ブラジル ルラ支配の2年
課題の核心は社会運動の後退克服
時短求め若者の運動が新たに登場
イスラエル・ドゥトラへのインタビュー
ブラジル大統領としてのルラの権力復帰から2年近く、MES(社会主義左翼運動)とPSOL(社会主義と自由党)の指導部の1員であるイスラエル・ドゥトラが、フランスNPA―アンティカピタリスタ・ラテンアメリカ委員会によるインタビューの中で、社会・政治情勢の概要をわれわれに伝えている。
「中道」勢力が伸長した地方選
――2024年の最後におけるブラジルの最新地方選に対する、特に左翼の結果に対する評価を提供できるだろうか?
10月の地方選結果は、いわゆる「セントラオ」諸勢力の陣形を強化した。ちなみにこの勢力は、実際は中道潮流ではなく、時に政府と連携し、時にもっと保守的な野党と連携するような、むしろ右翼部分だ。
4つの主な要素に光が当てられてよい。
・現職市長の再選という強力な傾向。それは、公的資金、選挙資金、公的投資の操作、およびすでに自治体政府内にいる者たちの手中に集中された他の利点のおかげだ。
・重要な大衆運動のシラケであり、それは白票や無効票の数および棄権で強められている。選挙期間中には大きなイベントや大衆集会が全くなかった。公的資金供与の重み(全政党に対する10億ドル)もまた、キャンペーンに向け主要政党から手当を払われた大きな数の人々と、他の戦闘的な多数間のねじれをつくり出し、自発的な活動と自然発生的な行動の空間を狭めた。
・右翼と極右内部で、結果はもっと矛盾したものだった。極右は市長や市議会議員のポストによって諸々の部署を獲得したものの、ボルソナロはひとりの指導者としてさらに疑問視された。その中で、地域的に新しい右翼部分が浮上した。MMB(ブラジル民主運動)やPSD(社会民主党)といった「セントラオ」に結びついた諸政党の強化はこの傾向をはっきり示している。
・全体としての左翼、そして特にPT(労働者党)とPTと連携した場合のPSOLは、たとえばサンパウロやベレム(ここでPSOLは市長職を失った)の場合のように、後退した。そうであってもPSOLは、かなりの影響力を維持し、重要な選挙の勝利を諸々確保、主な州都におけるその市議会議員の数を維持し、あるいは増加さえも果たした。ポルトアレグレ――PTの候補が決選投票で敗北した中でも、PSOLは1議席を勝ち取った――の選挙はその1例だ。
良い知らせは職場の新たな闘い
――現在の大きな闘争は何か? 特に「VAT」、ペプシコのストライキ、「6×1」反対の闘いについて論じることができるだろうか?
グッドニュースは職場から届いている。ひとつの運動が、「6×1」制度(6日働いて1日休む)――ほとんどの事例で、現在の労働パターン――に反対して形成され、週労働日の削減を求めている。この運動は、「VAT」(ビダ・アレム・ド・トラバルホ、「労働よりも暮らし」)という名称の全国運動によって組織され、集中化されてきた。その主要な指導者は、リオデジャネイロで最も上首尾に選出されたPSOLの市議会議員のリック・アゼベドだ。11月15日にひとつの全国集会が組織され、労働時間短縮法案の議会通過に向け圧力をかけようと、数千人の人々、特に若者たちを街頭に連れ出した。オンライン請願はこれまでに3百万人以上の署名を集めている。
その間、多国籍企業のペプシコ(ペプシコーラ)の従業員が9日間の大規模ストライキを決行、「6×1」制度反対闘争に全国的な共鳴を引き出した。このストライキは模範となった。それは重要な結果を達成できなかった――当初の要求に関するいくつかの勝利のみ――とはいえ、労働日削減を求める闘争を日程に載せたからだ。
新自由主義政策への反撃が急務
――他の社会運動、土地なき者たちや家なき者たちの運動についてはどうか?
われわれは、多くの部分が守勢にあるという形で、社会運動の大きな後退の時期にいる。国内の不平等を動機とする大きな要求が諸々ある。
MST(土地なき労働者運動)は、農地改革と環境問題の両者に関し、政府の諸方策に対しもっと批判的な基調を採択している。連邦政府の経済課題に関する選択がIMFの構造調整の継続だとの印象が高まっている中で、これは正当だ。政府の選択の例は、財務相が承認したいと思っている政策パッケージであり、それは、いくつかの社会分野における予算カットを含んでいる。
その上で、2025年にわれわれがブラジルで、アマゾンの中心部でCOP30を迎える中で、環境運動が決定的な年に向けその動員を今組織し始めている。そして社会運動は、決起と論争からなる広範な平行したプログラムを組織するだろう。
アダジ財務相の財政緊縮諸方策とはどうなるだろうか? それらに対決しそれらとの闘いを提起する者は誰だろうか?
彼の提案は今銀行団体(Febraban)によって幸福感で迎えられようとしている。それは、いわゆる「新財政枠組み」によって整えられてきたいわゆる「支出上限」にしたがうことからなっている。そして先の枠組みは、債務諸証券返済継続を目的に、公的支出を避けるモデル以外の何ものでもないのだ。
その具体的な結果は、最貧困層(社会的援助を必要とする人々)向け給付を削減することであり、公務員賃金の凍結、また数年にわたる最賃引き上げの抑制だ。4週間前われわれは、政治指導者、知識人、社会の指導者と共に、この方策パッケージに反対する宣言に乗り出した。そしてそれは強さと支持を獲得し続けてきた。財政危機から抜け出すためには、われわれは最富裕層への課税、特権反対の闘争、銀行の過剰な利益との格闘、さらに公的債務に関する論争再開を必要とするだろう。
問題が多々あるEUとの協定
――メルコスール(南米南部共同市場)・EU協定(2019年に原則合意されたが、最終文書はまだ締結されていない:訳者)に関する対応はどうか?
ブラジルは、地政学的影響力をもつ一連の国際的な政治協定の中で重要な重みをもっている。たとえば、ガザと西岸で起き続けていることをジェノサイドとして糾弾しているルラの立場は、正しくまた重要だった。
近頃、われわれはブラジルでG20のような会合を経験した。来年はアマゾンでCOP30が開催されるだろう。フランスのような諸国からの強い抗議の下で、EUとメルコスール間の協定が公表されたのはこの枠組みの中でのことだった。
政府はメルコスール・EU協定を勝利として持ち上げたが、社会運動は強い留保を表している。それは特にMSTとビア・カンペシーナの内部にあり、その指導者によれば、これは欧州によるメルコスール諸国の再植民地化に導くと思われる。それは、歴史的な抑圧の強化、また農産品輸出の単一栽培という略奪的モデルに結果すると思われる。それは、4つの主要な経済部門、農産品、鉱物、家畜、そして繊維素材に基礎を置く「再原始化」における1歩になるだろう。国内工業部門に関連した関税問題も諸々の懸念を高めている。(2025年1月16日、「ランティカピタリスト」からESSFが訳出)
▼イスラエル・ドゥトラは社会学者で、PSOL全国執行部国際関係書記、かつMES(ブラジルにおける第4インターナショナルのシンパサイザー組織)の活動家。(「インターナショナルビューポイント」2025年1月20日)
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