南米:地域政治情勢ノート(下)

反ファシスト闘争は勝利できる

アナ・C・カルバルハエス/イスラエル・ドゥトラ

(7)重要な決戦がコロンビアで

 5月31日から6月21日の間で行われるコロンビア大統領選は、この国と地域にとって決定的だ。世論調査は、「歴史的協定」――進歩主義の当地の表現――を代表する候補者のイバン・セペダのリードを示している。つまり彼は、ペトロの選出で始まった歩みを続けるつもりだ。
 セペダは約40%を確保し、こうしてふたりの右翼野党候補者のひとりを相手に厳しい決選投票に臨むだろう。そのふたりの先頭は、ミレイのコロンビア版になることをめざしている、トランプとネタニヤフの称賛者かつ弁護士で、支持率24%のアベラルド・エスプリエラだ。
 上院議員のパロマ・バレンシアは、自身を元大統領のアルバロ・ウリベの後継者と称し、伝統的右翼に傾きつつ、19%で後を追っている。「中道センター」指導者であるバレンシアは、コロンビア保守主義あるいは「ウリベ主義」の構造刷新を追求し、したがってあり得る決選投票ではセペダのより危険な敵になる。
 「歴史的協定」の戦略は、「戦場で」、つまり動員することで運動し統治するものだ。協定は、ルラ、ウルグアイの拡大戦線またキルチネル主義とは異なった立場をとっている。後者のそれぞれは対立をむしろ懐柔、動員解除、そして政治的オリガルヒとの顕著な取引を通して管理した。
 一方ペトロは彼が5月1日に行ったように周期的に集会に訴える。彼は、諸権利を保証し、賃下げなしの週労働時間を短縮する新労働法を提案し、最賃を23%引き上げた。さらに彼の環境に関する右翼と中道左派の採掘主義に異を唱えるビジョンは、ペトロを世界的に区別させる。ガザ船隊に対する彼の擁護、米国に対する送還反対の彼の立場、またキューバとの連帯という彼の独立した立場は、大国の構想に挑むひとりの左翼として彼を単なるレトリックを超えて映し出している。
 2021年に政権とコロンビア政治を完全に変形したのは、反乱的特徴を付随させた政治的ゼネストだった。実際、新労働法を承認する国民投票を上院が先頃拒絶した時、オリガルヒにペトロが応じたのは、ゼネストで脅すことによってだった。「ペトロの秘密は、街頭の決起および民衆的圧力と交渉を組み合わせることだった。さらにそれは、上院の右翼多数派が彼のイニシアチブを妨げた時にあってさえ、彼の任期の始まりに当たって公表された主な大義を徹底的に強調することだった」、ルイス・レイリアはエスクエルダネットの記事でこう語る。

(8)アルゼンチンに1つの好機

 南米南部での基本問題はアルゼンチンが直面する挑戦課題、つまり、選挙と街頭でハビエル・ミレイを打ち破ることだ。ミレイは、トランプの綱領と戦略に、また彼のインターナショナル、CPAC(保守政治行動会議)にもっとも忠実な地域指導者だ。彼は、この地域におけるシオニズム支持の、トランプとの「実体的」関係の、チェーンソーで象徴された環境と社会的権利を破壊する超自由主義構想の、最先頭にいる。
 ミレイは、ボスのトランプがもくろんだ脅迫の助けを得て、昨年の議会選挙で重要な勝利を獲得した。しかしながらその後彼の人気は、一連の腐敗スキャンダル――彼の姉で腹心の女性が政府契約に関し受け取った3%のキックバック、および彼の閣僚長、マヌエル・アドルニの不正な富裕化に関する先頃の発覚を含む――を理由にかなり腐食した。このすべては、緊縮諸方策の受け入れを労働者と民衆が抑圧にもかかわらず拒否したことと並んで起きた。
 ミレイの人気下降――生活水準の悪化をも理由に――と重なって、また1976年の虐殺的軍事クーデター50周年を期した3月24日の大規模集会で始まる形で、この国の情勢には相当な移行が起きた。左翼の影響力は、世論調査でのもっとも尊敬に値する政治的人物として、FIT―U(労働者左翼戦線連合)の下院議員、ミリアム・ブレグマンが9%から12%になる形でこの間強まった。革命的左翼が大衆的影響力を競争するひとつの歴史的好機が現れた。
 この情勢は、反資本主義のヘゲモニーとして頂点を記すような、左翼としての政治的・綱領的極の質的成長と急進的闘争が組み合わさる激しいプロセスへと進展するかもしれない。この目標に対しては、FIT―U内の活動家たちが責任をもって行動し、この歴史的任務に応じて立ち上がり、近親憎悪的なセクト主義を捨てることが不可欠になるだろう。

