トルコ国家とクルド問題

新たな希望が内包する諸矛盾と脆さ

問題はクルドの人々の民主的権利の実現だが

ウラズ・アヴディン

 2月末、トルコ政府と終身刑に服しているPKK指導者のオジャラン間でPKKとの和平交渉が合意にいたり、オジャランが武装闘争終結とPKK解散を告げた、と報じられた。以下は、その合意公表以前に書かれたものだが、今回の動きを取り巻く国内外の要素とそこに作用している力の分析を現地から伝えている。中東の今後を理解する上で貴重な情報であり紹介する。(「かけはし」編集部)
 PKK(クルド労働者党)指導者のアブドラ・オジャランとトルコ政府間の交渉破綻と休戦の終了から9年以上、エルドアン政権はあらためて、PKK(および、シリアのロジャヴァのその諸部隊)に彼らの武器を置くよう強いることを今試みている。しかしながら極右指導者のデヴレット・バフチェリにより始められたこの新たな「プロセス」は、オジャランがクルド武装部隊の解体を求める場合にあり得る彼の釈放を別として、クルド民衆が得る可能性のある権利がどのようなものかについて、当面不明確なままにとどまっている。大統領のレセプ・タイイップ・エルドアンは、紛争の「解決」に向けた彼のアプローチを以下のようにまとめている。つまり、「かれらが彼らの武器を埋めることになるか、それともわれわれが彼らの武器と共にかれらを埋めることになるか、そのどちらかだ」と。

前回の破綻した試みの経過


 交渉に向けた最後の意味のある試みは、2013―2015年の和平プロセスに遡り、それは、クルド有権者内部にAKP(エルドアン与党の公正発展党)のヘゲモニーを拡大する目的で、武装紛争を終わりにし、クルド問題の政治的解決を定めることをめざすいくつかの中心的問題に焦点を絞った。
 それは、長続きする休戦とトルコ国境からのPKK武装部隊の撤退を交渉することだった。これには、クルド戦闘員の徐々に進められる武装解除に関する討論が含まれた。しかしそれはまた民主的な諸成果達成をも含んでいた。たとえば、文化的かつ言語的な権利を認めること、憲法改正、部分的民主化と地方行政に対する権限付与、政治犯の釈放、その他だ。
 その構想は、4州に分割されたクルディスタンの歴史的な植民地化に深く結びついた、国内的かつ対外的理由から中断された。
 一方では、民主統一党(PYD)指導部とその武装組織である人民防衛隊(YPG)の下における、シリア北東部のロジャヴァでの自治的な行政の確立が、早くもアンカラによって脅威と受け取られた。トルコ政権は、特にジハーディスト組織によるシリア・クルディスタンのコバネ市包囲の中で、ダエシュ(ISIS)に対するトルコの支援を通じて先の確立を止めようと試みた。これは、2014年のはじめに、国境のトルコ側におけるクルド民衆内部の大規模な暴動を導くことになった。
 他方で、クルド運動の合法政党であるHDP(人民民主党)指導者のセラハッティン・デミルタスが、2015年6月の議会選の中で効果的なキャンペーンを率い、大統領職務へのエルドアンの昇進に反対する左翼のかなりの部分を結集させた。HDPは得票率13・1%という予想外の結果を獲得し、議会に参入し、AKPだけで政府を形成することを阻止した。
 これが、当時われわれが地獄への転落と呼んだものがどのようにして始まったかを示している。つまり、攻撃、弾圧、殺戮、そして戦争再開……だ。2015年の転換点は、エルドアン政権の性格そのものにおける変化でも決定的だった。そしてそれは今、トルコのファシスト極右であるMHP(民族主義者行動党)と連携し、クルド問題を再び軍事化した。

