの調査スタッフは26年前半の時点でカンボジアで活動していた数十の犯罪拠点を特定し、その多くが警察による反復的な立ち入り捜査にもかかわらず、依然として活動していると結論付けた。さらに憂慮すべきことに、アムネスティが事情を聴取した73人の人身売買被害者のうちカンボジア当局によって正式に人身売買の被害者として認定された者は一人もいなかった。
搾取の歴史
この危機的な状況はカンボジアにとどまらず、はるかに広範囲に広がっている。同様の施設は隣国ラオスでも依然として活動を続けており、特にメコン川沿いのカジノ複合施設や経済特区の周辺で多く見られる。犯罪集団の地理的分布は偶然とは思えない。それらは外国資本が地域全体を搾取してきた歴史がある場所である。カンボジアのポイペトやバベットなどの国境の町、ラオス北西部のゴールデン・トライアングル経済特区の周辺、あるいは内戦で荒廃したミャンマーの特定地域に集中している。また、観光、外国投資、地域開発を当てにしたカジノ開発や高級不動産プロジェクトの用地を利用している。
フランス植民地時代にインドシナは、植民地当局から特権を付与された資本家集団によって組織された。植民地当局はゴム、木材、鉱物を採掘する民間企業に広大な土地を与え、労働者や地域社会に対して絶大な権力を行使した。ベトナムの革命家であり軍将軍でもあったトラン・トゥ・ビンは回顧録『Red Earth(赤い大地)』(英語版1964年刊)の中で、ミシュランが所有していたフーリエン・ゴム農園における非常に残虐な実態を詳細に記している。植民地国家はしばしば、民間企業に権力を委譲し、公権力と私益の区別を曖昧にしてきた。
今日の経済特区は従来のやり方とは異なっているが、同じ政治的論理を再生産している。政府は規制を緩和し、投資を奨励し、民間資本が例外的に広範な自治権を享受できる空間を作り出す。カジノ、不動産投機、物流拠点、多国間金融はこうした準自治的な飛び地で繁栄している。特殊詐欺の犯罪集団もこの同じ背景の下で繁栄している。
アムネスティの調査レポートが示すように、犯罪に使われる施設の多くは認可を受けたカジノ、ホテル、商業施設に隣接して運営されている。警察の摘発後も施設が営業を続け、強制労働の被害者たちが強制捜査前に他の施設に移送された事例や、救出された被害者が施設の管理者と地元当局者の間に明らかな共謀があったという証言も記録されている。
コロナ・パンデミック
後に急増
20年以降にオンライン詐欺が急増したのは、パンデミックが東南アジア全域の観光業に壊滅的な打撃を与え、カジノの収益がほぼ一夜にして激減した時期と重なる。ホテルは閑散とし、これまで中国人観光客を主な顧客としていたギャンブル施設は、突如として経営破綻の危機に直面した。
多くの犯罪組織は驚くべき速さで適応した。彼らは既存の物理的インフラ、すなわちカジノ、寄宿舎、警備システム、監視カメラ、私設警備員、そして国境を越えた金融ネットワークを活用した。変わったのは生産される商品のほうだった。
ギャンブル客は国境を越えて移動するのをやめてオンラインで勝負し、従業員はルーレットテーブルではなくコンピューターの前に座るようになった。カンボジア、ラオス、ミャンマーの片隅に隠れていたカジノの町は、人身売買の被害者となった移住者から成る労働力を活用したグローバルにネットワーク化された犯罪工場へと変貌した。
犯罪産業の最も顕著な特徴の一つは、極限的な搾取が蔓延していることである。顧客(詐欺被害者)たちは仮想通貨詐欺、恋愛詐欺、投資詐欺、不正認証などの巧妙な詐欺行為によって貯蓄を失う。
労働者(人身売買の被害者)たちは合法的な仕事だと信じて就職したにもかかわらず、厳重に警備された施設に監禁されていた。パスポートの没収、電気ショック、殴打、強制労働、レイプ、家族への脅迫などを通じてである。
詐欺犯罪の作業現場は犯罪者の隠れ家というよりは、むしろ工場のような職場に近い。管理者は従業員にノルマを設定し、従業員は決められた手順に従う。そして、絶え間ない試行錯誤によって、被害者を罠に誘い込むための心理的なテクニックが磨き上げられていく。
それぞれの労働者は犯罪の特定の段階に特化している。ある者は狙った顧客とコンタクトを取り、仲間の労働者が数週間から数カ月かけてその相手と感情的な関係を築き、別の者が金銭取引を完了させる。そのプロセスはデジタル部品の組み立てラインに似ている。ヘンリー・フォードが自動車生産を標準化したように、東南アジアの犯罪拠点は詐欺行為の実行方法を標準化しているのだ。
東南アジア各国の政府は、米国と中国からの圧力に直面して、取り締まりを強化してきた。幹部級の詐欺犯の逮捕が相次ぎ、一部の施設が解体され、数千人の人身売買被害者が施設から脱出した。
しかし、取り締まりだけでは、グローバルな金融ネットワークに深く根ざし、莫大な利益によって支えられている産業を根絶することはできない。犯罪拠点はメコン川の人里離れた地域やゴールデン・トライアングルの孤立した谷にあるかもしれないが、国際的な銀行システム、仮想通貨取引所、グローバルな通信インフラ、出入国に関わるネットワーク、投機的な不動産市場、そして世界最大級の企業が開発した技術に依存しているのだ。
カール・マルクスは、資本主義が「頭からつま先まで、あらゆる毛穴から血と汚物を滴らせながら」出現したと喝破した。それから2世紀後、この言葉ははっきりとデジタル的な要素も加味されるようになった。
ラオスとカンボジアの国境地帯に点在する要塞化された施設群は、現代史における根本的な問題を浮き彫りにしている。投機的な金融、デジタル技術、人工知能、そして不安定な労働が、利益を何よりも優先するグローバル経済秩序の中で融合したときに何が起こるのかを、それらは明らかにしているのだ。

3月11日、プノンペンでサイバー詐欺拠点の摘発
(Tang Chhin Sothy / AFP via Getty Images)
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