米国 トランプ・ネタニヤフの瓦解

付帯的損害を内包する世界

デイヴィッド・フィンケル

容認できない
帝国主義戦争

 トランプはおそらく誤解されていた。対イラン戦争は「無条件降伏」で終わるだろうと彼が約束した時、われわれは、それには、「降伏」は彼によるものだろうとの意味があったとは実感していなかった。
 しかし冗談はさておき、戦争は本当に終わっているのかどうか、また次に何が出てくるか、に関する渦巻く不確実性の真ん中で、われわれがはっきりさせる必要のあることがいくつかある。先ず第1にこれは、恐るべき世界的結果を伴う、付帯的な損失を抱える世界全体を伴う、忌まわしい帝国主義戦争だった。
 第2に、一旦戦争に乗り出してしまったからには、不可欠なことは、地域全体の征服というかれらの目的で打ち破られるべきは米国とイスラエル、ということだった。われわれは声を大に言わなければならない。これは「トランプの戦争選択というだけではなく、多くの民主党政治家も行うことだと、そしてしかしそれは当然負けるべきものだと。
 第3にわれわれは、大量殺害と今年を含み何十年にもわたったそれ自身の住民の処刑という記録を抱えた、そうしたイランの殺人的体制には何の同情もなくこれを言う。しかしその一方トランプは、「助けは近づいている」などと空約束の騒音を出し続けていた。
 第4に、トランプとネタニヤフのならず者政権間にある険悪な分裂には実体があり、パレスチナ連帯闘争に対しては戦術的重要性がある。
 しかしながら戦略的には、米・イスラエル間のパートナーシップは無傷なままだ。そして、提案された「米イスラエル防衛技術協力イニシアチブ」によって、被害は極大化する形で高められるかもしれない。この協力関係は、この二国の軍事・産業活動を本質的に合同させるための2027年会計年度国防権限法案の中にある。

各方面での
瓦解の実態


 トランプと彼の顧問の何人かは、即座の軍事的勝利、イラン体制の急速な崩壊、さらにベネズエラ2・0モデルに基づく従属的政権の任命という不条理な見込みによって、米国大統領を戦争開始に引きずり込んだとして、ネタニヤフに猛烈に怒っている。結局トランプは、「壮大な猛威」(今回の対イラン戦争の作戦名:訳者)開始時に彼が傲慢にも約束したことを何ひとつ達成することなく現実に屈服した。
 MAGA基盤の一部は戦争を始めたことでトランプに猛烈に怒っている。他方、多くの親イスラエルネオコンタカ派、また民主党政治家も含む何人かの「実利本位の中道派」までも、彼が仕事を続け「それを仕上げる」ことができなかった、と怒っている。金融市場は、この戦争が続いた場合の世界経済の大出血というパニックに近づきかけていた。そしてほとんど決定的なことだが、米国住民は、建設的な目的は皆無と正しくも見ているもののせいで、戦争のインフレ誘発的大波の下でよろよろ歩いていた。
 イスラエル――そこでは2023年10月7日以来ユダヤ人口の多数が、悲劇的だがパレスチナでのジェノサイドとレバノンでの破局的な苦しみに慣れてしまっている――内部では、戦争が始まった時、トランプの人気がかれら自身の首相のそれを通り越して上昇した。
 米国―イランの「覚え書き」によって、イスラエルでのトランプの政治的名声はがた落ちしている。ネタニヤフの場合彼は、極右、宗教的原理主義者、また本質的にネオナチ入植者のポグロム主義者からなる彼の連合を維持するため、さらに彼自身の腐敗裁判の棚上げを維持するため、永久的な戦争を必要としている。そして、イスラエル内のうわべだけの主な野党は今、戦争を始めたとしてではなく、米国が指令した休戦の「恥辱」を受け容れているとしてネタニヤフを非難している。
 このイスラエル政権の場合、したがって米・イランの合意を吹き飛ばし、この破滅的な戦争の再開を強いることが不可欠になっている。それこそが、もうひとつの「休戦」取引直後に毎日市民数十人の殺害を伴ってイスラエルがレバノン爆撃を続けている理由だ。

諸々の結果が
世界的に波及


 米国、イスラエル、そしてイランのもっと幅広い地域政治の中でこれがどこに導くか、それを明らかにするには時間を要するだろう。しかし、この帝国の瓦解の中で、中東(ある者の呼称にしたがえば西アジア)と世界の民衆がどのように付帯的な損害を受けるかを見逃さないようにしよう。
 ホルムズ海峡封鎖の長期的影響には、最低でも1年完全には判明しないような、グローバルサウスの飢餓という含みがある。そしてこれは、太平洋における「スーパー・エルニーニョ」現象が農業に影響を与える可能性がある期間に一致しているのだ。
 南部レバノンでのイスラエルの占領―併合主義者の乱暴狼藉は、レバノン国家の存在そのものを脅かしている。ガザと西岸では、パレスチナ民衆が入植者の植民地主義および米国と欧州の無関心の祭壇に供えられる人間の捧げ物になっている。
 イラン体制がたとえ戦争に勝利したとしても――少なくとも、その生き残り、ホルムズ海峡の支配、制裁軽減の保証、さらに湾岸諸国からの巨額再建助成金という約束として――、イランの民衆が勝利しているわけではない。百万人以上のイラン人は新たに失業者になり、また数千人あるいは数万人が政権によって今年はじめに殺害されたのだ。
 そして思い起こそう。イラン大統領は1年前――2025年の「12日間戦争」の前、抗議行動参加者の大量殺害の前、さらにもっとも新しい戦争の前――、首都のテヘランは水を使い果たすと思われるがゆえに結局は「避難」を迫られるだろうと国民に警告していた、ということを。あたかも、住民にどこか行き先があるかのようにだ。
 イランの国内的な危機は、イランは今や「4番目のグローバルパワー」となっているとの、もっとよく分かっていると思われる何人かの地政学専門家や反帝国主義左翼の部分が言明するシナリオを不可能にする。
 対イランの米国とイスラエルの戦争は、それが解決できない問題をつくり出す帝国主義のもうひとつの事例になっている。あらためて、この戦争における米国・イスラエルの敗北、および米・イスラエルの部分的亀裂は歓迎されるべきことだ。そして、このすべてが米国政治におけるトランプの真綿で絞め殺すような支配を弱めるとすれば、なおのことはるかにもっとよい。
 しかし、これが自動的に進歩的な解決に向け、まもなくどこかで道を開くとの幻想があってはならない。そうした解決は、多くの大衆運動、民衆的な決起、また組織化されるべきものとして残っている代わりの政治を、これから必要とするだろう。(2026年6月27日、ソリダリティ・ウェブサイトより)

▼筆者は米国の社会主義組織かつ第4インターナショナルのシンパサイザー組織であるソリダリティが発行する「アゲンスト・ザ・カレント」の編集者。(「インターナショナルビューポイント」2027年6月28日)  

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