ウクライナ 危機にあるキーウ

野性的資本主義が荒廃を極度化

インフラ社会化は今や不可欠

ヴィタリー・ドゥディン

市民の苦難の原因は市当局にも

 2026年は、キーウのインフラに対する破滅的なロシアの空爆で始まった。そしてそれは、凍てつく諸条件の中で、生き残りの瀬戸際に住民を追い込んだ。3百万人の本拠であるこの都市は、暖房や水の切実な不足を経験中であり、電力は今短期的条件でのみ供給されている。明確になったことは、当局が国の破局的な劣悪化と気象状況の場合におけるプランBをもっていなかった、ということだ。しかしながら、現状況がキーウの指導者たちが引き起こした自治体インフラの脆さを理由にするものでなかったとすれば、プーチンのギャングの陰険な計画もこれほどの苦しみにはなっていなかったと思われる。市長のヴィタリ・クリチコは早くも、可能な者すべてにキーウを離れるよう訴えている。これは、当局が前線から遠く離れたひとつの市の諸問題を解決できない、という結論に導く。
 そのような言明は救済の責任を民衆に被せ、パニックを高める以外の効果は全くない。対応は対照的に、社会的支援を増やし、結果として連帯を強めるような方策を導入することでなければならない。民衆に、かれらが状況を統制する位置にいる、そして違いを作ることができる、との感覚を与えることが、ウクライナの勝利に対する彼らの確信を強化すると思われることなのだ。
 この状況に対する非難は、キーウの指導者たちの個性に焦点を当てているが、それはもっと幅広い政治的な脈絡を無視するものだ。住民の火急的諸問題を解決する点での政府の無能さは、それがビジネスエリートに役立つよう焦点が当てられている、という事実に由来する。したがって、都市サービスの統合、自治体労働者の仕事の人間化、またコミュニティ向け便益の最大化を考慮に入れることになる変革の根本要素を議論することが重要だ。

ビジネスの支配下で起きたこと

 この危機的状況とキーウ当局の無意識的な資本家的歩みの間にある結びつきを否認すれば、それは純朴というものだろう。何年もの間、自治体資産の諸部分が私的所有者に引き渡されてきた。そして、市のレベルではいかなる開発計画作成もなされずにきた。
 当局が系統的だと示されたところは、デベロッパーに土地を売却したところに、また企業の利益を保護したところにあった。資本は、研究者のデイヴィッド・ハーヴェイが現代都市に関する彼の批判の中で描いた欠点を抱えていた。つまり私的資本は選別的な開発に焦点を絞り、その中でその周りのあらゆるものが劣悪化するのだ。
 デベロッパーは都会の乱開発の破壊的結果を無視しつつ、都市の交通に過剰な負荷をかけている。そして次いで、キーウの住民すべてが諸々の公益事業の劣悪化が原因でかれらの快適さをその対価として差し出している(暖房温度、水圧、頻繁な事故、その他)。商業と腐敗に基礎を置いた都市モデルは、持続可能になったことは全くなく、今史上そのもっとも深刻な危機を経験中だ。
 『フォーブス』(米国の著名なビジネス誌:訳者)によれば、侵略以前キーウはビジネス開発に向けた最良の都市だったが、その開発に対する満足のレベルは決定的に低かった(38%)。
 戦争の間、ひとつの状況が現れ、そこでは緊急的サービスが空爆の結果を素早く克服し、人々を救うことができた。しかし人々は、関連する社会的挑戦課題を解決するためにかれらがもっている資源に頼らざるを得なかった。
 われわれの下にはひとつの逆説がある。千億UAH(ウクライナ・フリヴニャ、ウクライナ通貨で昨年2月のレートでは0・02ドル:訳者)の予算を抱える一つの都市が再び落ち着くための臨時的社会住宅を設ける余裕がなく、公益事業は途切れ途切れに提供されているのだ。
 別の問題は、それに多くが頼ってきた決定的なインフラ労働者の嘆かわしい労働条件だ。当局は何年もの間、現にある危険にふさわしいレベルに賃金を合わせることができずにきた。そしてかれらは今になってやっと、緊急労働に関わる者たちに対するボーナスについて話し始めた(われわれはここで5千万フリヴニャ割り当てについて話している)。効果的な労働者統制がなければ、そのような方策も選別的になり、全員には行き渡らないかもしれない。分かっていることだが、2023年にキーウテプロエネルゴ(キーウの暖房・熱水供給事業体、キーウの熱エネルギー需要の90%を供給:訳者)の労組は、スタッフの賃上げを雇用主に強いるために裁判所に向かうことを迫られた。
 賃金状態に対する不満は、空襲警報の中でも任務を果たす稼動要員に対する追加支払いを求める請願にまで帰着した。われわれは、ロシアの空爆が引き起こした負傷者向け補償の不払いが付随する状況を忘れてはならない。そしてそれがそうした労働者に向かう当局の姿勢を測るひとつの尺度なのだ。
 諸々の問題は、住宅や共同体サービスの状態に関する本当の情報の欠如に起因する不信によって度を強められている。自治体と私的企業両者の説明責任は高度に問題含みであり、今設立途上の本部は、限られた公職者の一団で構成されている。