(9)ボルソナロとPT共に限界

 ALBA(アメリカの人民のためのボリバル同盟)やUNASUR(南米諸国連合)、また全南米石油企業という全く実行されなかった考えからなる、ボリバリアンと進歩主義の夢の日々は遠く過ぎ去っている。ルラとディルマの統治期間(2003年から同13年)でさえ、PTの戦略は、それが「急進的すぎる」と考えた――また考え続けている――イニシアチブ着手を、そのボリバリアンの「パートナー」に思いとどまらせることだった。それは、それらがたとえ限定的な方策――憲法制定会議、債務監査、国有化といった民衆的で独立的な反帝国主義のイニシアチブで、それらはその時代、チャベスのベネズエラ、またエクアドルやボリビアでも経験された――だったとしてもそうだった。
 一方ボルソナロ自身は、ネオファシズムの地域的基準点、ラテンアメリカの極右サイクルの開始に耐えると思われるような基準点、として役に立つために必要な才能と政治的な熟練に欠けていることが分かった。パンデミックの中での70万人もの死者と恒常的な内部危機で刻印されたボルソナロの統治は、南米の右翼ブロックを組織できなかった。逆に、それらの年月(2019年―同22年)の中では、チリ、コロンビア、エクアドル、そしてボリビアで大蜂起があった。

(10)植民地化阻止の中心的戦場

 その関税戦争、脅迫、また介入主義のレトリックによるトランプの外交政策は、国家および亜帝国主義のブラジルの国際化したブルジョアジーの幅広い層が抱える利益と直接に衝突する。再選を追求している3期目のルラは、細くなるばかりの綱渡りの綱の上でバランスをとろうとしている。
 彼は一方で、問題が関税や貿易全般――特に、ブラジルのアグリビジネスと採掘産業には中国と対立する意図が全くないことから――、また警察・軍事問題(ブラジル人の麻薬取引グループを理由にした「テロリスト」指定の受け入れを拒絶して)になる場合、自ら米国から距離をとろうとしている。他方で彼は国内で、特に国の大企業や反PT中間階級に、現在ホワイトハウスにいるジェノサイド的人物との和解の仕方を知っている、と示そうとしている。
 ブラジル政府はトランプの不興を避けようと、ベネズエラへの事実上の介入、キューバ封鎖、トランプのパラグアイ政府とのスキャンダル的軍事協定を前に、恥知らずな沈黙を守っている。ちなみに最後のものは、三重(ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン)辺境における米軍部隊と近代兵器の存在を強化している。対米国摩擦の波の「エスカレートを引き下げ」、彼自身を信頼する価値があると示すこの努力の中で、ルラは米国に旅立ち、トランプへの友情を誓い、プラットホーム企業の全般的規制に向けた議会の主導性を戦術的に立ち往生させることに加えて、ブラジルのレアアースおよび米国のビッグテックのデータセンター向けの領域を譲り渡すことで合意した。
 極右の野党は、ブランコ・マステル(20億ドルの詐欺、およびそこへの中央銀行と最高裁判事ふたりの関与の疑いが問題になっている:訳者)の所有者とのつながりが判明したことを理由にしたボルソナロの後継者の支持率下落と最近の支持腐食があっても、権力に復帰する強さを示している。右翼野党を利している要素は次のようなものだ。
(a)修正を介した公的資金配分システム、これは、ボルソナロ主義とセントラオの選挙地盤の所有者の財布を何百万ものカネで満たしている。(b)しばらく前それに対しルラが友好関係再開をもくろんだ、反動的なネオペンテコスタル(キリスト教原理主義の一宗派:訳者)の牧師の民衆的影響力。(c)議会内のボルソナロ派とセントラオの多数派。それを通じてかれらは、政府のイニシアチブを無力化し後退を強いている。そしてしばしばそれが住民により「政府がやっていること」と受け取られている。(d)全体としての司法の前例のない腐食。その富豪的特権は正当化できる民衆的怒りの標的になり、そのイメージ――2023年のクーデター未遂との闘いの中で政府と連携した――もマステル事件の中で曇らされた。(e)政権連合に結びついている労組運動や民衆組織永続的に動員解除された道具に変え、民衆と労働者の動員をルラとPTが拒絶していること。(f)40歳以下の人々から、すり切れた政治システムが、懐柔的なPT政権の長期のサイクルと、特にルラという人物と一体視されているという事実。(g)議会野党との対決に大衆諸層を動員できるような、所得再配分に向けた社会的かつ経済的な影響力を備えたイニシアチブの、特にこの3年半の全般的不在。
 この枠組み内ですら理論上、ちょっとの間左翼の道を再確認する大統領キャンペーンを行うことは可能だ。民主主義対軍事クーデター策動屋という決定的問題の先にある原理的闘争は、トランプの時代における国民主権を、さらにデータを支配しソーシャルメディアを管理するグローバルな資本家部門――大部分シリコンバレーを本拠とするいわゆる「テクノファシズム」――との不可欠な戦闘を伴う。この帝国主義ブルジョア分派は、親ファシストの選挙プロパガンダのチェックのない広がり(フェイクニュースを介した)に、高まる依存症と子どもや若者の病的な健康に、オンラインギャンブルを通した労働者家族の債務漬けに、ミソジニーと女性殺人の高まりや他の悪行に最終的な責任があるのだ。
 ブラジルにおける今年の選挙プロセスには、ビッグテックが推進する植民地化に対決する主なラテンアメリカの戦場になる要素がすべてある。ネオファシズムと対決してルラを支持する幅広い戦線のほとんどが、綱領と実践の両者で挑戦課題に応ずることができるか否かは、行動を通して今後分かることとして残されている。

