ドイツ 政府の分解

経済後退が対立を深刻化

ヤコブ・シェーファー

 連立崩壊に
 驚きはない

 11月6日、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)から構成された連立政権が分解した。この分解は何の驚きもないものとして出現した。上記三党は今、経済危機に取り組む上でまったく異なる考えを擁護し続けているからだ。
 世界的な資本主義の危機はドイツで特に鋭い形態をとってきた。第1に、ウクライナでの戦争がほとんどの他の経済における以上にエネルギー価格を押し上げてきた。これが被雇用者に、しかしドイツで操業している資本にも、他の多くの国におけるより大きな影響を及ぼしている。
 第2に、ドイツ国家――資本ではなく!――は今、ウクライナへの軍事的支援と経済的支援という重荷の大きな部分を支えている。そしてそれが、経済危機の結果を緩和する上でドイツ政府の術策のの余地を縮めている。
 最後に、ドイツ経済に対し鍵となる重要性をもつ自動車産業における世界的な危機が現在、もっとも深刻な要素になっている。

 悪化一方の
 経済の危機

 これを背景に、経済危機の近頃の悪化に政府はどう対応すべきかに関し問題が持ち上がってきた。2、3週間前、フォルクスワーゲンは、ドイツ内の自動車生産における大規模な縮小を公表した。10ヵ所の工場のうち3つが閉鎖予定となり、労働者数万人が過剰要員となり、、フォルクスワーゲン全従業員を対象に賃金は10%カット、およびその他が通告されている。
 FDPと右翼のキリスト教民主同盟(CDU)は、「経済的方向転換」すなわち労働者の生活基準に対する攻撃の強化(社会保障制度の解体、ストライキ権その他の制限)を強く求めている。SPDは実質的な国家財政によって産業を支援したがっている。つまり、産業向けの国際生産ネットワーク関税に上限を設け、投資奨励金を導入し、税控除を強化し、電気自動車向け購買奨励金によって自動車産業に助成金を与えることによる支援だ。このすべては巨額の国家介入を必要とし、そしてそのためには「債務ブレーキ」が棚上げされなければならない。

 次期政権形成は
 CDUが主導か

 これまでのところ、CDUは依然「債務ブレーキ」遵守を要求している。しかしかれらがまもなく政府の中にいることになれば、かれらもまたもっと多くを借り入れることになり、ブレーキを緩めるだろう――少なくとも――。同時に、労働者階級の社会的獲得成果と諸権利に対する攻撃が強まるだろう。その対象は、ストライキ権、医療ケア、その他だ。CDUはそうする中で、現政権の足跡を辿っているだろう。それは一貫したやり方での継続だけを求められるものなのだ。
 新選挙の日付け(1月か3月)は、次の2、3日に決められるだろう(2月23日に決定された:訳者)。結果は、SPDか緑の党のどちらか、あるいは両方との連立によるCDU主導の政権になるだろう。
 そこでは極右のAfD(ドイツのための選択肢)のさらなる強化があるだろう。そしてこの勢力は、難民に対する国境の閉鎖に向け圧力をかけ、住民の中に広まるレイシズムを強化し続けている。この勢力の対ウクライナ武器供与への拒絶もまた、住民の中で強い支持を受けている。
 左翼党からの右翼分裂グループであるBSW(ザーラ・ヴァーゲンクネヒト連合)は、この選挙からもっと強くなって現れる可能性もある。左翼党は確実に、議席獲得(得票率5%、あるいは最低でも選挙区での3人の当選が必要)が極めて困難と知るだろう。党は、底深い組織的かつ政治的な危機にとらわれている。
 社会的な共鳴をまったく得ていない小グループを除けば、改良主義左派の左翼党に代わるものはまったくない。労組官僚は、SPDを支持する――間接的にだけだとしても――だろう。そして、どんな環境の下でも自動車産業の再転換を求めて闘うためにこの危機を利用することはないだろう。(「ランティカピタリスト」より)

▼筆者は第4インターナショナルドイツ支部のISO(国際主義社会主義組織)活動家。退職鉄鋼労働者で、戦闘的労組ネットワーク(VKG)運営委員会の職務に就いてきた。また「国際主義」誌編集者でもある。(「インターナショナルビューポイント」2024年11月15日)

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