パキスタン・インド左翼の戦争に反対する声明
シンドール作戦についてのラディカル・ソーシャリストの声明
2025年5月7日
インド軍はシンドール作戦を開始し、パキスタン占領下のカシミールとパンジャブ地方にある3つの都市の9カ所に対して攻撃をおこなった。その一方で、これもまた非難されるべきだが、パキスタンによる反撃でプンチ[注:インド占領下カシミールにある地域]で死者が出た。こうしたことすべてはきわめて厄介な展開だが、全く予想できなかったわけではない。パハルガムにおけるテロ行為―無条件かつ明確に非難されるべきもの―のあと、モディ政府は、犯人と思われる人物に関する情報を公開し、透明性を確保すべきであった。そして、インドが必要かつ中心的な関与をする国際的な捜査の呼びかけを受け入れ、パキスタン政府が完全な真実の解明に参加すること、そして正義の名の下に犯人を逮捕し処罰できるようにすることを要求すべきだった。もしパキスタンがこのような形での協力を拒否すれば、パキスタンは国際的に被告席に座らされることになり、インドがパキスタンの一般国民に対してではなく、政府に対して取ることのできるさまざまな外交的・物質的行動を正当化することになっただろう。
実際のところ、最も賢明で、パキスタン政府に最も痛手を与える方法は、パキスタン国民とすでに不人気な政府との間にこれまで以上に大きなくさびを打ち込むことである。しかし、このヒンドゥー至上主義政府は、そうする代わりに、インダス水協定を不当にも一時停止し、インド国内にいる(長期ビザを持つ非イスラム教徒を除く)すべてのパキスタン国民に即時退去を呼びかけることで、パキスタン国民の集団的・経済的苦痛を承認するとともに、パキスタンの全イスラム教徒市民による「集団的犯罪」という原則を承認する道を追求している。第一に、これはパキスタン国内の反インド愛国主義を強化するだけであり、パキスタンを支配し、国内のあらゆる進歩的・反体制的な声をかき消そうとする軍事体制に対する国民の支持を高めるだけである。第二に、インド政府によるこの2つの措置は、国内での超国家主義的な熱狂(汎国家的な市民軍事訓練の目的でもある)を煽り、来るべきビハール州選挙[注:今年秋に実施予定で、現在はBJP(インド人民党)を中心とする連合が与党]で、そしてより一般的にBJPに利益をもたらすことを目的としている。正規軍が国境を越えた攻撃を実行することで、インド政府は国際的に違法な「戦争行為」に関与する領域にまで足を踏み入れた。これはバラコットに続いて2度目のことだ(訳注)。それは、このようなことが何度も繰り返される前例となり、われわれの希望に反して、同様の集団的な(つまり非国家主体による)テロ行為がより高度な軍事レベルで起こるだけになるだろう。
さらに、1945年に核時代が幕開けして以降、2つの核保有国が通常兵器で互いに攻撃し合い、核兵器による応酬にまで発展する可能性が恐ろしいほど現実味を帯びてきたのは、南アジアだけである。インドでは、パハルガムでの恐るべき行為の以降、血を求めて泣き叫ぶ人々が数多く存在し、非常に好戦的で、地域に根ざした、声高に叫ぶ右翼メディアも存在する。これは、対外的にはパキスタン、対内的にはイスラム教徒一般に対して、とりわけカシミール人という想像上の敵に対して、戦争を求める声がより強くなる条件を作り出している。パハルガムは、ほとんどすべての政党をBJP支持に回らせた。議会の主要メンバーは、予想された通り、軍事行動を促している。残念なことに、シンドール作戦の開始後、インド共産党とインド共産党(マルクス主義)の両党が発表した声明は、このような軍事行動に反対することを拒否したものだった。2019年にも同じような状況が生じた。そのとき、インドは軍事行動をエスカレートさせて、主権国家パキスタンの国境内の標的を攻撃した。その後、情勢がコントロールできないほどにエスカレートしなかったのは幸運だった。しかし、パキスタンが、インドとパキスタンの双方が勝利を主張できて、事態を収拾させることのできる行動をとる保証はどこにもない。もしそうならないで、戦争の道を歩むことになれば、国境の両側で人命がさらに失われ、戦争を最も望んでいない人々の側に激しい苦しみがもたらされるだけだ。
ラディカル・ソーシャリストは、このような軍事攻撃に反対する。なぜなら、このような行為は、カシミールの根本的な政治的危機―モディ政権によって2019年以降に悪化させられてきた―の核心に迫るものではないからである。われわれは、メディアの大部分と組織化された右翼勢力がイスラム嫌悪の炎を煽っていることを非難するとともに、政府がその面で示した罪責を非難する。このような軍事的応酬は、罪のない人命の損失(双方による国家テロ)はもちろんのこと、インドとパキスタン両国の宗教的・政治的憎悪を強めるものである。われわれは、両国の一般労働者や一般民衆が、軍事的解決を求めるのではなく、平和とカシミール紛争の政治的解決の側に立つことを望んでいる。
(ラディカル・ソーシャリストは第四インターナショナル・インド支部)
(訳注)パキスタン北部カイバル・パクトゥンハ州のバラコットに対して、2019年2月14日にインド占領下カシミールで起きたインド警察隊に対するテロ事件への「報復」として、2月26日にインド軍が空襲をおこなった。
パキスタン・人民の権利党(HKP)声明
2025年4月25日
HKPはパハルガムでのテロを強く非難する。われわれは、テロリズムはわれわれの社会、地域、そして世界のどこにおいても受け入れられないと信じている。
このような暴力行為は、民族間の分断と苦しみを深めるだけである。われわれは、この困難な時期に犠牲者とその家族に連帯して立ち上がる。
われわれは、インドがインダス水条約を停止することによって、不当かつ好戦的な行動をとったと考えている。
この前例のない行動は、過去の紛争を乗り越えてきた長年の合意に違反し、何百万人ものパキスタン国民の水の安全保障を脅かすものである。
われわれはこれを国際法や近隣諸国間の平和共存の規範に反する危険なエスカレーションであるとみなす。
われわれは、インドの支配層によるカシミール人に対する残虐行為と独裁的施策の継続を非難する。われわれは、カシミールの非武装化と、双方のカシミール人の自決権を支持する。
戦争を準備することは、われわれが直面している課題の解決策にはならない。われわれは、国境の両側の進歩的勢力に平和・安全保障・繁栄を推進することを呼びかける。
南アジアの人民には、紛争や不安定さよりも、もっと良いものを手に入れる価値がある。われわれが共有する未来は、対立や敵対ではなく、対話・相互尊重・協力にかかっている。
訳注)人民の権利党(Haqooq Khalq Party)は、パキスタンの労働者、農民、学生、女性、そして民族的・宗教的少数派の闘争を、民主的で社会主義的な政治体制の旗印の下に統一することを目指す大衆運動から出発し、正式な政治登録団体(政党)として、2024年の国政選挙などにも参加している。
THE YOUTH FRONT(青年戦線)
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