残忍な抑圧と紛争の輸出


 こうして2015年以来、独断と犯罪化が政治的な「ゲームの規則」の一部になってきた。その元連携者(ギュレン同胞団)によるクーデター未遂は、体制がその専制的で、特にクルド運動に対する抑圧的な特性をさらに強めることを可能にした。
 合法的政党の活動家1万人以上が数年間獄中に置かれた。運動の主な文民の人物、その前党首、スポークスパーソン、指導者たち、議員たちも投獄され、今も数十年の刑に服している。各々の地域/自治体選挙の後では、クルド地域内自治体のほぼすべての首長が、テロとの結びついているという罪状(かなりの比率で有罪宣告されている)でその地位から解任され、国家が指名した行政官で置き換えられている。
 こうして、クルドの政治的選択は、体制の側における不正がない場合であっても尊重されず、彼らの被選出代表(多くの場合得票率70―80%で選出された)は拘留されている。われわれはまた、主な野党であるCHP(中道左翼の共和党)が確保した町政に対しこの数ヵ月同じ手続きが適用され始めた、ということも付け加えなければならない。これを書いている時点で、イスタンブールのバシクタス地区(世俗的反政権派の拠点のひとつ)の首長が、公式には汚職の嫌疑で逮捕された。しかし真の動機は争う余地なく政治的なものである。
 そのため、クルドの人々はかれらのアイデンティティを表すために闘い続けているとはいえ、この数年運動自身は大きく弱体化してきた。武装組織に関する限り、その指導部は今なおイラク北部の山岳地帯で機能し、トルコ軍からの攻撃を受けている(国境を挟んだ両側でドローンの集中した利用によって)。しかしその部隊は、ロジャヴァ(公式には、シリア北東部自治政府)のYPGに合流するために、ほとんどがトルコ領から完全に撤退している。
 こうしてクルド問題、あるいはもっと正確にはクルド運動との対立は、隣国のシリアとイラクに輸出された一定の流儀になっている。そしてそこでトルコ国家は、外交的、経済的、軍事的なさまざまな方法で 親オジャランのクルド運動の存在に、またもちろんそれが指導する自治政府に終止符を打とうと試み続けている。

国内の力関係―体制への逆風

 しかしながら、その権威主義的統治流儀と政治への民衆的関心の喪失にもかかわらず、エルドアンのAKP―MHPブロックは、2024年3月の地方選でその史上最悪の後退のひとつを味わった。こうして、前回選挙よりも低い投票率の下でCHPは予想外の勝利を得、エルドアンの党であるAKPの35・5%に対し37・8%を獲得した。これは、2002年以来エルドアンが初めて喫した敗北だった。
 CHPはさらに、実体あるAKPの拠点で何とか市政を勝ち取ることができ、もっと重要なことだが、イスタンブールとアンカラも依然野党の支配下にとどまっている。われわれは、このAKP敗北の背後にある諸要素の中でも、第1にインフレと生活費の上昇を挙げなければならない。実際その上昇は、住民の大多数には耐えがたいものになっている。
 したがってそれは、エルドアンにとって苦痛に満ちた後退だった。彼の場合、スルタンとして彼の地位を占め続けることが、彼の反動的な体制の生き延びのためにひとつの優先事項になっているのだ。
 パレスチナ人に対するイスラエルのジェノサイド的戦争、そしてその後のレバノンとイランを敵とするその攻勢は、反対諸勢力を中立化しようとする試みによって、政治的空間を再構築する好機を提供した。こうして、2024年夏の始め以後、政権のスポークスパーソンは、イスラエルによる攻撃の可能性に加えて隣国の不安定化の危険を前にした、一種の挙国一致を意味するような「国内戦線」を訴えてきた。
もちろん、シオニスト国家によるそうした攻撃の蓋然性は全く信用に値しない。トルコ大統領がパレスチナの大義に対する彼の連帯を表すのを好みとしているとしても、イスラエルとの経済関係がそれによって影響されたことはなかったからだ。
 しかしエルドアンは、彼の政治的軌跡を通して、また特にトルコを地域大国にする目的で、国際紛争の件では、特に国内の政治的緊張をやわらげるために、民族主義的―軍国主義的動員からこれまで十分に利益を受けてきた。したがって、国内の反政権派の勢いを中立化することにより彼のヘゲモニーを再度固めるために、民衆の反シオニスト感情を利用しようと試みるだろう、ということは完全に予想可能だった。

