英国:首相辞任を受けて 対バーナムの左翼の対応とは

デイヴ・ケラウェイ

 英国で、地方選惨敗を受け辞任圧力が高まっていたスターマーがついに辞任に追い込まれた。下院補欠選挙で次期党首候補として党内人気の高かったバーナムが下院議員になり党首選に名乗りを上げる資格を得たことによる。いずれにしろこのことで、英国の政治状況は新しい局面を迎えた。以下は、この状況の可能性と限界を分析しつつ、英国左翼の今後の方向を検討している。(「かけはし」編集部)

労働党リセット、果たして

 労働党党首、したがって首相としてのキア・スターマーの辞任を受け、前グレーター・マンチェスター市長のアンディ・バーナムが競争なしに先のふたつのポストを引き継ぎそうに見える。「戴冠」として知られる手続きだ。
 バーナムについて左翼の立場をとる人々が何を言おうが、ひとつのことははっきりしている。労働運動の活動家たちは、スターマー/マクスウィーニー(ダウニング街首席補佐官)体制下で葬られた諸課題を今討論中、ということだ。
 ダレン・ジョーンズ(首相首席補佐官で親イスラエルの右派議員:訳者)とレイバー・トゲザー(現名称がシンク・レイバーの労働党勝利を掲げ大胆かつ核心的アイデアを標榜するシンクタンク:訳者)は今、エド・ミリバンド(党首経験もある有力下院議員:訳者)がネット・ゼロの政策を携えて財務相になることに反対してロビー活動を展開中だ。
 他方、ホロコーストからの難民として英国にたどりついた古参の仲間であるアルフ・ダラス(上院議員)は、シャバナ・マフムード(現内相)を解任し、彼女の反移民政策を破り捨てるよう本日訴えた。これは、難民への表現として政治家たちが使ったぎょっとするような言葉のいくつか、たとえば「侵略者」、「見知らぬ者たちの島」、「わが国をバラバラにする」などをわれわれが過去のものにできるなら、労働党のリセットの画期になる。
 しかし、世論を分断する内務相が先頭に立ったような、PLP(議会労働党、下院議員総体を指す:訳者)の多くが支持しない諸政策をわれわれの下に持ってくるようなことではリセットはあり得ないのだ。

「実りの多い国家」の行く末は?


 「メインストリームに発する実り多い国家」の名称をもつひとつの政策文書――バーナムの権力到達推進を助けてきた労働党の積極的少数派――はわれわれに、わが社会に私有化が加えてきた損害に対する痛烈な批判を提供している。それは、それ以前スターマーと彼の連携勢力が全面的に拒絶してきた変革に向けた改良主義者の枠組みを概括している。たとえば、スターマーの諸閣僚は水道を公有化に戻すことを一貫して拒否してきた。労働組合会議(英国の労組ナショナルセンター)指導者のポール・ノヴァクは、バーナムを歓迎し、勤労民衆を利する本物のリセットを声を大に求めた。
 現在の熱波が今、北海におけるさらなる石油探査に関する論争を、主要労組内とそれらの間に巻き起こしている。ユナイト(英国の有力労組:訳者)指導者のシャロン・グラハムは、ミリバンドが財務相になることを攻撃し、彼について職の創出を巡ってワナをかけていると話すことまで進んだ。もちろん、ネット・ゼロ経済は強力に成長中であり、北海の化石燃料産業を徐々に終わらせる中での職の喪失に容易に置き換わることが可能だ。
 確かにバーナムは、スターマー政権との何らかの種類の連続性に完全に旋回する可能性もある。しかし少なくとも、われわれが活動する政治空間は変化を遂げている。
 経営者と右翼報道は、労働党右派やその機構と並んで、今どやどやと押しかけ続けている。たとえば、かれらは財務相にストリーティング(現保健社会福祉相:訳者)を後押しし、エド・ミリバンドを中傷している。ホテル業界の大者であるロッコ・フォルテは、特にミリバンド阻止を求めた。
 バーナムが「実り多い国家」にある提案のいくつか、あるいは全部を取り入れるなら、彼は確実に、公共支出と増税を制限したがっている国内・国際資本からの攻撃の下に置かれると思われる。早くもバーナムは、キャピタル・ゲイン課税とカネを集めるためのスターマーチームが拒絶した他のいくつかの提案、に向けた変革を漂流させている。

