英国 大衆的決起がファシストを阻止

「反移民暴動」

労働党外部諸潮流も一定の役割

労資協調政府への闘うオルタナティブ建設へ

デイヴ・ケラウェイ

 ウォルサムストウ(イングランド北西部の都市:訳者)のホーストリートに出ると、極右反対のデモが巨大な参加になりそうだということははっきりしていた。乗り物はすでに、多くのパレスチナ連帯行進に際しわれわれが見てきたものに似た群集で一杯だった。

真の大衆的決起が出現した


 見覚えのある高齢の左翼活動家と並んで、民族的に多様な若者たちは、警察や現地モスクの指導者たち、現地の議員や全体としての労働党からの近寄らないようにという「公式の」助言を無視し続けていた。それは、キア(スターマー新首相:訳者)と君たちの新政府の公共サービスに任せろ、というものだった。厳しい判決、新たな反暴徒警察部隊、そして容赦ない暴力に対する糾弾が、この状況を処理するだろう――戻れ、ここには見るべきものは何もない――。彼らはこう言っていたのだ。
 われわれが列車を降り、盛んな街頭の端を見た時、すでに人々は歩道上に三重、四重になっていた。午後7時15分までに、ファシストが攻撃すると公言していた移民弁護士事務所の外のホーストリートには、すでに数千人がいた。7時30分までに、人々はデモの終わりを見ることはできなかった――それは道路全体を埋めていた――。ある者たちは小さな取り巻きを連れた極右アジテーターのカルヴィン・ロビンソンを見つけたが、右翼が実体のある登場を全く引き起こせなかったことは、すぐに明らかになった。
 社会党、社会主義労働者党、革命的共産党、そしてアンティキャピタリスト・レジスタンスのような左翼諸グループはそれらの旗印を携えて参加した。デモ参加者はプラカードを掲げたが、その圧倒的多数は先のグループのメンバーではなく、あるいはその支持者ですらなく、ファシストが先週行ったことにぞっとさせられたロンドン市民だった。諸グループはロンドンの南と隣接区からやってきた。多くは、当地の民族的マイノリティのコミュニティから来ていた。
 独自のスローガンが書かれた手作りポテッカーが高く掲げられた。それは常に、これが真の大衆的決起であり、急進的左翼だけではないという印だ。「レイシズムに立ち上がれ」が、抗議行動調整を助けるために懸命に活動してきた。いくつかの地方労組支部はそれらの旗を掲げた。全国レベルでは、労働党との著しい対照として、いくつかの労組指導者からの反ファシストデモに出かけ支援するようにとの呼び掛けが出てきた。
 人々は、「ここでは難民歓迎だ」「誰の街頭だ、われわれの街頭だ」「われわれは人民だ」「団結した人民は決して負けないだろう」などと唱和した。「心ない暴力ノー、今こそもっと厳しい判決を、あるいはもっと多くの反暴徒警察部隊を」とは誰も歌い始めなかった。

反動の風潮に順応する労働党

 スターマーは、いくらか遅れた後最終的に、昨日のデモの最中に容赦ない暴力という形容詞に「極右の」を付け加えた。しかし労働党はどんな時でも、ファシストに対決してデモを行うよう人々に訴えたことはない。その上、ファシストの中心的標的だと誰もが理解できる難民や移民を防衛する言葉もひとつもない。
 労働党のスポークスパーソンは、ロザハムやタムウォースあるいは他のところでファシストが行っていたことに関し真実を語らなかった。これらは、移民、難民申請者、ムスリム、黒人に対するファシストのポグロムだった。それは、あたかもかれらがプラカードをもってあちこちに立っていたり、リーフレットを配っていたりするような、「反移民抗議行動」――多くのメディアがそれを表現したような――ではなかったのだ。
 まったく違う。かれらは、難民のホテルを焼き討ちしようと、人々に傷を負わせ殺害しようと務めていた。間に合わせ的に作られた道路止めでは、その中にいるのが白人か黒人かを確認するために自動車を検問していた。ソーシャルメディアの投稿は、あからさまにこの暴力を呼びかけていた。
 保守党も労働党も両者共、移民と難民申請者に関するファシストの物語りに異議を突き付けることができていない。かれらは、難民を乗せた小舟を止めると語り、移民が多すぎると語り、さらに「納税者が資金を負担した」ホテルを閉鎖したがっている当地のレイシストを後押ししている。
 労働党は、移民に関し甘いと見られることを恐れている。労働党は、難民申請者に安全で合法的な経路を提供する代わりに、あるいは移民の労働者が公共サービスと経済双方に不可欠であることを認める代わりに、小舟を止め、移民数を引き下げるための新たな反テロスタイルの部隊に興味をもたせるように話している。
 前回選挙における労働党の戦略全体は、保守党への投票者を、特に、ファシストの最悪な暴力のいくつかが起きたレッド・ウォール(労働党拠点だったイングランド北部のかつての工業地帯:訳者)で取り戻すことだった。かれらは、偏見に異議を突き付け、移民に関する真の事実に基づく大がかりなキャンペーンを準備するよりもむしろ、住民の反動的な見方に合わせている。確かにかれらは見事に選挙に勝利した。しかしファラージの「リホーム英国」は400万票獲得し、そしてわれわれは今、街頭のファシストの元気を回復した一団を見ている。

