米国 トランプの選出
共和党の三権確保と民衆の抵抗
抵抗へは暴力的弾圧の脅し
反動性露わにするトランプ政権の行方は?
ダン・ラボッツ
労働者階級基盤奪取した共和党
トランプが彼自身の、また共和党の決定的な勝利を獲得し、大統領職、上院を取り、一期目のトランプの指名が最高裁を彼を全面的に支持するようにつくり変えた中で、同様に下院も取るように見える。トランプと共和党はこうして、彼の右翼綱領を実行するための、また米国を変形し、おそらくその民主的なシステムを解体し市民的自由を抑圧するための権力を彼に与える、政府の三権すべてを支配している。
トランプは選挙人を312対226で勝ち取っただけではなく、この3回目の選挙で、7090万票に対し7460万票以上という形で、得票数でも初めて勝利した。共和党は上院で共和党に過半数を与える3議席――ウエストバージニア、オハイオ、モンタナ――を獲得、民主党支配の4年を終わらせた。下院の投票はまだ集計されている最中だが、共和党がそこでも勝ちそうに見える(実際そうなった:訳者)。
トランプの総得票数は圧倒的というわけではなかった。しかし彼は、高齢者、暮らし向きのいい白人有権者という彼の基盤、郊外や田舎の有権者から継続的な支持を確保し、さらに労働者階級、黒人、ラティーノ、女性の有権者の中にも新たな支持を見つけ出した。彼は、大学教育を受けていない者の56%から票を獲得、黒人の13%、ラティーノの46%も獲得した。彼は、労組家族からも票の45%を受け取った。
民主党候補者のカマラ・ハリスは、2020年にバイデン大統領が得たより少ない票しか得ず、そこには女性や黒人の支持者の票の減少も含まれている。多くの人々は、住宅と食料の価格が高すぎると感じたが、他方他の者たちはトランプのレイシスト的、性差別的、また外国人嫌悪のメッセージによって動かされた。数十万人の民主党支持者は、オハイオのような数州で単に投票しなかった。
トランプは、国中で10郡のうちの9郡でより大きな支持を受け取った。全体的な再編成は全くなかったとはいえ、国中で右に向かう移行があった。識者が認めるように、トランプは、今共和党に対する多民族的な労働者階級基盤をつくり出すにいたっている。民主党は何十年間も労働者階級の党であると主張したが、今共和党はかれらからその資格を取り上げている。
左翼は選挙戦略の再検討必要
民主党はなぜ負けたのか? それをたとえばバーニー・サンダースは以下のように書いた。つまり「労働者階級の民衆を見捨てた民主党が労働者階級がかれらを見捨てたと気づくだろうということは、大きな驚きなど全くないものとして受け取られなければならない。最初それは白人の労働者階級だったが、今やそれは同じくラティーノと黒人になっている。民主党指導部は現状維持を擁護しているが、米国民衆は怒りをもち変化に向かった。そしてかれらは正しい」と。
民主党はこの選挙に敗北したことで、アイデンティティとイデオロギーの危機に直面している。バーニー・サンダースは「民主党を支配している大金への私心と高給のコンサルタントたちは、この悲惨なキャンペーンから何らかの教訓を学ぶだろうか? おそらくそれはない」と問いかけた。
党指導部は今も中道派のままだ。しかし多くは、党が左に、労働者階級に向かうこと、を欲している。
ほとんどの進歩派は、失望になったが民主党に投票した。他は全く報われなかったが左翼の諸政党に投票した。緑の党の大統領候補者になった医師のジル・ステインは68万5千票強(0・5%)しか得票できず、一方黒人神学者のコーネル・ウェストが得た票はもっと少なかった。左翼もまた、その選挙戦略を再検討しなければならないだろう。
トランプ指揮権下極反動政策へ
大統領に選出されたトランプは彼の勝利演説で「アメリカはわれわれに前例のないかつ強力な権限を委任した」と主張した。これは真実でない――オバマは2008年に、53%の得票率と365人の選挙人という形ではるかにもっと大きな勝利を得た――が、それでもトランプは、彼の意志を国民に強要するような専制者として支配することをもくろむだろう。彼の権威主義的計画がファシズムに導くことになるかどうかは依然今後分かるだ。しかし幅広い左翼は抵抗を始めようとしている。
