インドネシアの暴虐は続いている

東ティモールの女性人権活動家が緊急現地報告

 5月17日、東京・雙葉学園同窓会館で「東ティモール・スピーキングツアー  
 正念場を迎えた東ティモール独立 女性人権活動家による緊急現地報告」が、ねばり強く東ティモール民衆への支援・連帯運動を続けてきた東京東ティモール協会の主催、アムネスティ・インターナショナル日本支部の共催、協力・日本カトリック正義と平和協議会で行われた。
 集いの開始にあたって主催者は、予定していた報告者の出国が東ティモール現地で準軍事組織によるテロの拡大によって遅れている状況報告と報告者変更について報告した。なお、出国が遅れていた東ティモール女性連絡協議会代表のマリア・ドミンガスさんは、後日訪日が実現し、準軍事組織によるテロ行為と人権侵害が拡大していることを報告。また、日本政府に対してインドネシア政府と軍にこのような行為を止めさせるために働きかけてほしいと訴えた。
 報告者のトップバッターは、3月に東ティモールを訪問していた鈴木隆史さん(インドネシア水産経済研究家)で、バトゥガデの要塞で準軍事組織「ハリリンタル(稲妻隊)」と遭遇したことや、4月にポルトガルで東ティモール人難民女性にインタビューしたことなどをビデオ上映をまじえて報告した。ビデオで証言した女性は、元東ティモール民族解放軍(ファリンティル)ゲリラでインドネシア軍によって夫が殺され、さらに拷問や性暴力を受けたことなどを語ることを通してインドネシア軍を糾弾し、東ティモールの独立を訴えた。
 次にベラ・ガリョスさん。彼女は、八九年から地下活動に参加、94年10月にカナダに亡命し、現在、東ティモール民族抵抗評議会のカナダのNGO・労組担当である。侵略時、ベラさんは、二人の弟、叔母とその家族がインドネシア軍に殺されたり、高校在学中に無理やり軍によってデポ・プロベラという避妊薬の注射を打たれたりなどの被害にあっている。
 今回は、全米スピーキングツアーを終えての来日でインドネシア政府と軍、準軍事組織が一体となって独立派勢力に対するテロを拡大させていることを怒りをもって報告し、参加者に対してこのようなことを止めさせるために日本政府への圧力を強めてほしいと訴えた(発言別掲参照)。
 続いて、ミカ・バレトさん(インドネシアで学ぶ東ティモール人学生の抵抗組織「東ティモール学生民族抵抗」に所属)は、ジャカルタで東ティモール連帯運動をインドネシア人の仲間とともに行ってきたことなどを紹介。また東ティモールの民生回復のためのコミュニティープログラムを展開しつつあることを報告した。
 報告会はアピールコーナーに移り、東ティモール問題を考える議員懇談会の江田五月議員、東京東ティモール協会、アムネスティ・インターナショナル日本支部、日本インドネシアNGOネットワーク、アジア太平洋資料センターなどから東ティモール連帯と、準軍事組織のテロ活動を止めさせるために日本政府への働きかけを行っていこうという訴えが行われた。最後に東チモールの歌が演奏され、参加者全体で連帯運動の強化を誓い合った。(Y)