公益事業を所有するのは誰か?


 キーウを管理し挑戦課題に応じるための調整されたシステムは全くない。それが資産をめぐる統制に関する状況を映し出している。この市の住宅整備や公益事業部門における所有権構造は複雑であり、共同体と私的な(オリガルヒ的な)入り組んだ所有権の諸形態からなる諸要素に基づいている。この部門の最大企業は4社だが、共同体百%所有が1社、私的所有百%が1社、残り2社はキヴェネグロ・ホールディング(PJSC)が60%以上の株をもっている。
 住宅整備と公益事業の崩壊寸前状態を前提としたとき、これらの企業の収益は驚きだ。同時に、指導的企業で一定数の株をもっているPJSCは、十分に知られているように、大ビジネスの友人たちから構成されている市の当局者たちが保有する過半数持ち分により、自治体と海外から所有されている。
 PJSCが公益事業サービスの消費者に対し極度に容赦がないと自ら示してきた以上、この企業が責任のある管理モデルだ、と言うのは安易すぎる。この多国籍企業はその弁護士の活動を通じ、債権回収のためにこの間2万6千件まで訴訟を積み上げてきた。現在の事例では請求のいくつかは10年前まで遡っている。戒厳令の中でその口座が凍結されている年金生活者は、かれらの「拠出」が無理矢理この企業の収益にされている。同社自身は、その資力に関する求めを無視する覆いとして戒厳令を利用するのもいとわない。交戦中であっても企業の論理は人民の論理よりも価値があるのだ!

