米国/AI トランプVSアンソロピック

米国が望むのは殺人ロボット?
兵器技術競争抑え込みは今や優先課題に

レオナール・ブリス

 「私はかれらを犬のように首を切った」。これは、米企業のアンソロピックとの戦闘を要約するために、われわれが彼に関し知っている品の良さをもってトランプ米大統領が使った決まり文句だ。彼は、自慢する前に少しばかりもっと長く待つことを迫られるだろう。裁判所が、今年3月27日に出した最初の命令の中で、AI大手に対するブラックリスト搭載を一時差し止めたからだ。したがってこの企業のツールは、大統領の願いに反し行政がなおも使うことができる。しかし主導権争いは終わっていず、われわれはここに賭けられていることの程度を見極めなければならない。つまり、テロ体制部門における米国のAI利用のことだ。

どんな争いが起きていたのか?

 アンソロピックは、有名なチャットGPTを設計した企業であるオープンAIの元従業員が創立し、大規模言語モデル(LLMs)の分野における主な挑戦者のひとつになっている。そのモデルのクロードは、昨年半ばまでで利用者が3千万まで達した。それはその発信の中で、信頼性と安全性を強調し、「合憲的なAI」、すなわち世界人権宣言のような建国の諸文書にしたがって動くように訓練されたAI、という考えを提出している。それは賢く合理的であることがめざされたアプローチだが、それでもそれが、2024年11月に米国防省向けAIソフトウエアの公式供給企業になるのを妨げることにはならなかった。
 ペンタゴンは今、特に極右億万長者のピーター・ティールが所有するたちの悪いビッグデータ企業のパランティアをも巻き込んだ提携の一部として、クロードを利用している。パランティアは大量のデータを集め処理するツールを提供し、アンソロピックは行動計画を練り上げるためにそれらを利用するのを可能にしている。
 中東における戦争という脈絡の中で、これらのツールは標的探索の自動化を可能にしてきた。そしてそれが攻撃の例外的なペースを説明している。ウオールストリートジャーナルもまた、クロードがベネズエラ大統領のニコラス・マドゥロ拉致を計画するのに利用された、と暴露した。
 2025年末にペンタゴンは、これらの契約条件を改定する交渉を始めた。未解決事項は利用枠組みに関する制限であり、国防長官のペテ・ヘグセスは「あらゆる正統な利用」の方を選んでその制限を一掃したいと思った。当時アンソロピックは議論を拒否しなかったがふたつの停止線を、つまり米国市民に対する大量監視、および完全自動兵器への制限を設定した。
 これらの利用はどんな方法でも米国の法律で禁止されている(それは高度に疑わしい)と主張しつつも、ペンタゴンは怒り、最後通牒を突き付け、次いで同社との協力を断った。3月4日アンソロピックは、同社に対しトランプが選んだという処罰を伝える1通の手紙を受け取った。つまり同社は今や「サプライチェーンリスク」とみなされるだろうというものだ。これは通常、敵あるいは信頼できない国の企業に運命づけられる地位だ。そしてそれは、全行政機関にそのサービス利用を禁ずる。そして、裁判所が3週間後一時停止したものこそこの決定だった。それは、米大統領によって「意識高い系急進左翼」と呼ばれて今や不興を買っている企業にとっては歓迎の救いと言える。

恨みへの報復と狭量な身びいき


 その間、競争が現れた。オープンAIとグーグルは、計算されたシニシズムに基づき、法的手続き開始に合わせ、法廷に判事の啓発に向けられた外部見解、法廷助言者見解を提出した。その中でかれらはかれらの競争相手を擁護し、アンソロピックが提起した懸念の正統性を確証している。
 同時にオープンAIは、アンソロピックの場を引き継ぐための契約を交渉していた。その契約がまだ生きていた中でのことだ。そして、オープンAIはアンソロピックのふたつの停止線を再確証し、それらを米行政府に受け容れさせたと主張しているが、実際に達した協定は、むしろ柔軟であるように見える。
 アンソロピックCEOのダリオ・アモデイは彼の従業員に宛てたメッセージの中で、オープンAICEOのサム・アルトマン(アモデイの元ボスでもある)を、彼の日和見主義を隠すための純粋かつ単純な演技に取りかかっていた、と責めている。少し遅れて、極悪なイーロン・マスクが彼の会社であるXAIを使ってこのゲームに加わった。そしてXAIはペンタゴンとの間でもうひとつの協定をまとめた。その条件は今回はっきりと、もはやどんな制限も含んでいない。
 であれば、アンソロピックはトランプ主義的ファシズムへの抵抗に注力している「意識高い系急進左翼」の会社なのだろうか? その見込みは薄い。ダリオ・アモデイは彼がマイクを渡されるあらゆる場で、「国の安全保障」に対する彼の献身を再確認し、米軍がこの事件を理由に効率性を失うことになることを心配している(数日間米軍がどんな学校も爆撃できなかったことを想像してみよう)。
 大量監視に関する彼の良心のとがめは、米国市民にしか関係していないように見える。そして、完全自動兵器に関する限り、彼の唯一の主張は、AIはまだ十分な信頼性はないというものであり、はっきりと明日はそうなる可能性もあると示している。
 現実には、これらの危険な利用に関する制限の設定は何よりも、あり得るスキャンダルから彼自身を守るひとつの方法なのだ。そしてそのスキャンダルとは、今なお投機的なAI市場でアンソロピック格付けの急落を引き起こす可能性もある、というものだ。
 今回の作戦はトランプ政権の観点からは、主に忠誠者に報い、背信者に罰を与えるという問題だ。われわれは、時に荒れるが変わることなく実のある、イーロン・マスクとトランプの関係を知っている。それより知られていないことは、アルトマンもまた共和党への資金提供者の中にいたこと、そしてアンソロピックはカマラ・ハリスを支持するという間違いを犯したということだ。アモデイ自身はすでに引用した内部的メッセージで、先のことがペンタゴンが交渉で今回のように排他的だった主な理由だった、と語った――彼自身は多くの譲歩を行う用意はできていた、とほのめかしつつ――。