ベラ・ガリョスさん(東ティモール民族抵抗評議会)の報告から

軍と民間軍事組織のテロが続く
住民投票の安全な環境は作られていない

東ティモールの独立を 「かけはし」5月31日号より
インドネシアの暴虐は続いている
東ティモールの女性人権活動家が緊急現地報告

 5月17日、東京・雙葉学園同窓会館で「東ティモール・スピーキングツアー  
 正念場を迎えた東ティモール独立 女性人権活動家による緊急現地報告」が、ねばり強く東ティモール民衆への支援・連帯運動を続けてきた東京東ティモール協会の主催、アムネスティ・インターナショナル日本支部の共催、協力・日本カトリック正義と平和協議会で行われた。
 集いの開始にあたって主催者は、予定していた報告者の出国が東ティモール現地で準軍事組織によるテロの拡大によって遅れている状況報告と報告者変更について報告した。なお、出国が遅れていた東ティモール女性連絡協議会代表のマリア・ドミンガスさんは、後日訪日が実現し、準軍事組織によるテロ行為と人権侵害が拡大していることを報告。また、日本政府に対してインドネシア政府と軍にこのような行為を止めさせるために働きかけてほしいと訴えた。
 報告者のトップバッターは、3月に東ティモールを訪問していた鈴木隆史さん(インドネシア水産経済研究家)で、バトゥガデの要塞で準軍事組織「ハリリンタル(稲妻隊)」と遭遇したことや、4月にポルトガルで東ティモール人難民女性にインタビューしたことなどをビデオ上映をまじえて報告した。ビデオで証言した女性は、元東ティモール民族解放軍(ファリンティル)ゲリラでインドネシア軍によって夫が殺され、さらに拷問や性暴力を受けたことなどを語ることを通してインドネシア軍を糾弾し、東ティモールの独立を訴えた。
 次にベラ・ガリョスさん。彼女は、八九年から地下活動に参加、94年10月にカナダに亡命し、現在、東ティモール民族抵抗評議会のカナダのNGO・労組担当である。侵略時、ベラさんは、二人の弟、叔母とその家族がインドネシア軍に殺されたり、高校在学中に無理やり軍によってデポ・プロベラという避妊薬の注射を打たれたりなどの被害にあっている。
 今回は、全米スピーキングツアーを終えての来日でインドネシア政府と軍、準軍事組織が一体となって独立派勢力に対するテロを拡大させていることを怒りをもって報告し、参加者に対してこのようなことを止めさせるために日本政府への圧力を強めてほしいと訴えた(発言別掲参照)。
 続いて、ミカ・バレトさん(インドネシアで学ぶ東ティモール人学生の抵抗組織「東ティモール学生民族抵抗」に所属)は、ジャカルタで東ティモール連帯運動をインドネシア人の仲間とともに行ってきたことなどを紹介。また東ティモールの民生回復のためのコミュニティープログラムを展開しつつあることを報告した。
 報告会はアピールコーナーに移り、東ティモール問題を考える議員懇談会の江田五月議員、東京東ティモール協会、アムネスティ・インターナショナル日本支部、日本インドネシアNGOネットワーク、アジア太平洋資料センターなどから東ティモール連帯と、準軍事組織のテロ活動を止めさせるために日本政府への働きかけを行っていこうという訴えが行われた。最後に東チモールの歌が演奏され、参加者全体で連帯運動の強化を誓い合った。(Y)

