フランス マクロンと極右双方との対決へ
街頭でも投票箱でも統一を
労働者の切望に声を与える全左翼の統一へ
NPA―ランティカピタリスト全国政治評議会
7月7日に決着したフランスの国民議会選挙については、本誌で現地の同志の取り組みや政治評価を伝えてきた。その理解を助け、また今後のわれわれの方向性を探る議論の参考として、この選挙に臨む方針を議論した6月11日開催のNPA全国政治評議会の文書を以下に紹介する。情勢の基本性格と戦略の把握、その中で何を重視し、どのような判断に基づいて具体的行動方針の決定に至ったか、を知ることができる。なお以下の文書は前記評議会文書のアップデート版。(「かけはし」編集部)
EU議会選結果は雷鳴のような響をもたらした。その後に国民議会解散のマクロンによる発表が続いた極右の結果は、全左翼が労働者階級の切望に声を与えるために統一し、決起することを決定的なものにした。
両陣営の衝突が近づく情勢
この選挙結果は、本当の驚きではないとしても、わが社会陣営を急速に、前例のない政治情勢の中で位置を定めさせることになっている。数ヵ月前、世論調査はすでにこの大波乱を予示していた。そしてそれは、明白に年金に関する決起の敗北が遅れて表現された結果だ。後者は事実として、労働者階級内部のあきらめ、また極右側におけるエネルギー刷新に導いてきたのだ。しかし権力を握る者たちは、それが支配階級にシステムの危機という全体的な流れの中で位置を固めることを許していないがゆえに、かれらの勝利から利益を得ていない。
EU議会選結果は、前回大統領選と議会選の結果の継続だった。1930年代、フランスについてトロツキーは以下のように予測した。すなわち「特に留意されてきた諸々の解任は、それ自体ではなく、大衆意識における変化の兆候としてわれわれに重要性がある。それらが示すのは、プチブルジョアジーの中心部がすでに、ふたつの両極的陣営に取って代わられ始めた、ということだ。それが意味するのは、議会体制の残余がますます浸食されようとしているということだ。その両極陣営は成長の途上にある。それらの衝突が近づきつつある。この進展は絶対的に避けがたい、ということを理解するのは難しくない」(注)。
情勢は似ているように見える。すなわち、マクロン派の中道部分は弱体化しつつあり、極右は相当に強化し続け、その中で左翼は自身の再建に挑みつつある。この全体的傾向は、それには以下で触れないが、EU中で忠実に映し出されている。
遠方から近づく危険への準備
ブルジョアジーは、危機の対価を民衆諸階級に払わせるために、プロレタリアートが方向感覚を奪われ、部分的に士気阻喪し、組織化の水準が低く、中間階級がますます極右の方を向き、あるいはそれに加わりさえしている中で、権威主義的自由主義からファシスト的解決へと切り替える用意ができているかもしれない(億万長者のボロルのように)。
ファシストの社会的昇進の危険は高まりつつある。そして、極右が議会過半数を今後勝ち取ること、あるいは国の統治に向け右翼と極右間の大連立に向けた条件をつくり出すことはあり得ることだ。われわれは、この危険を認める必要がある。そしてそれは、民主的かつ社会的権利を真っ向から攻撃する、労働者運動を物理的に攻撃する、さらにレイシスト的、LGBTI排撃的、反女性の攻撃を加速する一連の諸方策を伴って、ネオファシスト勢力の建設を加速する可能性もある。
このすべては密接に、深く多機能にわたる危機にある資本主義の情勢に、またその利益の維持に関し支配階級が、およびその影響圏の保持に関し帝国主義諸国が、特にフランス、ロシア、米国が直面している諸困難に結びつけられている。こうして、問題への解答として提出されたものとより高い利率と今や組になったインフレを伴って経済危機が続いている。
結果として、2023年の第3、第4四半期の0・1%という成長率のまま経済停滞は激しくなり続け、生産性と全体的な購買力は停滞し、社会的不平等が爆発中だ。経済は、特に資産における総崩れに脅かされている。それは、中国でバブルがこの間形成され、他方米国では2024年に貸し付けの3分の1しか返済されず(2021年の99%に比べ)、財務当局が4・5%以上の利率で借り入れし、スタンダード&プアーズがフランスの格付けをAAからAAマイナスに落とし、財政赤字が期待されたGDPの4・9%ではなく5・5%になっている部門なのだ。
