米国　トランプ内閣

2024年12月4日 2024年12月4日

admin

極論信奉者と変人で構成

内部の大混乱も内包

ダン・ラボッツ

　大統領に選出されたトランプは、閣僚と他の高位役職に早々と彼への忠誠者を選んでいる。上院は閣僚メンバー承認の票決をしなければならないが、彼の選抜は共和党内部でも物議をかもしている。いくつかの例では、それが承認される場合、トランプの気まぐれ、綿密な調査を欠いた選抜が政権の混乱に導きそうな雲行きだ。漫画誌やジャーナリストたちは、新しい内閣を「トランプの道化師車」と呼んだ。その道化師たちはしかしながら、単に滑稽なのではなく、むしろ恐ろしい。

　はなはだしく
　不適切な指名

　おそらくもっとも非道なこととして、トランプは司法長官に下院議員のマット・ゲイツを選んだ。そのゲイツは２０２０年に、性行為のために州境を超えて17歳の高校生を連れ出したとして、児童性売買と法定のレイプで訴えられた。司法省と下院倫理委員会はこの問題を調査したが、彼は起訴を免れた（ゲイツは結局指名を辞退した：訳者）。
　エネルギー長官へのトランプの選択は、デンバーを本拠とするシェールガス採掘企業であるリバティ・エネルギーのＣＥＯのクリス・ライトだ。彼は、化石燃料産業の支援者、かつ温室効果ガスを削減する努力への反対者になるだろう。ライトは昨年「気候危機などは全くない、またわれわれはエネルギー移行の最中にいるわけでもない」と語った。
　トランプは、１兆７千億ドルの財源をもち公衆衛生政策に巨大な影響力がある部局である保険福祉省長官に、反ワクチン派のロバート・Ｆ・ケネディ・ジュニアを選抜した。彼の選抜は、公衆衛生科学者と医師によって広く批判されている。
　トランプは、１日目に国境を閉じ追放を始めるだろう、と語りながら移民問題で選挙運動を行った。そしてそれに対処するために、国内治安政策のトップとして白人民族主義者のスティーブン・ミラーを、国境専権者にトム・ホーマンという名の無頼のように話す警官を選んだ。ホーマンは、トランプの１期目の際は、トランプ一家を隔離する政策の責任者だった。彼らは、移民に酷い形で対処するだろう。

　軍と外交でも
　適格性を無視

　外交政策に転じれば、トランプは国防省長官にピート・ヘグセスを選択した。彼は、イラクとアフガニスタンで従軍した退役軍人で、州兵の少佐、また２０１４年には極右のフォックスニュースのＴＶキャスターだった。大組織を切り盛りしたことが全くないヘグセスが、国防省の３４０万人にのぼる被雇用者をこれから預かることになる。彼の選択は、下院メンバーと軍の元将校たちを憤激させた。一部分は、戦争犯罪を理由に告発された兵士に対する彼の支持が理由だ。
　彼は、軍は「覚醒」しすぎだと語り、その多様性、公平性、また包括政策に反対している。彼はそれらを、軍の価値を引き下げてきた、と語っている。彼は女性を戦闘部署に配置することにも反対している。
　彼は、共和党の女性イベントの時、起訴されなかったとはいえ女性に仕返しをした件で性差別的攻撃で訴えられた。ヘグセスは「神の意志」という入れ墨を入れ、エルサレムの十字架を身につけているが、その両方とも白人民族主義運動のシンボルなのだ。
　国家情報局長官に対しトランプが選択した元下院議員のトゥルシ・ギャバードは、米国の下院議員から「ロシアの代理人」、「裏切り者」と呼ばれたことがある。理由は、ロシアのウクライナ侵略に対する彼女の支持だ。彼女はまた、シリアの独裁者でロシアが後ろ盾になっているバシャル・アルアサドとも会った。
　トランプは、イスラエル大使として、バプティスト聖職者で元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーを選抜した。ハッカビーは、西岸に対するイスラエルの支配権を全面的に支持し、聖書に出てくるユダヤやサマリアの方を好み西岸の名を拒否している。彼は、西岸も占領も全く存在せず、パレスチナのようなものもまったくない、と語っている。

　上陸承認も
　回避する？

　最後に、われわれの前には、テック界の大立て者で世界でもっとも裕福な男であるイーロン・マスクがいる。彼は、トランプのキャンペーンに少なくとも１億３２００万ドルを提供し、新設の政府効率化省を率いるために、製薬企業家のヴィヴェック・ラマスワミと共に選抜された。マスクは、政府との契約として１兆ドルほどの案件を確保している。
　内閣の指名は、米上院によって承認されなければならない。とはいえトランプはこれを、上院が休会の時に行われる「休会指名」を使って回避しようともくろむかもしれない。上院は彼に立ち向かうような高潔さと勇気をもっていないように見える。トランプの道化師は政府を爆破する可能性もあるだろう。（２０２４年11月17日）（「インターナショナルビューポイント」２０２４年11月21日）