ベラ・ガリョスさん(東ティモール民族抵抗評議会)の報告から
軍と民間軍事組織のテロが続く
住民投票の安全な環境は作られていない

 私たちは民族自決のために23年間闘ってきました。インドネシアは私たちの民族自決を認めようとしていません。なぜならこのような政府を西欧諸国、日本などが支持してきたからです。
 現在、インドネシア軍によって操作された準軍事組織によって女性たちが殺されたり、拷問されたりしています。さらに共犯者たちが私たちの中にいて、こうした行為に加わっています。
 約2週間前にポルトガルとインドネシアの間で、インドネシアによって提案された東ティモールに対する自治案をめぐって合意署名がなされました。この合意をめぐっては、インドネシアのハビビ大統領が「もしもこの直接投票で東ティモール人が拒否したならば、東チモールに全面独立を認める」と言っています。
 私たちは、このチャンスを待ち望んできました。しかし、独立にむけての過程は非常に難しい状態にあります。というのもインドネシア政府と軍は、影で何千もの銃や武器、非常にたくさんのお金を東ティモール内の失業者に渡して、住民に対するテロ行為を続けているからです。
 インドネシア軍が東ティモールに侵略したのは、インドネシアのプロパガンダによると東ティモールの人たちが要請したと言っています。また、東ティモールで「内戦」があったと言っていますが、実際にはインドネシアが起こしたものです。23年間、インドネシアは国際社会をこのようにだまし続けてきました。この間、住民の三分の一が殺されてきました。
 今になってまたインドネシアは同じことを繰り返そうとしている。少数の準軍事組織に武器を与え、資金を与え、あたかも内戦が起きるような状態にしている。それを宣伝することによってインドネシア軍が今一度、世界に向かって「インドネシア軍がいないと東ティモール人は和解ができないんだ。インドネシア軍は治安のために役に立っている」と言いたいがためにです。
 今、準軍事組織と言われる人たちには、東ティモールの人たち以外に、見かけでは非常にわかりにくい西ティモール人やインドネシアから来ている人々も入っています。このような人たちが一般の住民のふりをしてまぎれこんでいます。それは東ティモールで強制的に準軍事組織に入れられた人たちを命令に従わせ、従わない場合に彼らを殺すためです。
 こういうケースは一杯あり、実際に私の伯父もインドネシア軍によって兄と父を殺すようにと命令された。それを拒んだためにインドネシア軍は、伯父と父を殺したのです。こうした状況をインドネシア軍は自ら作り出しておきながら、内戦だと騒ぎたてている。
 数ケ月前にインドネシア内の民主化勢力から東ティモール人は、インドネシアの6月6日の選挙に参加しなくてもいいようにという要請をインドネシア政府に出した。政府と軍は、これを拒絶しました。したがって政府と軍によって東ティモール人が強制参加をさせられている状態です。さらにインドネシアの独立組合は、政府に対して「東ティモールは自分たちの投票準備のために選挙への参加を強制すべきではない」という声明を出しましたが、これも拒絶されています。
 政府と軍は、東ティモール人に対して投票を強制するような罠をしかけている。準軍事組織を使って、インドネシアの選挙登録をしないと殺すと脅しています。1カ月前には、準軍事組織が独立派の家の前に旗を出すようにということを強制してきました。これをしなければ殺すと脅してきました。私たちはインドネシア人ではないから、総選挙に全く関心がないんですけれども、人々は自らの意志に関わらずインドネシア選挙に強制的に登録させられている。
 インドネシア政府は、日本、オーストラリア、英国、米国、フィリピン、ニュージーランドの政府に対して投票に対する手助けを求めています。けれどもこれらの国というのは、この24年間にわたって軍事的、経済的、さらに外交的な側面でインドネシアを援助してきた国です。だから住民が安全に投票ができるとは考えられません。
 8月8日に投票が予定されているのだけれど、その投票に向かって、東ティモールカトリック教会のベロ司教は、政府に対して投票の前に対立する人達の和解の過程をおくべきだと提案しましたが無視されています。さらに東ティモール民族抵抗評議会の議長であるグスマン氏は、東チモールに関連する人々で投票の前にお互いに話し合い、調整をおく期間をもつべきだと言っているんですが、これもインドネシア政府・軍によって無視されています。
 東ティモールの抵抗勢力は、「投票の前に人々が安全な環境下で、安心して投票できるようにインドネシア軍勢力を撤退させるべきだ。インドネシア軍が武器を与え、普通の人々を殺したり、子どもを襲って誘拐をしている準軍事組織の武装解除をすべきだ」と言っているんですが、これもインドネシア政府・軍によって無視されています。
 私たちは、派遣団候補国に対して安全な投票環境を作り出す立場を明確にするようにという運動をしています。また、東ティモール抵抗勢力のリーダーであるグスマン氏を投票前に釈放するようにという働きかけをしています。
 現在、準軍組織のテロ行為によって非常に多くの東ティモールの人々が自分の家から逃げ出しています。こんな状況で投票が難しいわけです。各国の派遣団は、投票のための安全な環境作りというものに対して積極的な役割を果たすべきです。そのために連帯する組織は、派遣団の役割を明確にせよという圧力をかけてほしい。 (文責編集部)

