LGBTIQ クイアーがイベントに嵐起こす
シオニストの参加に拒否を表明
プライドウォークの精神は反レイシズムだ
マリアム・ジラニ/イエト・メニスト/サマラ・ハザル
通常は2週間のアムステルダム・プライド・ウオークのほとんど政治性の乏しいイベントのひとつの、今年7月20日のアムステルダムのプライド・ウォークにおけるイスラエルの国旗を受け容れるか否かに関する論争の突如の爆発は、オランダのLGBTIQ政治の前面にガザにおけるイスラエルのジェノサイドという問題を無理矢理押しつけることになった。それはまた、過去おびただしい商業主義、および警察、軍、さらに政府諸省庁の存在によって特性づけられたアムステルダム・プライド・ウオークに急進的なクイアーを編入する試みをめぐるいくつかの難しい問題をもさらけ出した。
シオニスト擁護への鮮明な反撃
1996年から2005年まで、アムステルダム・プライド・ウオークの全体はゲイビジネス協会によって組織された。その後でもそれは、急進的なクイアーグループの「リクレーム・アワー・プライド」による相対的に小さな、しかし戦闘的で創意溢れる抗議活動を付随した、観光客群集向けの政治的にはほとんど精彩を欠く見せ物的催しにとどまった。
中道左翼のアムステルダム市の行政当局は先頃、この市のより急進的なクイアーを代表すると想定されたクイアー・アムステルダム財団にプライドの2週目を譲ることで、この2極化を弱めようとした。しかし、イスラエルの国旗はプライド・ウオークの反レイシストの精神に反すると思われる、とのクイアー・アムステルダムの声明は、その包含を狙った試みを大きく吹き飛ばした。
ガザでジェノサイドが進行中のこの時にイスラエルの国旗を歓迎しないというクイアー・アムステルダムの決定は、アムステルダムのプライドイベントの組織化に関わるさまざまな利害関係者中で、ホモ民族主義者が勢揃いした反応に火をつけた。アムステルダム市長のフェムケ・ハルセマは、この「禁止」は容認されないと思われると伝え、それを「デモ参加者への検閲強要」と表現した。
クイアー・アムステルダムはそれに応じる形で当初、謝罪し、プライド・ウオークは連帯という基礎的価値を分かち合うあらゆる背景をもつ人々に開かれているだろう、と明確にする声明を出した。さらにそれは、オランダの反シオニストユダヤ人グループのブレヴ・ラヴの発言者を招待していることを強調した。しかしこの後退のもくろみも嵐を静めることはできなかった。
その最初の形以来プライドをずっと組織し続けてきたと主張するホモモニュメント財団が今度は自分の出番として、「各自の旗に関わらず」すべての者を歓迎して、20日のプライド・ウオークの組織化を引き継ぐとする声明を出した。クイアー・アムステルダムはプライド・ウオークの組織化から撤退する中で、その基本的なクイーアの価値に反する妥協を受け容れることはできないと宣言して、勇気ある立場をとった。そして、9月の第2週にそれ自身の国際連帯抗議行動を行うつもりだ、と公表した。
イスラエル美化のイカサマ看板
国際的医学誌のランセットによれば、パレスチナ人の中の18万6千人と見つもられる人々あるいはそれ以上の死亡は、ガザにおける現在のイスラエルのジェノサイドに責任が帰せられ得る。オランダにある国際司法裁判所は、1月の今年はじめ、イスラエルはジェノサイド条約を侵犯している、と認めた。イスラエルの国旗を歓迎しないことを検閲行為とみなすハルセマの立場は、先の背景を前提とした時道理に反している。
クイアーは、オランダ内でジェンサイドに反対するますます強力になる運動の一部になってきた。いくつかの勝利が、ジェノサイドに対するオランダの共謀に対し、決起の点および法のレベル双方で勝ち取られてきた。ハルセマは反ユダヤ主義反対の行進に際し、反ユダヤ主義の旗印に対する寛容を求めるのだろうか? その疑問を呈するだけでも彼女の主張の道理のなさを示している。しかし、シオニズムに対するはっきりした共感は、PVV(極右ポピュリスト政党の自由党:訳者)の中や右翼に関してだけではなく、PvdA(労働党:訳者)内にも深く根を張り、頑強だ。
アムステルダムのプライド・ウオークの中にイスラエル国旗を容認する立場は、ガザで進行中のジェノサイドに対するピンクウォッシング行為にほかならない。ピンクウォッシングは、イスラエル国が何十年も、イスラエルをゲイの権利に対する指針と描き出し、占領されたパレスチナの中でLGBTIQのパレスチナ人の暮らしを台無しにしつつ、歴史的なパレスチナに対する進行中の入植者の植民地主義を上品に見せかけるために利用し続けてきた方法だ。
