ブラジル 10月大統領選・議会選
戦略的に国際情勢にも重大だ
イスラエル・ドゥトラ
トランプ一派は
政権交代を熱望
ブラジルにおける10月の2026年大統領選での現大統領、ルイス・イナシオ・ダ・シルバ(「ルラ」)の勝利、また左翼のPSOL(社会主義と自由の党)の得票増大は、民衆主権の防衛に基づくグローバルな極右に反対する戦闘と組になって、国際的な反ファシスト運動の協調を図る支点となるだろう。
現在世界で起き続けている現象、および地政学的、社会的、かつ選挙に関わるプロセスすべての中で、ブラジルの選挙は非常に特殊な場を占めている。極右が、未来に向けた構想を前進させると主張し、ガザでのジェノサイドを防衛しつつ、ネオファシスト的未来に基づくひとつの国際構想を掲げている中で、ブラジルの選挙キャンペーンは戦略的な重要性を帯びつつある。トランプは、今や確証済の対イラン軍事攻撃の失敗に基づき中東での大敗北を喫した中で、新たな安全保障戦略、「ドンロー主義」に向けた彼の計画を推し進めなければならないのだ。
トランプは、後退中の、しかしそれだけもっと攻撃的な帝国主義を体現している。その帝国主義は今、浮上中の中国帝国主義と影響圏を張り合っている最中だ。トランプはこの目的に向け、この間幅広い民衆的な支持に基づきネオファシスト潮流を動員してきた。そして今、地域的な表看板としてのアルゼンチン大統領のハビエル・ミレイと協調しつつ行動中だ。
トランプとミレイは、ペルーとコロンビアで物議を醸したとはいえ選挙で勝利したことを受け、どんな犠牲を払おうと10月にルラを敗北させたがっている。ベネズエラが保護領化され、キューバへの圧力が強まるなか、南米の大国ブラジルの政権交代による保守陣営への引き込みは、トランプ主義における戦略的目標になっている。
帝国主義的攻撃
と主権が対立点
米政府は今意図的にブラジルの主権に敵対的に行動中だ。幅広いブラジル製品に対する37・5%という途方もない関税に加え、介入に向けた紛れもない示唆がある。たとえば、ブラジルに敵対的に言明された非常事態の延長、CVやCCP(両者共有名な犯罪組織:訳者)に対するテログループとしての分類、また、選挙の正確さや投票箱に関し唱えられた疑い、などだ。
この新たなエスカレーションは、ワシントン駐在ブラジル大使の、マリア・ルイーザ・ヴィオッティに対する外交官ビザの取り消しにに帰着した。これは、ブラジルの立場に敵対する明確に報復的な前例のない方策だった。
ミレイは、フラビオ〔ボルソナロ〕(ボルソナロ前大統領の息子:訳者)の大会では指導的な人物だった。彼は、明確に「社会主義」反対の発言を行い、ルラとこの大陸における左翼の敗北を訴え、ブラジルの選挙における野党の勝利を期待した。そしてミレイは彼の南米ツアーを、コロンビア新大統領のアベラルド・デ・ラ・エスプリエジャの就任式で締めくくった。
ブラジルの選挙論争では主権の問題が中心になるだろう。ピーター・ティールのパランティア(IT企業、ミレイ下のアルゼンチンでも開業)といったテック巨大企業は、極右に奉仕するデジタル打撃力として機能している。それらの目標のひとつは、地域諸国内にテクノ・ファシストを作り上げることであり、この構想はブラジルで、レナン・サントス(自由ブラジル運動の創設者でその運動を起源とする下記ミッション党の党首で議員:訳者)やミッション党から熱を帯びた支持を受けている。フラビオ・ボルソナロの勝利は、もっと大きな植民地主義的攻撃への露払いになると思われる。すなわち、ラテンアメリカにおける米国の介入を相当に強める中での、土地と港湾をはじめとする数多くの国民資源やインフラに対する支配だ。
真の独立か
トランプか
ルラの勝利は極右とネオファシストの攻勢に対する「堤防」として役立つだろう。トランプ主義者の興奮した大騒ぎに込められた狙いは、ブラジルのレアアース、アルゼンチンやボリビアのリチウムのような鉱業産品、さらに主要な水路の支配だ。
