「中国異論派」(チャイナ・デヴィアンツ)とのインタビュー  2023年1月19日

政治的に覚醒した中国の若者にとって次は何か?

編集者による注

 「中国異論派」(チャイナ・デヴィアンツ)は2022年11月に結成された中国本土出身の海外留学生の活動家集団である。四通橋での彭載舟の決起と「白紙革命」(訳注1)は、中国および海外の中国人社会において、ここ数十年間で見られなかった規模での中国支配体制に反対する大衆動員をもたらした。中国の工場労働者や都市住民が、いまや放棄されてしまった政府の「ゼロコロナ」政策に反対する大衆的抗議行動の最前線に立っていた一方で、大学生たちもまた、きわめて厳しいパンデミック管理規制の撤廃を要求するとともに、(彭載舟の要求に反応して)民主主義、言論の自由、法治、民衆に対する政府の説明責任を要求することによって中心的役割を果たしてきた。
 「中国異論派」の政綱は、こうした新しい世代の民主化運動活動家と同様に、依然として発展途上にあり、運動が成長するとともに変化する可能性があることは間違いない。運動の発展の道筋を予測することはできないとしても、われわれは中国左翼のための新たな空間が運動の中で拡大することを願っている。そのことに留意しながら、この中国人グループの声に(それはしばしば曲解され、無視され、たいていの場合沈黙を強いられている)、こうした直近の闘争の高揚における多くの草の根の見解の一つとして注目することは重要である。この集団と対話することによって、われわれは、中国の若者の政治化が急速に進むとともに絶えず変化しており、それを常に把握する必要があることをより強く認識したのである。特に、数十年にわたる専制主義的な抑圧、非政治化、社会のアトム化のあとでは、そうした変化は始まったばかりの中国の民主化運動の発展につきものだからである。われわれはまた、新たな世代の中国人活動家の見解と経験を共有したいと考える。そして、「中国異論派」が明らかにした経験や考え方を社会的に横断して共有し、討論することを推進したいと考えている。それは中国国内、国外、中国の周縁地域[新疆ウイグル、チベット、台湾、香港などを指す]における民主主義と自決権を求める草の根運動の発展にとって重要だと考えるからである。

声を上げられる空間をつくる


─「中国異論派」について話してほしい

 中国共産党による長期にわたる抑圧は昨年11月に限界点に達し、中国内外の中国人民衆が体制に対して決起することを促した。しかし、数十年にわたる抑圧的支配と非政治化の結果として、中国社会はアトム化[個人個人にバラバラに分断されていることを指す]してしまい、意味のある大衆動員や大衆組織を作り出すことができなかった。「中国異論派」は、中国人活動家が結集し、信頼関係を作り出し、中国共産党に反対する集団的な抵抗キャンペーンを継続することができるような、対面で意見を述べ合える場を目指している。われわれは、被抑圧民衆や周縁化された人々にとって、「中国異論派」が体制による監視から逃れて、声をあげられる空間になるようにしたいと考えている。
 われわれは専制主義的支配と中国共産党による組織的な抑圧体制に明確に反対している。われわれは中国とその周縁地域における民主化のために戦うだろう。中国のような国では、体制に公然と抵抗する人々は大きな個人的リスクを負っている。しかし、中国における民主主義と法治は、われわれが真に献身的な闘争をおこなうことによってしか達成されないだろう。彭載舟が四通橋の上で横断幕を掲げたとき、彼は自らの行動が中国、在外中国人社会、世界の至る所でこれほどまでの反響を生むとは想像すらしなかったかもしれない。
 われわれは現在のところ、在外中国人の中で組織的絆を創り出すために活動している。同時に、来るべき大反乱に備えて、「壁」の向こう側[中国本土]にいる人々とのつながりを作るためにも活動している。われわれがすべきことは、反乱が起きたときに革命に向けた可能性を成熟させるための土台を準備することである。
 いかなる救世主も存在してはいない。われわれは自らを救い出さなければならないし、自らの未来の希望のために戦わなければならない。[このくだりは、中国版インターナショナルの歌詞を彷彿させる]

人々を動員しアトム化と闘う

─「中国異論派」を結成しようと考えたのはどうしてか?

 われわれの個人的経験から、われわれの周りには興味深い理論や意見を持っている人々がたくさんいる。しかし、われわれには、これを実践に移し、ともに活動する空間がない。「中国異論派」を結成した理由は単純で、経験を積む機会を提供することである。それに加えて、われわれは勇敢で、異なる意見を持つ人々とともに一緒に活動したいと考えたのだ。
 「中国異論派」は何よりも北京の四通橋での決起の結果として始まった。その決起は、何もしないでぼんやりしていることなどできないとわれわれに思わせたのだ。[2022年10月29日の]ロンドン・トラファルガー広場でのデモに多くの抗議行動参加者が加わったことで、われわれの自信はさらに深まった。しかし、中国本土の人々を組織しているグループがないこともわかった。このことが「中国異論派」を結成するきっかけだった。われわれの目的は人々を動員して、アトム化と闘うことである。

四通橋決起が沈黙破る道示した


─主なメンバーは中国人海外留学生なのか?

