イタリア:殺人的国家 官憲の行為を推定無罪へ

民主主義絞殺への組織的反抗へ

ステファニー・プレツィオーソ

 7月20日のボローニャの労働者街におけるアブデラヒム・ファキルの死が、憤激に火を着け、数千人を「真実と正義」を求めるデモに導いた。この死は、2020年のミネアポリスにおけるジョージ・フロイドの死を思い起こさせる……。

背後からの不法侵入者銃撃

 2026年7月15日、オモチャの銃一丁とナイフ1本で武装し、彼の宝石店を襲った不法侵入者3人の内2人を、かれらが逃走中に殺害したとして、マリオ・ロゲロが最終的に収監14年9ヵ月の有罪判決を下された。映像は完全に鮮明だ。店をすでに離れていた盗賊たちは誰の脅威でもなかったが、当の宝石商はかれらに何回も発砲した。
 政府の右翼と極右全体が今ロゲロを軸に結集中であり、かれらは大統領恩赦を追求中だ――すでに司法相のカルロ・ノルディオからどのような法の枠組みからも外れて支持されている。同盟(極右政党:訳者)の指導者であるマッテオ・サルヴィニは、ロゲロに議員免責を与えるため次期選挙候補者として彼を立候補させることを考慮中、と語っている。同盟はこの機会を、少なくとも2018年以来党の優先目標となっていたひとつの法案を導入するために利用している。それは、自衛権を扱っている刑法52条の拡張をめざすものだ。
 下院議員のクラウディオ・ボルギはこうして以下の提案を持ち込んだ。すなわち「犯罪行為に対する対応すべては、使われた手段の比例性、危険の持続性、また行為の厳格な防衛的性格とは関わりなく、処罰の対象ではない」と。
 ジョルジャ・メローニ首相は彼女なりにすぐさま、この判決は不当に重い、と言明した。マリオ・ロゲロはあっという間に、本格的な対抗勢力が不在のなか、強固な政権を維持しているイタリアの右派・極右勢力において、「国民的ヒーロー」となった。
 イーロン・マスクの場合、X上でイタリアの裁判官を敵視するキャンペーンに取りかかっている。彼は、この裁判官たちは今回の判決を下したことを理由に投獄されるべき、と主張しているが、それはマリーヌ・ルペンに対する彼の支持と同じ流れにある。ルペンについて彼は、フランスの司法制度の犠牲者と主張している(マリーヌ・ルペンは最近、政治資金規制違反で有罪判決を受けている:訳者)。

警察の暴力は悪化の一途


 2026年7月17日ベニスで、米国のイタリア大使、ティルマン・フェルティッタに反対して、数百人が抗議に立ち上がった。彼の巨大ヨット――6階建てビルディングのような印象の長さ117m、高さ30m――が、この市でもっとも重要な祭りのひとつであるフェスタ・デル・レデントーレ(贖い主の祝日)のまさに真ん中で、住民が花火大会を見るのを部分的に妨げて碇を降ろしたのだ。子どもの浮き輪(カエル、イッカク、亀)を身につけた抗議参加者を、警察は暴力的に襲った。
 7月19日、7歳の時にカサブランカからイタリアに来たモロッコ国民の43歳になるアブデラヒム・ファキルがボローニャでふたりの警官により殺害された。そこにもまた耐え難いほどはっきりした映像がいくつもある。頭に傷を負い、混乱状態の中で、顔に催涙ガスを吹きかけられた後手錠をかけられ地面に顔を付けふたりの警官が彼を押さえつける中で彼は、助けを頼んでいる。4人の救急救命士は介入せずにこの男が死ぬのを見守っている……。ミネアポリスで死亡する直前、ジョージ・フロイドが「息ができない」と語っていたことを思い起こそう。
 アブデラヒム・ファキルの暴力的な死に続いた7月20日、民主党市長のマッテオ・レポレに声をかけられ真実と正義を求め群集が大規模にボローニャの街頭に溢れ出た。その一方で、メローニ政権が推進した「治安令」の施行以来初めて、警察官や医療従事者が「刑事免責の盾」によって保護された(フランスの議会では、国民連合、共和党、マクロン支持者の支持を受け、313対199で、警察官による発砲を原則として適法とみなす、より踏み込んだ法案が採択されたばかりだ)。内相のマッテオ・ピアンテドシはその後、イタリアは「警察国家」ではないと強調せざるを得ないと感じた。

事実上の殺人許可証導入


 チョッキーノ・アントニーニ(ジャーナリスト:訳者)が説明するように、「この治安令はまた、治安機関(警察)に対する「刑事免責の盾」、すなわち緊急の状況下で職務遂行中に違法行為を犯した警察官に対する法的保護をも拡大するものである。マッタレラ大統領の見解の後政府は、この保護は公職者に対してだけではなく、似たような環境に置かれた者すべてにも適用される、と明らかにした。実際のところ、それはもっと慎重な言い回しになっている。この方策は政治的に、力の行使に関する予防的正統化の原理を導入し、その『楯』は敢えて、若者や移民といった外国人あるいは周辺化された者とみなされる人々に一層むけられることで、選別的効果をつくり出している」。
 フランスの法はもっと急進的だ。最初から行為の合法性を仮定することで、それが証明責任の重荷をいわば逆転させることを意味しているからだ。そしてそれは法的にはるかに急進的で、これこそまさに、その反対者にこのフランスの法に「殺人許可証」とのレッテルを貼らせたものだ。

