ウクライナ フェミニスト・グループがブリュッセル会議で演説

文化的かつ知的な伝統の継続とその国際化へ

イヴァンナ・ヴィンナ

 以下では、ウクライナ国内でのロシアに対する抵抗の重要な要素である、政府からは自立した民衆の自己組織化の発展についてその一端を伺うことができる。なお、以下の演説が行われた会議は、トランプとプーチンの取引押しつけの動きを前に、民衆間の連帯を強化することを目的に、ウクライナ連帯欧州ネットワークおよび、イングランド・ウエールズ・スコットランド・ウクライナ連帯キャンペーンが組織した。同会議には、20カ国から約200人が、そしてウクライナからはソツィアルニイ・ルフ(社会運動)も含んだ労組や市民団体が、開催地のベルギーに次ぐ規模で参加した。また参加者には、EU議会議員、米国の進歩派民主党上院議員を含むいくつかの国の国会議員もいた。(「かけはし」編集部)

 ウクライナのフェミニスト・グループ、ビルキスの一員であるイヴァンナ・ヴィンナが今年3月26―27日、ウクライナ連帯欧州ネットワークが組織したブリュッセル会議で、ウクライナでのフェミニストの闘いに関するワークショップに参加した。以下は彼女の演説の原稿だ。

戦争責任の明確化今こそ必要

 ロシアが戦場でまだあなたたちと戦っていないとしても、それは今、あなたたちの選挙に影響を与え、偽情報を広げ、プロパガンダを売り込んで、情報の分野でそうし続けている。それは、異なった一国のメンバーとしてのウクライナ人の存在を否認し、帝国主義政策を犯罪と認めるのを拒絶している。それは、脱植民地を熱望する諸国を破壊し、性暴力(それはその軍事戦略になっている)で女性を脅し、子どもを拉致し、ホモセクシャルを悪魔視している。
 そのいわゆるリベラルな声さえも、ひとつの目的、つまりロシアを正当化し正規なものにすること、に役立つにすぎない。ウクライナは責められている。つまり、ウクライナにも責任がある、それは挑発してきた、それは自らに担いきれないことをやらせている、などと。そこには、しばしば暴力を受ける人々に向けられるその他のレトリックが付随している。だからわれわれは、過失責任は常に、武器を身につけ国際的に認められた国境(かれらが自ら認めたものも含め)を越えた者たちにある、と思い返さなければならない。
 まさに今、ビルキスのわれわれにとって、女性やクイアーの人々の声を拡大し、暴力と不平等に取り組み、包摂を前進させることで、ウクライナの変革に参加することが重要だ。われわれはこれらの分野で相当な進歩をつくってきた。つまり、女性に禁じられていた職業を終わりにすること、綴り方の女性形使用規則のアップデイト、ヘイトクライムを規制する法、性教育、ジェンダーに基づく暴力との闘いだ。ウクライナは、戦争というまったくの困苦にもかかわらず発展中だ。
 ウクライナ社会は、ジェンダー問題や脱植民地化の必要をますます自覚しつつある。これは、われわれの文化的かつ知的な伝統の論理的な継続であり、その伝統は、ソビエトの占領で中断されたのだ。われわれのフェミニスト運動は、帝国からの独立を求める運動に密接に結びついていた(当時の、ロシア帝国とオーストリア・ハンガリー帝国)。
 しかしながら、ロシアの植民地化への抵抗は、それが中・東欧の多くの諸国にとって問題だったように、生き残りというひとつの問題を残した。ウクライナがもし抵抗しないなら、それが次の犠牲者になることになるからだ。ロシアの宣伝家たちは、テレビのプライムタイムでこれに関しおおっぴらに語っている。

ビルキスの活動とその基本原則


 ビルキス組織の活動家に関する限り、われわれは以下の5つの基本的な価値によって統一されている。
◦フェミニズム(女性の権利を求める闘い)。
◦水平性(階層制と支配の不在、集団的な決定策定、開かれた情報交換、平等な発言)。
◦社会的平等(われわれが注意を向けるのは、傷つきやすい諸グループの権利、社会的公正、公共的影響力に向けたツールの発展だ)。
◦脱植民地化(われわれは植民地主義政策と侵略戦争に反対し、以前に植民地の下に置かれた諸民族の独立と発展を擁護する)。
◦交叉性(われわれは、不平等の多様性、およびそれを生み出している権力関係を心にとどめた上で、差別に関する話し合いを行う)。

