フランス 情勢の深刻さを精査する

極右の伸長、左翼の責任も直視を
ネオファシズムとの闘いへ戦略の再構築を
パトリック・ルモール

フランスの政治情勢は極めて不安定になっているが、その中でネオファシスト極右の権力奪取が現実味を帯びていることが特に左翼に重い責任を課している。以下は、その重大な危険との闘いの進め方を検討している。極右が特に労働者階級内部に浸透している現実の危険性を見据えた分析であり、日本のわれわれにも貴重な示唆を与えるものだ。かなりの長文だが、2回に分けて紹介する。なお注全部と本文の一部は省略した。(「かけはし」編集部)

 

 総選挙直後の諸事情が絡み合う形でより好ましい政治情勢は、NFP(2024年6月の国民議会選挙に挑むために形成された新人民戦線)の対応とその提案を軸とした論争に光が当てられることを可能にした。しかし、それが真実の力関係をわれわれに忘れさせるようなことがあってはならない。その力関係はわれわれに、一定の大きな戦略問題に立ち向かうことを求めているのだ。パトリック・ルモールが、すぐさまの任務の点で結論を引きだすために先頃の選挙における展開を振り返る。その任務とは、ネオファシズムに立ち向かうことを目的にした、統一、解放の展望の再建、ひとつの政治勢力の必要性、……だ。

ネオファシズムの危険は目前に


 2017年国民議会選の1回目(登録有権者の51%が投票)では、約300万票がFN(現RNの前身である国民戦線)に向かった。2022年の同選挙(同じ基準で52・5%が投票)では、RN(国民連合)は420万票受け取った。そしてこれには、再征服党(2022年大統領選で7%の得票率を得た極右政党)の百万票が加えられると、すなわち、ネオファシスト極右には500万票以上が入った。2024年国民議会選の1回目(登録有権者の66・7%が投票した)では、RNは940万票を集め、それにさまざまな極右リストに向かった百万票が加わり、すなわち、ネオファシスト極右の票は千万票から1100万票の間だった。
 7年間で、極右票数は3・6倍高まり、総投票数の30%、絶対得票率20%になる。千万から1100万の票は今日、RNとその支持者の場合安定化され、棄権層が投票するならば、投票率が72%だった2022年大統領選2回目でのルペン支持1300万票が証拠になったように、極右票も増大する。
 これらの票の過半は労働者階級、被搾取層、また被抑圧層から出ている。またルペン―バルデラ(RN党首)の二人組は極右に、新たな有権者部分でかなりの結果を得ることを可能にした。その部分とは、若者、初めて投票する有権者、経営者、そして、南部フランスと荒廃した元工業地域における極右の支持に加えられる「CSP+」(最も特権的な社会的専門職類型)だ。そうであれば、これらの比率はなおのこと、われわれにとっての懸念になる。
 これらの結果はネオファシストに、今後の大きな選挙、つまり大統領選と国民議会選の双方の機会に多数派になる手段を与えている。
 NFPによって始められた「共和主義戦線」がこれが起きるのを妨げたとはいえ、現在の選挙制度は、ひとつの政治勢力に、1回目で30から35%を得て国民議会で絶対多数を確保することを可能にしている。それゆえRNは、力関係を相当に変えると思われるような、また第2次世界大戦以来われわれが知ってきたことから質的に異なった危険を意味すると思われるような、国家機構の歯車を手に入れる位置にいる。
 これらの選挙結果は今日、ネオファシスト大衆政党の建設に移し換えられているわけではない。つまり、RNの戦闘的なネオファシスト活動家グループは、選挙を離れた日々の暮らしの中に、社会闘争の中に非常に多く存在しているわけではない。
 しかし、RNの選挙における勝利が生み出した空気、とられた立場に内包された暴力のレベルの着実な上昇、さらにその論争の挑発的主張は、明確なファシスト諸組織、暴力的な極右グループを介して、また個人のレベルであっても、レイシスト、外国人嫌いな者、イスラム嫌悪者、ホモ嫌悪者、トランス嫌悪者、さらに気候懐疑の偏見者を好きなようにさせている。
 われわれはこの数ヵ月のわれわれの周辺で、強力な左翼の伝統をもつ環境(たとえば鉄道労働者内部)を含む職場で、ソーシャルネットワーク上での死の脅迫を含む脅しの試みが数を増したのを見てきた。このすべては、今回の選挙結果が先のような実際の攻撃や潜在的な攻撃を一時的に遠景に追いやったとしても、ネオファシストの勝利が全員にとって何を意味することになりそうか、を指し示している。
 同様にわれわれは、環境保護の決起に反対する直接行動で、特に大貯水池とA69高速道路反対の決起の中で、「農業組合」(1991年創立、極右に近いと見られている)が果たした、その重みについて懸念される役割を評価しなければならない。

