米国 ジョージ・フロイドの殺害から5年
根本的解決までの抵抗徹底を
マリク・ミオー
ジョージ・フロイドは2020年5月に殺害された。それは、フロイドが手錠をかけられ、息ができないと嘆願する中で、ミネアポリスの白人警察官がフロイドの首に彼の膝を9分30秒押しつけていた時のことだった。
フロイドの死は、他の黒人たちがフロイドを解放しろと叫んでいた中で、通りすがりのひとりの若い女性によってビデオに収められた。
彼の殺害は、全国規模かつ国際的な抗議、および警察行為を含む社会的で制度的なレイシズムの再検証に導いた。5年後、フロイドの死が残したものと公正を求める運動、また警察の説明責任はどうなっているのか?
BLMから
反革命へ
ざっくり言うことができる。つまり、いくつかささやかな成果を得ている「黒人の命は大事だ運動(BLM)」と数百万人の意識の変化は今、ドナルド・トランプのMAGA反革命の照準に入れられている、と。
トランプは、多様性、平等、また包摂は「逆差別」であり、「白人ジェノサイド」だと語るような、いわば終生のレイシストだ。さらに、フロイドが殺害されたのは、彼の1期目のことだった。彼は、BLM敵視を含め警察の過剰な残忍さを支持した。
黒人票を頼りとした大統領のバイデンと民主党は、警官を「かれらの仕事をしている」と持ち上げつつ、限定的な警察改革を売り込んだ。ささやかな変化には、ミネアポリス警察本部に向け同意布告を課したバイデンの司法省が含まれた。
フロイドを殺害した警官のデレク・ショーヴィンは州と連邦双方の裁判で有罪を宣告された。トランプがミネソタの有罪宣告に特赦を出すことができない以上、それは意味がある。
トランプの新しい司法省は先頃ミネアポリスと他の都市における同意布告を終わりにした。そしてレイシズムに関する真実の教育を「レイシスト」と呼ぶような反黒人の嘘を今後押ししている。
5年後、大規模な街頭抗議行動を通じて勝ち取られた進歩の多くは、巻き戻されるか非難を受けている。白人至上主義者たちが開けっぴろげにホワイトハウスと下院を動かしている。
黒人の権利拒絶
の長く続く歴史
トランプが大統領として戻ってすぐ、彼はワシントンDC市政府を強いて、ジョージ・フロイド広場を撤去させた。
しかし、黒人の権利に反対して白人の特権を守る今日の開けっぴろげさは新しくはなく、米国史のほとんどの間存在したことへのいわば回帰だ。黒人の米国人が完全な市民として受け容れられると希望をもつことができたのは、4百年の中でふたつの時期にすぎない。つまり、南北戦争後の20年、そして公民権革命に続いた50年だ。
警察によるレイシスト的暴力と実体的改革――それに関してはこの5年、ほとんど実現しなかった――の必要については、黒人コミュニティの中に幅広い一致がある。しかしそれは、実際には決してうまくいかないだろうと承知した上での、改革に対する民主党とリベラルによるリップサービス的支持になった。
マルコムXとマーチン・ルーサー・キング・ジュニアの両者とも、1960年代に、白人の人種隔離主義者がかれらのレイシズムに関しどれほど開けっぴろげだったかを指摘した。その中でほとんどの白人のリベラルは黒人指導者に、原理的な変革を求める闘いを「緩める」よう説教した。
ミネアポリス
今現場で何が
フロイドが殺害されたミネアポリスの現場は、5月25日の記念日に町の外からやってきた多くの記者に加わったガーディアン紙のメリッサ・ヘルマンによれば、彼の遺産をどうすれば最良の形で引き受けられるか、をめぐる張りつめた論争に直面している。
ジョージ・フロイド広場と名付けられた地域であるミネアポリスのシカゴアヴェニューと38番通りの角には1枚の大きな壁画がある。