 その通りだ。われわれは主に中国本土出身の海外留学生と最近の卒業生で構成されている。われわれは組織化のために安全なオンライン・プラットフォームを使っている。そして、対面での定期的な討論もおこなっている。われわれはソーシャル・メデイアで話しあったり、組織化したりすることで信頼関係を作ってきた。
 われわれの多くは、まず抗議行動やデモのような対面の行動で顔を合わせた。何人かはオンラインでテレグラムのグループを作った。そして、そうしたグループにいた人が直接に会合を持ち始めることもあった。現実生活の中でもっと頻繁に集まるようになると、単なるオンライン上での名前以上にお互いをよく知るようになった。

─あなた方のグループの中で、四通橋での決起に対する反応はどうだったか?

 四通橋での決起は、長く抑圧されていた感情が直接行動へと向かうきっかけとなった。体制の専制的で非合理的な統治に不満を抱き、これが予見しうる将来にまで続いていくという見通しに苛立ちを覚えている人々は大勢いた。その体制の支配者や官僚の側が自尊感情や説明責任を無視していることに大きな不満を持っている人々もいた。さらに、中国本土における抑圧的な生活条件に意気消沈している人々もいたのである。こうした人々すべては四通橋での決起によって、現実生活での不満を表明するよう励まされ、ポスターを貼り出したり、お互いを見つけたりするようになった。
 ことわざにあるように、歴史が反乱思想の蓄積であるならば、四通橋での決起は反乱の炎を灯す点火剤である。
 「躺平」[頑張るのを諦める](注1)や「擺爛」[どうにでもなれ](注2)によって不満を受動的に表現し続ける人々がいるが、私の周囲にいる人々を見ると、「躺平」している人々は本当には「躺平」できないし、「擺爛」している人々も本当には「擺爛」することはできていない。実際に立ち上がることを選択した人々がいるからだ。
 中国に悲嘆がある限り、たとえそれが生涯かけてのことになっても、あるいは何世代かけてのことになっても、私や友人たちは活動を続けるだろう。

─新型コロナウイルスのパンデミックが起こってからの最近数年間で、「中国異論派」メンバーの政治的発展はどのようにして形成されたのか?

 私の考えでは、人々の見解は(政治に関しても、それ以外の問題でも)自らの人生経験にもとづいている。われわれはさまざまな活動で協力しあったり、集団で関わったりしているが、われわれ全員にはそれぞれそうする理由があるし、それぞれ願望や物事がどうあるべきかという考え方を持っている。私の考えでは、われわれの組織が最終的に人々からさまざまな影響を受けた混合物になることを受け入れるとしても、必要なことはわれわれの集団的力量をより広範で、より強力な行動規範へと統合する方法を見つけ出すことである。その一方で、われわれの組織が存在することによって、われわれが個人的に見解を明らかにしたり、さまざまな問題について考えたりする前に、連帯や意見の一致がわれわれの大志を実現するもっと現実的な方法であることを人々が理解することができる。

何より個人間のつながりを守る


─「白紙革命」のあとで、中国本土出身の海外留学生が自らの声を伝えるために何ができると思うか?

 個人的には、私の目標は私自身の安全を確保しながら、政治闘争を通じて多くの人々とつながることである。
 1989年の[天安門広場の]抗議行動参加者はあまりにも早く弾圧されてしまった。このことによって、中国の政治的発展は労働者階級の献身的活動家の多くを失うという結果となった。多くの人々が亡くなり、もっと多くの人々が恐怖を抱えながら生き続けた。そして、政治的に迫害され、市民社会に参加する能力を奪いとられてしまった人々もいた。これはこの世代がわれわれに授けてくれた最も重要な教訓である。つまり、より良い社会や政治の地固めをするためには、最も重要な考慮すべき単位は個人なのである。このように、われわれは、自らがこんなふうに扱ってほしいと考えるように、他の人を扱わなければならない。それはお互いの安全を守るためである。このことが未来を守る道だからである。
 同時に、お互いの見解を理解するためには、つまり、お互いを安心させ、われわれの見解を共有し、疑念や疑惑によって罠に嵌らないためには、こうした個人間のつながりを守ることが重要である。
 中国国内の人々にとって、国外の友人と安心・安全に連絡をとり、さまざまな場所で起きていることを調査・学習できるのは重要なことである。
 中国が直面している問題はいつか危機的状況に陥るだろう。同時に、われわれにとって将来の敵対者となる官僚や支配者は、その支配をいかに維持するかについての知識と経験をわれわれ以上に持っている。われわれは行動すべき適切な機会を待たなければならないだろう。

自由で民主的な場の抑圧が問題

─中国の周縁地域で進行中のさまざまな自決権をめざす闘争について、中国出身の海外留学生の間ではどのような見解があるのか? こうした闘争と中国本土の民衆の闘争との間の連帯の機会があるとあなたは考えているか?