RNの現実と潜在的な危険

 1930年代のファシスト潮流と比較して、RNは革命的な見地、「新しい男」の建設、社会の激変には取り組まなかった。しかし、そのあらゆる形態における事業の自由の、企業の、生産力主義の防衛として、またその植民地主義の歴史によって深く刻まれたひとつの国における国民選好、国民的アイデンティティまたレイシズムをイデオロギー的重心に置くことによる、あらゆる自律的な階級行動の反対、民主主義の組織や市民団体の組織や労組組織や政治組織への反対として、ファシズムに付随する共通の土壌はそこにあるのだ。
 RNは今日、ひとつの制度的な勢力として建設され、議会、自治体の機能中にますます統合されている。そしてそこにかれらは被選出代表を確保している。今日の彼らの主要な関心のひとつは、これらの進展を深く根付かせる目的で、2026年に数百の自治体を獲得することだ。
 それはすでに、警察と軍内の多数派労組におけるその影響力で証明されるように、国家機構自身の内部に相当な支点を確保している。2022年大統領選の1年前に、約20人の将官、百人の上級士官、そして千人の他の軍要員によって「ヴァルール・アクチュエル」(「現在の価値」、オピニオンニュース週刊誌)に掲載されたコラムを忘れないようにしよう。それは、特に「一定の反レイシズム、イスラム主義と郊外の大群」を通したフランスの「分解」を弾劾し、自ら進んで「国民を守る」諸政策を支持する意志を宣言するものだった。そしてかれらは付け加えた。「何もなされないならば、社会内には放縦さが広がり続け、最後には、国民の領土上のわが同胞たちを保護し、わが文明的価値を守る神聖な使命としてわが活力ある同志たちの爆発と介入を引き起こすだろう」と。ルペンはすぐさまこれらの分析を承認し、その著者たちを彼女の運動に加わるよう招いた。
 その時以来、RNとその見方に結集する高位公務員の数は増している。そして、1940年にペタンが権力に到達した際の事例同様、ネオファシストが率いる政権に国家機構のほぼ全体は「忠実に」仕えるだろう、とみなされている。
 RNは、一連の政治課題の確定に関し、自由を、厳しい環境観や覚醒主義やその他を侵害する抑圧政策、治安、イスラム嫌悪、さらに「移民問題」に関し、ほとんどすべてのメディアと諸政権からバトンを渡される形で、支配的影響力を確立してきた。われわれは今、右翼の、またマクロンの「極右への移行」を目撃中だ。人は、バニエル政府(国民議会選結果を受けてマクロンから指名され、その後不信任決議採択によって崩壊)が形成された条件を見つめるだけでよい。これに、恥知らずな嘘の系統化、労働者階級の民衆を残忍に扱う諸政権による言葉の攻撃や象徴的な攻撃、政治や選挙の領域で表現を見出せるような全体としての政治的暴力が加わる。

