イラン 裏目に出る米の攻撃

中国モデルからロシアモデルへ
ジルベール・アシュカル

米国の意図
は逆効果に

 トランプはイランで「体制変革」を遂行していると主張した。しかしそれは、サダム・フセイン打倒後に民主主義をもたらすとして組み立てられたジョージ・W・ブッシュによる2003年のイラク侵略を正当化する用語の使用、と異なるやり方によっていた。イランに対する米国・イスラエルの共同攻撃の以前にもわれわれが繰り返し力説してきたように、トランプの目標は彼のベネズエラ型戦略を複製することだった――そして今なお――。つまり、ワシントンと協力する意志がある後継者とそれ自身の石油の利益に向け道を清めるための、大統領の拉致だ。換言すれば、彼の狙いは「体制の行動を変えること」であり、体制自体を変えることではなかった。
 それでも、イランにおけるトランプの行動の結果は、彼の意図とは逆となっている。彼は、イラン体制内の「プラグマチックな」改良主義派を強化していない。これらの改良主義者は、イランの最善の利益は核兵器に向けた臨界点と核エネルギーの平和的利用の扱いかねる中間点にあるウラン濃縮プロセスの停止にある、と力説する。
 イランには核エネルギーは必要ない、ということが真実だ。イランは豊富な化石燃料を、さらにもっと大きな再生可能エネルギーの潜在能力、特に太陽光発電能力まで抱えている。そして後者に関し、中国――イランの鍵になる経済的パートナー――が世界の先頭を行く生産者だ。
 改良主義者はまた、その影響力をアラブ世界に拡張するというイランの政策は敵対性を抑止することに失敗し、代わりにイランとそのレバノンの同盟者であるヒズボラを巻き込んだ破壊的な戦争の引き金を引いた、とも強調している。もっとも決定的にかれらが確信していることは、経済開放と西側との提携には、イラン経済を再生させ、その人的、技術的資源を利用し、現政権に益々敵対的になっている住民と政府間の関係を修復する可能性もある。ということだ。
 しかしながら今回のワシントンが率いる二国共同攻撃は、イスラム革命防衛隊(IRGC)を中心としたイラン体制の軍事勢力を元気づけている。この勢力は石油と天然ガスの歳入で活性化される地代経済モデルに支えられ、世界的に統合された経済、生産の発展――中国が現代史上最大の経済的奇跡を成し遂げるのを可能にした歴史的な経済開放を通して中国が達成した類の――にはほとんど関心がない。事実上イランは今や、改良主義者がより好んだ中国モデルとは鋭い対照をなす、軍事化と地代主義に基礎を置くプーチンのロシアのモデルに似たものへと向かっている。

地域覇権求める
軍事的共和国へ


 宗教的イデオロギーは現在イスラム共和国を導く力ではなくなっていることに留意することが重要だ。それは、1989年のイスラム共和国創建者である大アヤトラのルーホッラー・ホメイニの死、またその後のアリ・ハメネイの昇進以後のことだ。そしてそのハメネイは当時中位の聖職者で、その昇進には事実上指導部にとっての神学的資格を低めるような憲法改正を必要とした。ハーシェミー・ラフサンジャニー(第4代大統領)が容易にしたハメネイの昇進は、ある種の政治的策動の結果であり、そしてその策動はホメイニ時代の精神的で宗教的な指導性を次第に腐食させた。
 ラフサンジャニの大望に反して、イランはハメネイと密接に連携したIRGCが支配する軍事的共和国に向かって形を変え、地域的影響力を拡大するための宗派的日和見主義の方を選んで、そのもっと幅のあるイスラム的イデオロギーの主張を一層捨てていった。
 この拡大はレバノンで、レバノン南部のシオニストによる占領に反対する支援としてまっとうに正当化されて、ホメイニ時代に始まった。拡大はその後まっとうさがはるかに小さい形でイラクに延長された。そしてそこではテヘランが、イランの影響力を高めるために、イランの宗派的代理人を米国の侵略と占領に協力するよう促した。
 シリアでのアサド体制への支援は、イランからイラクを介してレバノンとシリアの地中海沿岸部へと延びる、テヘランに忠実な宗派的枢軸を建設するもっと幅広い戦略の一部だった。実際アサド体制は、イランが長い間ひどく嫌ってきた「アラブ社会主義バーチスト」イデオロギーに属する体制だったのだ。
 イエメンのフーチ派は、当初は2011年の民衆蜂起とアリー・アブドッラー・サーレハの打倒から現れた選挙で選ばれた政府に反乱し、この枢軸に加わった。かれらは一時的に追い出された独裁者と連携したが、その者とは宗派的な提携関係以外共有するものは何もなく、その後間もなく彼を暗殺するためだけの連携だった。

トランプの前
にはジレンマ


 米国が率いる二国共同攻撃は、テヘラン・米国間交渉の失速を説明する形で、この軍事化された拡張主義者の路線をさらに強化している。この結果はイスラエル政府の願いに沿っている。かれらはトランプとは違って、単なる行動の変化ではなく、イラン体制の完全な打倒を、また民族的な区分に沿ったこの国の断片化さえも追求しているのだ。したがってネタニヤフが期待するのは、行き詰まりの方を選び、交渉による解決を追い求めるイランの改良主義者の努力が失敗することだ。
 トランプは今、彼の政治的な先の見えなさ、および二ヵ国の深い違いを認識せずにイランにおけるベネズエラ型シナリオ複製に頼ったこと、の結果に直面している。彼は、いわばジレンマに突き当たっている。つまり、ネタニヤフに急かされるように二国共同攻撃を続けるか、米国内の計り知れない経済的、政治的リスク、特に迫りくる中間選挙に伴うリスクに耐えるか、あるいは、誰も騙されず、この地域と西側の同盟国内部で等しく信頼をさらに腐食すると思われるような口実の下に撤退するか、だ。いずれにしろ、「戦争でも平和でもない」現在の状態は無期限に続くことはあり得ない。(「アル―クズ・アル―アラビアン」2026年4月28日に掲載されたアラビア語初出から改訂された英語ブログ)(「インターナショナルビューポイント」2026年5月4日)

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