そのような全体構図の中で、支配階級は権威主義的解決に惹かれている。それは、搾取を10倍に高め、かれらの植民地支配をかれらに可能とするものだ。
これを前にした時、回答は、それ自身の強さに対するプロレタリアートの自信を再建すること、それ自身を代表する階級を再構成することからのみ現れ得る。それは結果として、プロレタリアートが先ずその権利を守り、抵抗し、社会的な勝利をいくつか勝ち取り、その後反資本主義的な分岐に道を清めるために、ブルジョアジーのさまざまな代表に反対でき、それとの衝突へと動くことができるようになるためだ。
この展望がわれわれの戦略的路線であり、われわれの全体的な戦術方向を決定する。
解散という危険なゲーム
国民議会解散に関するギャンブルによるマクロンの回答は今、現在の進展を加速し、ファシストの危険を高めている。この政策の論理は、マクロン派にその政策実行継続を可能にするような社会的かつ制度的な基盤を取り戻そうとするマクロン派による試みとして、共和党から左翼までの共和主義戦線を求めるキャンペーンに導くものだ。
しかし共和主義戦線は行き止まりだ。システムの動揺を静めそれを安定化するとの観点に基づいて異なった諸階級の諸組織を結集することで、それは労働者運動や民衆諸階級やそれらの組織の志気をくじき、そして遅かれ早かれファシズムに道を清める。マクロンの計算は、議会選に負け、大統領選での反攻を期待しつつ、首相にバルデラ(RN党首:訳者)を指名することでさえある可能性も考えられる。この種のプロセスはぞっとするほど危険に満ちている。
しかしながらマクロンは、労働者階級の対応能力を過小評価していたと思われる。現に、決起の中での、また新民衆連合環境・社会(NUPES)という形を取ったその統一に向けた移し換えの中でのこの2、3年にわたる経験の蓄積は、たとえば社会党(PS)のような、マクロン派に対し懐柔的な左翼のもっとも右翼的な諸部分に、左翼の全体との連携に自らの位置を定めるために共和主義戦線をこの段階で拒絶するよう圧力をかけてきた。
マクロンの党は、共和党の分裂と左翼の相対的な結合力との関係で問題を抱えているように見える。とはいえ左翼の結合力は、その内部に存在する深い不一致が理由で極めて脆い。そしてその不一致は、システムに非常に深く統合されているPSと、はるかに反既成エリートであり、ほとんどの民衆諸階級を結集しようと今挑んでいる不服従のフランス(LFI)の間にあるものだ。
しかしながらこの間の一連のできごとはまだ終わっていず、2回の投票の間で、あるいは選挙後、特に国民議会に過半数がないというありそうに見えるできごとの中で、共和主義戦線の魅惑的な歌声に今後再び応える者が現れるということもあり得ることだ。
一貫した統一戦線追求の応用
この全体的な流れの中で、わが党は小さいとはいえその力すべてを統一戦線のための戦闘に投入してきた。階級間力関係における低下、および現在の一連のできごと――自然発生的なデモ、あるいは 極右とマクロンに対決する労働者運動によって呼びかけられたデモを付随した――は、選挙での統一と闘争での統一を深部から結びつけている。諸々の大衆にとって、勝利の達成を、あるいは少なくとも極右の権力到達の阻止を期待しつつ、極右に反対してデモに決起することと選挙キャンペーンに決起することは、全面的に筋が通ることなのだ。
われわれにとって、投票箱での統一は基本的に戦術の問題だ。つまりわれわれは、極右とマクロンの敗北に貢献したいと、あるいは左翼の勝利をも可能にしたいと思っているが、しかしわれわれは本当に、本質的なものごとは諸大衆の自らの行動の中で、また社会的諸闘争の中でやり切られる、と分かっている。そしてそれは特に、ひとつの政治勢力として登場する労働者と労働者階級の居住区の能力の問題だ。
政治的力関係をつくり出すのは、またあり得る選挙の勝利、およびブルジョア的諸政策に反対し、プロレタリアートの反攻に向かうその後の継続性の可能性、その両者を決定するのは諸々の決起なのだ。
われわれは、左翼の側の選挙に関する合意について、その綱領的内容について、またその主要な力学に関し、このレベルでわれわれはわれわれの政策を擁護するとしても、統制する力をほとんどもっていない。それ以上にわれわれは、討論に招かれてもいない!
