米国　ディサンティス、大統領選共和党予備選へ

札つき極右がトランプに挑戦
選出されれば大惨事

ダン・ラボッツ

　２０２４年にドナルド・トランプは共和党の指名者になるのだろうか？　先週立候補を公表したもうひとりの共和党極右のロン・ディサンティスは、党予備選でトランプを負かす可能性はあるのだろうか？　そして彼が勝利した場合、それは選挙と米国に何を意味するのだろうか？

心からの極右
真正エリート
　数人の共和党候補者が今前大統領のトランプに挑戦しようとしている。しかし　先頭を行く挑戦者は、トランプその人と同じく極右であるフロリダ州知事のディサンティスだ。トランプはカリスマ的な右翼の切り札だが、ディサンティスは心からのまた体系的な極右政治家だ。彼らのスタイルは違っているとはいえ、彼らの政治は事実上まったく同じだ。
　ディサンティスは真正のエリート資格証明書をもっている。彼はエール大学を卒業、ハーバードで法学を学び、15年間米海軍で従軍し中佐になり、次に米司法省検事として勤め上げた。次いで下院に選出され、右翼のフリーダム・コーカスの創立メンバーに、またトランプ支持者になった。
　彼は、地球温暖化と闘うためのいかなる増税にも反対した。またバラク・オバマ大統領の「手頃な医療ケア法」を廃止するために活動した。銃コントロールにも、進歩的な移民法にも反対した。さらに２０１６年の選挙では、トランプとロシアの介入に対する特別検事捜査にも反対した。
　ディサンティスは２０１８年に、移民排除のための国境の壁建設および「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」というトランプの政綱に立脚してフロリダ州知事に立候補した。そして勝利した。

政治的実績も
極右を裏書き
　新型コロナパンデミックの中では、ディサンティスは、マスク、自宅待機命令、ワクチン接種義務のような方策に抵抗し、諸企業がワクチン接種証明を求めることを禁ずる法に署名した。結果としてこの州は感染と入院の大波を経験した。連邦経済刺激基金および減税と組になった彼のいつも通りのビジネス政策は、ある種のにわか景気経済に導き、彼は民主党の挑戦者に対し19・４％という歴史的な大差をつけ知事に再選された。
　ディサンティスは彼のイデオロギーを「反覚醒」と特徴づけている。彼は「批判的人種理論」に、つまりレイシズムの歴史を教えることに反対し、反ＬＧＢＴＱの立場をとり、スポーツからトランスジェンダーの少女を排除するために活動し、加えて、学校で性的指向やジェンダーについて討論することを禁じるような悪名高い「ゲイを語るな」法のために活動した。
　フロリダ州オーランドにディズニーワールドを所有しているウォルト・ディズニー社がこの法に反対すると、ディサンティスは、この企業の特別独立行政地区を終わりにすることで応じ、今ディズニーとの一連の訴訟に熱中している。
　ディサンティスは、移民に対する信じられないような宣伝的人気取り攻撃として、テキサス州のオースティンに彼の工作員を送りベネズエラ人難民申請者を集め、彼はその後このベネズエラ人たちを、マサチューセッツ州のリベラルなマーサズ・ヴィニヤード島に飛行機で向かわせ、そこでかれらを放り捨てたのだ。
　ディサンティスはさらに、妊娠６週後の中絶を違法にする法にも署名を終えている。そして、略奪者を銃撃することを含んだ「あなたの地所を守れ」法を拡張して、学校に武装警備員を配置することを求め、武器を隠してもつことを許す法にも署名を終えている。

強固な支持基盤
と若さが強みに
　最新の世論調査によれば、共和党員の55％はトランプを支持し、ディサンティス支持は20％にすぎない。しかし後者は、支持が各々僅か１％から５％である共和党候補者の残りをはるかに引き離している。もし何らかの理由で共和党員がトランプから離れる――たとえトランプが重罪で起訴されたり、有罪判決を受けることがあるとしても、ありそうには見えない――ことがあれば、現時点で、ディサンティスは先頭を行く候補者になるように見える。
　80歳であるジョー・バイデン大統領を相手とする候補者として、ディサンティスの44歳という年齢は大きな利点になると思われる。ディサンティスはまた、決定力をもつスイング州であるフロリダ州で自前の代議員の支持を確保している候補者になるとも思われる。しかし、無所属の有権者が結果を左右することになる鍵を握る州では、彼は、多くの女性、ＬＧＢＴＱの人々、黒人、またラティーノを遠ざけていることで、多数を獲得することが難しいと気づくだろう。
　彼の極右の実績が明確にしていることは、彼の選出はこの国の未来にとって、また特に勤労民衆にとって惨事になるだろう、ということだ。（２０２３年５月28日）（「インターナショナルビューポイント」２０２３年６月２日）　　　