大衆的決起が力を見せつけた

 昨夜はいくつか希望を与えている。人々は、かれらがどうすれば街頭を取り戻すことができるかを本当に感じることができたがゆえに、群集の中に浮き立つような気分と確信を感じることができたと思われる。先週の暴力的な混乱を繰り返す点でのファシストの全国的な失敗は、かれらの組織的な限界を露わにした。かれらは1回限りの決起としてはトラファルガー広場に1万5千人を集めることができるとはいえ、異なった40ヵ所で行動を組織し調整することはできない。
 極右は圧倒的に、社会の原子化された層から寄り集まっている。それは、ワクチンや移民とトランスの存在の危険に関する偽りの懸念、文化戦争、またレイシズムを吹き込む代わりの右翼やQアノンスタイルの陰謀論によって時に急進化した層だ。かれらは、ソーシャルメディアだけではなくいわゆる主流メディアによって、またかれらの経歴を高めるために偏見に信用を与えているような日和見主義的な政治家とジャーナリストによって、先のような見方に押し込められている。
 いくつもの起訴は、かれらのどれほど多くが、曖昧な民族主義的抽象の腐食に関する想像上の労働者階級の不安の表現というよりもむしろ小事業オーナーか、を暴き出すことになった。米国議事堂の攻撃に関する事例のように、参加した者たちは、しばしば特権を与えられていたが、力のある者の不和をかきたてるようなレトリックに影響されやすい不安定な人々だった。そのレトリックがかれらの疎外された暮らしを反映しているからだ。
 しかし、傷つきやすい人びとを怖がらせようと目立った者たちに関する限りそのほとんどは、むしろ多くは、レイシストの考えと頑迷な考えを無批判に繰り返し、その見方をオウム返しにしているに過ぎない。
 十分に組織された大衆的な反ファシスト運動を前に、これらの組織の弱さがありがたいことに露わになった。特にニューカッスル、バーミンガム、ブリストル、リバプール、オックスフォード、シェフィールド、ブライトンでも、相対的に通知に余裕がない中で、平日の夜に数千人が繰り出した。
 メディアと政治家は、反移民の物語と緊縮がどれほどファシストを助けてきたかを軽視するために、ソーシャルメディアの重要性を過大視してきた。ソーシャルメディアはもっと広い社会的な関係の中に存在し、しかもそれは矛盾している。昨日は多くの人々が、ソーシャルメディアを介して、しかし同じく確立した反レイシスト組織の努力を通じても決起について聞き知ったのだ。

労働党から自立した運動の萌芽

 今朝多くのチャンネル中で朝のTVを見つめながら、われわれは、いくつもの勝利は新たな親たちを獲得したことを見ることができる。メディアと政治的な既成エリートは、抗議行動に近寄らないよう人々に告げてきた。新聞の一面すべては、しばしば反移民の話を流したデーリーメールやデーリーエクスプレスも含め、ファシストの暴力を巻き戻そうと人々が街頭に繰り出したやり方に関し大喜びした。
 少なくとも、ひとりの元警察首脳はBBCの朝のニュースで、昨夜の決定的な要素は警察の能力や単なる厳しい判決の抑止力ではなく、大衆的決起だったと受け容れる健全な雅量と正直さをもっていた。昨夜以前は近寄らないよう人々に訴えていたウォルサムストウ選出の議員であるステラ・クレージーは、偽善的に直後この決起を賞讃していた。
 おおっぴらに言われていないことは、重要な政治的現実だ。今日労働党外部の諸潮流が独立的に数千人の人々を動員する一定の能力を確保している。われわれはこれを、パレスチナ連帯運動との関係で見てきた。そして今日それを反ファシスト運動に関して見ている最中だ。
 また今やそうした運動を支援できる一定数の無所属議員もいる――ジェレミー・コービンと4人の無所属「ガザ」議員は、対抗デモを支持する声明を発表した――。急進左翼が非セクト主義的で統一したやり方で仕事ができるならば、そのときわれわれは意味のある前進を達成する可能性を得る。
 われわれが必要としていることは、パレスチナと連帯して、また無所属議員やスターマーをものともしない少数の労働党左派議員とも連帯して、レイシズムに反対し現れている社会運動の内部で活動し、手に負えない地球温暖化に反対し、何よりも労組内部で、すべてを資本とのパートナーシップに賭けている政府に対する闘うオルタナティブを建設し続けることだ。
 政府の政策は、不平等を縮小でき、人々の緊縮に対する怒りと政治家に対する幻滅につけ込むファシストからその土壌を削り取ることができるような、根底的な構造的変化はつくり出さないだろう。
 昨日ひとつの戦闘が勝利したように、また社会主義労働者党が適切に表現したように、怖れはその位置するところを変えた。しかしながらファシストの脅威は今も残っている。そしてそれを育むエコシステム――移民を「問題」と定義する「リホーム英国」と主流の政治的総意――は、ファシストがまもなくすぐに去る定めにはないことを意味している。(2024年8月8日、「アンティキャピタリスト・レジスタンス」より)

▼筆者は、アンティキャピタリスト・レジスタンス内の、ソーシャリスト・レジスタンスと第4インターナショナルの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2024年8月13日)     

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