体制の国内的動機は未だ不透明

 和解に関するいくつかの兆候の後、誰もが驚いたように、ファシスト指導者のバフチェリが最終的に2024年10月22日、武装闘争の終わりとPKKの解散を公表するために議会に来て話すよう、アブドラ・オジャラン(「テロリストの頭目」と呼ばれている)に呼びかけた。それは、中東における緊張と地政学的対立という流れの中でだった。
 1989年以来イスタンブール沿岸沖のイムラリ島の獄中にいるオジャランとの関係では、次のことが必要だったと思われる。つまり、彼が遠慮なく話すことができ、彼の組織の解散が告げられれば、彼が見返りに終身刑にもかかわらず解放されるのがおそらく認められるだろうと「希望する権利」から利益を受けることができるように、先ず彼の独房への閉じ込めを解くことだ。
 バフチェリがクルド問題の平和的な解決に最も反対している政治運動の代表者、かつ暴力的抑圧の支持者という事実は、もちろん疑いのない事実だった。その上、デム党(親クルド左翼政党で、HPDの新たな名称の人民平等民主党)も、AKPとMHPも、この「招待」を理解しているようには見えなかった。
 また、バフチェリとエルドアンが同じ波の上にいたのかどうか、エルドアンがそのように急進的な公表を前もって知らされていたのかどうか、を理解するには数日かかった。あるいは、エルドアン一派がバフチェリ(そして公衆全体)に知られずにすでにオジャランとの新たな対話を始めていたのかどうか、またそのようなプロセスから外されるのを拒絶している後者が、交渉の札として賭け金を公然と引き上げる方を選んだのかどうか、についてもそう言える。
 この点で、体制の2要素間の交渉がどのように進んだのか知ることもわれわれには難しい。しかしそれはむしろ、少なくとも始まりであり、バフチェリに新しい構想の公表という任務を預け、エルドアンが反応を見守る方を選んだという、ふたりの指導者間の「分業」の可能性もあるだろう。
 そのような構想の動機の理解は今後に残されている。それは出し抜けに公表された。それは、トルコ領内のクルド運動の弱さを前提とすれば、時代錯誤に見える。反政権派で評判の高い議論は、次回選挙で再度大統領としてエルドアンを選出するために体制は憲法改訂を必要としている。そして議会で400票(600票の内)を集めるためには、AKP―MHPブロックはデム党の支持を必要としている、というものだ。
 しかしながら、この提案の急進的な性格はまさに同じくらい、イスラム派―民族主義派ブロックから票を切り離す可能性もあるのだ。弁護士や家族が訪問することさえ禁じられているオジャランの解放について話すことはタブーの問題、それはまさに処罰の対象になる言及、ということが理解されなければならない。

浮かび上がるのは国際的動機


 したがって動機は、国際的なもの、主に隣国における武装クルド運動の存在に関係した「国家安全保障」の問題だったに違いない。イラン内の政権の不安定化、および中東における地政学的混沌はもちろん、クルド運動に力を与え、それが領土的前進を獲得するのを可能にした可能性もある。しかし先の選択は、そのような紛争の抜本的解決の緊急性とは関係が薄く見え、またそれを説明するものでもない。
 PKK(およびPYD―YPG)の解体をオジャランに告げさせるというエルドアンブロックの焦りを明確にしたのは、結局のところ、2024年12月のアサド体制の急速な倒壊だった。バース党独裁の崩壊と(イスラム原理主義派の)HTSによる権力奪取は、クルド自治政府の強固化と拡大に助けとなる力関係をつくり出す可能性があった。
 数週間前に体制打倒の計画に気づき、トルコの支配下にあるいわゆる「シリア国民軍」(SNA)を通してそこに参加することを計画していたアンカラはもちろん、新たな体制の下でのクルド自治強固化という危険を取り除くことを疑いなく期待した。
 SNAとトルコ空軍が主導したロジャヴァに対する情け容赦ないその攻撃は、その国境上にあるクルド圏の存在に可能な限り素早く、特に2025年1月20日のトランプの米大統領就任前に終止符を打つという、トルコ政権の差し迫った必要を示している。
 トランプはエルドアンを彼の友人と呼んでいるとはいえ、シリアのクルドがさし当たり、現在の形勢ではワシントンとテルアビブ双方にとっての主な地域内連携者、ということもはっきりしている。したがって、トランプがエルドアンを彼の側にとどめようとしつつも、明らかに民主的な大望からではなく、彼の利益とシオニスト国家の利益を守るために、シリア領域におけるクルドの軍事的存在を維持しようとするだろう、ということも完全にあり得ることなのだ。

