台湾海峡危機と台湾人民の自己決定権に関する予備的テーゼ②
プロレタリア民主ウェブサイト 編集部 ※〔 〕は訳者の補遺。
台湾に対する中国共産党の傲慢で専制的な態度は、「中華民族」という概念に直接起因している。中国共産党は「五族共和は一体である」という国民党の思想をそのまま継承しており、少数民族の自己決定権を認めず、また少数民族が「中華民族」に加わった後に、もし抑圧された場合には、そこから離脱する権利があることも認めていない。この傲慢さは、漢民族でもなく、「中華民族」の一部になったことすらない台湾の原住民について、中国側の公式文書においては一切触れられていないことからも明らかである。中国共産党のこのような姿勢は、1921年の建党から1930年代後半までは保持してきた「中国の少数民族の自己決定権を認める」という立場を裏切るものである。台湾共産党は国民党に壊滅させられるまで「台湾独立」を主張していた〔公式の台湾共産党(日本共産党傘下)は日本植民地時代の1931年に弾圧によって解散、地下に潜伏した。戦後に創設メンバーの謝雪紅らが釈放され活動を再開、中国共産党も46年に台湾省工作委員会を設立し活動を始めたが、47年の2・28事件で武装蜂起し鎮圧される。その後も50年ごろまで地下活動を続けた〕。しかし、中国共産党は現在この史実について決して言及しない。中国共産党のこのような考えは、「ロシアとウクライナは一体である」というプーチンの主張(そしてこれに基づいてウクライナに攻め入ること)と同じくらい反動的なものであり、反対しなければならない。
中国共産党は「分離主義」という罪状を用いて台湾人を非難する。だが中国共産党は一度も台湾を統治したことはないし、台湾が中国本土から分離したのも、ずっと以前からのことである。さらには、歴史的に言えば先に誕生したのは「中華民国」であり、その38年後に「中華人民共和国」が誕生したことは誰もが知っている。いずれにせよ、台湾と中国本土が分離している現実は歴史的事実である。もし中国共産党が真に台湾人を「同胞」とみなし、謙虚さを持ち合わせているのであれば、「台湾は古来より中国の領土である」などと台湾人への警句を発するような態度ではなく、まずこの事実を認め、その基礎の上に台湾政府と誠実に対話すべきである。
二種類の平和運動
我々は中国共産党の武力統一に反対し、民進党政府との対話を含む両岸の対話を支持する。民進党政権は台湾人民によって選出されたのであり、中国共産党が少しでも民意を尊重するのであれば、これまでの傲慢さを捨て、対話を開始し、武力統一を断念すべきである。だが両岸人民は、中国共産党が突然悔い改めることに期待することはできないので、何かしらの行動を起こす必要がある。中国本土の人々に必要なのは、武力統一ではなく対話を求める民間の平和運動を開始することである。中国本土の人々は今、抑圧され行動を起こすことが難しい状況にあるが、海外に住む中国出身の華僑や留学生も多く、海外へ移住した香港人もいる。もし反戦平和の運動がこれら在外華人のあいだに根をおろせば、中国の報道封鎖を打破し、中国国内に思想的な影響を与える可能性もあるだろう。
だがそれとは違う「平和運動」もある。それは、台湾人が中国共産党を刺激せず、アメリカの武器にさえ頼らなければ平和が訪れるかのように考える平和運動である。しかしそれは、中国共産党政権による全体主義的統一という不当な野心や、武力統一という原則的な誤り、そして「中華民族の一体性」というさらにばかげた民族観について批判をしない「平和運動」であり、民族アイデンティティは自ら定義するものだという原則にも、少数民族には自己決定権があるという原則にも反する「平和運動」である。それは中国共産党独裁への無原則な妥協でしかなく、それがどうして「平和」だと言えるのだろうか。
民主主義的視点から考える平和と防衛
我々は中国共産党の「平和統一」に対しても大いに不信を持っている。中国共産党第20回全国代表大会〔2022年10月〕の報告は、「平和統一、一国二制度という方針は台湾海峡両岸を統一する最良の方法であり、両岸の同胞と中華民族にとって最も有利である」と述べている。香港人はこの「最良の方法」を身をもって経験した。それは愛国(愛党)者しか立候補できない議会、民主的方法で議会の過半数の議席を獲得しようとすると「国家転覆罪」として投獄されてしまうような統一である。このような統一は、言論の自由もない全体主義社会への統一でしかない。今日の中国社会は、中国共産党が万人に向けて戦争を発動しつづけている暴力的社会である。このような極めて非平和的な社会への統一を、どうして「平和的統一」などと言えるのだろうか。