(11)革命派がいる場は進行中の闘争

 南米は、商品景気と広範な「進歩主義的な」波――世紀の変わり目での民衆的な反新自由主義闘争により推進された――の終わりと共に、ネオファシズム諸勢力による台頭と選挙での勝利に向かう世界的な傾向によって、過去15年にわたる「荒廃に気づくことになった。トランプの興隆は大きな後退だった。そして彼の統治――同じく彼の当地の連携勢力のそれ――は、南米の民衆と労働者の主権と幸せに対する主要な脅威になっている。
 米国は、カリブ海の「軍事侵略」、今年はじめのベネズエラ接収、さらにキューバに対する進行中の前進をほとんど隠していない。これらの要素は、帝国主義と反動を利する形で情勢を悪化させ続け、この地域の力関係を民衆にさらに好ましくなくしている。
 しかしながらネオファシストは、民衆、大衆運動の組織された諸部門、また改良主義と革命的な左翼の政治諸勢力――この地域のコロンビア(および北で接するメキシコ)といった「後期進歩主義」諸政権を含む――からの猛烈な反対と抵抗に直面している。
 ゲームは終わっていない。反ファシスト闘争は進行中であり、それが主に事実上トランプに反対する米国の民衆や労働者の成長中の決起や政治化との連携に依拠しているがゆえに、勝利でき、また前進できる。この闘争における今日の大きな地域的戦闘は今、ミレイに反対してアルゼンチンで、フジモリの後継者の復帰に反対してペルーの田舎と周辺で、コロンビアにおける選挙の勝負で、さらにすでに始まっているブラジルで起きている。それは、チリにおけるカストに対する萌芽的な抵抗でも、また飢餓賃金の引き上げを要求している労働者によるベネズエラの植民地政府への抵抗でも同じだ。
 革命派の場はこれらの闘争の中にあり、それは、資本主義が強いる社会的、経済的、また環境的な不平等に立ち向かう中で運動を前進させる方策を提起する自律性を維持しつつ、ファシストの敵と対決する民衆的な行動と組織内の最大限の統一精神に基づくものだ。(2026年5月24日)
(了)
▼イスラエル・ドゥトラは、社会学者で、PSOL全国執行部国際関係書記、および社会主義左翼運動(MES、ブラジルの第4インターナショナルメンバー)の活動家
▼ジャーナリストで連邦公務員のアナ・C・カルバルハエスはPSOL創立メンバーで、第4インターナショナル執行ビューローの一員。(「インターナショナルビューポイント」2026年5月28日)  

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