アムステルダム・プライド・ウオーク内でイスラエル国旗を認めることは、占領されたパレスチナと欧州内双方のクイアーのパレスチナ人の暮らしをおしまいにし、中東出身者と全体としての非白人を敵視する高まるレイシズムが油を注ぐ、そうしたシステムとかみ合っている。アムステルダムのゲイの状況は、残念ながら、長い間ピンクウォッシングのイデオロギーにとって豊かな土壌だった。
オランダ社会運動の問題も表に
クイアー・アムステルダムの勇気ある立場は今、あまりに長い間過剰に固められてきた総意に裂け目をつくり出すことになった。それに応えて、BDSオランダが、プライド期間中のジェノサイドに対するピンクウォッシングを拒絶しようと、「ジェノサイドにプライドは皆無だ」のスローガンの下に7月20日、クイアー連帯抗議行動を行おうとしている。
プライドの主要な主体としてのクイアー・アムステルダムの創出は、商業主義とホモ民族主義に反対して過去「リクレーム・アワー・プライド」により動員された相対的な少数を超えて、幅広いLGBTIQの環境に接触を伸ばす見込みを提供した。しかし今われわれは、そのような契機がオランダ国家、特にアムステルダム市による資金供与と監督に依存しすぎていたかどうか、を問わなければならない。結果として生まれた財団組織は、幅広い民主的な論争と決定作成に開かれてこず、今クイアー・アムステルダムを市との衝突の中で弱めている。
関係諸グループに合わせた財団設立は、オランダの多文化主義がもつ古くからの伝統で、可視性と行動のための限定された空間を提供することで、一定の運動に見合った機能を果たした。現代のオランダ新自由主義的民主主義における政治運動は、財団へと組織された場合、ふたつの重要な挑戦課題を前にする。
第1にこれは、代行主義に帰着し、政治への限定的なコミュニティの関与を付随してもっと幅広い住民に代わって唱導する少数の個人、という結果になっている。第2にこれらの財団は、他のものによって、しばしば組織的により強力な、それらが交渉しなければならない諸機構によって確立されたルールによって制約されている。
近頃の、特に問題含みだったこの事例は、フェミニスト・マーチ・NLであり、それは、同時平行の反ジェノサイド抗議行動を敵視する警察の暴力の潜在的可能性に対処する上での無能力が理由で、計画された行進のまさにその日、分解した。僅かの活動家のがんばりの上に構築され、集団的な思考、討論、また組織化が提供する頑強な支えを欠いたこれらの財団は、生来的に脆弱なのだ。フェミニスト・マーチ・NLの結果とは対照的に、われわれは、クイアー・アムステルダムがこの経験からより強く浮上することを期待している。
反ファシストの歴史引き継いで
クイアー・コミュニティ内の反ファシストの声に対する抑圧、およびクイアーであることの、ジェノサイドをピンクウオッシュするための武器化の時代、ホモモニュメントがもつ歴史的な反ファシストのシンボル作用を利用することがかつて以上に基本になる。
1987年に建立されたこのモニュメントは、強制収容所内のゲイの犠牲者に縫い付けられたものに似た、3つのピンクの三角形から構成されている。各々の三角形は、クイアーの記憶の異なった側面を表している。ひとつの三角形は、街頭レベルで、過去クイアーの人びとが耐えてきた抑圧とホモ排撃の暴力を象徴し、オランダのゲイのユダヤ人詩人であるヤコブ・イスラエル・デ・ハーンによる詩からの詩編「友情を求めるまさに際限なき熱望」を含んでいる。
このピンクの三角形は後に、「沈黙=死」運動の一部としてエイズパンデミック期の1987年に採用され、アクト・アップ・ニューヨークはそれを、連帯と命のための闘争を象徴するロゴとして採用した。
かれらは近頃、「平和を求めるユダヤ人の声」と共に、「ジェノサイドにプライドは皆無だ」から「ニューヨークからガザまで:妨害がインティファーダだった」まで広がるスローガンの下に、バイデンにイスラエルへの武器供与を止めるよう求めて、パレスチナ民衆との連帯イベントに乗りだしている。
デ・ハーンの場合、元社会主義者の宗教的シオニストとしてパレスチナに移動した後、そこで彼が見たものが僅かの年月のうちに彼を反シオニストに変えた。1924年に彼は、イスラエルの将来の大統領が率いた武装シオニストの一隊によって暗殺された。彼の記憶は、以下のことをわれわれに思い起こさせなければならない。すなわち、クイアーの連帯はわれわれを、差別的なイデオロギーに対する非妥協的な拒絶へと、「寛容」と「団結」を名目としてそれらを決して受け容れないことへと鼓舞しなければならないと。
▼イエト・メニストは、第4インターナショナルオランダ支部のSAPの、長期にわたる指導部メンバーのペンネーム。
▼マリアム・ジラニは、SAPメンバーで、アムステルダム在住の歴史家。(「インターナショナルビューポイント」2024年7月20日)
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