いずれにせよ、台湾に対する武力統一は不正義な戦争であり侵略である。台湾においては、現時点でも依然として平和を訴える必要があるものの、武力で脅かされる弱い立場にあることから、台湾の人々が防衛のために戦争に備える権利、そしていざ戦争が始まったら抵抗を選択する権利は擁護されなければならない。清朝末期に台湾原住民や客家を含む台湾の漢人が日本の軍事侵略に果敢に抵抗し、清朝の役人や軍人が台湾を見捨てたのちも激しく抗日運動を展開し、短期間ではあるがアジア初の共和国――台湾共和国を建設したことを忘れるべきではない。また中国において2000年以上前に登場した墨子は平和を愛し、特に強国が小国を抑圧する戦争を唾棄した。そして彼は侵略を受けた小国の抵抗を支援したのである。今日の平和主義者もまた、弱い側の立場においては平和主義と防衛のための軍備が原則において矛盾はしないことを、より深く理解すべきだろう(実際の動きはその時の具体的な状況に左右される)。この道理からしても、台湾は外国(米国)から武器を購入し続ける権利がある。
われわれ台湾の外に住む者は、台湾の人々が民主的に決定した防衛政策や軍事的抵抗について尊重しなければならない。台湾の自己決定権を自然に解釈するとそうなるのである。だがそれは、台湾の人びとの防衛や軍事的抵抗という決定に対して、部外者である我々が無批判に奨励するという意味ではない。なぜならわれわれは、原則として台湾にそのような権利があることを認めるが、当事者がその権利を行使しない自由(例えば、防衛準備や抵抗戦争を行わず、中国共産党の条件を受け入れるなど)もまた認めるものだからだ。また、当事者が戦争に備え、軍事的抵抗を行い、外国から武器を購入する権利を認めたとしても、当事者がその権利を実際に行使する時期が必ずしも適切であるかどうかは分からない。権利を行使する時期が適切でない場合でも、我々はそれを適切ではないと批判することはできる。その場合においても当事者にはそれを行使する権利があることも認めなければならない。
上記の民主主義の原則は、政権交代にかかわりなく根本的に保証されなければならない。選挙でどの政党が政権を握ったとしても、その選挙が真に公正なもので、政権獲得後の行動が憲法や台湾人民の主体性・自決権を侵害しない限り、政権党はある程度民意を代表しているとみなされ、必要に応じて戦争に備え、自衛権を行使する権利を有する。その政権党の決定が政治的に必ず正しいということではない。「民選政府が独裁政権になる」(electoral autocracy)可能性もある。トマス・ペイン〔アメリカ独立戦争の理論となった『コモンセンス』の著者〕が言ったように、政府はせいぜいのところ「必要悪」でしかない。今は必要ではあるが、それは強制と暴力の専門機関であることから、容易に人々の上にのしかかる独裁の怪物にもなる。もしそれが多国籍大資本と結託すると、さらに恐ろしいことになる〔帝国主義になる〕。したがって、われわれは常に政府の権力乱用に警戒しなければならないし、「政権による防衛準備への支持は、政権党を政治的に支持することを意味するものではない」ことを強調する必要がある。これら2つの点は別個に考えなければならない。
核戦争を拒否し東アジアの平和を
物事には何事にも限界がある。まず現段階において台湾の側としては、平和の追求と無条件の対話を押し出しつつ、防戦の準備を控えめに遂行することが適切となろう。第二に、安全保障政策については、政府は市民の権利を侵害しないように特に自制し、行き過ぎのないように注意し、排外的ナショナリズムに煽らないようにする必要がある。さもなければ、容易に中国人すべてを誹謗中傷することに発展してしまい、それはかえって中国共産党に口実を与えることにもなり、またファナティシズムによって自己を抑制できなくなるであろう。最後に、台湾を守るための戦略は、おそらく半分は政治的、半分は軍事的なものになるだろう。軍事力だけに頼ることはできない。台湾が防戦に備えながら民主主義を強化し、人々の生活向上を図れば図るほど、そのソフトパワーは強化される。中国本土では、習近平独裁政権によって引き起こされた党内亀裂は言うまでもなく、市井の間でも台湾に対する潜在的な同情が数多くある。党、政府、軍の内部においてさえ、そうした同情がないとも言えない。これらすべての状況が、台湾が国内外で同盟者を獲得するのに役立つだろう。
