世界政治 危機下のシステム
不安定化を止める要素は皆無
アントニー・ララッケ
この2、3ヵ月は、驚くような強さをもつ各地の危機の連続を出現させてきた。これらの危機は、その中でシステムを攻撃する方向で進展するだろうとわれわれが期待するような、大衆運動のための機会だ。
ベネズエラの選挙は、マドゥロによってハイジャックされているが、左翼の側での歓迎すべき明晰化を生み出そうとしている。そしてそれは、右翼と官僚制へのひとつのオルタナティブ出現に導く可能性もある。
バングラデシュでは、割当制反対の大衆運動が、15年間権力を握ってきたシェイク・ハシナの専制的権力を打ち倒し、一つの局面に道を開き、その中で左翼の抗議が最終的に登場する可能性もある。同様に、イランにおけるマソウド・ペゼシュキアンの勝利は、体制の支配を維持する点でのこの体制の諸困難を示す象徴だ。
米国、英国、フランスのような、またドイツであっても、主要な帝国主義大国では、極右の高波という形で情勢は極めて不安定だ。それは、英国内の反移民ポグロム、また他では極右の極めて高い支持率――フランスでの国民運動、チューリンゲン州での得票率32・9%に基づく第1党となったドイツのAfD――によって例示されている。
この脅威を前に、対抗傾向が存在している。すなわち、英国内の反レイシストの諸決起、フランスにおける新人民戦線に基づく左翼の高揚、米大統領選に向けたカマラ・ハリスによるバイデンの置き換えに導いた圧力、その他だ。これは自動的に反資本主義のオルタナティブを生み出すわけではないが、しかしそれは、左翼の側の論争を新たなものにし、長らく受動的なままにとどまってきた労働者階級を決起させることに力を貸している。
一層明らかになっていることは、世界中の多くの国に極めて著しい不安定性があるということだ。この背景には、システムの、特にその経済の側面の深い危機がある。そして後者は、月ごとに悪化し続けている。こうして、ザクセン州――極右がここでも非常に高い得票を得たドイツのひとつの州――では、エレクトロニクスの巨人であるインテルが巨大工場に向けたその計画を凍結する、あるいは放棄もあり得る、と予想されている。
ドイツでは7月、電気自動車の販売が37%落ち込み、フォルクスワーゲンはその利ざやの極めて著しい下降に対処するために工場閉鎖を今考慮中だ。フランスでは、住宅登記が2023年8月比で24%落ち込んでいる。
もっと全体的には、EU内で生産性は停滞し続けているか下がってさえいる。グローバルサウスの百ヵ国は債務返済の停止に近く、中国とインドの成長は、もはや5ないし6%を超えることができない。
財政的結果がやって来るのに長くはかからなかった。フランスの経済相であるブリューノ・ル・メールは、現在の予算に関し160億ユーロの即時節約実行を勧告し、その中でEUは、財政赤字がGDPの5・5%に達した国に対し、「過剰赤字」手続きを開始している。
この全体関連の中で、さまざまな国民経済の管理はますます問題含みになろうとし、階級分断は悪化し、一層権威主義になるブルジョアジーと労働者運動間のより鋭さを増す衝突がある。これが時に、再びエネルギーを与えられた労働者運動に導いている。
革命派にとっての挑戦課題は、さまざまな側面を組み合わせることだ。その側面とは、幅広い民主的な統一の力学の構築、自己活動と労働者階級の組織化そして資本主義へのオルタナティブ構想の発展だ。困難は著しい。多くの国では、歴史的あるいは民主的な理由から、独立した労働者階級の潮流が全くないからだ。
こうして、英国や米国ですら、たとえば、選挙制度が異なった意見の声を排除する場合、民主党や労働党から独立した左翼を建設することが難しい。フランスでは、この幅広い反ファシスト戦線をもっと急進的な左翼と、資本主義を管理する諸機構からもっと独立した左翼と、前途に控える衝突に向け準備するために統一的に革命派を結集する必要と並んで組み合わせるという挑戦を、新人民戦線として経験している。
最後に、諸対立が悪化する急速に変化する情勢の中で、左翼内部でそのために討論し、論じているひとつの革命的な構想をもつ組織の建設と並んで、戦闘的な活動を通して階級の独立を築き上げることは、共同して努力するという問題だ。
▼筆者は、インプレコール(第4インターナショナルのフランス語版雑誌:訳者)編集者で、第4インターナショナル指導部の一員(「インターナショナルビューポイント」2024年9月11日)。
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