オジャラン流「新たな枠組み」


 この動機にまつわる謎が最終的に解決されるとしても、当面交渉の成り行きは不明だ。体制は、話し合いはトルコ国家、オジャラン、さらにデム党の間のものだけであり、PKK指導部、およびクルドの(市民的)政治運動の主な人物であるセラハッティン・デミルタスを含んでいない、と力説している。そして、オジャランの解放は別として、今のところ民主的な方策への言及は何もない。
 オジャランへの最初の訪問は、12月28日、デム党代表団により行われた。「この会談では中東における最新の展開が分析され、オジャラン氏は、われわれに押しつけられようとしている暗いシナリオに対する前向きな解決策を提案した」、これが報告だ。
 以下が、彼の考えとアプローチに関する全般的な枠組みだ。
◦トルコ人とクルドの友愛を再び強化することは、全人民にとって決定的かつ差し迫った重要なものになる中で、ひとつの歴史的な責任だ。
◦プロセスの成功のためには、トルコ内のあらゆる政治的な部分が、狭く日和見的な思惑に引き込まれることなく、主導性を発揮し、建設的に行動し、前向きな貢献を行うことが基本になる。これらの貢献に向けた最も重要な舞台のひとつは、疑いなくトルコ国会(TBMM)になるだろう。
◦ガザとシリアのできごとは、外国の介入を通してある種の壊疽に変えようと試み続けられているこの問題の解決が、もはや先延ばし不可能、と示している。反政権派の貢献と提案は、この情勢の重さに見合った仕事を実行する点で貴重だ。
◦私には、バフチェリ氏とエルドアン氏に支持された新しい枠組みに前向きな貢献を行う決意と能力がある。
◦私のアプローチは、国家と政治的諸部分に基づく代表団に分かち合われるだろう。これらの要素を考慮して、私は求められた前向きな歩みを行い、必要なアピールを出す用意ができている。
◦これらの努力すべては、この国をそれに値するレベルに引き上げる助けになるだろう。そして同時に、民主的な変革に向けた貴重な導きになるだろう。現在の時代は、トルコと地域にとって平和、民主主義、また友愛の時代だ。

 彼の見解のほとんどは一般論に限られているとはいえ、それでもわれわれは、PKK指導者がこの「新たな枠組み」を支持していると、また彼が組織に解散するよう訴える上で十分敬意を払われていると今も感じていると、信じてよい。他方、議会と反政権派の役割に関する彼の強調もまた重要だ。2013―2015年の交渉は主に情報機関とオジャランの間で追求されたからだ。
 デム党代表団は、このプロセスを包む曖昧さすべてにもかかわらず、今回それを違ったものにしようと試みている。かれらは今、オジャランの決意を示すために議会に代表をもつ全政党を回っている。代表団はまた、今獄中にいるHDPの元共同代表にも出向いた。

和平とクルド問題解決は別問題

 セラハッティン・デミルタスは、以下のように彼への支持を示した。「多くの人々は頑強にこのプロセスに名前をつけるのを避けているが、われわれにとってそれは、『民主化、平和、そして友愛のプロセス』だ。民主的で平和的な基礎の上で活動している政治的主体として、われわれは対立と暴力の最終的な終了を願い、切望し、支持する。われわれは、オジャラン氏がこの点でイニシアチブを発揮するならば、その時条件は熟している、と断言する。われわれは彼の側にいるだろう。もちろん、可能性のあるイニシアチブすべては彼がやるべきことだ」と。
 しかしながら彼は、デムが確保した新たな町政いくつかが体制から攻撃され、それらの首長が解任、投獄され、さらにロジャヴァの村々が爆撃されているその時に、そうしたプロセスがもつ必要性(当面欠けている)について次のように注意するのを怠らなかった。
 つまり「一定の善意、およびそれらの善意に基づいて行われた準備があることをすべての者はわきまえなければならない。しかしながら、プロセスが具体的な形をとるためには、実体的で安心感を与える歩みが早急に踏み出されなければならない。……政治的な平和は、社会的な平和に向かう、つまり民主化、平等、公正、また自由に向かうあらゆる道が開かれるやり方で達成される時に、はじめて持続可能になることができる。この場合にそれは、全員にとって、この国にまたその市民にとって有益になるだろう」と。
 デム党議員で先の代表団(また2013年のそれ)メンバーであるシリ・スレラ・エンダーは、このプロセスの矛盾を以下のように示した。
 「世論の中では、解決〔クルド問題の〕と和平の観念はしばしば混同されている。これは正しくない。和平は単純な抱擁によってでも確定可能だ。他方解決は、民主化と長期の闘いのプロセスだ。この歩みの期間と深さは、問題を内包した領域次第で変わる。今のところ、われわれが構築に挑んでいるものは和平だ」と。したがって解決はその成り行きを待たなければならない……。

