タンザニア 環境口実のマサイ追い出し
西側と結託した利益追求
ポール・マーシャル
西側大手NGOと共謀するタンザニア政府の政策は、牛飼いをより多くのカネをもたらす観光客で置き換える、というものだ。ジョセフ・オレシャンガイは、タンザニアのマサイの状況に当局とNGOに警告するための欧州旅行に乗り出した。牛飼いコミュニティ出身弁護士の彼は、脅迫と圧力をものともせず、特にンゴロンゴロ地域(自然を対象とした多くの映像作品がある、有名なアフリカの自然保護区:訳者)にあるかれらの先祖伝来の土地からの、マサイ大量排除との戦いに献身している。
継続的な
迫害政策
この数年、タンザニア当局はこれらの牧畜生活者をかれらの土地から移動させようと、懸命に試み続けてきた。かれらは、オルドイニョ・レンガイ活火山が悠然とそびえるンゴロンゴロ地域の豊かなエコシステムを破壊していると、牛に罪を着せている。それは、皆さんが野生動物を見つけることができる地域だ。マサイの牛は、ライオン、ハイエナ、サイ、シマウマ、その他へのひとつの危険をもち出している。
政府は、「政府通知」(GN673)の下で行動しつつ、以下のコミュニティメンバーの投票権を剥奪し、11の選挙区、25の村、そして96近くの村落、の選挙登録を外した。それはさらに、教育施設と医療クリニックを閉鎖した。結果として、ワクチン接種の欠如を理由に、はしかが舞い戻りつつある。同時に森林レンジャーが家畜を接収し、多くの家族を貧困に投げ込んでいる。
その目的は、かれらの土地から11万人のマサイを追い立てることだ。
環境殺し
観光振興
タンザニア政府の側では、これは「環境懲罰」の問題ではない。つまりその目的はこの地域での観光を開発することによる利益なのだ。それは、贅沢な観光、そして特に、戦利品を求める狩猟の高度に儲かる適所の観光、ということだ。
この目的に沿って、タンザニア政府は野生動物の狩猟向けに、ロリオンドの土地をアラブ首長国連邦の王族に与えている。これらの土地に暮らすマサイは排除され、戻ろうとした何人かは治安部隊によって殺害された。2025年に向けた政府の目標は、5百万人の旅客、歳入としての60億ドルだが、それはビジネスマンや政治家というこの国の選り抜きグループのポケットにまっすぐ向かうはずだ。
他方でこの政策は、数十万人を収容するために必要なインフラ建設によって、地域の環境的バランスを真に危険にさらそうとしている。たとえばジョセフ・オレシャンガイは、次のように指摘した。つまり「1976年、クレーター内部に続く道路は1本しかなかった。今日それは29本もある! そこでの一日中の自動車走行とそのストレスが野生動物を追い出している」と。
グリーン
植民地主義
残念なことにこの政策は、タンザニアだけのものではない。それは、多くのアフリカ諸国に共有され、WWF(世界自然保護基金)、「ネイチャー・コンサーヴァンシー」(米国で設立された環境NGO:訳者)といった、さらにユネスコまで含む大手NGOの支援と指導を受けている。たとえば2019年、WWFはマサイと牛の数を「受け入れ可能な最低限」にまで減少させることを助言し、一方ユニセフは文化的観光のためとして、僅かのボマス(牛のためのコミュニティの囲い地)のメンテナンス……に必要な者を除く住民ゼロによるンゴロンゴロの自然保全区転換を唱えていた。
自然保全を推し進めるこの政策は、植民地政策から直接由来している。当時その目的は、一種のこの世のエデンとして具現化された手つかずの自然を保存することだった。われわれが今生物多様性について話していることを除けば、本当に変わったことは何もない。
しかし手段は同じままだ。つまり、西側の大手NGOがもっていると思われている専門知識を使ってマサイを追い出すことを目的に、何世紀もそこで暮らしてきた人々の農・牧畜活動の信用を傷つけ、果ては犯罪視する、というものだ。
マサイはこれまで決起してきた。かれらは観光客の乗り物を妨げ、法的行為に訴え、4万人以上が参加した大規模デモを組織してきた。かれらは、自然保護の保証人は、マーチソン・フォール自然公園内でトタルエナジーに419本の油井削孔を認可したタンザニア政府ではなく、マサイこそがそうだ、と指摘している。
▼筆者はIV通信員で、フランスの第4インターナショナルメンバー、かつ「アフリケ・アン・リュッテ」編集者。(「インターナショナルビューポイント」2024年10月6日)
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