バーナムの意味検討なぜ重要か


 多くの社会主義者は、資本主義に対するエコ社会主義的オルタナティブを構築するため、大衆運動に参加し、それを指導できる党の建設に向け、かれらの使命を、同じ意見の人々と活動することと理解している。しかし社会的な経済的で政治的な勢力としてわれわれがその変革を行う条件は変化する。
 われわれの理念に引きつけられるかもしれない人々は、さまざまな潮流からやって来るかもしれず、またさまざまな問題をめぐって決起するかもしれない。それらの急進化する人々が誰であるかについて、われわれには全く選択の余地がない。かれらに向け動かなければならないのはわれわれなのだ。
 われわれの語りは、彼らの主張や言葉と交叉する必要がある。われわれは、全体とすればわれわれの右側にいる人々と共に活動しなければならないのだ。
 かれらなりの永遠の手法と決定版的綱領をもつウルトラ左翼セクトの場合、何ごとも変化しない。かれらを除く全員を糾弾し、かれらの党を建設すると。
 コービンの権力到達の下でわれわれの多くは労働党に加わった。緑の党内の急進化は、5年前にはわれわれが行わなかったようなやり方でかれらとわれわれが関係を結びつつあることを意味している。
 スターマーの終わりとバーナム構想の始まりは、コービンの繰り返しではなく、それが意味するのは、われわれがあらためて調整しなければならない、ということだ。彼がもし本当に累進課税や比例代表制、また地方自治体への新たな権限移譲あるいは公益事業私有化の終わりを提案するならば、われわれは応じなければならない。われわれは力を貸すべきものをもっている。
 われわれは、労働者階級の人々の暮らしを改善するあらゆることと結びつく。同時にわれわれは、パレスチナ、トランプ、国防支出、移民、緑の諸課題の放棄、民主的な権利やトランスの権利、これらに関するスターマーとのあらゆる連続性に反対し厳しく非難すると共に運動を推進する。

対バーナム対応の誤った立場


*彼はスターマーと同じに過ぎない

 「レイバー・トゲザー」が今なお実質的に支配し、政策のやり方は全く変化せず、労働党機構がバーナムの公約すべてに関するさらなるUターンに向け彼を吸収し管理するだろう。ものごとは勤労民衆にとって実質的にほんの僅かも改善せず、彼は改革党政権に向け扉を開き続けるだろう。われわれのただひとつの任務は、彼のスターマーとの連続性を糾弾することだ。たとえば社会主義労働党の記事が述べるように、労働党が今やろうとしていることは、中道のひとつと別のものとの交換だ。

*新たな筋の通ったソフトな左翼が誕生した

 われわれは、新たな選挙制度、市民総会、またイングランド議会も含む権限移譲に基づく民主主義の革命、公的所有/統制の大規模な増加を前にしかかっている。労働党は、実のある政治論争と魔女狩りの終わりで再生されるだろう。このすべてが改革党を止め、労働党を二期目の政権に戻すだろう。バーナムの勝利に涙ぐんだジョン・マクドネル(現労働党内左派を代表する下院議員:訳者)は、この見方を幾分表している。

 われわれはエコ社会主義者として、ここに見た立場両者の単純すぎる反応には不同意だ。われわれは微妙な違いにもっと注意し、進行中の政治的移行に内包された複雑さを理解する必要がある。

いくつかの矛盾した指標

 当座この象形文字を読むような情勢の読み取りは極めて難しい。矛盾した指標がいくつかある。バーナムチームはリーヴス(現財務相)は去っていると語る。しかしかれらの指導者はこの間、元ゴールドマンサックス経営者のジム・オニール(経済学者:訳者)に相談していた。この者は、三重の鍵を外すこと、および正統的な新自由主義経済を提案してきた。
 他のイングランド銀行エコノミストもまた、船上に招き入れられた。アマゾンのような企業に助言する大手ロビー活動/コンサルタント企業を率いてきたブレア主義派のジェイムス・パーネルが、主席スタッフとしてすでに雇われている。われわれは適切な評価が可能になるまで完全な内閣名簿を待たなければならない。
 われわれはバーナムを、ブレアやブラウンの政権の一閣僚、あるいは指導部としてコービンへの挑戦者にもなった、という彼の過去の歴史からのみ決めつけてはならない。人はまた、マンチェスターにおける彼の仕事、また政治家が変身できそうするという事実をも考慮する必要がある。トニー・ベン(1960年代から同80年代、労働党左派に活力を与え続けた下院議員:訳者)は、ウィルソンの下で労働党政治の中道派内で動き始めたのだった。
 バーナムは、スターマーがかつてそうだったような何の政治基盤ももたない空の器では全くない。後者は簡単に「レイバー・トゲザー」と党機構に統制された。バーナムはスターマーが決して行わなかったような方法の構想をもっている。それは、限定され、矛盾し、最後には多くを変えずに終わるかもしれない。
 新指導者は「場の政治」、「マンチェスター主義」、およびプレストン・コミュニティの資産構築モデル、について語ってきた。これは、スターマーの企業資本との従属的パートナーシップとは異なっている。バーナムは、マンチェスター主義とスターマーが決して行わなかったようなやり方のソフト左翼を通じて、指導部を勝ち取るための彼の基盤を構築した。スターマーは、党機構内でのあらゆる基盤構築を行ったマクスウィーニー/マンデルソンの母体により推力を与えられた。しかしバーナムは自身を、大きくそのグループ化の外部に置き続けてきた。
 もちろんそれは、元「レイバー・トゲザー」が今後バーナムと共に乗船しようと、また彼をかれらの統制下にとどめようと試みることはない、と意味するものではない。またそれは、バーナムが新たな全体包摂的幅広国教会的やり方の証拠として、かれらの何人かを彼のチームに引き入れるのを除外もしていない。
 一方彼は、社会主義キャンペーングループの何人かを統合するかもしれない。後者は、バーナムが取り上げるべき彼の構想を急進化すると思われるような要求の十分なリストを公開済みだ。

