フィリピン 前大統領ドゥテルテ逮捕
前大統領ドゥテルテ逮捕
民衆との連帯一層重要
ピエール・ルッセ
ドゥテルテ
が犯した罪
人道に対する罪で告発されたロドリゴ・ドゥテルテが3月11日ハーグ(オランダの)に連行された。そこには国際刑事裁判所(ICC)が置かれている。容疑は、「麻薬との戦争」を名目として彼の支配下で犯された数万人の超法規的殺人だ。
ロドリゴ・ドウテルテは、2016年から2022年まで2期の間フィリピンを統治した。彼は、犯罪と闘うとの名目で、死の部隊の利用を全国規模に拡大した。そしてその利用は、彼が群島南部のミンダナオにあるダバオ市の市長だった時に、彼のトレードマークになっていた。捜査も裁判もなしに殺害された無実の人々、あるいは数知れない「間違い」にもかかわらず、彼はこうして彼の支配を強要し、力強くマッチョな、法からも人道的な配慮からも自由な、攻撃的な性差別を抱えた意識的に庶民を装った男のイメージを押しつけた。
保護は万全の
はずだったが
フィリピンは、2011年にICCの権限がそこに依拠している「国際刑事裁判所に関するローマ規定」に加盟した。ドゥテルテ大統領の下で、フィリピンはそこから離れた(事実上は2018年にそこと関係を断って)。彼は、このように彼は守られていると信じ、間違いなくICCをおびただしく侮辱した。
彼の逮捕はそれにもかかわらず、ふたつの要素の絡み合いによって可能にされた。先ず、ハーグの法廷が、2018年以前に犯された諸行為を理由に行動することは適法、と自ら公表した。そして現大統領の「ボンボン」として知られているフェルディナンド・マルコス・ジュニアが、彼がオランダに連行されることに同意した。
強力な門閥間の連携、「政治的権門」間の連携が、今日フィリピンで政府をつくり、またそれを壊している。大統領をめぐる争いは、マルコスとドゥテルテ間の衝突によって支配されている。それは、それらがかつては連携していたがゆえになおのこと暴力的だ。サラ・ドゥテルテ(ロドリゲスの娘)は、彼女は「ボンボン」を暗殺したかもしれない、と公然と言明しなかっただろうか?
親ドゥテルテ支持者(フェルディナンドの姉に当たるアイミー・マルコスを含む、一族には分裂の可能性とねじくれた野心がある)は今、ICCおよびある種の植民地主義的行為としてその進入に反対の運動を展開中であり、忠誠と民族的プライドからなる強力な感情に訴えている。
門閥間戦闘の中
国内司法の無力
ドゥテルテの大統領任期下で犯された犯罪の規模が彼の逮捕を正当なものにしている(まさにそれほどの多さだった!)。この逮捕がICCによって実行されているという事実は、フィリピンの司法システムが自らそうすることができない(数知れない共犯を前提として、パンドラの箱を開ける危険を前に)と分かったことが原因になっている。元大統領が彼の裁判の間ハーグの拘置所に再拘留されることになるかどうか、はまだ分かっていない。
フィリピンでは、ソーシャルメディアの無制限の利用(トランプ流の)に基づいて根気よく構築された、相当な民衆的支持をなお受けているドゥテルテ支持者によって、政治的対立は今新たな次元を帯びつつある。
1986年蜂起の進歩的な勢いが使い尽くされるや否や、門閥支配の復活が深く有害な作用を及ぼした。エリートの腐敗と労働者階級の従属(怖れと縁故主義を統合した)からなる仕組みすべてが、全面的に動き始めた。住民の一部にとっては、司法システムが労働者階級の住宅街の安全を確保できないと分かるなら、身近にある残忍さは見ないようにしよう、となる。左翼勢力の制度的な空間はなめし革のように縮んでいる。
巨大な不平等
との闘い続く
フェルディナンド・マルコス父は、戒厳令を押しつけたが、それは1986年に打ち倒された。それは大きな民主主義の遺産にはならず、警察と軍は、競合関係にあるふたつの門閥に容認されて、それらの免責に今なお自信をもったままだ。こうして、対立が絡み合っているミンダナオでは、軍の命令は今日、かれらの標的を捉えようとするよりもむしろ即座に射殺することだ。
和平プロセスを求める交渉は停滞している。新旧の事業家たち(ムスリム解放戦線、MILFの兵士出身の)は、山岳民の先祖伝来の領域にある森林と鉱物資源という富を取り上げたいと思っている。そして山岳民の指導者の86人が暗殺されてきた。社会的で領域的な不平等の程度を、また左翼勢力に対する連帯という義務を、ドゥテルテとマルコスの華々しい対立が曇らせることがあってはならない。(「ランティカピタリスト」2025年3月25日より)
▼筆者は、アジアとの連帯に特に関わってきた第4インターナショナルの指導部メンバーで、フランスNPA(反資本主義新党)の1員。(「インターナショナルビューポイント」2025年4月1日)
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