iPhone17の発売と米中関税戦争~「底辺への競争」は労働者の宿命なのか

昨日の報道では、先月末に韓国で開催されたトランプと習近平の首脳会談に基づき、11月10日には両国は互いに追加関税を引き下げました。相互関税の上乗せ分の24%分については一年後の2026年11月10日まで引き続き停止。米国は中国船に対する「入港税」の徴収を、中国は韓国造船大手の米子会社5社に対する制裁やレアアースの輸出規制を、それぞれ1年間延期します。
会談後、トランプは習近平を「偉大な指導者」と持ち上げています。筆者は、帝国のボス交による米中労働者の分断ではなく、よりよい労働者の未来に向けた米中労働者の国際連帯は可能だと訴えています。
(訳者)
ウェブサイト《無国界社運Borderless Movement》
原文 https://x.gd/KqoJa


2025年9月19日、アップル社のiPhone17が世界同時発売され、瞬く間に電子消費市場のトップに躍り出た。中国でも例外ではなく、多くの人々がいち早くこの最新機種に買い替えることを誇りに感じていた。
しかし、世界最大のiPhone組立工場が依然として鄭州のフォックスコン(富士康)であり、しかも大量のiPhone17が同工場で製造されていると知ったとき、筆者は少なからず驚いた。なぜなら、この工場では2022年、中国で過去10年間で最大規模の労働者の抵抗が起きていたからである。
筆者は当時、その原因について文章を書いたことがある(原注1)。要約すれば、政府による理不尽な感染予防のための移動制限措置と、資本側の利益追求のための強引な対応が、十数万人規模の労働者による反抗を引き起こしたというものだった。そこでは警察当局の弾圧に対する実力的抵抗も見られた。
スマートフォンの普及(これはアップルの功績でもある)のおかげで、それまでの抗議行動とは異なり、フォックスコン労働者が自撮り映像やライブ配信を行い、その映像が瞬く間に拡散された。そのため、パンデミックのなかで海外メディアが現地取材ができなかったにもかかわらず、この出来事はすぐに世界的な注目を集め、アップル株の急落を招いた。
このフォックスコンにおける抗議行動は、同じ時期の彭載舟事件〔ゼロコロナ政策の終焉と習近平独裁を批判する横断幕を掲げた〕や「白紙運動」などと並び、中国政府が極端なゼロコロナ政策を放棄するきっかけの一つとなった(もっとも準備なき方針転換により多くの高齢者・弱者が犠牲となった)。また、この事件は、独立した労働組合や労働者組織が存在できない中国本土においても、プロレタリアートの自発的な集団的抵抗が、なおも権威主義政府を震撼させる力を持つことを示した。

◎言うは易しの「メイド・イン・アメリカで米国ファーストを実現」

しかし、西側資本にとって、予測不可能な政策転換と団体交渉権のない怒れる労働者たちは扱いにくい存在でもある。そのため、評論家のあいだでは「アップルは生産ラインを徐々に中国から撤退させるだろう」との見方が強まった。2023年以降の海外展開の動きは、その予測を裏づけるものとなった。
米メディアCNBCによると、フォックスコンは昨年、インドの2カ所に計11億ドル(約1700億円)を投資し、さらにアップルからの受注増に対応するため、15億4100万ドル規模の追加投資計画を発表した。同年、メキシコにも5億ドルを投資して生産能力を拡大している。
ロイター通信によれば、今年初めにはベトナムの2つの地域に計5億5100万ドルを投じて新工場を建設すると発表し、2027年5月に稼働開始を予定している。
一方、トランプ大統領の再選によって始まった新たな米中貿易戦争は、多国籍企業に「どちらの陣営に立つか」を迫っている。2025年4月の関税戦がピークに達した際、アメリカは中国製品に最大145%の関税を課した。ある分析によれば、仮に125%の関税を課した場合でも、256GBのiPhone 16 Pro Maxの価格は1199ドルから1999ドルへと跳ね上がるという。
トランプの関税攻勢は中国だけでなく、アップルにも向けられている。彼は「すべてのiPhoneをアメリカ国内で製造すべきだ」と主張しており、今年5月には「インドで工場を建てても興味はない。われわれが望むのは“アメリカ製”だ」と公言している。
しかし、スマートフォン組立は典型的な労働集約型産業であり、アップルの巨額利益は、第三世界の工場労働者が低賃金で低福祉、そして過酷な労働環境で働くことによって支えられている。2024年にYouTuberの“小豹”が鄭州フォックスコンを訪れ、労働者にインタビューした動画(原注2)では、ある女性労働者が次のように語っている。
「朝6時に起きて、6時50分に家を出ます。昼休みは1時間。夜は残業が2時間半なら19時半に終わります。それで月の手取りは2000元ちょっと〔1元は約20円〕」。
ここの労働者たちは1日の労働時間はおよそ11・5時間になる。仮に週5日勤務で月22日の勤務だとすれば、月253時間の労働で、賃金は3000元にも満たない計算だ。時給に換算すれば12元(約1・6ドル)以下となる。社会保険料などの控除を考慮すれば、フォックスコンが実際に支払うコストは月3000元は超えるだろう。いずれにしても、時給2ドル未満でアメリカ国内の労働者を雇うことは不可能であり、これこそが「ポスト中国」の生産移転先が依然としてグローバル・サウス諸国に集中している理由である。
米中関税交渉は依然として継続中であり、太平洋を挟む両国の首脳はともに予測困難な存在である。高額関税の負担も、アメリカ労働者に支払う賃金も、いずれもアップルの利益を大きく圧迫する。ティム・クックが最終的にどのような決断を下すのかは分からないが、少なくとも現時点での状況を見る限り、アップルは鄭州フォックスコンを見捨てていない。むしろ、富士康は現地での投資を拡大している。例えば2024年7月、フォックスコンは鄭州市政府と契約を結び、約1億5000万ドルを投じて新たな本社ビルと7つのセンターを建設することを決定している(原注3)。