世界的な資本の新たな支配様式


 ブルジョアジーの一部は、「福祉国家」で残っているものと国家の抑圧機能の限定の破壊に集中された、新自由主義のリバタリアン的進展を支持している。それは、この構想の具体化において、それに役立ちそうに見えるネオファシストの者たちを好感をもってみている。雇用主諸組織とRNの関係は、先の潮流を越えて進展してきた。労働者階級に敵対的に向けられた新自由主義の諸政策は一層厳しい階級衝突を強い、その中では先のような潮流が有益になる可能性があるからだ。
 2022年にはMEDEF(フランスの雇用主団体)が大統領選投票2回目で、その綱領が国を「行き止まりに」追い込む危険があるとの根拠で、FN阻止のためマクロンへの投票を呼びかけたとしても、RNが過半数になる可能性がはるかに大きかった2024年には、その種のことは全く起きなかった。調査によれば、MEDEFに近い雇用主の20%近くは第1回投票でRNに投票し、CGPME(中小規模事業の組織)はあからさまに、RNはNFPよりも企業を怯えさせない、と特に言及している。RNと雇用主の指導者たち間の公式、非公式会合とMEDEFに向けたバルデラの穏当な諸言明はこの発展を確証している。
 ひとつの指標は嘘をついていない。つまり、RNが首位になった国民議会選第1回投票の翌日における株式市場の株価上昇だ。
 この全般的進展はフランスに特殊ではない。今日、RNに似たような参照点をもつ相当な数になる権威主義的な、あるいは独裁的ですらある政権と体制は、世界で優位を占めている。これが実際に、資本の支配の様式におけるある種世界的進展であり、RNの台頭はこの一部だ。
 そこに危険があるならば、課題は嘆き悲しみことではなく、有効に行動する目的で、この情勢を評価し、その原因とそれを動かしているものを理解するという問題だ。歴史は決して前もっては書かれず、原理的に底辺の者の、この支配秩序を拒否する者の行動次第なのだ。

左翼全体は選挙でRNに敗北


 2017年国民議会選第1回投票(登録有権者の51%が投票)では、今NFPにいるさまざまなリストに対し、FNの得票数の2倍、600万票以上が投じられた。LFI(不服従のフランス)は250万票を得ることでFN(300万票)のすぐ後ろに迫った。
 2022年の国民議会選(登録有権者の52・5%が投票)では、NUPES(新人民連合・環境・社会、左翼諸政党の戦線)が580万票を受け取った。そしてそこにわれわれは、今日NFP内にいる諸勢力に向かった他の百万票を加えてもよいだろう。それはなおも、ネオファシストへの500万票以上だったが、2倍からはほど遠かった!
 2024年国民議会選第1回投票(登録有権者の66・7%が投票)では、NFPが900万票を受け取ったが、それは歴史上初めてネオファシスト極右より少なかった。
 7年間で、ネオファシストへの票数は300万から1000/1100万へ進み、3・6倍の増大。しかし政治的左翼のそれは、あらゆる傾向を合算しても、600万から900万になったにすぎない。これが、ある種の視覚的幻想を形成している議員数の結果と比率とはかけ離れた生の現実だ。
 われわれは、第五共和制の選挙制度がつくり出す先の視覚的幻想によって生み出された政治的勢いを利用はできる。しかしわれわれはその幻想を、何らかの形で必ずわれわれに追いつく現実と見間違えてはならないのだ。
 ちなみに先の制度は、900万票を集めたNFPに178議席を得るのを可能にし、マクロン派のアンサンブルが第1回投票における650万票で150人の議員を確保している事実には触れないまでも、他方940万票を集めたRNには125議席しか与えていない。
 社会自由主義左翼から「抜本的変革を求める左翼」まであらゆる左翼を結集しているNFPがRNより少ない票しか受け取っていない情勢の中でのわれわれの行動を決めるために、われわれはこの現実から出発し、力関係を変えるためにわれわれが自由にできるあらゆる手段を活用しつつ、近年の対労働者階級の最も暴力的な攻撃を解体し、階級間力関係を被搾取層と被抑圧層に有利に変えると思われる一定の改善を獲得しなければならない。