解説

内戦を演出し軍事侵攻を計画する政府と軍強硬派

 東ティモールの独立問題は、1975年のインドネシア軍の侵略以来、不当な占領状態が続いてきたがこの間、新たな局面に入りつつある。昨年の5月、スハルト退陣以降、大統領についたハビビは、スハルトの子飼いという民衆の批判をなんとかかわすために政党や組合結成の自由、表現の自由などの「民主化政策」を打ち出した。さらに、今年の一月に入ると6月6日の総選挙や11月の大統領選をにらみながら、国際的な評価を得たいがために東ティモール問題に対して「広範な自治に住民が同意しないなら独立を容認したい」と表明し、インドネシア軍の部分撤退を開始した。
 ハビビのねらいは、東ティモール問題に対してイニシアチブをとることによって国際的な信頼をかちとることや、さらに東ティモール周辺の石油や天然資源への投資拡大をねらう米国・オーストラリアなどの多国籍資本の「政情安定」の意向に応えたものである。そして、国際的なバックアップを取り付け6月6日の総選挙で与党ゴルカルの勝利を実現し、11月の大統領選挙で続投するという政治スケジュールのもとに進めているのである。
 このような政治的経済的背景のもとに国連を仲介にして旧植民地支配国ポルトガルとインドネシアとの交渉が、当該の東チモール人をぬきにして行われていった。両国はこの5月5日に東チモール自治案に関して合意し、国連主催の住民投票を8月8日に行うことを決めた。
 だがインドネシア政府と軍は、対外的に東ティモールの独立容認姿勢を示しながら、すでに水面下において98年末から「統合派」に対して武器を与え、一般民衆を準軍事組織に強制的に参加させてきた。この準軍事組織は、「マヒディン(統合決死隊)」「ハリンタル(稲妻隊)」「プシ・メラ・プティ(紅白鉄隊)」などと名乗り、テロを繰り返してきた。これらの準軍事組織には、私服の軍特殊部隊幹部が指揮をとり、徹底した内部監視網の下に作戦が展開されている。この特殊部隊は、米軍によって育成され、誘拐・拷問・テロ・殺人を専門としている。これまでに民主派や東ティモール独立派活動家に対する弾圧を先頭で行ってきた。。
 軍と準軍事組織は、これまでに東チモール民族抵抗評議会に関係する幹部や活動家に対して集中してテロが行われてきた。そして99年に入ってからは、無差別テロへ拡大していった。表面化したテロ事件は、インドネシア軍とマヒディンによるガリタス村襲撃事件(1月)、マウバラで民家12軒が放火事件(2月)、マリアナで発砲事件(3月)が次々と発生しており、そして4月には、リキサの教会に手榴弾が投げ込まれ、40人が死亡している。東ティモール民族抵抗評議会のシャナナ・グスマオは、軍と一体となった準軍事組織のテロ拡大化に対して自衛のための武力闘争を強化することを訴えた。
 このようなテロ行為の拡大は、政府と軍の強硬派が演出した東ティモール「内戦」を口実に軍が軍事侵略を行うという計画のもとに行われている。つまり、75年と同様に、でっちあげた「併合派」の要請でインドネシア軍が東ティモールへ軍事侵攻するというシナリオだ。
 米国や日本などの諸国は、インドネシア政府と軍のこのような侵略計画を黙認し、非常に危険な状況であるにもかかわらず放置し続けている。日本政府は、スハルト利権人脈の崩壊からの挽回をねらって必死にハヒビ体制を支え、新たな利権人脈を構築しようとしている。また、東ティモール独立問題に関しては、軍と準軍事組織による無差別テロへ拡大しているにもかからわず、それを止めさせるのではなく自衛隊派兵をも射程にした文民警察官を派遣することによって傍観しようとしている。
 このような深刻な事態にまで放置し続けてきた日本政府の責任は重大である。事態は切迫している。今求められていることは、軍と準軍事組織による東チモール民衆へのテロ行為を即時停止させることであり、武装解除だ。そして、インドネシア軍隊の即時撤退だ。ハビビ体制を支える米国や日本などの諸国を許さず、東ティモールの独立を実現するために国際的な支援の包囲を拡大していこう。(遠山裕樹)

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