大量市民監視へのAI利用


 問題は、そうであっても深刻で、論争の範囲をトランプとアモデイに限定させずにわが社会陣営によって取り上げられる価値がある。AIの登場は今や大量監視の可能性に道を開いている。そしてそれを極右はある種の独断的見解にしている。ペンタゴンとの協力におけるアンソロピックの元パートナーであるパランティアはまた、この数ヵ月米国の移民警察であるICEに助力を与えてきたことで有名になった。つまり、われわれが知っている結果を伴って、移民を識別し追いかけるために利用されてきたソフトウエアだ。アムネスティ・インターナショナルもまた、パランティアのAIがパレスチナ連帯運動の指導者たちを識別するために利用されてきた、と示している。
 オープンAIとグーグルの法廷助言者見解でこのふたつの多国籍企業は、かれらの技術は国家が通常業務にできる監視のタイプを完全に変革できる潜在能力をもっている、と説明している。すなわち、「2018年、米国内で利用されている監視カメラは約7千万あり、空港、地下鉄駅、駐車場、店舗前、さらに街角に広がっている。各々のスマートフォンは所在データを連続的にプロバイダーに送っている。クレジットカードとデビットカードは、米国人が行ったビジネス取引のほぼすべての時間を刻印した履歴を生み出している。……まだ存在していないのは、この不規則に曲り延びた断片的なデータの光景を統一されたリアルタイムの監視装置に転形するようなAIのレイヤーだ」と。
 これらのツールの開発に反対することは、明らかに答えの始まりだ。EUでは、2024年3月に採択されたAI法がすでに、国家がAIのもっとも汚い形態のいくつかを利用するのを禁じている。たとえば、リアルタイムの顔認証、あるいはひとりの個人がどれほど犯罪を犯しそうかを予想するソフトウエアであり、これは米国には存在していないふたつの防護策だ。
 しかし、これらの条項が守られるべき成果だとしても、それらの限界は明確だ。実際に、情報機関の秘密性の中では、これらの技術が本当に絶対利用されないと確実化する方法は全くない。
 AI法はまた、特別な場合(行方不明になった子どもや人身売買やテロの探索)に対する顔認証利用を認めている。そしてそれは、警察がこれらのツールを保持すること――そして、あまりに明白なやり方でそうしない限り、かれらがやりたいようにそれらを実際に利用できること――を意味している。
 顔認証により高められる国家の抑圧を避ける最良の方法は、依然として街頭のカメラを設置しないことだ。そしてこれは疑いなく、グーグルやオープンAIをも怖がらせている「統一された監視装置」に対抗するために、今や適用されなければならなくなる論拠だ。国家――あるいは諸企業――が、地下化されたメッセージへの制限からカード支払いの制度化まで、好きなようにデータを集めるために確保するテコすべてと着実に闘うためだ。

