米国　イスラエル・パレスチナ戦争が米政治を頂点から底辺まで濁らす

ダン・ラボッツ

　イスラエルへのハマスの、市民殺害を含む、そしてガザに対するイスラエルの包囲攻撃と爆撃、また百万人以上の市民の即時退避の要求がその後に続いた攻撃が今、米国政治に頂点から底辺まで電気ショックを与えることになった。政治家たちが政策を論争している中で数千人の米国人が、この問題をめぐり左翼が分裂する中、イスラエルあるいはパレスチナを支持して街頭に溢れた。
　民主党のバイデン大統領はすぐさま最初に、今攻撃下にあるパレスチナ人の安全に当初は全く言及しないまま、イスラエル支持を告げた。彼は戦争が始まって１週間後に、ガザを占領しないようイスラエルに訴え、イスラエル近くの地中海東部に２つの空母打撃群を派遣した。アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防省長官両者は、より多くの支援を使ってイスラエルを支える米国の約束を表明するためにイスラエルを訪れた。イスラエルは他のどの国よりも多くの米国の軍事援助を受け、この10年に年当たり30億ドルを受けてきた。
　ブリンケンはまた、それもまた占領されている西岸を爆発させないようにとのもくろみで、パレスチナ自治政府のマームード・アッバス首相とも会談した。さらにブリンケンは、それらが戦争に加わることを阻止しようと周辺のアラブ諸国を訪れた。
　ユダヤ人は米国人口の２・４％を構成するにすぎないが、ニューヨーク市では人口の18％を構成している。そしてすべてのユダヤ人がシオニストであるわけではないが、多くは諸々のつながりをもち、イスラエルに対し強い感情を抱いている。したがって驚くことではなく、ニューヨーク州知事のキャシー・ホウクルとニューヨーク市長のエリック・アダムスはこの市での親イスラエル大集会に加わった。
　彼自身ユダヤ人であるバーニー・サンダース上院議員は、次のように言明した。つまり「ハマスの攻撃への対応として、米国は正しくもイスラエルに対し連帯と支援を提供した。しかしわれわれはまた、イスラエル軍がガザを攻撃することの自制をも力説し、国連の人道的援助が安全に届くために努力なければならない。ガザにいる２００万人の人びとの半分は子どもだということを忘れないようにしよう。子どもと無実な人びとはハマスの行為を理由とした処罰にはあたらない」と。
　そして「それを誰が行おうと、市民の標的化は戦争犯罪だ。ガザに対する食糧、水、また他の必需品に対するイスラエルの全面的な否認は、深刻な国際法違反であり、無実の市民を傷つける以外の何ごとにもならないだろう」と付け加えた。
　下院民主党進歩派のいわゆる分隊メンバーは、イスラエルに対する総力をあげた支持表明を断った。コリ・ブッシュはイスラエルに対する米国の援助を終わらせるよう求め、一方イルハン・オマルは「無条件の」軍事援助を終わらせるよう声を上げ、パレスチナ系米国人のラシダ・タリーブは、資金が断たれないならば「暴力のこの胸が張り裂けるようなサイクルは続くだろう」と語ったが、彼女はハマスを批判しなかった。ニューヨーク市選出のアレクサンドラ・オカシオ・コルテスは、もっと慎重で、ハマスの攻撃を批判し、両側による「脱エスカレーション」を促した。
　その極右と保守派間の機能麻痺的分派闘争に巻き込まれている共和党は、下院議長の選出ができずにいて、イスラエル援助に向けた立法通過を妨げた。党の先頭を走る大統領選候補者で前大統領のドナルド・トランプは、「ビビ・ネタニエフがわれわれが負けるままにしたことを私は決して忘れないだろう」との彼のコメントを理由に、競争相手の共和党候補者たちから幅広く批判された。トランプはそれでも「それは非常に恐ろしいことだった」と語った。
　同時に、国中の都市や大学キャンパスでは、左翼が分裂していたにもかかわらず、パレスチナ人組織、進歩的なユダヤ人グループ、左翼グループを含んで、諸々の親パレスチナのデモも起きてきた。いくつかの抗議行動はハマスを支持して登場し、多くはハマス批判を拒否した。そしていくつかのところでは、反シオニズムだけではなく、時に反ユダヤ主義的なスローガンもあった。右翼の政治家とメディアはこの情勢を、左翼にテロリズム支持者とのタールを塗りつけるために利用してきた。
　左翼は、民族解放運動に関する、またそのような運動に対する無条件支持か批判的支持かの問題について、その観点を明確にするよう試練にさらされている。（２０２３年10月16日）（「インターナショナルビューポイント」２０２３年10月16日）