主要な左翼の指導者たちは基本的に、左翼のもっとも異論をもつ部分の票を失わないためにわれわれを利用したいと思っている。そうであってもかれらは、オード県(地中海に面したフランス南部の県:訳者)でのフィリップ・プトーの立候補という形で、何とかわれわれのために小さな場を見つけることができた。われわれは総合的に見て、われわれが確保することになるこの場で懸命に進まなければならないだろう。
統一の中でこそ羅針盤保持を
われわれは、階級闘争と戦略の見地でわれわれの認識を明確に保つ必要がある……PSのもっとも右翼的部分がキャロル・デルガとフランソワ・オーランドまで含んで代表されているような連携の一部であるからにはなおのことそうだ。
しかしわれわれは、この統一した勢いに加わることを拒否した諸組織(LO、RP、あるいはNPA―Rのような)は周辺的存在として、また情勢で賭けられているものの観点ではセクト主義に、したがってわが社会的陣営に対しては無益に見えている、ということに留意している。
統一戦線を求める戦闘は共和主義戦線に相対し、街頭における力関係の構築を選挙での統一に組み合わせている。挑戦課題は、労働者運動諸組織すべて、特に諸労組によって先導された街頭での決起を通して、最大限の影響力を行使することだ。選挙向け枠組みと反攻の決起は別のものではない。
したがって、われわれがわれわれの政策を擁護し、選挙への幻想と闘い、権力を握った新自由主義左翼の裏切りを指摘するのは、諸闘争と選挙を組にしている連合の中でのことだ。われわれが強調することは、労働者階級にとっての唯一の保証は、被選出議員を社会運動の統制下に置く目的で、動員を解かず、社会的反対を築き上げること、ということだ。
われわれは、階級的諸矛盾が今和解へではなく衝突へと駆り立てている一時期にいる。そしてわれわれはそれを説明する必要がある。パレスチナを支持する諸行動と現在の運動の間にある結びつきは、ここそこ両者で、決起、またレイシズム反対や反ファシズムやあらゆる形態の植民地主義に反対する行動の中に、労働者階級居住区の存在感があるようなこれらの関連によって、極めて重要な点だ。
事態を決する力の建設に向け
マクロンの残忍な反社会的政策、および極右のそれらに対する拒絶が街頭でまた可能なところではストライキを通して表現されるように、われわれは今、可能なあらゆるところで大衆的なデモ、職場、若者内部、また民衆的居住区での決起を強く求めている。
われわれは今、街頭でまた投票箱で例外なく政治的左翼と社会的左翼全体を結集する統一戦線構築を助けている。これを行うためにわれわれは、底辺から頂点まであらゆる組織に声をかけ、全員総会、諸集会、またプロレタリアートを動員するために可能なあらゆることを提案している。これは諸労組に、それだけではなく、各自の自律性を尊重しつつ、市民団体や諸々の共闘組織や政党にも関係している。われわれは、戦闘に参加し、社会的な分断や政治的な分断を超えて進む社会運動、労働者運動の組織すべてを支持する。勝利や敗北を決定することになるのはプロレタリアートの運動だ。それが受動的な有権者を説き伏せる推進力を生み出したり生み出さなかったりするからだ。
われわれは今、この戦線の一部として、その綱領が可能な限り急進的になるのを確実にするために戦闘を先導中だ。つまりわれわれは、われわれの暮らしと地球を破壊中の資本主義を見捨てるための、反社会的でレイシスト、また抑圧的な諸政策と決裂するための、そして民衆の権利、特にパレスチナ人とウクライナ人と連帯して立ち上がるための、決裂的諸方策を必要としているのだ。われわれはまた、対抗権力の建設という観点に基づいて、大衆的組織化と自己組織化の必要に関する論争をも先導中だ。
われわれは今、反資本主義的決裂という路線を発展させ続けている。資本主義は深い危機にあり、戦争から権力を握る極右まで、最悪なものをわれわれにもたらせようとしている。「社会主義かバーバリズムか!」。
われわれは、ここ数ヵ月の社会運動と労働者の運動によって作られ、われわれの決起が強要するオルタナティブのための基盤を示すその諸要求の実行から始めて このシステムと決裂する必要がある。そしてそれらの要求こそ、60歳の退職、400ユーロの賃上げ、最賃1800ユーロ、あらゆる共有財(エネルギー、交通、住宅、しかしまた公衆衛生と教育)に対する無料公共サービスの拡大、生産力主義と地下資源採掘主義を終わりにすること、自己決定に対する民衆の権利、および特にパレスチナ、カナク、ウクライナにおける抵抗の権利、国境の開放、全員に対する平等な権利……だ。
われわれはこの達成のために、「社会の社会的変革と決裂を求める」大きな政治勢力を築き上げ、革命的であると共に統一的な実践を体現するような、長期にわたって組織化する必要を擁護する。
わが組織は行動の用意を整えた
わが組織は、主導性を発揮することによってか、行動を組織する共闘組織に参加することによってかそのどちらかで戦闘に用意を整えている。しかしわれわれはナイーブではなく、次のことを分かっている。つまり、情勢への回答は選挙ではなく、それは選挙の分野が本質的な場ではない階級的衝突によって決定されるだろうということだ。そしてその選挙の分野は、民衆諸階級の大きな部分がもっている幻想、期待、熱望を前提として、むしろさらに進むための避けがたい通過点だ。
したがってわれわれは、この選挙にはそうであっても重要な賭けられた問題があるとの確信の下、われわれの路線、われわれの説明、われわれの綱領的な基本軸を公然と展開中だ。もちろん、誰が勝つかという問題、結果として開いたり開かなかったりする諸々の可能性という問題もある。
しかしこのひと連なりのできごとに関し、われわれはまた、左翼の再編に関する諸要素の始まりをも見ている最中だ。当面それは基本的に、これらが感知できる諸政党間の闘争の中にある。しかしひょっとすると、諸機構や力関係を揺るがすような活動家層の大規模な運動もまた、決裂と社会の革命的な変革を求める党の建設に向け展望を開く可能性もあるだろう。(IVによる訳出)
(注)レオン・トロツキー「フランスはどこへ―1934年」。(「インターナショナルビューポイント」2024年7月1日)
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