 中国出身の海外留学生がどんな意見を持っているかについては、調査をまだおこなっていないので、彼らが何を考えているかを一般化できるような情報は十分ではない。しかし、われわれに関する限り、体制が「華夏」(注3)のような概念、中国による台湾統合、「習近平の中国の特色ある社会主義」という「大義」を宣伝することによって推進している民族主義的な感情をともなう一体感はゆるやかに消えつつある。しかし、各個人の政治的な道のりは多様なものとなるだろう。
 新疆ウイグル、チベット、台湾については、中国の人々にとって、遠く離れた土地ではなく、日常生活の中で実際に頻繁な交流をしている場所である。こうした地域の民衆を、充実した生活をする権利を平等に持っている生身の人間として見ること─このように理解すれば、体制が宣伝によって彼らの人間性を奪おうとする試みを不可能にするのだが─によって、中国の「統一」や「団結」という粗野で空想的な概念を放棄することができるようになった。体制が投げかけるこの種の美辞麗句は、体制が中国民衆をだますために用いている不誠実なスローガンでしかない。こうしたスローガンが現実を表していると本当に考えている人々はますます少なくなっている。中国民衆だけではなく、世界中の人々が、主権国家とナショナリズムという枠組みがわれわれの政治的想像力をイデオロギー的に支配していることを考慮すべきである。中国共産党と同様の民族主義的・国家主義的論理で活動している人々については、われわれは判断を保留することにする。
 それでも、中国やその周縁地域の問題を解決する方法について、異なる意見を持つ人々とわれわれとの間に線引きするつもりはない。こうした意見の相違は、民主的な枠組みとプロセスが存在すれば、すべての人々によって公然と誠実に討論されるべきものだからだ。現在の問題は、私たちに意見の相違があることではなく、中国共産党がその支配を維持するために数十年にわたって進めてきた抑圧、非政治化、社会のアトム化のために、議論するための枠組みや意見を突き合わせる場がないことである。われわれは、自由で民主的な議論や意思決定が存在する空間を作り出さなければならない。

中国から発信するチャンネルに


─中国本土におけるさまざまな市民的権利を求める闘争について、中国本土の学生がどのような役割を(国内外で)果たすことができるだろうか?

 私の考えでは、われわれにできる最良のことは大衆の政治意識や批判的思考の能力を高めることだ。しかし最終的には、移民労働者、工場労働者、LGBTQ+コミュニティといった周縁化された部門が自らの要求を自分自身で表明することが重要である。われわれが果たすことができる役割は、これまで禁止され、無視されてきた中国についての視点を中国から発信するチャンネルになることだ。われわれの活動が進むにつれて、国内外の中国人学生に対して、「壁」の両側からの反乱思想の流れを橋渡しするチャンネルを提供できるようになるだろう。われわれはみんな、人々が望む生活を送れるような変化、つまり差別なく自由に生き、発言できるようになることを心から願っている。

非中央集権的な自発的活動


─あなた方の現在のキャンペーンはどういうものか? そして、あなた方が共有したいと考えているより長期的な目標があるのか?

 われわれは中央集権的ではない組織で、メンバー全員が活動に自発的に参加している。この中には、対面での会合・ワークショップ・抗議行動を組織すること、政治的文献を制作・出版すること、活動家・協力者のネットワークを維持・拡大すること、中国におけるさまざまな闘争の間での協力関係を促進することが含まれている。われわれの活動や組織的目標についてもっと知るためには、インスタグラムのページを見ていただきたい。

われわれの設定課題は不変

─「白紙革命」に続いて、中国共産党が新型コロナウイルスに関する規制を突然転換したことについてどのように考えているか? そのことで中国の政治状況に関する「中国異論派」の分析に変化は生まれたか? あなた方の目標は変わったか?