「この5月、ロジャー・フロイドとトーマス・マコーリンは、ミネアポリスの38番通りとシカゴアヴェニューを歩き通し、『民衆がいるところには力がある』と書かれた大きな看板がある使われていないガソリンスタンドとひとつの庭のある環状交差点を通り過ぎた」、「ジョージ・フロイドの殺害から5年すぎた今、彼が亡くなった広場の未来は、市議会が開発計画を審議している中で不確実なまま残されている」、「マコーリンとロジャー・フロイドはこの地域が、世界的な人種的公正の運動を発動した歴史的現場として記念され、また警察の説明責任を求める元気を奮い起こす呼びかけとして役立てられて欲しい、と強く願っている」、ガーディアン紙の記者はこう書き、「ミネアポリスは黒人が所有し活動を続けたミネアポリスの最も古い新聞の、また1930年代から1970年代までは20以上の黒人所有企業の本拠だった」と付け加えた。
2020年の抗議運動の間ミネアポリスの広場で調査を行った、アリゾナ州立大学の「労働と民主主義センター」所長のマイケル・マッカリーは、過去5年の間この市はこの広場を使ってどう前進すべきかで分裂してきた、と語った。彼は、2020年から2021年までの通りの閉鎖を、コミュニティに対し変形可能性を残すものと見ている。しかし何人かのコミュニティメンバー、市議会議員、またフロイドの家族たちは、急いで癒しを済ませては決してならない、と語っている。
この広場部分が含まれている第9区の市議会議員のジェイソン・チャベスは、「今後決して忘れられないわが市の歴史の中にあるひとつの歴史的構成要素」としてそれは認められる必要がある、と語った。そして「2020年の夏にここで起きたことをわれわれは消し去ってはならない」と念を押した。
実現すべきは
歴史的な清算
『黒人企業』誌のケカ・アラウジョは、多くのアフリカ系米国人の感情を以下のように説明した。つまり「予防できた殺害のフロイドの悲劇から5年がすぎて、真正の説明責任と公正な司法を求める闘争は結論を見ることからはほど遠い。実際、これまで以上に執拗な急迫さを伴って、どうやらそれが再び始まりそうだ……」と。
さらに、「2020年5月25日は、われわれに共有された歴史における正真正銘の碑銘として今もとどまっている。それは、人種的不平等と法執行による不正行為に反対する世界規模の蜂起に火をつけた。そしてそれは、原理的な清算だけが直すことができると思われるものなのだ」、「確かに、今年の夏の記念日が来る中で、憤激と体系的な徹底的見直しを求める切迫した叫びがこもった当初の熱情は、主に心配になる静寂に、しのびよる退潮に屈してきた。そしてそれは、フロイドの死を導いた諸条件そのものが暗黙のうちに再現する余地を与えられつつあるのでは、と多くの者に疑わせたままにしている」と。
システムの
転覆不可欠
そしてアラウジョは「歴史が一貫してわれわれに思い起こさせるように、正義への道が直線的であることはまれだ。連邦レベルでの包括的な警察改革を求める初期の勢いは、システム化されたレイシズムという概念化そのものと説明責任を求める要求に反対するしつこい対抗潮流、またはっきり見える押し戻しに迎えられ……立法努力が二大政党の牽引力獲得に失敗することで大部分停止した」と書く。
彼と他の多くの者が見極めていないことは、国家が実行しているレイシズムや警察の暴力や白人至上主義の根源、すなわち資本主義システムだ。このシステムがひっくり返されないならば、警察の暴力を含むレイシズムに終わりは決してあり得ない。
システムのその清算が起きるまで、われわれは闘い続け、抵抗し続けなければならない。そしてわれわれはそれを、臆することなくしっかり前を見つつ行わなければならない。それが、2020年5月25日からの遺産が語る最高の教訓だ。黒人のコミュニティは、あらゆる他の被抑圧住民よりもこれをもっとよく分かっている。(「アゲンスト・ザ・カレント」誌より)
▼筆者は、退職航空整備士で、労組と反レイシズムの活動家。「アゲンスト・ザ・カレント」誌編集顧問でもある。(「インターナショナルビューポイント」2,025年6月4日)
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