 われわれは、女性に対する暴力の記事を集め発表することで、われわれの活動を2019年に開始した。この年報作成の伝統は続いている。われわれは、暴力を糾弾して互いに支え合う空間を作り出す目的で、地方のイラストレーターや写真家にソーシャルネットワーク上で発表物を共有し、その話をウクライナの女性に広めるよう訴えている。
 2024年11月、われわれは映像クラブのFemObjectiveを始め、そこでフェミニストの映像上映、話し合い、討論のため月2回会合をもっている。そこでの映像にはよく知られたものもある。今年の3月8日にわれわれは、ウクライナの制作者のマリシア・ニキチウクによる「木々が倒れる時」の上映会を組織した。そし映像監督の彼女自身が映像の中の女性の性的関心について話した。
 われわれはまたユーチューブ・プロジェクトの「ディア・ダイアリー」ももっている。そしてそれは、社会に関するビデオエッセイ、国際フェミニズムのレンズを通した映像と民衆文化を呼び物にしている。現在まで、8本のエピソードが放送済みであり、われわれのチャンネルには5千人を超える定期視聴者がいる。これらのビデオで取り上げられた話題は、強迫観念化された異性愛、レイプ文化、有毒な寛容さ、さらに他の多くを含んでいる。

女性の声を街頭でもウエブでも


 ビルキスの参加者のほとんどは菜食主義者だ。われわれにとって重要なことは、環境に気を配り、むこうみずな消費主義に抵抗し、あらゆる人に、不要不急のものを取り除き、必需品を無料で受け取る機会を提供することだ。2022年、われわれは「ものごとの空間」という社会的プロジェクトを始めた。
 われわれはさらにふたつのものも発行した。電子版は、われわれの活動紹介解説のインスタグラムで利用できる。「活動家」の標題をもつ最初のものは、前線でわれわれを守り、人道援助を提供し、あるいは他の方法でウクライナ人が生き延びるのを助ける、そうした女性活動家の話を伝えている。自己発行のふたつ目は、ホームレス女性の暮らしに関する話を集めたものだ。これらは、女性のホームレス経験と連帯強化の方法に関する考察だ。
 もちろん、街頭の行動も組織している。われわれは3月8日、リヴィウで「女性ではなく公正を求めよ」行動を共同主催し、キーウでは女性への暴力に反対するポスターを掲示した。数日後には(3月30日)、「トランスジェンダー可視化日」に向けリヴィウでのひとつの行動を計画した。
 われわれのインスタグラム紹介は、自分自身のプロジェクトだ。われわれは、ウクライナの女性とLGBTQI+の人々の権利に関する情報を定期的に投稿している。これには、さまざまな分野(医学、歴史など)におけるミソジニーに関する文書、フェミニストやクイアーの書籍や映像の推薦、イベント案内、またもっと多くが含まれている。われわれのインスタグラムページは、月に23万回以上見られている。われわれは現在6500人以上のフォロワーを確保し、これらがおそらくわれわれのページを代表するわれわれのメンバーだ。

国際的な共同のプロジェクトへ


 われわれは現在、ジェンダー平等計画向け資金手当が右への移行を原因に抜本的に削減されたことに応じ、資金源を探している最中だ。われわれは、われわれの現在のプロジェクトを支え、新しい企画を生み出すために資金を必要としている。たとえばわれわれは、左翼のフェミニスト文献のウクライナ語翻訳を始めたいと思っている。利用できるものが現在ほとんど全くないからだ。われわれはまた、さまざまな職業の女性に対するインタビュープロジェクトも始めたいと思っている。
 われわれは、われわれの組織に対するどんな資金支援も情報提供の支援も大いにありがたく思うだろう! われわれは、ロシア―ウクライナ戦争は今も進行中と、またチェチェン、モルドバ、ジョージアでもそうだったようにロシアは侵略者だと、世界に思い起こさせるために国際的イベントに参加している。その行為は、強制的にロシア化し、当地の文化と知的伝統を破壊することで始まり、次いで、これがこれまで変わらずに続いてきたそこでの流儀だ、と主張する。ひとつの帝国が支配する文化は、専有、価値の引き下げ、そして破壊のいわば武器だ。
 われわれは、ウクライナの中だけではなくこれに対抗するために、今後国際問題を擁護することにもっと焦点を当てることを計画している。われわれが見出していることは、共同の情報プロジェクトをつくり出し、われわれの声を相互に強め合うために、われわれの経験とわれわれの文化の中でわれわれを支援する諸国との結合点を探すことが非常に有益、ということだ。(2025年3月27日)
(「インターナショナルビューポイント」2025年4月2日)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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