AIの軍事利用の諸問題とワナ


 軍備に関する限り、この分野での技術革新を熱を上げて歓迎するような時ではない。現段階では、AIが操縦する完全自動兵器は非常に特殊な場合、概して防衛的で人間の死傷のない場合(たとえばミサイル迎撃)でしか使用されていないように見える。しかしながら、アンソロピック事件は、殺人ロボットがもはや科学小説ではないことを示している。
 自動兵器が特徴づけの難しいものであるため、現在の状況を特徴づけるのは難しい仕事だ。多くの兵器がすでに展開され、特にウクライナの戦争で大量に使用されたドローンは自動化の相当な水準をもっている。公式的には、米軍を含む大国の軍隊はすべて、「人間が一群の命令内に介在」というドクトリンを主張している。しかしこの表現は解釈という条件付だ。
 つまり、問題になる人間の役割とは何だろうか? 目標設定か? システムが提案するものを有効にすることか? システムを監視し、もしそれが間違っている場合に制御を取り戻すことか? システムを作動させ、特定の標的がないままそれに戦闘させることか? そしてもちろんこの性格の適格性は、実践で常に検証可能だとは限らない。2021年、国連の一報告は、トルコのドローンがリビアで完全に自動的に発砲した、と確証した。
 これらの開発はいくつかのレベルに関し懸念を巻き起こす。第1のレベルは、主にある種のおとぎ話であり、その設計者の制御を超えてそれ自身の意志をもつ機械、という懸念だ。この終末論的図式は、科学小説や、しかしまた不明瞭な言葉の選び方(「殺人ロボット」あるいは「自律的」との用語であっても)によっても十分に人を飽き飽きさせ、論争のねじ曲げを、また低コストで住民を安心させる――「ターミネーターがシャンゼリゼ通りを行進することはないだろう」とフランスの国防相が語ったように――ことを可能にする。
 現実にどんな軍も、国家の戦略や戦術から独立してそれ自身の目的を設定するような兵器の開発には関心がない。問題の自動性は常に、変化する諸条件への一定の適応性を導入しつつも、十分に明確化された目的に基づき前もって書かれた計画に従うことからなっている。
 もっとも共通に受け容れられている停止線は、標的それ自身を選ぶ兵器システムの能力だ。それこそが、一定の技術的主張、つまり現在のAIは選択を信頼できるものにする能力は(まだ)ないとの主張によって、アンソロピックが力を貸すのを拒否しているものだ。
 明らかに、間違いによって市民を殺す危険はあまりに大きい。これが第2の懸念のレベルであり、大いに正統性がある。結局のところこの論拠によって、自動兵器の最初の形とみなされてよい対人地雷が1997年の国際条約によって禁止された(161ヵ国によって署名されたが、米国、ロシア、中国は署名していない)。
 しかしこの種の議論はある種のワナをも意味し得る。これらの技術が間違いを人間の兵士と同程度まで、あるいはもっと少なくするほど十分有能になったあかつきには、その議論がその技術の展開に道を開くからだ。そしてその段階は明日にはあり得ることも十分可能なのだ。

殺人ロボット反対の国際条約?


 これらのシステムに対するわれわれの拒絶は、第3のレベルを動員しなければならない。つまり、戦争の自動化が、自動兵器だろうが、情報活動へのAI応用だろうが、単純に国家に対し力を与えすぎる、という問題だ。
 徴兵による軍から職業的軍への20世紀末の移行は、すでに殺人権限の集中に向けた巨大な1歩だった。深く住民に結びついた前者はしばしば時に鎮めるのが困難な抗議や暴動の場になったが、後者ははるかにもっと規律が取れた――そして、顔色ひとつ変えずに非道を犯すことができる――ものになった。その創造者に背を向けるロボットという想像とは全く別に、軍事的AIは、まさにそれが究極の規律をもつ兵士であるがゆえに危険なのだ。
 これに加わる事実は、膨大な財源を要するその完全な潜在能力までのこれらの技術開発は、おそらくほんの僅かな大国にのみ到達可能になるだろう、ということだ。つまりわれわれを待つのは、ほんの僅かの人的損失で全面的に非対称な争いに取りかかり、諸国を荒廃させる、そのような決定をそれらの大国が行うことができるようになる世界だ。
 人類はすでに、核兵器、化学兵器、また生物兵器の使用を制限する国際条約をもっている。それらは大きく不十分であり、その将来は今もこれら3分野の兵器庫の全面的な解体でなければならない。しかしそれでもそれらには存在しているという利点がある。そして、それらがいくつかの惨害を避けることを可能にしてきたと考えることには合理性があるだ。
 2、3年前国連は、多くの国(特にグローバルサウスの)、NGOの幅広い連合、AI研究界の大きな部分、国連事務総長、さらにカトリック教会までがとった立場にしたがって、命に関わる自動兵器システムに関する似たような条約を求める交渉を始めた。それは何の成果も生まなかった。そしてその進行を妨げた国のリストは、何の驚きもないものとして現れるだろう。つまり主には、英国、オーストラリア、インド、米国、ロシア、そしてイスラエルだ。
 帝国主義大国が流血と苦しみの中でそれらの支配の再確立を追い求めている時に当たって、もっとも悪夢的な兵器技術を求める競争を抑え込むことには、政治的な優先性がある。そしてこのためには、多国籍私企業に依存しないことがもっとよい。(2026年4月21日、「ゴーシュ・アンティカピタリスト」よりIVが英訳)

▼筆者は第4インターナショナルベルギー支部のゴーシュ・アンティカピタリスト(反資本主義左翼)の活動家。オーストリアの研究機関で、プログラム相互検証の形式手法に特化した研究者として活動している。(「インターナショナルビューポイント」2026年4月27日)  

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