米国 反トランプ決起

現段階での評価と今後の展望

労働者階級の核心部分の決起へ

アゲンスト・ザ・カレント編集部

 大規模で麗しい民衆的な抵抗が、連邦裁判所を含む政治的権力の所在地のいくつかにさみだれ的に来つつある――少しも早くはなく、はるかに多くというわけでもないとしても――。それは、トランプ就任後最初の一〇〇日プラスの日々から渡された重要な引き継ぎとなっている。しかしわれわれは、今後アップダウンのある長期の戦闘になるものの、辛うじて始まりにいるにすぎない。

さまざまな抵抗の現状


 6月14日の「ノー・キングス」集会は、反抗的でもあり人を勇気づけるものでもあった。重要なことだが、トランプ/MAGAの攻撃が都会の米国に加え田舎からも暮らしを絞り取る怖れがある中で、大都市だけではなくもっと小さな町や市でも、5百万人が繰り出したと見積もられた。
 『テンペスト』共同誌からの力強い報告、「ロスアンゼルスの戦闘」は、そこでの移民防衛と抵抗の初期の日々を記録にとどめている。左翼勢力と運動勢力に対し諸々の脅威が急増中であり、恐怖が支配する下での、移民コミュニティの暮らしの防衛と抗議を弾圧するために、国境警備隊と違法な軍部隊の動員が到来しつつあるのかもしれない。抑制があまりに外される中で、恐怖が移民たちが自ら米国外に出るよう導いている。
 このすべてに加えて、たとえばジェンダー表明ケアに対する州の禁止のような、純粋のサディズムと冷酷さの行為がある。ちなみに例示した州の禁令は、米最高裁によって容認されることになった。
 頂点にいる者たちに聞き入れるつもりがないことを理由に、抗議の行進や集会、請願、自治体庁舎でのデモ行動、あるいは利用できるあらゆる他の活動家の可能性(権力のテコを確保していない)は無益、のようにしばしば見えるかもしれない。しかしそれは部分的に、かれらには聞き入れるつもりはないとかれらが人々に考えさせたがっている、ということが理由なのだ。
 底辺から吹き上がる民衆的な怒りと反感がなければ、政権の鼻持ちならない法違反を遅らせるような、これほど多くの裁判所の裁定はとうていなかったと思われる。あるいは、それらにまだ残っているDEI(多様性・公平・包摂)プログラムの一掃に対する少数の企業の拒絶も、ハーバードのような学術センターをトランプ大学に変えるような政権の攻撃に対する(十分ではない)対応もなかっただろう。
 われわれは本号の他のところで、トランプの攻撃に対する大学当局による最良でも硬軟混合の対応を議論している。たとえば、ミシガン大学による「早まった降伏」や、その構内における警察国家的空気だ。そして、そのショー的な抵抗でハーバードがリベラルメディアの寵児となっているとしても、その大学はその中東研究センターを先手を打って実質的に破壊し、その学部の指導部を粛清したのだ。これは降伏に向けたもくろみだった。そしてそれをトランプ一味は、他への見せしめとしてハーバードの破壊を公然と追求しているために無視している。
 中でも高等教育新聞が指摘したように、DEIに関して妥協する(「行きすぎ」があるとしてトランプに同意しているハーバードのように)ことは致命的だ。DEIは基本的に、平等への障害を取り除くという問題だが、トランプのやり方は、不平等を当然であり受け入れ可能として規範化しようとするものなのだ。