ブルジョアジーが出した結論
―NFPでなければどれでも


 新自由主義諸政策は、制度的な右翼政党とマクロン派の選挙上の重みを、後者が新自由主義にはせ参じた社会党員のもっとも右翼的な部分を統合し終えたと承知の上で、打ち砕いた。2017年、後者の極は単独でも1200万票以上(マクロンの「共和国前進」単独の640万票を含んで)を抱えて、左翼の600万票とFNの300万票という他のふたつ合計よりも重要だった。2017年から2024年までで、先の極は300万以上失い、他方左翼は300万獲得、RNは700万以上を得た。
 今日3極は、900万から1100万の間にある。しかし右翼とマクロン派の票は他の二極よりも小さくなり、票の急進化はネオファシストをより利している。
 今日、EU議会選と特に2024年国民議会選の結果は、大統領選の弾み作用なしに起きているが、しかしそれは、選挙の変わりやすさには限界があることを示している。つまり、現実に政治情勢の原理的な進展があるのであり、それはそれがその実例に過ぎない政治的危機のかなり先まで進んでいる。
 資本主義秩序への、新自由主義政策への同意はすでに揺さぶられてきているが、しかしそれは主にネオファシストを利してきた。労働者階級内には常に右翼票があったとしても、ドゴール主義であった「この右翼分派」は大きな程度で極右に移行してきた。もうひとつの棄権主義の部分もまた移行を終えている。そして何よりも、ある種の世代効果がある。
 これが、ブルジョアジーによって理解されたことであり、この情勢の中でかれらは常にNFPよりRNを好み、したがって今後RNと共にその階級支配を組織する方を選好するだろう。これはすでにチョッティ(LR党首だった)の結集に基づく主流逸脱グループで始まっている。そしてわれわれは、LR(共和党)からRNへの票の移行が、三者が対立した場合はLFI候補者に向かうよりもより大きかったことを見ることができる。
 これはまた、RN指導者のバルデラの晩餐会への、エドゥワール・フィリップ(元首相)とルコルニュ(軍務相)の同席公表という事実でも誇示されている。これは、マクロンの親密な顧問である元LRメンバーの家で行われた。しかしこれは何の危機も、右翼とマクロン界隈内部の大きな不満さえも生み出さなかった。
 また「ペリクレス構想」に関する情報公表に対しても何の反応もなかった。これは、RN/保守派連合の権力のあらゆるレベルに既成エリートを組織する構想で、特にシンクタンクとメディアを通じてかれらの理念を多数派にするため、訓練学校の手段により政治要員の備えを提供することで、優先度の高い選挙を識別する(2027年の大統領選に先立って、RNによる300を含んで千以上の町政獲得を助けて)ため、10年にわたる1億5000万ユーロの投資を手段にする、というものだ。
 EUレベルでは、何回かでその得票数を相当に高めている極右(フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル)が、ハンガリーとイタリアでふたつの政府を率い、フィンランド、オランダ、スウェーデン、クロアチアで議会右翼と共にいくつかの政権に参加している。