われわれが予想できることは、彼が労働者階級や中産階級の基盤、およびテクノロジーの大物であるイーロン・マスクやアマゾントップのジェフ・ベゾスのような彼の億万長者の連携相手、この両者に対する約束を実行することで始める、ということだ。
彼は、国境を閉鎖し不法移民の大量追放を実行するつもりだ、と勤労民衆に約束している。彼はその移民について、米国人の職を取り上げ、米国のコミュニティに暴力をもたらしている、と主張した。
今2万2千人の国境パトロール(BP)要員がいる。米国・メキシコ国境――それは1954マイル(3145㎞)の長さになる――を封鎖するには、現在のBP要員以上が必要になるだろう。トランプは、BPを補うために州兵を動員するつもりだと語っている。しかし彼は、州知事の許可を必要とするだろうが、全員がそれを与えることはないと思われる。
トランプは、1200万人と見積もられた不法移民を追放すると約束した。しかしかれらを検挙し追放することは、何百万ドルもかかるような、また現存の2万1千人になる米移民・関税執行局(ICE)職員以上の多数を必要とするような巨大な数の職になるだろう。
家族は追い立てられ、引き裂かれ、したがって抵抗が起こるだろう。多くの移民は建設、ホテル、レストラン、高齢者ケア、子どものケア、クリーニング、ガーデニング、農業、また他の産業で働いているからには、これらの政策は、米国経済に巨大で悲惨な影響を及ぼすと思われる。
トランプは、数十万人のいつでも解雇に遭い意のままになる従業員になると思われる連邦従業員のための市民サービス保護を終わりにすることを最初に、米国政府をより大きく支配することを計画している。彼は、彼は司法省を改造し、それを彼の政敵を追い回すために利用するつもりだ、と語っている。
経済戦線でトランプは、新たな減税を約束したが、それらは疑いなく、2017年に彼が行ったように金持ちに対し最大になるだろう。彼がそれを行うならば、それは次の10年にわたって政府に4兆ドルの負担をかけるだろう。彼はまた、勤労民衆の社会保障(退職)支払いに対する税と解雇された労働者に対する税を減税するだろう、とも語ってきた。
トランプは、ほとんどの商品に対する10%、しかし中国製品には60%までの、また中国車には200%もの関税を提案している。そうした関税は、米国人に対して価格を上昇させ、世界的な貿易と投資をも混乱させるだろう。
トランプは、バイデンの気候政策を逆転させ、グリーンエネルギーへの補助金を削減し、石油を求めて窄孔する石油会社に刺激策を提供するだろう。そして彼は、バイデンの親労働政策を元に戻すだろう。
戦線再編含んで抵抗が始まる
2016年の就任に合わせた女性行進で最初に現れたトランプへの抵抗が復活している。シアトル、ポートランド、バークレー、ミルウォーキー、シカゴ、フィラデルフィアで、彼の選出を受けて左翼が率いた数百人のデモが起きた。11月9日にはニューヨークシティで千人以上の労組、環境運動、フェミニスト、移民の諸組織が行進した。
勤労者家族党や黒人の命のための運動などが先導して2百以上の組織からなる全国連合が形成された。同グループは、「この画期に意味をもたせる」との標題をつけたウェブ配信を伴った大衆的呼びかけ集会を開催し、14万人が視聴し参加した。ひとりの参加者が書いたように、「支配的な意見は、トランプ政権に対する総力をあげた抵抗、および多人種的、ジェンダー包括的労働者階級の中に進歩派を再集中させることを求めるものだった」。
抗議運動が街頭で巨大になる場合、トランプは、1792年の暴動法を呼び戻す用意がある、と語ったことがある。この法は大統領に、反乱や国内の暴力を鎮圧するために米国内で米軍を使用することを認めている。
トランプは権威主義者だ。彼はファシスト党とその国家を生み出すだろうか? われわれは諸々の展開を見守り続けるつもりだ。(「インターナショナルビューポイント」2024年11月12日)
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