中東危機とフィリピンについて

民衆の連帯と統一戦線建設へ
政治的、経済的、社会的移行の綱領が必要だ
IIRE・マニラ

 世界秩序は現在、中東における破局的なエスカレーションと格闘している。イランの戦略的な標的に対するイスラエルと米国の協調した今年2月28日の攻撃によって、その理由もないままに始められた紛争は、急速に多面的戦争へと進展した。イランはそれに対抗して、この地域の米軍基地を標的にすることで報復した。イランの最高指導者の死とその後のホルムズ海峡封鎖によって、フィリピンは、その市民の暮らしといのちに基づき建設されたのではなく、今やそれで煽るよう強いられているシステム、世界的な戦争機械の板挟みの中にいる自身に気づいている。

ハイジャックされたイラン人の抵抗


 イランの人民は何十年もの間、アヤトラたちの構造的な専制に反対して有機的で厳しい国民的な闘争――世俗主義、経済的尊厳への切望と盗まれた市民的自由の回復に根をもつ運動――に取り組んできた。
 しかしながら、この国内的進展は、米・イスラエル連合の攻撃によって繰り返し「ハイジャックされ」ている。体制転換の主要なツールが、イランの街頭の声を支持することから飛び交う爆弾と標的を定めた暗殺へと移る時、それは意図せずとも、そのもっとも有力な生き残りの手引きをイスラム共和国に手渡しているのだ。
 体制は、正統性の国内的危機を外国の侵略に反対する防衛戦争に転換することで、抑圧者から保護者に回転できる。それは権力を固めるために、1953年のクーデターからイラン・イラク戦争(1980年代)の「神聖な防衛」にまで延びる、外国の干渉に対する深く定着したイラン人の記憶を武器にしている。
 この高度警戒的軍国主義の空気の中で、イランの若者の微妙な要求は飛び交うジェット戦闘機と爆弾の轟音の下で沈黙させられている。外部からのあらゆる爆発は、内部ではもっと多くの絞首台に向けた正当化になる。体制はあらゆる抗議参加者に、権力を求める市民としてではなく、シオニストの支援者や西側の工作員として濡れ衣を着せるのだ。
 外国の攻撃というこのサイクルは最終的に、イランの人民を解放しない。それは、彼らを逮捕する者をがっちり守るのだ。それは、外国の脅威を示すことで経済崩壊や社会的抑圧への説明責任を回避する余地を神職者の指導部に与えるような、包囲の心性を生み出している。この連合は、力を通して体制を解体しようともくろむことで、アヤトラの土台を内部から腐食させるという困難な仕事をすでに行っていた非常に有機的な運動を、効果的にハイジャックした。

世界経済へのインプット遮断


 事実上世界の主なエネルギーの動脈の役を果たしてきたホルムズ海峡の閉鎖に続いた巨大な供給サイドのショックから、世界経済は今よろめいている。世界のもっとも重大な海の要衝の封鎖が2週目にはいる中、経済的転落はその速度と量の両面で、1973年の石油禁輸をしのごうとしている。
 統計は今よろめいている。ブレント原油価格はバレル当たり70ドルの範囲から120ドル近くまで達し、最初の96時間も経たずに世界の株式における3兆2千億ドルもの大量出血に引き金を引いた。東京やソウルのようなエネルギー依存の活動拠点では、市場の指数は、エネルギー枯渇の現実性が広まり出すにつれ、8%ほども落ち込んだ。世界の液化天然ガス(LNG)の20%が今立ち往生させられていることにより、スポット市場価格は30%急騰し、欧州の家庭暖房から窒素肥料の世界の生産まで、あらゆるものに脅威を与えている。

