英国 極右の暴動扇動に関する声明

ファシストへの断固とした対決を

あらゆる抑圧と差別に反対の連帯と団結今こそ

ACR(アンティキャピタリスト・レジスタンス)

 今年7月のサウスポートにおける17歳による3人の子どもの悲劇的な殺害が、イングランド中で一連の暴動を組織するために、日和見主義的ファシストによって操作されてきた。それらは、さまざまなところからの反応をキックスタートさせ、それは組織された労働者運動から脅威を受けたムスリムコミュニティにまで広がる。

この暴挙は新自由主義の結末

 これらの抗議行動に対する当初の「根拠」は、それらがモスク、難民申請者を収容するホテル、またかれらが気づくことができたどれかの黒人の個人を標的にする暴力的なレイシズムに対する口実になるにつれ、たちどころに投げ捨てられた。これへの対抗抗議行動は、常にとは言えなかったとはいえしばしば反動派に数でまさったが、それが事実であったところでも、コミュニティは反レイシスト抗議が終わった後には脆弱なまま残された。
 われわれが今見ていることは、数十年にわたる新自由主義の結末だ。つまり、われわれのコミュニティの空洞化、われわれすべてをグローバル市場における競争主体に変えること、われわれの暮らしをギリギリの最低限にまではぎ取って戻す緊縮、新聞を売り込むために反移民の憎悪を汲み上げるレイシストのタブロイド紙、票をすくい取るために反移民感情に燃料をくべる保守党と労働党までが加わる二大政党の政治家、といったものだ。今この結末が最後までやり切られようとしている。
 暴動それ自体は全部会わせて2、3千人を巻き込んだにすぎないとしても、それらは、極右が一層自信をつけ、かれらの周りにはるかに広い支持者の層を抱えていると信じている、と示している。サウスポートにおける悲劇的なできごとの前の週末、トミー・ロビンソン(英国でもっとも知られた若い極右活動家:訳者)はトラファルガー広場で約一万5千人の集会を開催、それを彼は史上「最大の愛国集会」だったと主張し、またそれを10万人近くだったと語った。

レイシズムを巧妙に隠す論法


 これらの暴動は、極右とポピュリスト的権威主義者といった、より幅広い数へと寄り集まるファシズムの高まる脅威の、もうひとつの事例だ。ファシストのソーシャルネットワークアカウントによって増幅された陰謀論とオンラインの流言が、人々を街頭に繰り出すよう鼓舞した。かれらは、移民に関するレイシスト的嘘を永続させると同じように、気候の陰謀論を主唱している。これらの暴動に関与した、あるいはそれに共感する多くは、かれらが極右もしくはファシストという責めを否認している。
 極右はもはやもっぱら人種に焦点を当てることはせず、代わりに、問題であることとして多文化主義について語り、ムスリムを標的にするがしかしこれは、人種のゆえではなく、「かれらが異なった文化の者」だからと主張し、黒人を標的にしているのではなく移民と難民を標的にしていると主張する。かれらは映画やTVショーに非白人が多すぎるとは不平を言わず、現代の映画やTVは「過剰覚醒」だと論じる。
 これらの暗号、犬笛(人には聞こえない合図から転じて、特定の意味を込めたいわば暗喩を指す:訳者)、そして推論は、反動的諸理念が泳ぐ沼地――人があるモスクに煉瓦を投げる際のもっともらしい関係否認論法――だ。この枠組み構成はかれらに、民族的マイノリティグループ出身の一握りの人々を引きつけることにまで余地を与えている。ちなみにその引きつけられる人々は、新たに到着した難民を敵視する憎悪のコーラスに加わることで、イスラム嫌悪の課題設定を支持し、あるいは資本主義の下でのかれらの限定された安全保障を守りたいと思っている者たちだ。
 この新たな連合はまたかれらに、反ユダヤ主義に抗議するいくつかのシオニストグループと共通の大義を作ることにも余地を与えている。かれらは、かれらの極右イデオロギーを明らかなナチズムから引き離してあらためて刻み付け、シオニストの大義の信頼できる擁護者であると主張できている。しかしこれは、ほとんどのユダヤ人はイスラエルに暮らすというシオニストの理想が、あらゆるユダヤ人を英国から取り除くというかれら自身の願いと一致していることが理由なのだ。
 この同じ者たちはまた、トランスの人々をも標的にしている。トミー・ロビンソンのデモは、トランスのプライドデーに合わせて呼びかけられ、トランスデモのひとりの世話役が攻撃を受けた。周辺にある者すべて、白人、生物学的異性愛、右翼的で「愛国的」な生活、というかれらの硬直した理想に従わない者すべてが標的だ。
 古典的なナチスとしての表示(フランスの国民戦線がかつて行ったような)からより無定型な「ポストファシスト」の極右ポピュリズムへの移行は、かれらの戦略のいわば進化にすぎない。かれらは、かれらの言葉を穏健にすればもっと大きな数に達することができると分かっている。しかし多文化主義に関する話の背後ではっきりしていることは、かれらが純粋白人の英国というかれらのビジョンに合わない者すべてを敵とする総力戦をを欲している、ということだ。