◎「アップル社は高給」という幻想

中国の労働者にとって、厳しい雇用環境は「選択肢がない」という現実を意味する。iPhone17の生産に向けて、鄭州フォックスコンは今年初めから大規模採用を開始した。賃金条件は、2024年当時と比べてもかなり魅力的に見える。基本給は月2100元、これに残業手当、各種手当、さらに在職90日で最高8000元のボーナスが支給され、総合的に計算すれば、3カ月働けば収入は1・92万~2・3万元に達するという。
この金額は、米国で労働者を雇うことを考えれば依然として破格の安さだが、内陸部の河南省では「高給」とされる。河南省人力資源社会保障局のデータによれば、昨年の鄭州市における都市部の非民間事業所の平均年収は10万6674元、民間企業では5万7738元だった。
電気自動車大手の比亜迪(BYD)も昨年、鄭州で大規模採用を行ったが、その給与条件もやや低い程度だ。作業員の基本給は2100元で、法定の月労働日数21・75日、1日8時間とすれば時給は約12元。平日の残業代は1・5倍、週末は2倍、祝日は3倍。賃金は基本給、残業手当、生産超過ボーナスの3つで構成され、生産超過ボーナスは数百~2000元程度。合計すると月収は平均5000~7500元になる。
しかし、このフォックスコンの高給は一時的なものであり、今回採用された労働者が全員、今後も長期にわたって雇用されるわけではない。iPhone17の受注を処理するための「一時的な人手確保」にすぎない。鄭州が選ばれた理由も、周辺地域に季節的に労働力が豊富に存在するからである。『証券時報』の取材に応じた労働者はこう語る。
「2月に短期間働いたことがあります。今は農繁期が終わったので、繁忙期の工場で安心して稼げます。繁忙期の3カ月で2万元以上稼げるし、その後に日雇いを少しすれば、今年の収入は悪くありません。」(原注4)
だが、中国メディアは「高給」の裏にある劣悪な労働環境や違法行為を報じることはない。NGOの中国労工観察(China Labor Watch)は今年、鄭州フォックスコンに対して半年間の調査を実施し、労働者への聞き取りを行った。その報告書『アップルのサプライチェーンにおける中国依存の実態調査』(原注5)では、以下のような問題が明らかにされている。

調査で指摘された主な問題点は以下の通り。
・臨時工の比率が50%を超え、法律の上限の5倍に達している。
・一部の賃金支払いが翌月まで繰り越され、支払期日前に退職すると数週間分の残業代が支払われない。
・ほとんどの労働者が週60〜75時間働いており、法律で定められた上限およびアップルが設定する週60時間の上限を超過している。
・学生労働者を雇用し、時給はわずか12元、未成年に夜勤を強要させており、法律に違反する。
・非正規労働者には社会保険、有給休暇、産休がない。
・ウイグル族、チベット族、回族、イ族などの少数民族の応募を受け付けない。また妊婦や女性労働者の雇用にも差別待遇がある。
・危険な化学薬品への防護措置が不十分。
・出退勤時の荷物検査、個人情報や指紋の詳細記録。ITセキュリティ部門によるネット監視。それに対する批判をすると報復される。
・日常的に罵倒や性的嫌がらせがみられる。苦情を申し立てた労働者は監視、脅迫、個人情報の暴露などの報復を受ける。
これらの問題は、2022年のような大規模な抗議を再び引き起こすほどではないかもしれない。だが、フォックスコン側は労働者の不満が広がる芽を早い段階で摘み取ろうとしている。たとえば、小紅書(中国国内のコミュニケーション/ショッピングアプリ)や抖音(TikTok中国版)でハラスメント被害をシェアした元従業員は、投稿を削除するように圧力を受け、名前や住所を公開されるなどの報復を受けている(原注6)。
今日、アップルがこのような方法で多数の労働者を搾取できるのは、中国政府の協力があるからだ。しかし、トランプの圧力の下で、最終的にアップルが中国から生産ラインを撤退させる可能性も否定できない。その場合、フォックスコンの労働者たちは大量失業という運命に直面するだろう。
中国の経済・社会問題は構造的なものである。民衆の不満と怒りは、しばしば予期せぬ形で爆発する。例えば、今年初め四川省江油市で発生したいじめ事件への対応が発端になり、市民らが市庁舎を包囲する事件に発展し、最終的には政府が多数の警察を投入して鎮圧する事態となった。
鄭州のように数十万人の労働者が集まる工場で大規模な解雇が起きれば、大衆的感情が再び爆発する可能性は高い。無組織の労働者運動は政権を直接揺るがすことはないかもしれないが、こうした大衆的事件ごとに官僚集団の内部抗争のきっかけとなり、この体制の宿命的な分裂を加速させることになるかもしれない。

