米国　露わな民主党内矛盾

イスラエルがバイデンの急所に

ダン・ラボッツ

　３月28日にニューヨークで民主党内部の緊張と矛盾が諸々全面的に露わになった。バイデン大統領は一方で、米国政治史上における他のあらゆる単一での資金集めイベントを上回る、２５００万ドルを集めた。それでも同時に彼は、パレスチナ人に対するイスラエルの戦争への米国の支援に関して、「あなたの手は血に汚れている」というようなことを唱和する抗議の人々によって、繰り返し発言をさえぎられた。
　バイデンは、頂点における党の団結のいわば誇示として、元大統領のビル・クリントンとバラク・オバマと共に現れた。しかしそれも、党の反乱する下部党員から現れた抗議の人々が、ガザにおける「ジェノサイド」に対するバイデンの支援とかれらが呼ぶものに反対して声を上げるのを止めることはできなかった。
　このイベントには約５千人が代理ではなく本人として参加した。しかしそれは、最低のチケットが２５０ドルで販売され、くつろげるレセプションへの入場に25万ドルから50万ドルかかったイベントなのだ。３人の大統領と共に映る写真の費用は10万ドルだ。これまでのところ、バイデンのキャンペーンと民主党全国委員会は１億２８７０万ドルを集め終えたが、一方トランプと共和党が集め終えたのは、９６１０万ドルだ。
　トランプは、彼の選挙キャンペーンのためだけではなく、法廷費用のためにもカネを集めなければならない。後者は、彼が直面する数件の刑事裁判、および彼が負けた民事訴訟での罰金に対するものであり、その全部は数百万ドルになる。
　昨週、彼が設立したソーシャルメディア企業の「トゥルース・ソーシャル」は、１株当たり50ドルでナスダック株式市場にはじめて上場され、総額68億ドルの価値になった。とたんにトランプの純資産価値は75億ドルと評価されている。
　しかしながら、多くはこの株式価値は今後崩壊すると確信している。「トゥルース・ソーシャル」はソーシャルメディアでの存在感が小さく、これまでに購読者とカネを失い続けてきたからだ。したがって、彼が一時今のように裕福だとしても、トランプの財政は安全ではない。そうであっても彼は、共和党の指名を勝ち取り、党を絶対的に支配し、熱に浮かされたように忠実な基盤を確保している。
　バイデンの強力な資金的地位は、一定の民主党員から今受けている支持の腐食という問題を解決するわけではない。その腐食の理由は、即時の停戦を求め、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルのジェノサイド的戦争への米国の支援を終わりにすることを、彼ができずにいることだ。何しろガザでは、３万２千人が殺され、そのうち１万３千人が子どもで、他に数千人は疑いなく瓦礫の下で亡くなり、７万５千人が負傷、１７０万人が避難を強要され、数十万人が飢えているのだ。
　イスラエルは西岸でも、制服を着たイスラエルの入植者がパレスチナ人への暴力的な攻撃に取りかかる中で、これまでに数百人のパレスチナ人を殺し、大量逮捕を実行し、新たに不法な入植者の道路と前進拠点を設立してきた。
　米国務長官のアントニー・ブリンケンはイスラエルに、パレスチナ市民を保護し、人道援助を利用できるようにするよう、繰り返し訴えてきた。米国は、ラマダンの残りの間の即時しかし一時的な停戦、また10月７日の攻撃における人質の残りをハマスが解放することを求める、国連安全保障理事会における先頃の投票で棄権した。
　それでも、バイデン政権がラファ攻撃というイスラエルの計画に反対し、明らかにネタニエフ政府を邪魔してきたとはいえ、バイデンは、イスラエル政府への彼の支援を止めてはいず、より多くのジェット機と爆弾を認可し続けているのだ。
　親パレスチナのデモは米国中でいくつも、停戦と米国の対イスラエル支援の取り止めを求めて続いている。全体としての米国人はイスラエルの行動に反対している。民主党支持者の場合その差はより大きい。
　極左は分裂している。いくつかの抗議行動は「平和を求めるユダヤ人の声」や米国民主的社会主義者によって先導されているが、他は、社会主義と解放党のような陣営主義グループとスターリニストにより組織され、それらすべての中に見出されるパレスチナ人グループが一体になっている。
　いずれにしろ、ギャラップ世論調査によれば、18歳から34歳の若年成人が、イスラエルに対する見方で、２０２３年の好意64％から今日の同38％へと、最大の下落を示している。それこそがバイデンが抱える問題であり、彼がどれほどのカネを集めようが答えにならない。（２０２４年３月31日）（「インターナショナルビューポイント」２０２４年３月31日）　