不十分だが政府の行動を困難に

 簡単にまとめれば、これまでのところ諸々の抗議は、われわれが前にする社会的かつ政治的な非常警報に見合うにはおよそ十分ではない。とはいえそれらは、行動主義が大事と明らかにする助けにはなっている。
 「マフムード(コロンビア大学でパレスチナ連帯行動を組織した院生のマフムード・ハリール:訳者)解放」の唱和で実に不快な臨時新学長に卒業式で公然と反抗した勇気あるコロンビア大学の学生たちは、国中でまた世界的に反響するひとつの実例を見せた。パレスチナ人の権利における数十年の長きにわたる進歩主義政治からの孤立は打ち破られている。それは、民主党全国指導部がその問題にふれるのを不名誉にも拒絶しているとはいえ、ひとつの大きな前進だ。
 われわれは、抵抗の現状とその見通しをここで探求する中で、それがこれまで成し遂げたものを誇張したり、その欠陥を無視したりはしない。
 抵抗はこれまでのところ、イスラエルと米国が支配するガザにおけるジェノサイド的破壊や飢餓を、あるいは米国議会の二大政党の共謀を止めていない。しかしそれは、パレスチナにおける恐るべき事態に対するメディアの準報道管制を突破し、イスラエルの封鎖・飢餓戦略をめぐる一般民衆のうろたえを高めてきた。
 抵抗は、心を締め付ける結果を伴って移民コミュニティに垂れ込める大量追放の恐怖を止めてはいない。とはいえ、いくつかの都市と州におけるコミュニティの行動主義は、注目に値するほど勢いを緩ませ、警察国家の作戦管理者に困惑を与えてきた(農業、建設、またホテル業をぶちこわすという危険は、トランプ/MAGAのならずもの一党内部に分派的論争を引き起こしてきた)。
 それは、エルサルバドルの地下牢へのキルマール・アブレゴ・ガルシアの演出された拉致に裁判所が異議を突き付ける余地を与えた。この拉致は、地区判事のポーラ・シニスが言ったように「良心にショックを与えている」がそれは、少なくともショックを受けている良心のある公衆の諸部分がいるからだ。それこそが、彼が米国に戻された――彼を家族から引き離して閉じ込めたままにし、移民コミュニティを絶え間ない恐怖の中にとどめるひとつの方法として、政府がでっち上げの「密輸」容疑で告訴したとして――理由だ。
 民衆的怒りはまた、南スーダンのようなところへの有無を言わさない移民追放を含んで、等しく恐るべき事例が明るみに出るにつれ、事態の変化をも進行させている。

諸々の限界の理由は?


 その道義的憤激は絶対的に必要だが、しかし等しく不可欠なのは、いわゆるトランプ・アジェンダを機能不全にすることが難しい理由を理解することだ。
 第1に、その多くは支配階級の設定課題であり、あるいは少なくとも、米資本家階級の重要な部分のそれ、ということだ。これは、下院で1票差で採択されたトランプの大げさなヘド袋的予算法案を深く考えることを通じて見えてくる
 読者は次のように問うかもしれない。つまり、長期的にはこの国を確実に破綻に向けるような大赤字予算に、債券市場を沈み込ませる怖れがあるような関税戦争に、また同時に、トランプの田舎の心臓部を含んで何百万人という米国人を医療ケアのない貧困へと今後沈めるような残忍なカットに、何が資本を引きつけているのか、と。
 ウォールストリートジャーナルが先導するビジネス報道は、かんかんに怒ってトランプの関税とその一貫したよろめきを非難している。しかし、富裕層と億万長者向けの永続的な減税はそれらの層の強欲に迎合しているのであり、また、メディケア(高齢者医療保障制度:訳者)、メディケイド(低所得者向け医療保障制度:訳者)、食糧支援、さらに住民にとっての不可欠なサービスを切り刻むような「財政規律の必要」というイデオロギー的アピールもまた同じだ。富裕層向け減税はもちろん、多数に押しつけられる異様な冷酷さによって犠牲にされる可能性のあるあらゆるもの以上に、これから赤字を膨らませるだろう。
 関税論争に関しては、その主張にいくつか確かな帝国主義の論理がある。つまり、米国が世界を支配し続けるためには――それはもちろんわれわれ社会主義者の設定課題ではないが、それが米資本家の野心であることはほとんど明確だ――、鉄鋼、アルミ、コンピュータ素子、また半導体で米国には信頼できる国内工業が必要、という主張だ。
 しかしこれは、中米のバナナやメキシコのアボカドに関する関税ではほとんど意味をなさない。そして、米中間という世界での中心的な競合関係の点から見て、欧州、オーストラリア、カナダといった米国の最も重要な戦略的な同盟国に対し大損害を与えるような関税には、合理的な動機がほとんどない。
 それでも、共和党綱領の核心部分に対しては一定レベルのエリートの支持がある。それは特に、移民や貧困層のコミュニティに加えられる打撃、ジェノサイド下で生き死ぬパレスチナ人、米国援助の即座の打ち切りにより当てもないままにされたグローバルサウスの飢えた子どもたち、これらに対する無関心だ。
 これらの同じ国の多くは今、トランプの拡張された旅行禁止リスト上にある。それはおそらく、彼が追放を計画しているもっと多くの人々を、それらの国が受け入れることと引き換える交渉の札だ。
 第2に、また戦略的な展望からは最も重要なことだが、対トランプ抵抗は大きな運動になっているが、しかし本質的にまだ深く階級に根付いたものにはなっていない、ということだ。われわれは左翼の中心的な任務を、労働者階級の核心部分が集中する運動の建設として理解している。そしてそれこそが、現在の非常事態の中で、また長期的に必要なものだ。
 もっと正確に言えば、現在の集会や行進には確かに大きな数の労働者階級の民衆やその家族の参加がある。しかし、組織された労働者とアフリカ系米国人コミュニティーの諸機構は全体として姿を見せていない。どのようにこれらの障害を克服するかには、追加的な議論が必要になる。