問題投げかけ、考察、行動の時


 何があろうと何らかの形で搾取と抑圧に抗して闘う者たちの側では、多くの問題に関する左翼内部の相違はまさに現実なのだから、どんなものでも不可欠な討論のための絶対的必要条件は、上記の危険は存在しないかのように、われわれの過去の行動はこれまでこの危険に釣り合うものだったかのように、以前同様続けることを拒否することだ。現実回避の政策を拒絶しよう。
 多くの選択と多くのふるまいは、ネオファシストの脅威は多くの政治潮流によって深刻には考えられていないことを、示している。しかしながら、現情勢がもちろん資本主義の進展の、エコロジー的危機の、世界的力関係の進展の産物であるとしても、それはまた、一定程度までは、左翼の、最右翼潮流からもっとも急進的な左翼諸組織までのあらゆる左翼が実行した政策の産物でもあるのだ。
 来る決定機に関する討論に向けた出発点になり得るのは唯一、われわれは失敗している、またわれわれすべては、われわれの規模と手段に応じて各自が政治の分野でネオファシストの今の前進を妨げるわれわれの責任が求められている、という考えだ。以前と同じに続けることは、現在の挑戦課題、すなわちRNの国家権力到達をさえぎることに対応するものにはならないだろう。
 NFPの多数派潮流の場合、EU議会選の間経験した分裂とけちくさい策謀がわれわれの背後に永久的にあると、われわれは言ってよいだろうか? NFP形成の背後にあった動機は、左翼の立場に立つ労働者階級有権者の広大な多数が欲したように(また当時諸政党の指導者たちに加えられた圧力が表現したように)第1にRNを阻止することだったのだろうか、それとも国民議会内の議員の地位を可能な限り多く救い出すことだったのだろうか? 政治的左翼は、情勢の深刻さを考慮に入れるよりむしろ自らを救い出すために、どの程度まで脅威を利用したのだろうか? 
 われわれが次のことを見る時、最低限でも問題は持ち上がる。つまり、選挙の時点ですら、LFIパージに費やされたエネルギー、統一したキャンペーンを行う点での候補者多数の拒絶、他を巻き込もうとすることのない各々の党のキャンペーンだ。それは、ましてや開かれた支援委員会の設立によるものはもっと少なく、それが民衆の熱望であった時にNFPへの言及をなおざりにすることまでして行われたキャンペーンだった。そしてもっと広範には、多くの忠誠の告白や諸声明に、RNの危険に対するどのような言及も欠けていた。
 LFIは、新自由主義への反対として大衆規模で表現されるような政治的反応を可能にし、部分的に左翼内部の力関係を作り直したとはいえ、社会党は、NFPにそれでも統合された社会自由主義のルネッサンス(オーランドとグリュックスマン)を伴う最後のエピソードから再活性化されて現れた。そして何よりも、左翼の新たな均衡は、現存秩序に対する係争が主にネオファシストに捉えられることを妨げなかった。

政党、労組、社会運動の諸問題


 政府内の場を交渉する用意があった者たちと、過去30年間のかれらの政策を消し去ることによって自身を再建することをかれらに可能とするのはNFPだけと考える者たち、この間で割れた社会自由主義者は今早くも、LFIの前に出ることによって第2回投票にいることのできる候補者を軌道に乗せようとしている各々のグループを基礎に大統領選挙に向け準備中だ。
 LFIの戦略の中心は、大統領選挙、およびジャン・リュク・メランション(JLM)をマリーヌ・ルペンに対抗させると思われる第2回投票の展望だ。こうしてすべての攻撃がマクロンに合わせられている。しかしながらこの構想は、強力な民衆的決起のおかげで可能になるような力関係の移行がなければ、極度の危険に満ちているように見える。
 われわれは2027年に、2022年と2017年と同じ政策を繰り返してはならない。JLMの立場が悪化してきたからだ。しかしながらLFIの政治的選択のすべては同じシナリオの再生産を軸として基礎づけられている。
 そして、勝利が万が一実現するとしても、国民議会でますますありそうになくなっている絶対多数を、ブルジョアジーと帝国主義諸機構によるあらゆる反自由主義政策に対する猛烈な抵抗を妨げると思われるような過半数を得ることが必要になるだろう。
 極左の側では、反資本主義かつ統一志向の潮流の存在が、社会主義的、エコ社会主義的対応の存在を可能にしたが、それも全体的力関係に影響を与えることができていない。
 分裂し弱体化した労組諸組織の場合、たとえば2010年、2015年、2023年における非常に大規模な決起にもかかわらず、2006年におけるCPE(初期雇用契約、若者の失業改善を名目に若者の試用期間をを大幅に延長しようとした政策)反対の若者の運動の勝利以来蓄積されてきた敗北は、行動の組織化と機能化に関する再明確化を求めている。1995年の成功(年金改悪反対の長期国鉄スト:訳者)以来、諸々の決起は、制度改悪、労働者への攻撃を遅らせたり妨げたりし、打撃を限定することに成功してきたが、それでも勝利を可能にしたことは一度もなかったのだ。
 フェミニストと環境活動家の決起は、いくつかの勝利(ノートルダム空港、MeTooの波)に、政治闘争やイデオロギー的戦闘における前進に導いたが、しかし今日、社会運動を大衆的な規模で組織化する点でひとつの役割を果たしてはいない。
 黄色のベストの巨大な決起は、その大きく自然発生的な性格、およびその重要性の理解における組織された労働者運動と解放をめざす諸潮流が示した遅れ、その両方を理由に、どのような前向きな政治的反響も与えなかっただけではなく、むしろ選挙ではRNを大きな程度で利した。とはいえRNは、そこから距離を取り続けてきた。
 系統的なレイシズムと警察の暴力に反対する諸決起は、若者の部分の、それだけではなく重要な組織の外部部分も含め戦う用意を示してきた。