フィリピンへの原油危機の影響

 フィリピンの場合、今回の地政学的な危機は遠くの一面記事ではなく、この国の利益には直接かつ体系的な脅威になる。2026年3月によって、国はのるかそるかの経済非常事態に入り込んでいる。大雑把に原油の98%を輸入に依存し、そのほとんどが中東に由来するフィリピンは、現在史上もっとも高い週当たり価格急騰を経験中だ。
 ディーゼル油、ケロシン、ガソリンの1リットル当たりの価格が今週各々24ペソ、38ペソ、22・80ペソだけ上がると予想され、伝えられるところでは石油企業は、国内交通部門の即刻の崩壊を防ぐための価格引き上げでびっくりさせている。戦争後の週、1リットル当たりで、ケロシンは78・90ペソ、ディーゼル油は55ペソ、ガソリンは61ペソだ。これらの上昇は確実に諸商品と民衆の暮らしにとっての必需品の価格に影響する。
 しかしながら経済は、フィリピンペソが対ドル60ペソという為替レートの閾値に近づいている中で、「二重の致命的悪」に直面している。この通過価値下落は、膨れあがる輸入請求書を満たすためドル準備金を国家に枯渇させ、それは次にはさらにペソを弱くし、その後の燃油輸送コストをつり上げるのだ。
 それはまた、ドル通貨を基礎にしている国の対外債務(外国資金からの35%)に深刻な影響を与える――それは、ドル価値の騰貴が自動的に対外債務の増加になる、ということを意味する――。これは、通勤・通学者と企業に対し等しく痛手となるインフレのサイクルをつくり出す。その上企業への重荷を和らげることをめざして提案された料金引き上げは、不可欠なサービスのための比例を失した財政上の重い負担を日給労働者たちが担うことを強いる形で、事実上これらの費用をもっとも脆弱な層に移す。
 心にとどめるべきことは、コロナパンデミックの損害から労働者が回復するのを助けることを意図した、全国規模の全部門的な200ペソ賃上げ提案が、今なお議会両院では審議されていないことだ。
 価格上昇以上にこの危機は、2026年に予想された海外フィリピン人労働者(OFWs)の365億ドルにのぼる送金を危険にさらしている。これは、湾岸にいる240万人以上によって提供されている命綱なのだ。
 米国、イスラエルとイラン間の敵対がエスカレートするにつれ、240万人を下らないOFWsは、フィリピン人の消費の主要支柱を脅かすような、潜在的可能性としての国外追放や本国帰還に直面している。その上で、労働力輸出経済へのこの国の依存、および2025年に中東から64億8千万ドル(18%)を数えた送金への依存は、今や弱みになっている。
 今多くが完全な嵐と呼んでいるものへの対応の中で、フィリピン政府は公式に経済警戒事態を発するにいたった。今実効化している非常方策には以下が含まれる。つまり、管理職業務では義務的な週4日労働、公的部門の空調に対する「24度ルール」を含む厳格な省エネ規則、そして、ドバイ原油が80ドル以上にとどまる場合燃油取引税を保留する非常権限を大統領に与える立法の処置だ。
 普通のフィリピン人にとってのすぐさまの現実は、基礎的な商品、電力、交通、の費用の急速で苦しみを増す上昇だ。全国的インフレは今7・5%という「最後の審判の日」的な予想に向かう軌道を辿っている。その間、2026年に対する世界の成長率予想は早くも3・2%から2・2%に引き下げられている。封鎖が1ヵ月以上続くならば、それにさらされたアジア経済は、それら全体の成長率の2%までもが蒸発するのを見るはめになる可能性もある。
 無視、過小投資、貿易自由化からすでに「死にかけている」国内農業部門は、この危機が長期化する場合、崩壊が差し迫る状況に直面する。僅かな者とより大きな国だけを富ませている資本主義的発展への依存は、広大な自然資源が搾取され、フィリピンが世界の大国の競争の中で「歩」として利用されることに余地を与え、地獄への転落路に導いている。

特に厳しいミンダナオの危機


 フィリピンのミンダナオ、および「ムスリムミンダナオ内バングサモロ自治地域」(BARMM)の民衆の暮らしにおける危機は、容赦のない一連の気候災害からの壊れやすい回復段階に今もいる中で、かれらに巨大な経済的重荷を背負うことを求め、かれらを特に複合的な闘いへと追い込んできた。
 2025年の最終四半世紀には、破局的なできごとが集中した。始めは11月のタイフーン・ティノ、そして巨大なスーパータイフーン・ウマンで、それらは合わせて、51億6千万ペソ以上の被害を農業に与え、ミンダナオ川低地を記録破りの洪水の中に沈めた。この環境的猛襲は、カラガ中の土地を水浸しにした1月の熱帯性嵐アダという形で2026年はじめへと続き、2月にはタイフーン・バスヤングが続いた。後者は、北部ミンダナオに百年に一度(専門家によれば)の降雨をもたらし、12人の死を引き起こすと共にスルガオ・デル・スルだけで14億8千万ペソの被害を追加している。
 したがって、7・5%のインフレ予想とリットル当たり24ペソの上昇予想は、安定した経済に行き着くことはなく、すでに農業の収穫がぼろぼろにされた住民に降りかかる。そしてそこでは、労働者が低賃金と闘争中であり、生活条件が不安定だ。
 ミンダナオと国中の農民の場合、燃料の枯渇や不足は、感慨や機械化を高すぎるものにし、すでに困難な暮らしをさらに困難にしつつ農業資材の価格を確実に高くするだろう。他方漁民は、1回漁に出る費用が今可能と思われる漁獲を超えている中で、一層陸に上がっている。
 地方のインフラと農地改革への投資ができないなかで農産物輸入を自由化した諸政策が、フィリピン農業の回復力を1歩1歩引き下げてきた。そしてそれが、農民を世界市場の諸々のショックに危険なほど無防備にしている。
 高まる混乱の只中で、BARMM政府は、現在中東にいるバングサモロOFWs25万人以上の安全確保に向け全力を傾けることに急いでいる。かれらの多くは、ドバイやクウェートのような高度警戒ゾーンにいるのだ。
 首相官房(OCM)と労働省は、このような変化の激しい地域にいる親類との接触を失った家族に補給や資金のライフラインを提供するための、非常時実施要綱を作動させ、国の移住労働者局(DMW)および外事局(DFA)と協力している。3月8日現在、DMWはこの地域から公式の帰還要求が1979人と報告した。そこには、クウェートの633人、バーレーンの312人、アブダビの285人、ドバイの231人、カタールの173人、サウジアラビアの90人が含まれる。
 しかしながらこれらの数字はしばしば心に浮かぶ疑問を提起する。これらの地域内にいる2百万人以上になるOFWsのうち、ほんの一部しか帰還を求めていないのはなぜか、だ。これは必死な熟慮を暗示している。すなわち、多くの労働者は経済的不確実さや故国に戻った際彼らを待つ機会の不足よりも、紛争地帯における身体的危険の方を選んでいるのかもしれない。

この危機が求めるものは?