崩壊と無責任の逆転に向けて

 2000年向けのキーウのマスタープランは過去の計画だ。都市経済は単一の複合的なシステムであり、都会のコミュニティの福利と機能に向け機能する相互に関連した諸要素として、市の生活支援のあらゆる領域におよぶ(工学技術的ネットワーク、交通、文化施設、社会的インフラ)。さまざまな事業体によるこの総体的領域の断片化は、その補修管理に対する責任の欠落にいたる。これらの企業が私的に所有されたり、利益のために住民を食い物にするのは道理のないことだ。戦時にこの混沌を維持するのはコミュニティの福利に対する一種の犯罪だ。
 私的な影響と狭い市場論理からの住宅整備と共同体サービスの解放は、コミュニティと消費者の諸々の利益を整える助けになるだろう。そして、公的に予算化されるものすべてに関する、それは自動的に腐敗になるというような俗悪な決まり文句はきっぱりと拒絶されなければならない。
 第1に、私企業におよぶ有効な反腐敗統制がない中で、その経営者による無駄と悪用の程度をわれわれは分かっていない。第2にわれわれは、公開の会計に基づく、また労働者管理の下で、自治体の資産が必要を満たす上でどれほど有効か、を想像することさえできない。第3に、キーウにおける2024年の自治体企業からの純利益50億は、この部門における慢性的な赤字という出発点的断定を反駁している(もうひとつの問題は、この利益がどんな社会的コストで達成されているか、になる)。第4に、自治体部門で競争を確実化するのは事実上不可能であり、それは、私企業が独占企業として活動することになるのを意味する。
 この状況は、あらゆる住民が利用する財産の所有権に対する取り組み方に一つの変革を求める。住民に手ごろな商品とサービスを提供するために、また市の歳入を増やすために、仕出しサービス施設を含んで他の公的諸施設の自治体所有化の可能性が考慮されなければならない。この基礎の上ではじめて、利用可能な財源の額を決定でき、商品の生産と配分を正確にに設定できる。これは、数十万人が自宅で自分たちのために調理できなくなるような1点にわれわれが近づきつつあり、他方でショッピングセンターとレストランがそれら自身の利益のために操業するようになる中で、不平等の成長を抑えることもできると思われる。

自治体所有化は遅すぎない

 したがって首都における現在の危機は、経済の崩壊と方向を間違った反社会的優先性が引き起こした統治の危機だ。しかしながら同時にそれは、その結果としてコミュニティがこれから十分成熟した所有者のように感じるにつれ、抜本的な変革の必要に対する気付きに導くかもしれない。われわれが自治体企業を誰かの飼い葉桶から救済の一手段へと変革したいならば、われわれは、自由市場の魔法と腐敗した経営者の全能に関する神話に抗いつつ、責任を引き受けることを迫られるだろう。
1.透明性を基礎としたインフラの社会化。戦時の中で、何ものも私有されてはならず、あるいは単独で存在してはならない――システム全体は単一の目標に向け、この国の善に向け機能しなければならない。独占企業はコミュニティに奉仕しなければならない――。2.有効な労働者管理。決定的なインフラ労働者の権限を付与された参加に基づく救援本部の創出。この機関は、エネルギーシステムの状態に関する完全な情報を確保すべきであり、不可抗力の結果として経済にとって決定的でなくなっている企業の閉鎖に関し、決定を下さなければならない。
2.公益事業債務の帳消し。市民は、サービスが途切れ切れにしか提供されないときに、蓄積中の公益事業債務を理由に苦しんではならない。公益事業企業が年金生活者と障がいをもつ人々から資金を集めて利益を上げつつ操業することは受け容れられない。
3.決定的なインフラ労働者に対する公正さ。戦争のもっとも困難な年月の中でインフラのヒーローたちは、自身を危険にさらしてほとんど無給で働いた。国家は、かれらにその借りを完済しなければならず、労組の要求をよく聞かなければならない。
4.苦しむ市の住民への支援。人々に離れるよう訴えることに代えて、とどまる者への給付がなければならない。たとえば、公費のついた諸機関内での暖房、仕出しサービス施設における食事、自宅へのソーラーパネル設置費用に対する補償。リモート労働者の場合は、中断を考えずに作業できるように、共同体のセンターが適切に機能していなければならない。

 加えてこれらの方策は、雇用の分野におけるいくつかの策と組み合わされなければならない。たとえば、灯火管制の間この市で過ごした時間の計算、まともな賃金での社会的に有益な仕事への自発的参加、市のための自発的活動に対する有給休暇の付与、などだ。
 統治の論理が支援に向け方向が変えられないならば、諸々の都市は住民の減少、不平等、そして停滞に直面するだろう。
 利己主義と市場はその当然の成り行きを辿ってきた。今こそ共同体として、また集団的に考えるときだ!(2026年1月16日)

▼筆者はウクライナのソツイアルニー・ルフ(社会運動)のメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2026年1月19日)  

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