◎米中のボス交に対抗して、米中の労働者、団結せよ!

一方で、トランプの関税戦争には、アメリカ国内でも一部の労働組合指導者から支持が寄せられている(原注7)。草の根の労働者から組合幹部に至るまで、経済的ナショナリズムへの同調が見られる。典型的な例が、全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長だろう。彼は、トランプ政権とバイデン政権の対中関税措置を「賞賛」しており、バイデン政権が昨年「国家安全保障」を理由に電気自動車への関税を100%に引き上げた際にも賞賛した。
アメリカ労働者の中国に対する排外的感情は、19世紀に最初の中国人労働者がアメリカに渡った時代にまでさかのぼる。100年以上前、当時のアメリカの労働組合指導者たちは、「お米とネズミがあれば生きていける中国人がアメリカ人労働者の仕事を奪っている」と非難した。そして今日、フォックスコンのような低賃金で働く中国人労働者もまた、独占資本の悪行のスケープゴート(生贄)にされている。このような敵と味方を取り違えた立場は、中国の労働者をも民族主義へと押しやり、「中国政府のもとに団結すれば“鬼畜米英”から侮辱されることはない」という幻想を信じやすくしてしまう。
国際主義的な連帯の不在が、中国とアメリカ双方の労働運動にとって共通の致命的な弱点となっている。その点において、より整然とした組織と理論的伝統を持つアメリカの労働者がまず模範を示すべきだろう。
たとえば、労働組合はトランプの関税政策を支持するよりも、国際労働機関(ILO)の改革を求める方向に転じるべきだ。ILOが実効的な力を持ち、中国政府に対し、加盟国として批准した各種条約を履行するよう圧力をかけられるようにする。前述の鄭州フォックスコンでの問題の多くは、ILO条約の明確な違反に当たるからだ。
また、アメリカの労働組合の指導者はアップル社に対して「グローバルな最低賃金制度」の制定を要求することもできるのではないか。そうした取り組みによって、中国やグローバル・サウス諸国の労働者たちと連携し、世界的な労働条件の底辺への競争(race to the bottom)を阻止し、底辺を競い合うのではなく、より良い労働条件を競い合うという構造を作ることにつながる。これこそが、独占資本による各国労働者の分断と抑圧を防ぐ唯一の道である。
数百年にわたり世界の労働運動が守り続けてきた最も重要な原則がある。それは「諸君は雇い主と一緒になって他国の労働者に対峙するのではなく、諸君と肌の色の異なる労働者と共に立て」というものだ。この原則が捨て去られるとき、結果として生じるのは各国の対立と憎悪の連鎖、そして最終的には戦争に突き進む。逆に、この原則が貫かれるとき、労働者階級は普遍的な権利と社会的進歩を手にすることができるだろう。
watch?v=drKTAKCRKl8
原注3 https://www.bbc.com
/zhongwen/simp/business-69287181
原注4  https://www.stcn.com
/article/detail/3201740.html
原注5  https://chinalaborwatch.org
/zh/apples-dependence-on-china-in-its-
supply-chain-an-investigative-report-
on-foxconn-zhengzhou/
原注6 https://x.gd/pBwKY
原注7 https://www.thenation.com
/article/economy/american-labor-
anti-china-racism/
watch?v=drKTAKCRKl8
原注3 https://www.bbc.com/zhongwen/simp/business-69287181
原注4  https://www.stcn.com/article/detail/3201740.html
原注5  https://chinalaborwatch.org/zh/apples-dependence-on-china-in-its-supply-chain-an-investigative-report-on-foxconn-zhengzhou/
原注6 https://x.gd/pBwKY
原注7 https://www.thenation.com/article/economy/american-labor-anti-china-racism/

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