民主主義の空洞化の時代


 民主主義のじゃまもの扱い、民主主義の棚上げ、民主主義の空洞化。イタリアで、米国で、さらにフランスでも、新たな政治時代が夜明けを迎えようとしている。つまり、自らの足枷となり得るあらゆる権力を着実に無力化することによって確立されつつあるのは、絶対主義的な政府主権の段階的な構築なのである。
 手法は、大西洋の各々の側で違っているかもしれない。しかし目標はいかなる望みも残さないほど同じままだ。つまり、憲法からその意味をはぎ取ること、選挙を掘り崩すこと、「赤い」司法を掘り崩すこと、自由と権利を攻撃すること、大量追放と投獄を推し進めることで移民――およびかれらと共にあらゆる被搾取層――を標的にすること、情報に対する権利と表現の自由を縮小することで単一の物語りに対する支配を確保すること、だ。
 それらのことが、報道を沈黙させる諸々のもくろみにまつわる事例であり、報道は単一の物語りのための単なる導管になっている(アブデラヒム・ファキルの死に関するRAI〈イタリア放送テレビ〉の一ジャーナリストの記事は、ネットワークによって検閲された)。
 これらの政策は一体的に未来の絵を描いている。つまり、それに異議を突き付けることのできる権威を一切残さないような、あらゆる正統的決定策定のただひとつの中心への移転、そして、あらゆる制度的なあるいは社会的な対抗権力の、漸進的でほとんど沈黙の腐食、だ。
 これは、政府トップ(君主と彼の取り巻き)への政治的重心の次第に進む移行だ。そしてかれらの行動はいかなる障害からも自由でなければならない。それは、イタリアでおよそ2000年代の変わり目に始まり、今やこの半島と他のところで加速中のプロセスだ。
 7月20日、メローニの右側に台頭中の人物であるロベルト・ヴァンナッチ将軍は、彼の新党――それを彼は「再移民」を求める「本物の右翼」キャンペーンとして描く――に関し、ローマ帝国を背景に民主党のエリー・シュライン書記と五つ星運動のジュゼッペ・コンテ党首の殺害を描くAIビデオ映像を投稿することで、彼の「構想」を例示した。

益々権威主義化する国家を
前に組織化と闘いへ

 今年7月16日、マルコ・ルビオの指導下で、「地球の」サミットが開催され、60ヵ国以上を結集した。その焦点は「政治的テロリズムの再興」だ。「政治的テロリズム」は、ベトナム戦争に関わる流れの中で最初ニクソン政権が導入した概念で、主に左翼組織を標的にしていた(公民権を求めて闘っていた者たちからブラック・パンサーまでの広がりで)。
 今日それは、「民主的テロリズムと組織された政治的暴力と戦う」治安令によって復活させられ、それを基礎に、早くもテキサスで最初の過酷な投獄刑が下されている。今回の「アンティファ・サミット」は「極左テロリズム」(FLT)という新たな概念を導入した。そしてそれは、ホワイトハウスのプレスリリースが述べたことだが、「ジハーディスト・テロリズムのために世界が長い間取っておいたものと同じ真剣さと残忍さで今後扱われ」なければならない、とされている。
 このサミット後米国務省は、「米国に対するキューバの破壊作戦」に関する新たな報告を発表した。それは、左翼グループと活動家に対するひとつの脅迫のように読める。つまり、「近年の米国政治史におけるもっとも重要な暴動のほとんど――ジョージ・フロイドの暴動からアンティファの高まりや米国の大学キャンパスにおける親テロ活動まで――は、何らかのやり方、形態、あるいは姿でキューバの影響力に結びつけられる可能性がある」ということだ。
 このリストには、ニューヨークシティ市長のゾーラン・マムダニ、下院議員のイルハン・オマール、「デモクラシー・ナウ!」のジャーナリストのエイミー・グッドマン、さらに「ベン&ジェリーのアイスクリーム」共同創立者であるベン・コーエンまでが、同じくDSAやブラック・ライヴス・マター……が含まれている。
 強力な右翼連合の転圧機はまさにわれわれの眼前で回転し始め、あらゆる社会的抵抗を前にそのかつての悪魔――「赤ども」――の妖怪を振り回している。その真の目標は、今日平等と解放を求めて戦闘中の者たちを犯罪人とすることで、われわれが懸命に勝ち取った自由と権利を掘り崩すことだ。
 今日この世界の力ある者たち――自称中道派であれ、右翼あるいは極右であれ――は、かれらがふさわしいと理解するような自らを富ませる絶対的自由を邪魔する民主主義に敵対して、倍化したエネルギーをもって、早くも1847年にマルクスとエンゲルスが「共産党宣言」に記した神聖同盟的闘いを再開している。
 したがって、今こそ自然発生的な抵抗の組織化から持続可能な組織形態へと移行し、労働、フェミニズム、反レイシズム、環境保護運動を、民主的・階級的な基礎の上に統一する時である。そして、平等と共通財の集団的所有を目指す奪うことのできない一連の権利と社会的要求をはっきりと守る時なのだ。われわれはこの達成のために、戦闘的で永続的な国際主義を生き返させることによって国境を越えるつながりを再建しなければならない。
 全体主義国家は行進の途上にある。この現実の程度全体をつかみ、民主主義と社会的公正を求める勤労諸階級の長期の闘いの中にわれわれの今日の闘いを位置づけることによって、それへの対抗に自らを準備させるのはわれわれの義務だ。

▼筆者はスイス系イタリア人の歴史家で、ローザンヌ大学社会・政治学学部の現代史教授、また20世紀のファシズムと反ファシズムの専門家。ソリダリテS(スイス)のメンバーでもある。(「インターナショナルビューポイント」2026年7月31日)   

映像に記録された殺人行為

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