アルジェリア 軍政の意に反した大統領選

民衆の軍政拒否は止まらない

ジルベール・アシュカル

 真にかけられていたものは、2019年末に行われた前回選挙と比べた今回の選挙へのアルジェリア民衆の参加水準だった。ちなみに前回選挙は、ヒラク(2019年から同21年の民衆的反独裁抗議行動、これにより当時の独裁者、ブーテフリカ大統領が打倒された:訳者)による拒絶とボイコットを前に軍のエリートが押しつけたものだった。

 ごまかし不能な
 極度の低投票率

 当時の結果は、投票率が40%以下(公式数字にしたがえば登録有権者2450万人弱のうち投票者975万人強により、正確には39・51%)だったのだから、エリートが欲したものではなかった。 この低投票率は、2019年に5人の立候補という形で当局が立候補におけるより大きな多様性を考慮したにもかかわらず起きたことだった。
 今回の9月14日の選挙の場合はどうかと言えば、投票率は、それ自体それ以前の諸選挙に対する公式数字よりも低かった2019年のそれより低かった。公式集計によれば、立候補した3人の候補者に今回投じられた総投票数は563万票ちょっとにすぎず、5年前の総投票数からはゆゆしい下落だ。その間登録有権者数はほとんど違わず(2435万人強)、その結果、投票率は僅か23・12%にまで落ち込んだ!
 「独立した」全国選挙管理委員会のトップであるモハメド・チャルフィは、投票率を選挙区数で割ることで得られた数字として、「平均」投票率は48%と主張(10万人の有権者を抱える1都市の10%と千人以下の有権者しかいない町の90%の平均は50%、と言うような)することで、政府の敗北をごまかそうともくろんだ。しかしそれは、それが引き起こした混乱にテブン(今回再選された大統領:訳者)自身のキャンペーンが抗議せざるを得なかった点にまで破綻した。

 発火の時を待つ
 地下の埋もれ火

 この悲惨な政治的敗北を前にすれば、他の2人の候補者がすぐさま結果偽造として当局を非難したという事実を言うまでもなく、公式数字にしたがったアブデルマジド・テブンが獲得した得票率94・65%は極めて貧弱に見える。公式集計によれば、テブンは533万票弱を受け取り、2019年の495万票弱との比較で僅かの増だった。
 いくつかの評論は、テブンが得た得票率をこの地域のよく知られた伝統、つまり大統領に得票率90%以上を与えることを求める伝統の繰り返しと見た。しかしこれはそれとは逆に、数字を偽造するか市民に投票を強制するか、あるいはその両方の、独裁における通常のような高い選挙参加と組み合わされていなかった。
 この低投票率はむしろ、2019年のヒラク――最初は2020年の新型コロナパンデミックが提供した機会をつかんだ、そして今日まで同じやり方を続ける、抑圧と恣意的な逮捕を通じて軍の支配と治安機関がそれを粉砕できたとしても――が灰の下の火のように、再び発火するのを待ちながら今なお生きていることを確証した。
 それは、政府が社会支出を増大させてきた、という事実にもかかわらず起きた。そしてその増大は、ロシアの天然ガスを埋め合わせるためのアルジェリアのガスに対する欧州需要の高まりと歩を並べた、燃料価格の上昇と結果としての政府所得の上昇を、民衆の不本意な同意を買い取ろうとする試みの手段として利用したものだった。それゆえ支配勢力である軍―治安機関エリートがこの選挙結果を今後懸念の源と見ることに疑いは全くない。

 独裁者の回答は
 徹底的抑圧のみ

 炭化水素は事実としてアルジェリアの輸出額の90%以上を占めている。そしてそれは、あらゆる選挙関係のパーセンテージよりもはるかに重要なパーセンテージだ。と言うのもそれは、この国を工業化し、その農業を発展させる点での軍の惨めな敗北を指し示しているからだ。そしてそれらの目標こそ、ウアリ・ブーメディエン指導下に1965年に権力を奪取して以来、特に1971年の炭化水素部門国有化の後、かれらが優先すると宣言した目標なのだ。
 アルジェリア民衆の明確な切望は、軍の兵舎への退去、そして自由かつ公正な選挙を基礎とした民主的な文民政権に道を開けることだ。しかし恐れられるべきことは、その明白な政治的破綻への支配エリートの対応が、先の民衆の切望を満たす代わりに、自由へのさらなる侵害になり、より多くの選挙不正を伴う、地域の独裁の伝統的な道にこの国を連れ出すことになることだ。
 そして、この国が今市民社会への軍機関の介入範囲拡大としてエジプトモデルを追いかけているという証拠がある。たとえばそれは、この夏始め大統領府が出した決定で明らかになった。それは、かれらの能力を活用するという口実の下に、文民の行政部内に地位を確保することを軍の将校に許すというものだった。
 現存の体制は、2011年と2019年にアラビア語地域が目撃した蜂起のふたつの波から、社会に対するかれらの掌握を引き締めるとして、抑圧の教訓しか学ばなかった。これが要点だ。そうすることで彼らは、この地域がこれまで見てきたもの以上にさらに大きく、危険な爆発にただ道を清めている。なぜならば、以前のふたつの革命的な波の基礎を形成した構造的な経済的で社会的な危機は今なお悪化し続け、専制と腐敗の体制がそこに残り続ける限り、それは不可避的に今後も悪化するからだ。(「インターナショナルビューポイント」2024年9月16日)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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