気候:アラブ世界でも異変 気象事象が諸々の緊張に波及
ルイザ・トスカネ
水の不足と
大規模停電
アラブ語圏諸国はこの冬洪水に見舞われた(モロッコ、チュニジア、エジプト、ヨルダン、シリア、イラク、イエメン、オマーン、サウジアラビア)。6ヵ月後当地は、極端な暑さを経験中だ。マグレブ(サハラ砂漠以北)では40度Cから50度C、イラクとアラビア半島ではそれ以上であり、さらにガザでは平均気温が35度Cになっている。熱波が原因の死は、チュニジアでは数百人になると見積もられている。
森林火災がアルジェリア、モロッコ、チュニジア、シリアで猛威をふるっている。火災が原因の死者数はアルジェリアで高まり続けている。加えて、アルジェリアと西岸では人が住む建物の火災(アルジェリアでは、11人が死亡し、19人が負傷した孤児院)、倉庫火災(レバノン)、商店火災(リビア)、発電所火災(イラク)、紛争の中での攻撃に起因する火災(スーダン、クウェート、バーレーン)もあった。
あらゆるところで水が不足し、今年は大規模な停電が目立っている(イラク、チュニジア、イエメン、リビア)。そしてそれは次いで、特にチュニジアで配水の問題に導いている。リビアでは、電力不足が理由で当局がすでに「グレート・アーティフィシャル・リバー」の水源閉鎖を公表し、そのことが配水問題の前兆になっている。
各地の闘いは
毎日のように
モロッコ、イラク、ガザ、シリア、リビアを挟んでモーリタニアからイエメンまで、この地域の民衆は、飲料水や灌漑用の水をあるいは電力を求め街頭にいる。この運動は毎年、夏の到来と共に目立っているが、今年それは、一歩先に進み勢いを増すことになった。
水と電力を求める闘いは、民衆によって、居住区によって、市や村によって率いられている。座り込みからデモまで、道路封鎖から公的な建物の包囲まで、人々は彼らが暮らしているところで示威行動を続けている。例外は、遠く離れた現地から大都市までのモロッコ住民による何十㎞にもなる行進、あるいはモーリタニア首都のヌアクショットにある大統領官邸前の諸々の集会だ。
イラクでは宗教的な行進がデモに変わった。いくつもの道路はその重要性が理由で封鎖された。たとえば、エジプトとスーダンをつなぐ主要高速道路だ。これらのデモは全体として平和的だ。しかしイラクでは衝突に変わり、そこでは治安部隊が武器を使用、多くのデモ参加者を負傷させ、次には新たな抗議行動に導き、当局に逮捕された者たちを釈放させた。
これらの闘争は長続きしてはいないが、時の経過の中で繰り返されている。組織化の試みがいくつかある。水を巡る闘いは、チュニジアではFTDAS(経済的・社会的権利のためのチュニジアフォーラム)の、モロッコではAMDH(モロッコ人権協会)の支援を受けている。そして時にはモーリタニアで政党が口火を切っている。
新たな抗議行動
マットレス革命
イエメンの男たちは、アデン州などのいくつかの街区で電力を要求し、街頭のマット上で何回も夜を過ごした。これは大衆的座り込みを止めて行われたものだが、一方では、過去の年月における当局との衝突というかれらの伝統、また2025年におけるイエメン女性の前例のない決起に基づくものだ。
この手法は熱波にも強いられたものだが、イラクへと広がり、そこでは男の一グループがそこでも電力を求めてこの試みを繰り返したばかりだ。
抗議参加者
の顔ぶれは
この夜間デモが男しか巻き込んでいないため、そしてイラクとリビアでは(この両国では日中も夜間も)デモ参加者を構成する全員が男のため、イラクでは、ひとりの母親が、彼女に対する電力の割り当てを求めて道路のバリケードに火を着けることで、先の状況を破った。
他のところすべてでは女性は日中デモを行い、しばしば水を巡る闘いを先導している。そしてモロッコとチュニジアではいくつかのデモが女性だけだ。他のすべてでは多様性が行き渡っている。そしてしばしば、ガザにおけるように子どもが前線にいる。
水と電力に対する要求は時に対になり(チュニジア)、他の要求と組になっている。つまり、生活水準や燃料価格引き上げ停止(シリア)、遅配支払い(イエメン)、腐敗(イラク)、公職者解任(イラク)といったことだ。
こうした闘いが職場で始まるのは極めてまれだ。このまれなことがエジプトの事例だった。そこでは、アル・ラカバ太陽光発電所プロジェクト(アスワン州)の労働者たちが、熱ストレス(日陰で48度C)が原因になったひとりの労働者の死と同僚たちの不快さを受けて、適切な労働条件(水、トイレ、診療所)と賃上げを求めデモに立ち上がった。チュニジアのベニ・ハッセンにあるオルソ・グループ紡織会社の労働者は、街頭で停電に抗議した。
水と電力の欠乏は今他の社会層を抗議行動に引き込んでいる。たとえば、モロッコでの花屋、シリアでの諸々の企業家、レストラン主、工業経営者などだ。
水と電力の不足は何年も、新たな職業の出現に導いてきた。すなわち、私的な電力供給業者、あるいはタンク車による配水業者だ。しかしながら後者は、最初は燃料配分の中断を理由に(シリア)、後には燃料価格を理由に(ヨルダン)、2026年に暴動を起こした。
未来は運や天候
の問題ではない
革命プロセスの勃発から15年、慣れ親しんだスローガンを聞くのが希なことになっているわけではない。「人民は欲する……水……電力」と。シリアのデモ参加者たちは「2011年の革命」を示すプラカードを掲げているか、その革命の一部だと主張している。
当局者たちは、ほぼ2ヵ月の間日々決起する者たちを前に十分な対応をしてこなかった。一方で、電力不足のため、トリポリ市(リビア)の行政機関などのように業務停止を余儀なくされた機関もある。
住民はドアを閉じられ、ただ黙ることだけを迫られたか、あるいはとりあえずの対応(たとえばタンク車の派遣)ないし将来の途絶の前に住民に注意するとの約束、を与えられただけだった! これらの方策には、将来に先手を打って処理するというよりも、一時的に不満を鎮め、時間を稼ぐとの意図が込められている。
極端な例はチュニジア大統領にとって大切なものになっている陰謀論であり、彼は、ネットワークや組織の破綻という荒廃を認めるよりも、むしろ「国家の心臓部に潜む陰謀家たち」をサボタージュとして責め立てることで沈黙を破った。
チュニジアの国会議員たちはそれまでに、家庭や病院における医薬品準備の停止を原因とする患者の健康状態悪化や死亡に関する影響について、質問を行ってきた。他の者は、淡水化プロジェクトの状態について質問している。しかし、7月25日のチュニスにおけるデモ決行者たちが十分理解し、「出ていけ」また「自由、尊厳」という2011年のスローガンを取り上げたように、緊急方策は不在だ。
結論は、イクラム・ベン・サイード(フェミニスト活動家:訳者)による以下の啓発的言明だ。すなわち「全面停電は、それ自身の民衆に基づいて国がそれ自身の未来を計画するのを止めたとき一国が陥りそうなことなのだ。……未来は運や天候の問題ではない。それは、われわれが目を見開いて共に、計画的に、急がずにこれから建設するもののことだ」と。(2026年7月26日、第4インターナショナルのフランス語版機関誌、「インプレコール」より)
▼筆者は特にアラブ革命との連帯に関わっているフランスの活動家。(「インターナショナルビューポイント」2026年8月2日)
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