不信が渦巻く中の希望

 バフチェリに関する限り、民族主義極右の指導者は、オジャランへのあり得る2度目の訪問(次の数日の内にと予想された)の中で、「PKKの組織的存在の終了」が宣言されるよう求めた。バフチェリは、彼の演説を続ける中で、シリア北東部自治政府を標的に次のように宣言した。
 「ユーフラテス川東部で、テロリズムは除去されるか力で除かれるかのどちらかでなければならない。われわれはわれわれの立場に忠実なままだ。トルコ人であることはわれわれの存在に対する誇りの標章だ。テロリズムは交渉の対象になり得ない。それは闘争を通して戦闘されることのみが可能だ。……平和の中に敗者はひとりもいず、戦争の中に勝者は皆無だ。この場合われわれは、和平を通じて全員が勝利する準備ができている。そしてわれわれはそこにいる」と。
 トルコ内の最も重要なクルドの都市であるディヤルバクルから、エルドアンもまたクルドに、この新しい機会をつかむよう次のように訴えた。
 いわく「これを最後にテロリズムの災難を終わらせるために、新しい機会の窓がわが国に開かれた。国内だけではなく国外でも抑圧に反対するその全メンバー内部で団結したトルコが今ある。……テロ組織はその武器を置く以外の選択肢は皆無だ。われわれは今それらに本物の政治組織になる機会を与えている」と。
 トルコ政府の指導者たちの演説からおそらく認めることができるのは、当座、クルドのアイデンティティを認めることをめざした民主的な方策という問題は全くない、ということだ。しかしながらまた必要なことは、オジャランとの交渉に再度入ることは、この体制のイスラム主義―民族主義の基盤内で簡単に受け容れられることからはほど遠い、という事実をはっきり認めることだ。したがってまた必要なことは、この聴衆を納得させることを狙ったレトリック部分を確かめることだ。他方体制はおそらく、武装した運動を具体的な交渉方策に服従させる以前に、可能な限りそれを弱体化しようと追求中だ。
 オジャランが彼の組織に呼びかけを行うことに同意する条件はどうなるだろうか? 現場のさまざまな諸部分、PKK、PYD、YPG、……――そのすべては相対的な自律性からなるそれぞれの役割をもっている――は彼らの武器を置くことに同意するだろうか、またその程度はどうなるだろうか? PKK指導部は和平に向けたオジャランの歩みを支持すると主張しているものの、それは明確に、新プロセスの合図には国家内部で知覚できるものが全くない、と強調している。この呼びかけを行うことへの、あるいは彼らの武器を置くことへの拒絶があった場合、市民的な運動や武装運動に対し、抑圧と暴力の新たな波が解き放たれるのだろうか?
 多くの矛盾とためらいが、この新プロセスの中に渦巻いている。そしてそのプロセスには、デミルタスが認めるように今も名前がない。しかし、名前がないとしても、脆いとしても、また不信で貫かれているとしてさえ、希望は依然として希望だ。(イスタンブール発、2025年1月15日)

▼筆者は、第4インターナショナルトルコ支部機関誌の「イエニヨル」編集者、また2016年のクーデター未遂後の非常事態令を背景に、クルド民衆との和平を支持した請願に署名したことで解雇された多数の学者のひとり。(「インターナショナルビューポイント」2025年1月30日)

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