国際関係に至ってはさらにある種の限界に留意しなければならない。我々は、米軍が直接台湾に上陸したり、司令部を置いて戦争に参加することを望まないし、(かつて蒋介石が試みようとした)台湾の核武装と核戦争に備えた軍備はなおさら望むものではない。なぜなら、その時点で戦争は中国と米国という2つの超大国間の大規模な戦争に拡大してしまう可能性があるからである。このような規模の戦争は台湾の島嶼に壊滅的な被害をもたらすことはいうまでもない。核戦争は何としても阻止しなければならない。こういった戦争の影響は、台湾海峡を超えて東アジアの民衆全体に及ぶがゆえに、この地域の人びとも自らの安全を考える権利を持つ。たとえば沖縄においては、第二次大戦における悲惨な経験、そして戦後80年にわたり米軍基地がもたらす様々な屈辱と被害がいまも続いており、人びとは今日まで反戦平和運動を継続している。ゆえに沖縄民衆もまた台湾海峡危機に際して発言し、行動する権利をもっている。
米中の覇権争いと台湾の自衛権
「平和主義者」の中には、台湾が防衛戦争に備え、外国から武器を購入することを支持しない者もいる。その根拠は大きく分けて三つに分類されるだろう。一つは、台湾問題で米中が対立して戦争に発展することを望まないというものである。二つには、とにかくアメリカの覇権と軍拡競争に反対するというものである。三つには 「アメリカは帝国主義だが中国は帝国主義ではない」ので、アメリカに反対して中国を支持するというものである。この三つの考え方は、それぞれ重点が異なり、言及箇所も違うが、結論は同じである。最初に、われわれは大国と小国、帝国と比較的後進的な国という二つを区別すべきだと考える。これを混同して議論すること自体が混乱をもたらす。中国は強大であり、台湾は小さい。中国による武力統一の恫喝それ自体が力に任せて弱いものを叩くことでしかなく、それに対しては反対するしかない。また米国の介入を理由に、台湾の自己決定権を否定することもできない。つぎに、中国と米国の覇権争いにおいて、米国の方がより危険なので北京を支持するという立場であるが、中国も核保有国であり、世界最大の貿易大国であり、世界第2位の経済大国であり、そして世界第2位の軍事費支出国でもある。現在のところ、中国共産党が世界の人々に対して将来もたらすであろう脅威が米国の脅威より確実に小さいという主張は説得力に欠けるだろう。中国の軍事力はアメリカに及ばないが、総合的な脅威は必ずしも小さいものではない。なぜならトランプは独裁的で好戦的な政策を望んでいるものの、米国には依然として法的な、そして法律以外の多くの制限とバランスが存在するという政治的な現実がある。一方、中国の個人独裁はとっくに確立しており、彼が戦争を始めれば、誰もそれを阻止できないし、反戦運動の登場は米国よりも極めて困難であるという点が異なる。
上記の三つの見解は程度の差はあれ、アメリカの介入を理由に、台湾の自己決定権を拒否するものになっている。しかし複雑で相互依存的な国際関係、特に世界最強の帝国と関係する200近い国にそれぞれの関係があるなかで、このような一刀両断的な分析アプローチは、あまりに単純で説得力を欠くものであり、まるで「足を削りて履(くつ)に適せしむ」(靴に合わせて足を切る=持論に合わせて現実を曲解する)ものでしかない。我々は在野の民主派および平和主義者の立場として、いかなる覇権国による軍拡競争にも反対するものである。しかし、国際関係は極めて複雑であり、特定の時期、特定の場所においては、帝国主義国と一部の小国の自衛権が重なり合い、絡み合うことも珍しくない。一定の限度内において、小国が存続のために覇権国家から武器を購入することで、かりに覇権国家がそれで利益を得るとしても、小国もまたそれによって存続することが可能となる一長一短の状況がある。三つ目に、米中においてはアメリカが強者で中国が弱者である、という考えがある。しかし中国と台湾の関係では、中国が強者で台湾は弱者である。また中国は東南アジアの小国に対しても傲慢な態度で接している。前述の三つの立場は、米中の覇権争いがいかに危険であるかにのみ着目し、中国による台湾への武力統一もまた危険であることを無視している。もし北京が武力統一に成功した場合、他のアジアの小国に対しても傲慢な態度にでることが予測される。国際的な規模におけるアメリカとの覇権争いが有利になるからである。これらすべてが世界大戦の危険性を減らすのではなく、増幅させるだろう。