 フィリピンは、米中競合関係の板挟みの中に捉えられている。フィリピンが米軍基地の受け入れ国であると共に、中国の経済的パートナーとなっているがゆえに、貿易ルートにおける利益を求めて競合するライバルという、米国と中国の姿勢が原因で、存在に関わる安全保障上の脅威に直面しているのだ。この地政学的緊張は、自立的な外交政策と優先性におけるひとつの移行を必要とする。政府は、採掘経済の先へ進み、代わりに国内生産と戦略的貿易ルートに対する主権を守るような、国の工業化、および環境的移行を優先しなければならない。
 現在の危機は、極度の緊急性に基づく現実的で包括的な政治的、経済的、社会的移行の綱領を求めている。環境と政府の金庫を荒らしている門閥と国内の専制者で特徴づけられた既存のエリート主義的な政治の仕組みは、人民を守ることができない。具体的な民主的綱領――単なる手続き的改良から、政治的かつ政治経済的システムとその機構の総体的なシステム転換へと動く――を前進させる必要がある。
 この危機は間違いなく、われわれの政治的ビジョンと経済的ビジョンを明瞭に表現する創造的なやり方を見出し、住民大衆につなげるよう社会運動に迫る。今こそ、持続可能な開発と環境的なオルタナティブに関する民衆的な議論を中心にすえる好機だ。これは、一方で環境的略奪と官僚主義的無視を許す制度化されたシステム、および政治的門閥を解体しつつ、たとえば石油の規制解体法、貿易自由化、さらに鉱業法の無効化を含んで、より広範に広がる改革キャンペーンを実体化できる。

どのような土台に基づく連帯か?


 今回の危機はわれわれの国の範囲を超えて広がるひとつの応答を求めている。これは、国境をまたぐ急進的な人民対人民の連帯を求める。燃料上昇に反対するフィリピン農民の闘いは、爆撃に反対するイランの女性やパレスチナの子どもが直面する、またその税金が軍産複合体に向けられている米労働者が直面する、その闘いと同じだ。
 われわれは、伝統的に貿易条件を命じる企業や金融仲介者を迂回し、占領された国民と帝国主義国の国民双方の労働者階級と社会運動間の、急進的、直接的な連携を必要としている。われわれは、被占領国と帝国主義諸国の労働者と社会運動は経済的交換と連帯を直接に確立しなければならないとはっきり主張することによって、水平的協力を支持し、世界的資本の搾取的論理を拒絶する。
 このモデルの中で、バーター交易と深く根付いた生産者―消費者間連帯がもつ歴史的な効用に基づきモデル化された産物交換が、変動の激しい世界市場に対する回復力の強いオルタナティブとして今日急場しのぎにつくられる可能性がある。消費行動を生産者の主権に対する政治的な関与へと変えよう。この連帯は、共同体的なウェル・ビーインブと集団的な自律性を利潤蓄積に優先して、相互支援に向けた草の根のツールとして機能する。オルタナティブの交易が強化されなければならない。
 真の連帯は、われわれの社会経済的、政治的目標の明晰さを求める。われわれは、セクト主義の誘惑、および運動が一時的なテコを求めて互いに出し抜こうとする衝動を拒まなければならない。われわれはそれに代えて以下を基礎に統一戦線を建設しなければならない。
● 戦争と抑圧から利益を引き出すエリートたちに反対する、「被占領国」国民と「侵略国」国民両者の貧困層と民主的で進歩的な諸勢力を統一することにより、底辺からの反戦の連帯。
● 民衆、自然、そして貧しい者たちは、軍需企業や資本家の利益の支えではなく、われわれの移行の中心、との認識。
● 外国と帝国主義の干渉に反対する闘いの、国内の専制に反対する闘いとの統合。
 最後に、時代は、批判の先へ、民主的な統治、気候の正義、食糧主権、環境的転換、そして強化された底辺からの連帯に向け進むよう誘っている。われわれはゼロから始めるわけではない。つまり、何十年もの間、諸々の社会運動、先住民衆、また活動家たちは、それらの活動を環境と人間の必要に基礎づけて、利潤に駆り立てられたエリート主義のモデルに対するオルタナティブを開拓してきたのだ。
 この任務の中心は、人々により公正な政治秩序に向かう移行の先頭を切るための力を与えるような、労働者階級の集団的意識の養成だ。
(訳注)長文であるため一部を割愛している。またIIRE・マニラは、第4インターナショナルの研究教育機関であるIIREの東南アジア版。東南アジアの社会運動の交流、連帯、強化をめざして、フィリピン支部の同志が中心になって同地域の活動家による討論を毎年組織している。 
(「インターナショナルビューポイント」2026年3月19日)

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