バーナム押し上げの熱気は皆無


 現在、コービンのうねりに似た労働党へと戻る何らかの運動の兆候は全くない。しかしながら、労働党にとどまってきた者たちは、バーナムの勝利で一定程度は勇気を得るだろう。ユアパーティー(昨年後半、コービンなどを中心に創建された:訳者)の活動停止は一層かれらの立場についてかれらを確信させるだろうし、こうして党内論争と活動の一定の再生が起きるかもしれない。
 とはいえ、移民、パレスチナ、国防支出、抗議する民主的な権利、および全面的なグリーンの綱領についてのバーナムのまずい立場を前提にする時、これまでに緑の党に加わった何千という人々のいくらかを労働党へとあらためて引きつけることはありそうにない。
 今戴冠がありそうに見え、それは、この段階を契機にバーナムの理念に関する全面的な討論に向けた機会がそれでも生まれていることを意味する。社会主義キャンペーングループは、論争のなさを批判することで動き始めたが、ジョン・マクドネルは、何も行われていず、われわれはそれを続ける必要があると、多少とも認めた。バーナム運動は依然指導者と議員たちに支配された極めてトップダウン的な性格であり、彼の行動を制約するような実体的な民主的構造は全くない。
 バーナムは次回総選挙で、メーカーフィールド(彼が勝利した、グレーターマンチェスターの一選挙区:訳者)で彼が行ったように改革党を止めることができるだろうか? 人がバーナムに投票し、改革党を止め、スターマーを除くことができたのだから、そこには例外的な条件があった。つまり、緑の党と自民党の支持者は先のように行動し、それらの党は選挙運動をしなかった。バーナムは、緑の党がゴルトン(マンチェスターの一地域:訳者)でやったようには、改革党のレイシズムに真っ向から立ち向かうことはしなかった。彼は、そうしなくとも勝利可能と分かっていた。
 それでも人は600議席にバーナムのクローンを据えることはできず、われわれは、おそらく輝きのすり減りを抱えた2年間の彼の政権を前にすることになる。
 バーナムに興奮を覚えた多くの人々は、極右が補欠選挙でそれでも40%を得たことを忘れている。世論調査は、英国人の43%がスターマー辞任後に何の違いも感じていないと示している。僅か20%が少し、あるいはより楽観的だった。彼の北方的ふるまい方はロンドンや南部の残りではそれほどうまく伝わらないかもしれない。
 選挙の専門家であるジョン・カーティスは、改革党の脅威は活力を保っていると示してきた。もうひとつの世論調査では、指導者に言及がある場合労働党が改革党を3%上回り、他方労働党か改革党かを問われる場合、労働党が4%下回っている。
 彼のチームの何人かが現在討論中の変革をバーナムが仮に本当に実行するようなことがあるなら、改革党が止められる可能性もあるだろう。公益事業の支配権を得ることや何らかの累進課税は、彼の政権がほとんどの家族のエネルギーコストを引き下げることを可能にするかもしれない。もっと多くの社会住宅建設に関する彼の急進的な話しが仮に現実に変えられるようなことがあれば、それもまた有権者の心を変えるかもしれない。
 しかしバーナムは、あらゆる急進的改革に反対する経営者たちの反攻に立ち向かうだろうか? 単なる右派と左派からなる幅広国教会的内閣の建設だけでは、先の反攻をさえぎらないだろう。
 社会主義者は、われわれのキャンペーンと要求を、浮上しつつある新たな政治問題と論争に関連づけて合わせる必要があるだろう。われわれはそれでも、労働党と緑の党から自立したわれわれのエコ社会主義のオルタナティブを構築する必要があるだろう。「ソフトな左翼」であれその復活はわれわれに、コービン構想の終わり以来はるかに小さな世界でのみ討論されてきた問題に関し、より幅広い勢力と結合する機会を提供している。(2026年6月28日、「アンティ・キャピタリスト・レジスタンス」より)

▼筆者は、アンティ・キャピタリスト・レジスタンス内のソーシャリスト・レジスタンスと第4インターナショナルの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2026年6月29日)  

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社