底辺の者たちから見える原因


 われわれは今も新自由主義政策の深い作用を感じ続けている。それは、労働者階級の集中の破壊、大量失業の押しつけ、労働者階級の重要な層の貧困化、20世紀の闘いの成果とそこから現れた組織に対し繰り返された攻撃、被雇用者の個人化政策による労働の集団性の破壊という政策の作用であり、それは職場がますます集団的行動の中心ではなくなっていることを意味している。
 ベルリンの壁の倒壊、また中国における資本主義への移行後に、20世紀の革命から帰結するいわゆる諸々の「社会主義」社会が消えつつあった時の、社会民主主義による新自由主義枠組みの受容は、搾取と抑圧のない、解放されたエコ社会主義の社会、平和な社会を底辺の者たちから建設することは可能だ、という理念の大衆的規模における消失に導いた。ひとつの新しい要素がその重みすべてを伴って介入しているからだ。エコロジー的な危機であり、それは現在の諸社会と社会主義の構想双方をひっくり返している。物質的生産を縮小する生産システムの底深い変革なしには、どのような解放もあり得ないからだ。
 これらの簡略にまとめられた進展の絡み合いが、労働者階級の重要な部分に起きている現在の漂流を説明する。共に建設されるより良い世界という希望がなくなり、劣悪化に対する拒絶あるいは怖れが、また異質のスケープゴート探しが広まることになった。
 RN票は、特に労働者階級内で、これらの怖れを、まさに同じくごちゃ混ぜの、ひとつの世界が消えていることを理解することの拒絶を餌にしている。その世界とは、公共サービスがより良い暮らしを可能にする世界、労働者がかれらの活動を通じて人間的進歩を創造する世界、小規模農民が自然を支配する世界、努力が家の所有を可能にする世界、両親の犠牲的行為がかれらの子どもたちにより良い将来を提供する、しかしまた男が女を支配もする世界、フランスがEUテクノラートから指図されるままにされない世界、白人が非白人の男と女に優越する世界、「われわれの国」が文明化のために植民地を支配する世界、……だ。だからそれは、衰退に反対する、より良く暮らすためのひとつの回答と見えたかもしれないものの喪失に反対する票だ。
 左翼活動家は、それが誰であろうと、まさに広がってきたネオファシストの選挙上の波の程度をなぜ推し量ってこなかったのか? この疑問に回答することは、われわれ自身のレベルで各々、被搾取層や被抑圧層の大衆との間でわれわれが結んでいるつながりの性格を問うことだ。
(つづく)

