米国 大接戦の大統領選
予想も難しく言葉も見つからず
錯綜する論争が混迷に輪をかけ最終版へ
ダン・ラボッツ
カマラ・ハリスとドナルド・トランプが競っている11月5日の米大統領選まで2週間ちょっとで、この勝負は今なお予想できないほどの接戦になっている。陰謀論から暗殺未遂までの問題の広がりが、キャンペーンをこみ入ったものにし、時には双方の支持者と世論調査員を混乱させ迷わせている。
ハリケーン
めぐる混乱
9月と10月、家屋と事業に、また高速道路と橋梁に広大な破壊を引き起こした強風と滝のような雨を伴った、加えて一定数の命も奪ったハリケーンのヘレナとミルトンによって、その混乱が南東部だった。人は、そのような惨事を前にすれば社会は団結する、と期待し望んだかもしれない。しかしそうでは全くなかった。
下院議員のマージョリー・テイラー・グリーンを含む右翼の陰謀論者たちは、米政府は、つまりバイデンとハリスは、気象を制御し、圧倒的に共和党に傾いているそれらの州を攻撃し、投票を中断させ、トランプから選挙を盗み取るためにこの嵐を利用した、と主張した。他の者たちは、政府がこれらのハリケーンをつくり出した、あるいはそれに向きを与え、リチウム採鉱のために土地を押収しようと計画した、と主張した。
これらの説はソーシャルメディア上でウイルスのように広まり、連邦の救急隊や救援労働者への、さらに気象に関し予報し伝える気象学者への死の脅迫を含む脅迫に導いた。心を痛めている人々、負傷した者たち、家をなくし電力を断たれた多数の人々との関係で、ハリスは明らかに、今は気候変動について話す時ではないと感じている。
トランプ自身は、バイデンとハリスはハリケーンで打撃を受けた諸州を無視してきた――それらの共和党知事によって否定された――と、また連邦政府は惨事犠牲者に僅か750ドルしか与えていない――真実ではなく、それは単なる緊急支援金だった――と主張した。
暗殺未遂2件
も争いの種に
次にあるのは安全の問題だ。この4ヵ月にトランプを暗殺しようとした米国人による2件のもくろみがあった。そして米情報機関は、イランがトランプを暗殺する計画を複数もっていると確認した。それゆえトランプは、理解できることだが、安全に関する懸念をもち、米軍からのものを含めもっと多くの保護を求めてきた。そして、候補者保護のための通常から外れている要求として、軍用機まで求めた。同時にトランプは、暗殺のもくろみの背後には民主党がいると示唆し、彼の追随者の多くはこの考えを受け容れてきた。
いくつかの報告は、彼の寄付提供者がこれまでにもっと多くのマネーを出していないことを理由に彼が怒っている、と述べている。一方ハリスはマネーに浸っている。彼女は10億ドル以上を集めた。そしてトランプよりも1億ドル以上確保しているように見える。これらのマネーは、テレビ、ラジオ、ソーシャルメディアの宣伝に、スタッフに、また選挙運動員の戸別訪問を意味する地上作戦に向かっている。
ハリスの前には
多くの懸念要素
しかしながらハリスは、黒人とヒスパニックの有権者を獲得する点で悩みを抱えている。民主党は、過去3回の選挙を通じて、黒人とヒスパニックの有権者を共和党に、特にトランプに奪われてきた。ニューヨークタイムスの世論調査は、黒人有権者、特に若者、大学学歴をもたない者、そして黒人男性の中で、後退してきたと見出している。今日、黒人有権者の15%がトランプを支持している。
ハリスはまた、ヒスパニックの有権者の中でも支持を失ってきた。今かれらの37%はトランプを支持している。
黒人とヒスパニックの有権者の多数派は依然としてハリスを支持している。黒人とヒスパニックの重要な諸組織すべても同様だ。それでもハリスは、支持の深刻な腐食に苦しんできた。
次いで、ガザでのジェノサイド的戦争に関する彼女のイスラエル支持を理由に、ハリスから離れるように動いてきたアラブ系米国人の問題もある。1ヵ月前ムスリムとアラブのミシガン州有権者の中で行われたひとつの世論調査は、40%が緑の党候補者のジル・ステインを支持し、18%がトランプを支持、ハリス支持は12%だけ、と見出した。緑の党は左翼政党だが、しかしステインに向かう票はトランプ選出をもたらす可能性もあるのだ。
左翼の立場に立つわれわれの多くは、どちらかに決めるのが難しいと気づいている。しかし多くは、トランプを止めるためにハリスに票を投じるだろう。(「インターナショナルビューポイント」2024年10月15日)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社