 2週間もたたないうちに中国全土を3年近くにわたって支配した規制のほとんどが完全に撤廃されたので、中国共産党の政策転換はある程度までは驚きだった。以前はきわめて危険だと宣伝されていたウイルスが突然、症状の重さが普通の風邪と同じになったのだ。しかしながら、そのような政策転換は、規制によって引き起こされた混乱がすでに経済予測をきわめて不鮮明にしていたことを考えると、予期できなかったわけではない。
 「新型コロナウイルスとの共存」という中国共産党の新たな政策が完全な失敗であることは、毎日の感染率が上昇し、新型コロナウイルスによる死者数が増加していることを見れば疑いの余地はない。病院の病棟が患者であふれ、緊急病室が不足しているという悲劇的な情景は、中国共産党体制が民衆の生命や生活を何ら重要だと考えておらず、彼らが優先しているのは自分たちが社会を支配し続けることだけであるということを改めて実証した。残念なことに、体制は偽情報の捏造や検閲の強化によって、悪意ある外部勢力が都市封鎖に反対する抗議行動の黒幕であると主張する虚偽の物語を流し始めた。それに代わって、政府そのものは慈悲深い中国の「救世主」として描かれ、政策転換によって生じたすべての悲惨な出来事が抗議行動参加者のせいにされている。
 しかし、われわれは、そうした試みは最終的には無駄になるだろうと大胆に言うことができる。中国経済は混沌と混乱によって苦しめ続けられている。海外からの投資が中国から引き上げられる傾向はそのまま変わっていない。「白紙革命」は依然として中国民衆を励まし、抑圧に反対する抵抗を常態化している。重慶の医療化学工場での大規模な抗議行動は、労働者の決意が鎮圧されていないことを示す表れの一つである(訳注2)。
 この政策転換を来るべき冬[当局の弾圧]と結びつけることで、いくらか士気が低下したメンバーがいたかもしれない。しかし、われわれは依然として確固たる決意を持ち続けているし、われわれの抵抗運動が正しいことを信じている。(一部略)
 われわれの目標は、根本的には、反ロックダウン抗議行動の最初からずっと同じである。将来において、われわれは自らの反全体主義アジェンダを擁護し続けるだろう。体制の政策転換に応じて、われわれは自らの戦術・戦略に適切な修正を加えるだろう。その一つの例として、われわれは数週間後のうちに社会運動や論争的な政綱について討論する新たなワークショップを開催する計画を持っている。

(注1)「躺平」とは「寝そべる」という意味。過重労働や社会からの期待という過酷な圧力に対する中国青年のライフスタイルであり、社会的抵抗でもある。「躺平」している人々は、もはや生活の満足や経済的成功を約束していない猛烈な競争や過重労働という考え方を忌避している。
(注2)「擺爛」とは「腐らせる」という意味で、すでに悪くなっている状況を受け入れ、積極的にもっと悪くさせること。このことばは中国のネットユーザーによって、怠惰やわがままを好み、「競争」から降りるという意味で使われている。
(注3)「華夏」は一般的には漢族文化を表現することば。中国共産党は、この概念を統一された中国の民族アイデンティティを推進するために、つまり、中国の少数民族、とりわけ新疆ウイグル自治区における少数民族の中国化や、漢族の言語と文化によって定義される単一の中華民族への少数民族の従属をすすめるために利用している。
(流傘ネットワークのサイトによる)

(訳注1)中国共産党大会直前の22年10月13日に北京市内の四通橋に「労働者と学生のストライキで独裁国賊習近平を罷免せよ」「PCRではなく食事を、ロックダウンではなく自由を、指導者ではなく選挙権を」などの横断幕が掲げられた。実行者はエンジニアでリベラリストの彭載舟で、現場で拘束されたのちの消息は不明。党大会後、厳しいロックダウン政策によって鎮火が遅れたウルムチでの火災事故の犠牲者を追悼する各地の市民らの取り組みへの規制から、全国の大学や都市部で抗議行動が活発化した。学生や市民らは言論弾圧を回避するために白紙を掲げたことから「白紙革命」と呼ばれた。

(訳注2)重慶の中元匯吉製薬工場は全国100か所ある公立コロナ検査研究所の23研究所にPCR検査キットなどを納品し、大量の検査キット製造の需要に応えるため人材紹介所や手配師らを通じて短期契約の労働者を大量に雇用し、莫大な利益を上げてきた。同社はゼロコロナ政策の終了にあわせて一万人近くの労働者の春節休暇を繰り上げて実施すると発表。それは労働者たちにとっては契約期間の繰り上げ解雇となり、契約満期によって支払われる特別賞与と春節特別手当の喪失を意味した。会社と手配師の一方的な契約変更に抗議する労働者らが23年1月7日に工場で決起し、約束どおりの支払いを求めて工場をデモ行進するなどして手当の一部を勝ち取ったが、導入された機動隊の鎮圧で負傷する労働者らもでた。同社は21年には全国抗コロナ先進企業にも選ばれ、経営者の吉権は22年に重慶市人民協商会議のメンバーにも選ばれている。

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