民衆の貧困化の逆転が不可欠


 これらの暴力的な民族主義者のレイシストは今、住宅不足を難民のせいにするような、低賃金を移民のせいにするような、ジェンダーに対する自身の観念の掘り崩しをトランスに帰せるような、ますます世界の右翼的な見方に引きつけられている人々を組織することを期待している。女性や子どもを保護するというかれらの主張の場合、かれらは深く女性蔑視であり、女性の身体的自律を求めるフェミニストの要求に反対する。右翼は、伝統的な家族生活の中に、またある場合には賃金労働の外部に女性を強要したいのだ。
 不平からなるかれらの政治は、力をもつ者以外の全員を責める。その怒りはすべて、わが社会内のもっとも周辺化され、傷つきやすい者の誰かに向けられるのだ。
 決定的なことは、労働党政府が民衆の生活の質を改善するために何を行うか、またそれがレイシズムが明白な時にそれに立ち向かうかどうかだ。緊縮という設定課題を継続中の労働党の財務相であるレイチェル・リーヴスは、ただ問題を悪化させるだけの運命にある。労組とコミュニティの運動は、より多くの人々を極右の腕の中に追い立てるだけであるこれらの欠乏の政治の逆転を求めて闘う必要がある。
 ならず者に反対して決起することは重要だが、われわれはファラージ派と保守党右翼からの脅威を軽視してはならない。それらの諸政策とレトリックが、この週末難民申請者の殺害にまで簡単に行き着くことを可能にしたような感情を、正常なものにしてきたのだ。

生活を守る闘いの可能性示そう

 ACRは、これらの暴力的な暴動にさらされているコミュニティや次になるかもしれないと恐れている人々と連帯して立ち上がる。
 極右はかれらのデモがまだ小さいとしても反対されなければならない。生活水準の下落と資本主義内での高まる危機を前提とした時、彼らは成長を続けそうな雲行きにあるのだ。コミュニティの大衆的な決起を通した、われわれの町、難民申請者を収用するホテル、また移民法事務所の防衛が中心になる。
 自衛は、極右の暴力的な人種的憎悪から今標的にされているコミュニティにとっては、全く犯罪ではない。われわれは、われわれを守る上で警察に頼ることはできない。警察は制度的にそれ自体でレイシストかつクイアー嫌悪であり、より大きな警察力を求めることは権威主義に向かう近年の傾向の継続にしかならない。
 労組と労働者の運動は極右と対決する闘いにもっと大きな優先性を与えなければならない。労働者運動内には、この反動的な波をいかにして打ち破れるかに関する開かれた論争がなければならない。各労組は、この問題をあらゆるレベルで討論し、9月のTUC(全英労組会議)で確実に論争の対象にする必要がある。
 労組は、反極右の行動のため、またファシストのデモに対する対抗決起組織化に積極的に関わるために、声を大に発言したい人々すべてにひとつの場を与えるような、統一した会議や集会の組織化に主導性を発揮しなければならない。それらはさらに、それらの平等の努力を継続し高め、抑圧と差別のあらゆる形態に反対しなければならない。
 極右と対決したリバプールの大きな抗議行動、およびパレスチナをめぐって決起した諸々のコミュニティと左翼の間で築かれつつある連携は、極右の考えとファシストのならず者を打ち破るためにどうすればわれわれがひとつの大衆運動を築き上げることができるか、を示している。7月27日のトランス解放抗議行動におけるかなり多くの労組隊列もまた、実践的なやり方で人々の暮らしを改善できるより幅広い社会課題に労働者運動を結びつけて、前進に向けた道を示している。
 極右の抗議はまた政治的にも打ち破られなければならない。われわれは、極右に燃料を注ぎ続けている不平と絶望に挑戦し、それを切り落とすことができる種類の政治を唱える必要がある。われわれは、社会主義は機能し、労働運動は生活水準を守るために闘うことができる、と人々に示すことによって、ファシズムを打ち破る。われわれは次のように訴える。
◦極右ファシストへの統一した抵抗の建設を。
◦移民や難民やトランスの防衛を。
◦ファシストの脅威に対抗しモスクの防衛を。
◦自衛はどのような犯罪にもならない。
◦労働党の緊縮政策への抵抗組織化を。
◦極右の憎悪と絶望に対抗して行動するひとつの方法として、社会的所有、参加型民主主義、そして根底的な豊かさを求めて闘う大衆的なエコ社会主義運動の建設を。(2024年8月5日)(「インターナショナルビューポイント」2024年8月7日) 

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