労働者内の票移行が鳴らす警報

 しかしながら、いくつもの警報は数多く多様だったのだ。票の社会学に関する諸々の調査は、1988年以来のブルーカラー労働者における17%から57%へ、ホワイトカラー労働者における14%から44%へとして、ネオファシスト票の着実な上昇を示している。2012年まで、左翼候補者に対する合計票は先のふたつの類型内で、ネオファシストへの票を上回っていた(ブルーカラー労働者の場合は47%対22%、ホワイトカラー労働者の場合は42%対29%)。
 2017年以来、ネオファシストへの票は両者の類型で左翼票と同等になるか、それを上回るようになった。今年、RN票はブルーカラー労働者の中でNFP票の2倍以上になっている(57%対21%)。またホワイトカラー労働者の中でも明瞭だ(44%対30%)。NFP票は中間職(35%対31%)と管理職(34%対21%)の中でのみ、また24歳以下(48%対33%)と24―35歳(38%対32%)の若者内部でRNを上回るに過ぎない。
 これは、選挙期日に合わせて関係を作っている、また諸制度(議会、町役場、その他)の機能の枠組みの中で結びつきを確立している左翼諸政党が、労働者階級コミュィティの大きな大衆との間で歪んだ関係を結んでいるという事実の確証だ。そこにはLFIも含まれる。社会自由主義と決別し、多くの決起への実のある関与があり、本物の戦闘的な推進力もあるこの左翼も、中心的な場を被選出代表に向ける形で、選挙期日とその周期的動きに依然としてとどまっている。
 選挙で票を獲得するためにネットワーク上でのバズリを作り出そうとすることは、日々の闘争、労働環境、暮らしの環境を組織するための活動と、集団的行動の熱の中で信頼を得るに足るために奮闘する活動と同じ論理には従わない。そして反資本主義諸潮流は、この空間を効果的に占めるには弱すぎる。
 労組組織はそれらが存在している部門で、労働者にはるかに近い。そしてそのことが、反応、投票呼びかけ、また取られたさまざまな立場を説明する。つまりそれらの指導者たちは、職場内のネオファシスト票の圧力に気づいている。
 諸労組は、今回の2024年の選挙の間、以前一度も起きたことがなかったような決起を見せた。結果は全体的に前向きだ。労組に近いと自身を明らかにする人々による国民議会選第1回におけるNFP候補者に対する投票が過半数を占めているからだ。具体的には、FSU(76%)、CGT(61%)、ソリデール(52%)であり、FO(37%)、CFDT(35%、しかし依然としてマクロン派へは29%)の場合は1位だ。
 RNへの投票は、CFDT、CGT、ソリデールに近い者では17%、FOでは27%、そうであってもRN打倒を呼びかけたUNSAでは26%、としてなお重要性をとどめている。この状況を逃れているのはFSUだけだ(4%)。
 この10年にわたる展開は興味深く、またネオファシストの危険に関する研究は一定の効果を発揮できることを示している。CGTに近い人々の場合、26%に達した(2017年には15%、2012年には9%)2022年大統領選第1回投票以後、FN/RNへの投票(17%)は後退している。
 CFDTに近い人々の場合、左翼の立場の票は2002年以後過半数ではなくなり(2012年の幅広いオーランド支持を例外に)、2017年には48%に達し、2022年には44%だったマクロン派への票は、今なお29%にとどまっているものの減少中、そしてFN/RN票は進展してきた(2017年7%、2022年18%、そして今日なお17%で)。
 この30年にわたる労働力の断片化を条件に、諸労組組織が全労働者との永続的で直接的な関係を確保していないことを心にとどめることが重要だ。少なくとも労働者の半数は、三次産業と工業部門両者の小企業で働いている。あらゆる労働組織の断片化、業務時間の個人化、テレワーク、またウーバー化がこの距離を広げている。