必要なこと:幅広い階級の運動


 階級的連帯の目立った表現は、キルマール・アブレゴ・ガルシアへの支援であり、それは彼の板金工労組の、メリーランド州SMART100支部によるものだ。SEIU(サービス従業員国際労組)カリフォルニアは、移民労働者を守ろうとして暴力をふるわれ逮捕された、その人気のある支部長のデイヴィッド・フエルタを守るために結集してきた。これらの事例は必要とされることのほんの始まりだ。
 UAWは5月19日の「干渉するな!」デモを承認した。しかしわれわれは、いたとしてもその組織メンバーが繰り出したという印をほとんど見なかった。逆にその委員長のショーン・フェインは、2024年大統領選では組合員討論も民主的な決定策定もないままカマラ・ハリスに労組承認を与えたのだが、今はトランプの自動車関税支持へと変節している。そしてそれは、カナダとメキシコの自動車労働者との連帯に対する破壊的な切断だ。
 等しく困難なことは、トランプの諸政策――連邦雇用の寸断、警察改革に向けた承認令の取り消し、政府内だけではなく、学会や米企業やもっと多くも貫く強制的なDEIプログラム一掃――が内包する悪質なレイシズムと対決する黒人コミュニティの闘いが抵抗にとって決定的に重要だが、抗議のデモにそれが十分に現れていない、という事実だ。
 4月5日と同19日の「干渉するな!」デモでは、アフリカ系米国人の参加がたいていは低水準に見えた。これは、労組の関与における全般的な弱さを、またおそらく黒人コミュニティと信仰に基づく諸機構への不十分な働きかけを反映している。「新貧しい人民のキャンペーン」のウイリアム・バーバー師が示した指導性は、多様でさらに力強い抵抗力にもなり得る大衆運動に向けた潜在力をはっきり見える形にしている。
 理解できることだが、恣意的な拘留と有無を言わせない追放からなる脅迫下にある移民コミュニティの参加は、かれらを守ることができる質的に大規模化した抵抗が出てくるまで、限定されたままだろう。

危機の中での前進に向けて


 トランプの極右的攻撃がもつあらゆるところ一斉の多戦線的質が、それらを人をひるませるものにしている。「正常な」時代には多数の弾劾に値する大統領の攻撃になると思われるものは言うまでもなく、1日毎に新たな非道が生まれる時、対抗はどのように可能なのだろうか?
 同時に、もっと強力な抵抗に向けた潜在力が、トランプが、均質ではないとはいえ、労働者階級のあらゆる層を今攻撃中、という事実によってもたらされる。
 民衆の怒りは、予算カットの悪逆、関税の愚行、また緊縮の全面的な影響が、標的にされた犠牲者の部類にいるとは認識してこなかった多くも含んで、何百万人もの人びとに打撃を与え始めるにつれ高まるだろう。米国内で、何らかの種類の政治的な爆発がうっすらと迫りつつある――それがもっと強力な抵抗の形を帯びるか、バラバラな対応になるか、あるいはあり得ることとして反動的でレイシスト的な決起になるかは回答が空白な問題であるとはいえ――。そしてその爆発は部分的に、今日の運動とわれわれ左翼の者が高まる危機にどう立ち向かうかによって影響されるだろう。
 われわれは最初に、民衆の怒りと反感は裁判所とエリート諸機関に「上へとさみだれ的に届き」つつある、と述べた。それらはそれらが進む限り良いことだが、決定的戦闘が頂点で闘われる、あるいは運動が解決のために民主党エリートを当てにできる、ということを意味しているわけではない。
 いわんやわれわれは、2026年の中間選挙結果を待ったり期待したりしてはならない(そこでいつもの騒がしい勝ち誇った傲慢さの中にいる民主党は早くも、それに関し何を準備しているかを言わずに、勝利を予測している)。
 諸々の危機が強まる中で、前進への道が、草の根の闘争と諸層が共通の大義へと結集すること――概括的に言えば、そのあらゆる多様性における労働者統一戦線――を助けていなければならない。一切のファンタジーを排することでわれわれは、米国の社会主義的左翼は独力でこれを見事にやりきることができる、と言いたい。しかしわれわれの中心的な責任は、6月14日を拡張しつつ、最大かつ最も効果的な抵抗に向けたこの努力に貢献することだ。(「アゲンスト・ザ・カレント」2025年7・8月号より)

▼「アゲンスト・ザ・カレント」誌は、第4インターナショナルシンパ組織の米国ソリダリティが発行している。(「インターナショナルビューポイント」2025年6月25日)  

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