ネパール ヒマラヤ氷河崩壊

山がかれらを裏切ったのではない
裏切ったのはシステムだ

このアピールは、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、フィリピンなどの労働運動、農民運動、女性運動、人権団体の活動家が呼びかけたもので、9月17日に公表された段階で30人の個人・団体が署名している。(「かけはし編集部」)

 2026年8月26日、ネパールのランタン・リルンで懸垂氷河[訳注:山地の急斜面や崖の上部に張り付くように存在する氷河]が崩壊し、岩石や氷の雪崩と巨大な洪水が発生し、それはレンデ・コーラ川およびボテコシ(トリシュリ)川流域を約100キロメートルにわたって呑み込んだ。最大2億立方メートルに及ぶ土砂や瓦礫が、マグニチュード5・2の地震に匹敵するエネルギーで流れ落ちた。2026年9月6日時点で、1331人以上の死亡が確認されている。5千人近くが行方不明となっており、6万5千人が孤立状態にある。救助隊員が救出に派遣された水力発電トンネルの内部で溺死した。9日目と11日目に計3名が救出されたが、いまだに800人以上がトンネル内に取り残されたままだ。
 ラスワ住民のみなさん、行方不明者を数えている家族のみなさん、今も瓦礫を撤去し続けている生存者のみなさん。私たちはあなた方とともにいる。あなた方の悲しみは、あなた方だけが背負うべきものではない。あなた方の抗議行動は、あなた方だけが担うべきものではない。私たちは、あなた方の苦しみを自らのものとして分かち合う、あらゆる大陸の労働者、農民、先住民族、気候正義の運動として発言している。私たちのうちの誰か一人が埋もれるとき、私たち全員が埋もれているのだ。国家や資本によって引かれた国境が、私たちの悲しみや闘いを分断することはない。
 私たちは「自然災害」という言葉を拒否する。命を奪ったのは洪水だ――しかし、その場所を選んだのはシステムである。わずか14ヶ月前にも洪水に見舞われたばかりの狭隘な谷間に、13基もの水力発電所、その労働者宿舎、トンネルが建設された。洪水を検知するために存在していた監視観測所は洪水によって破壊された。ネパール政府は自国民を捜索するために民間ヘリコプターを雇わなければならなかった。そして、決定的に重要な最初の2日間に外部からの救助隊が立ち入ることを禁止した。これは地理の話ではなかった。それは利益の計算であり、今この瞬間も、地球上のあらゆる労働者階級のコミュニティを対象として計算がおこなわれているのだ。
 ラスワが死者を埋葬していたとき、洪水がフィリピンを飲み込み、インドネシアは火災の煙に覆われた。そのパターンが世界的なものであるのは、原因が世界的なものだからである。資本主義による搾取が地球を温暖化させる一方で、貧困層は気候変動の最前線で命を落としている。その一方で、利益を貪る者たちは、国境や貸借対照表、自ら築いた防潮堤の背後に身を隠しているのだ。
 私たちは言葉だけでなく、行動でも連帯を誓う。略奪的な金貸しや腐敗した役人を通さずに、労働者、農民、労働組合のルートを通じて、草の根の支援を動員することを約束する。私たちはあなたたちの証言を、私たちの議会、法廷、労働組合へと持ち込む。あらゆる国際フォーラムでこの災害を取り上げるよう、自国政府に圧力をかける。ネパールの労働者や農民が抗議行動を展開するあらゆる場所で私たちはともにある。頭上のダムに対する彼らの闘いは、足元で押し寄せる洪水に対する私たちの闘いであり、それらはまさに同じ闘いだからだ。隣人として、同志として当然なすべきこととして、住処を追われた人々を受け入れ、保護する。そして再建が始まるとき、生存者を食い物にする中間搾取者を通すことなく、資金があなたたちに直接届くようコミュニティを組織する。
 何年もの間、言葉は骨抜きにされてきた。闘争は回復に、賠償は資金援助に、正義は目標へと変えられた。あなた方の名において、そして私たちの名において、私たちはその骨抜きを拒絶する。
 私たちは金貸し、汚染者、そしてこの谷を古いイメージのまま再建しようとするすべての政府に対し、5点の明確な要求を提示する。
1.借金ではなく、無償援助を。すべての気候災害資金を即座に無償援助に移行すること。すなわち、借金、条件付け、債務の罠はもういらない。気候基金、特に「損失と損害(ロス・アンド・ダメージ)」基金を大幅に強化し、資金を充当すること。自らの排出に対する補償金を、被害を受けたコミュニティに直接支払うこと。夫が行方不明でありながら行政手続きの上では「死亡」とされていない女性たちを含め、ただちにすべての世帯に支援をおこなうこと。
2.食料主権とエコロジー的な再建を。小農によるアグロエコロジー、在来種子、生きている土、地域市場など土地からの再建。「回復」の名を借りた企業による契約栽培や農地集積の禁止。
3.被害を受けたコミュニティが再建を主導すること。ラスワのことはラスワが決める。生存者、農民、牧畜民、労働者、タマン族などの先住民族、女性たちが、計画、予算、立地選定、災害監視に関して、形だけの参加ではなく、本当の権限がある決定権を握ること。
4.独立した調査と完全な説明責任を。すでに洪水に見舞われていた谷に、なぜ危険なインフラが承認されたのかについて公的調査を実施し、署名した官僚や企業の名前を明らかにすること。
5.汚染者による負担を。請求書は被害をもたらした者たちに送られるべきであり、生存者に回されるべきではない。小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言第18条[訳注:安全かつ汚染されていない健康に良い環境に対する権利]を施行し、コミュニティがどこでも排出者を指名し、支払いを要求できるようにすること。

 借金は確かに存在する。それはグローバル・ノースおよびグローバル・サウスの共犯者であるエリートや、犠牲者の名前すら知らぬ官僚たちが、一度に二百人も土の下に埋められた人々に支払うべきものなのである。
 私たちは闘い続ける!

2026年9月9日

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