Pix(ブラジル中央銀行が運営するブラジルでは重要な即時決済システム:訳者)の支配のような、金融に関する取り扱いの支配という問題は、全般的な対立部分であり、米国の利益に好都合なトランプの路線がブラジルの住民過半の生活条件をどれほど悪化させるか、を何千万人という人々に示す中で中心的な要素になりつつある。
忘れてならないことだが、ブラジル人エリートの幅広い多数は不平や諸々の損害にもかかわらず、服従というこの状況を受け容れている。防衛相のホセ・ムシオによる、米国による仮説的な侵略のあかつきには「ドアを開ける」だろう、との恥知らずな言明とは戦わなければならない。それは政府それ自身内部の裏切り者からなる「第五列」の表現だからだ。さらに、ムシオが1月8日クーデターの犯人に課された有罪刑期短縮を支持する指導的発言者のひとりだった、ということを思い起こすことも重要だ。
原則になることは、主権を求める闘い、帝国主義からの実際的な独立を求める闘いを、住民多数の要求に応える綱領および民主的な権利の防衛と一体化させることだ。フラビオは、女性、黒人、先住民の生活条件の点での退行的構想を体現している。先に挙げた人々は、彼の男主義、レイシズム、そして略奪的な採掘優先主義の立場によって直接の影響にさらされると思われる。
ルラの勝利は大陸規模における力関係をつくり変えると思われる。そしてそれは、すでにイランでもがいている、また次の11月中間選挙で負けそうなトランプの敗北の露払いになるだろう。それこそが全体を包含する問題だ。
ルラを勝利させ
PSOL強化へ
10月の選挙は、極右の敗北の先で、PSOLおよびその議員団の強化、排除条項の克服、さらに世界中の反資本主義左翼に合図を送ることに関わるだろう。PSOLの刷新された勢いは、政府にもっとも近いその一部が離党の過程にある中で、その政治的な独立を強化し、それに国際的な正統性を与える。
ブラジルの選挙は大衆の一定層が現在とりつつある左翼への移行を映し出す可能性もある。親パレスチナ候補者たちが民主党予備選でシオニスト・ロビーを打ち負かしたような、米国におけるDSA(米民主的社会主義者)の台頭は、極右に立ち向かう統一と伝統的諸政党の左に新たな極を構築することを組み合わせる推進力の一部だ。ミシガンでの民主党予備選における医師のアブドウル・エル・サイードの勝利には、勝利以上の意味がある。彼は、ゾーラン・マムダニ――現ニューヨークシティ市長――が力強く体現し、米国住民の益々急進化している周辺部のおかげで広まりつつある運動の中で、党の既成エリートの親イスラエル諸部分を打ち破ったのだ。
他の条件すべてが同じだとすれば、刷新に向けたアルゼンチンの探求も左翼戦線(FIT―U)の強化に反映されている。それはもっとも新しい世論調査で支持率が10%を超えている。この運動には、私有化と国の服従からなるミレイの政策に反対する広範な決起が伴われている。そしてそれらの政策は、アルゼンチン労働者階級のすでに困難になっている経済状況を益々悪化させ続けているのだ。
世界中でZ世代は猛烈な闘争の中にいる。そして諸々の世論調査は、若者たち内部で社会主義理念を奉じる傾向が成長中と指し示している。そこには、米国や他の主要国におけるものが含まれている。
ルラとPSOLの勝利は、国際的な反ファシスト運動の協調を図り、反極右のグローバルな闘いを民衆主権の防衛と組み合わせる支点になると思われる。これこそが、「国際反ファシスト会合」の新たな地域版の組織化にわれわれが今参加している理由だ。この地域版は次の12月にアルゼンチンで開催されるだろう。重大関心事はあらゆるところで次のスローガンを取り上げることだ。「ブラジルから、ラテンアメリカのすべてからトランプは出ていけ!」と。(2026年8月7日、「インプレコール」からの訳出)
▼筆者は社会学者で、PSOL全国執行部国際関係書記、かつ社会主義左翼運動(MES、ブラジルの第4インターナショナルメンバー)の活動家。(「インターナショナルビューポイント」2026年8月18日)
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