我々のスタンスはむしろ、この両方の状況をどちらも考慮し、米中両国の軍拡競争に反対するという基本的スタンスの枠組みの下で、台湾の自衛権を防衛するというものだ。かつてのロシア帝国がイギリスとフランスの後塵を拝しつつ、その周辺の小国にとっては主要な脅威となっていたとき、当時の労働運動の左翼はイギリスや英国といった強国に反対するだけでなく、ロシア帝国による周辺小国への侵略にも反対した。
こうした歴史的事実からも、我々もまた台湾の自衛権を支持しつつ、アメリカが台湾危機を軍拡競争の口実とすることに反対する各地の反戦平和運動を今後も支持し続けるのである。我々は沖縄、日本、韓国、フィリピン、そして中国大陸における、すべての反戦平和運動への支持を表明する。我々はまた、東アジアの反戦・平和運動に対し、台湾海峡危機に直面した際に大国が小国を脅迫することに積極的に反対し、正義の声を上げるよう呼びかける。
台湾という国名についての戦略的配慮
台湾はあまりに小さく(ウクライナの16分の1)、単独では大規模な戦争を遂行することはできないし、長期にわたる大規模な戦争、ましてや核戦争などは不可能である。しかし、台湾が政治的な動きを進めることで、中国による武力統一を惹起する可能性がある。つまり、台湾が「中華民国」の国名を廃して、「台湾共和国」として正式に独立した場合である(いわゆる法理上の台湾独立)。我々は独立する権利を含む台湾人民の自己決定権を支持するが、海峡両岸の力の差を考慮すると、国名を変えるためだけに戦争を惹起するのは賢明ではないと考える。
逆に、旧国名を維持し、中国共産党に武力統一の口実を与えなければ、仮に中国共産党が武力統一へ踏み切った場合でも、少なくとも台湾に対して多くの国際的支持を得る可能性は高まるだろう。実のところ、民進党の党綱領には台湾独立が含まれているものの、1999年に民進党が公表した「台湾の将来に関する決議」において、今日の中華民国が「事実上、主権を持ち、独立した民主的な国となった」、その主権には中国本土(澎湖島、金門島、馬祖島の3つの小さな島を除く)は含まれない、と主張している〔訳注2〕。これにより、民進党はいわゆる「法理上の独立」を追求するのではなく、事実上の台湾独立を維持するという姿勢を明確にした。また、国名は中華民国だが、定義された領土には中国本土が含まれていないことから、この「中国」はもはや北京政府とのあいだでの領土紛争がないことも明確にしている。
反核・反帝、平和をつくる
アメリカは表面上は台湾を保護しているものの、実際には台湾の人々の自己決定権を承認しておらず、中国共産党と同様に台湾の独立を押さえつけている。結局のところ、アメリカが台湾を守るのは、第一に自国の利益のためであり、台湾の人々のためではない。第二に、米国はいわゆる曖昧戦略を採用しており、台湾海峡の両岸の間で戦争が勃発した場合、台湾を支援するかどうかについては沈黙を守っている。
こうした狡猾さは、最大限の柔軟性を自身に与えると同時に、双方が軽率な行動をとることを恐れるようにするという一石二鳥の効果を狙ったものにすぎない。トランプが二度目の大統領に就任した今、台湾海峡をめぐる情勢は前例のないほど不安定である。中国と米国の覇権争いが舞台裏から表舞台へと移り、両岸関係と絡み合うという状況はとりわけ台湾にとって不利である。こうしたなか、東アジアやアメリカの反戦平和勢力が、台湾の自己決定権を承認するというベースの上に、台湾のために最大限の声を上げることは、これまで以上に必要な責務となっている。
台湾は中国と米国の狭間にあることから、たとえ最善を尽くしたとしても、両核保有国の戦争回避を保証することは困難である。というのも、台湾の有無に関わらず、帝国主義的な覇権主義が核戦争に転じる可能性がある程度高まるからである。ゆえに、世界の反戦平和の友人たちは、覇権争いの根源であるアメリカ、ヨーロッパ、中国、日本において、帝国間の覇権争いに反対し、世界規模での核兵器廃絶と軍縮の主張を強めなければならない。
訳注2:民進党台湾前途決議文(日訳)
https://konansoft.jp/zenrin/taiwan_library/dpp1999_jp.htm
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