米国:トランプ、帝国主義の仕事へ

覇権主張? 失敗続きだが

ダン・ラボッツ

 トランプは、国際関係で安定性がほとんど残っていないものを危険にさらすこともあり得るようなより大きな脅威に導きつつ、米国の世界的支配を再び主張しようと今挑んでいる。

 国の創建以来
 領土拡大戦争

 米国はその創建以来常に戦争を仕掛け領土を拡大し続けてきた。それは、米先住民、メキシコ(領土の半分を奪取して)、その後スペインと争って、キューバ、プエルトリコ、フィリピンを奪取した。米国は第一次世界大戦の勃発によって大国になり、第二次世界大戦で支配的な世界的大国になった。戦後の時期それは、イラン、グアテマラ、さらにチリでクーデターを実行し、ベトナムで戦争に取りかかった。
 しかし21世紀に米国は、あらゆるところで中国から経済的な挑戦を受け、欧州ではロシアから軍事的な挑戦を受けた。今トランプは、「米帝国主義を再び偉大にし」ようと、米国を元の権力に戻そうと試みている。しかしこれまでのところ彼はうまくいっていない。

 戦争の危険伴い
 帝国主義間対立

 世界的な帝国主義的対立のレベルという大きな構図では、トランプは、中国経済を抑え込み、ロシアを何らかの類のパートナーシップにうまい具合に引き込もうとの試みに取りかかっている。トランプは天文学的な50%関税で中国を痛めつけ、技術移転を制限した。他方中国は、レアアースへの制限で応じた。しかしトランプは中国に服従を強要できていない。
 米国とNATOは、2014年にロシアがウクライナからクリミアを奪取した時何の行動もとらなかった。そして2022年2月のロシアによる全面的なウクライナ侵略にも最初は対応できなかった。
 米国は、そのメンバー諸国が再軍備しつつあるNATOへのその言質を再確証している。その中でトランプは、ウクライナでのロシアの戦争を終わらせることに失敗し、何の成功もないままプーチンをおだて上げたり、そそのかしたり、こけおどしで騙したりと、繰り返し試みてきた。
 そして今ロシアのドローンが、ウクライナやモルドヴァの上空だけではなく、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、デンマーク、ノルウェイ、ルーマニア、ポーランド、ドイツ、フランスの上空までも飛んでいる。ウクライナでの戦争は、欧州核戦争の勃発という始終存在する怖れを伴って続いている。

 中東支配策動も
 不安定化進行へ

 トランプは、中東における米国支配の再確立を期待つつ、アブラハム協定を仲介してまとめ上げ、それは2020年に最初にイスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコにより署名された。しかし、イスラエルに対するハマスの10月7日の攻撃――1139人の殺害と約200人の拉致――が、確認されたパレスチナ人死者6万7千人、内こども2万人、そして瓦礫下のさらに数千人を伴った、イスラエルの2年にわたるガザでのジェノサイド戦争を爆発させた。トランプは、米国が戦争目的でイスラエルに少なくとも217億ドルを提供した後になって、今紛争を終わらせようとしていると声を高めている最中だ。しかし実際には終わらないかもしれないこの戦争は、地域の再組織化に向けたトランプの計画を破壊した。

 ラテンアメリカ
 支配の野望再び

 トランプは、中国が大きな、ロシアが小さな競争相手になっているラテンアメリカで、支配の確保に向けたもっとも強い動きに出てきた。
 彼はここにきて、「麻薬テロ組織」との「軍事衝突」だったと、しかし麻薬を積んでいたとの証拠もないまま語って、カリブ海で4隻の小舟の破壊を命じ、国際法に違反し11人を殺害した。これは、ベネズエラのマドゥロ政府を打倒する準備のように見える。彼はそのトップに5千万ドルの賞金を賭けていた。侵攻するようトランプを励ましてきた極右政治家のマリア・コリナ・マチャドに対するノーベル平和賞授与は、クーデターをもっと楽にするかもしれない。トランプが麻薬カルテルを破壊するために爆撃すると脅してきたメキシコは、油断なく見つめている。
 ブラジルの内政に介入しているトランプは、この国に50%の関税をかけた。理由は、ルラ政府打倒のために軍事クーデターを組織したとして、その裁判所が極右の前大統領のジャイル・ボルソナロに有罪判決を下したことだった。そしてアルゼンチンでトランプは、再選に立候補しているもうひとりの極右大統領のハビエル・ミレイを支えるために、彼の政府の財政援助として2百億ドルを準備中だ。
 トランプは今米国を再び勝者にしようともくろんでいる。しかしこれまでのところ彼は失敗を続けている。(2025年10月12日)(「インターナショナルビューポイント」2025年10月12日)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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