労働者階級に活力はあるが…

 しかしながら、この国で労働者階級は、EUの他の多くとは異なり活動的だ。そしてこれはあらゆる戦線で、最も多様な形態で見られる。黄色のベスト、警察の暴力を前にした労働者階級居住区出身の若者たち、そしてもっとも近いところではパレスチナ連帯の諸決起、年金防衛の決起、さまざまなデモや環境行動、フェミニストの諸運動、LGBTI、小農民の運動などだ。新自由主義政策に反対の反応を見せないような、単一の層としての被搾取層や被抑圧層などいない。
 しかし、ネオファシストが社会的諸決起で可視的でないとしても、これがかれらを全体的な政治の戦場から消すわけではない。全体的な政治闘争に結びつかない厳密に経済的な決起は、解放志向の政治化を生み出すには不十分だ。年金改革に反対した労働者のどれほど多くがRNに票を投じたことか?
 われわれは、それが労働者階級の一部を均質化するかもしれないとしても、ネオファシストの悪魔化それだけでは全体的力関係を変えるには不十分という確信を持って、正面から政治課題に直接取り組まなければならない。民衆的なネオファシスト票の本源に向け行動することが、移民は社会にとってよいことであり問題ではないのだから、抑圧的で排他的な世俗主義の観念に反対し、国際的連帯、公共サービス、などを求め自由な移動の権利を求める戦闘に取り組むことが、さらに実質での譲歩なしに必要を基礎に勤労諸階級のこうした部分とのつながりを結び直すことが基本になる。
 被搾取層と被抑圧層は、この時代の精神にどうやって抵抗でき、破局を回避でき、集団的な解放的構想を再建でき、もうひとつの政治的ヘゲモニーを再建できるのだろうか?

最も幅広い政治的かつ社会的な統一で共に立ち上がるために

 危険を前にRNが権力を奪取するのを阻止した防衛的な選挙上の高揚は、NFPの立候補の成功を確実化するために、僅かの日々に建設されたこの連合のメンバーだった諸政党だけになることを大きく超えて動員された。活動家諸サークルすべてが、それらの違い、その数多くのまた大きな多様性にもかかわらず、まれな統一として隊列を固めることができ、敗北の結末を心配した民衆諸階級の例外的な決起を可能にし、それに同行した。
 底辺の者たちの陣営の統一はこうして、抵抗の極として、唯一の実のあるものとして確証された。権力を握るRNは、PSや環境政党と同じように改良主義や右派の諸潮流も含んで、あれやこれやの形態のそのメンバーすべてを抑圧することで、先の陣営の境界を定めると思われるのだ。
 即座のダムとして不可欠なNFPの勝利のためにはこの強力な運動に加わることが必要だった。しかしわれわれは、この政治的なひと続きで止まってはならない。
 幕を開けつつある情勢は、RNとの関係を含んで、議会内に単純な過半数を欠く形で、権力維持のためには何でもやる用意がある大統領と諸指導者、およびその観点の押しつけ継続を決意しているブルジョアジーとの関係で、高度に不安定だ。選挙の中でほとんど当然のように達成された統一は、これから続く政治的な危機に立ち向かう目的で、固く据え付けられなければならない。
 これを行うために、2、3週間の間存在していたことから始めよう。今後数ヵ月の挑戦課題は、最も幅広い統一的枠組みで共通の敵に対決する共同行動を持続可能な形で実行することだ。その枠組みは、ひとつの関係先としてのNFPに基づく委員会が草の根レベルで、ついでネオファシストの危険に対する抵抗のあらゆる形態を含んで、主要な共同イニシアチブとして全国レベルで組織されるような枠組みだ。そしてその抵抗形態は、労組、市民団体、現存のあらゆる集団形態であり、そこで諸政党は、新自由主義、資本主義と決裂する諸組織とほとんどの改良主義者の両者とも、それらの設定課題や必要を押しつけることのない構成要素のひとつにすぎない。
 統一の組織化はあらゆるレベルで、その焦点が議員の行動支援にではなくNFP綱領の最小限の適用に合わせられ、またそれが、マクロン派の新自由主義政策とRN構想両者に反対するNFP綱領の主要要求を軸とした行動で統一してこの方向で進むすべてのことを支持すること、を必要とする。
 NFPのメンバー諸党は、違いがあろうとも、そのような見通しに巻き込まれる用意はあるのだろうか? それらは選挙機構であり、そのどれもが、永続的に、民主的に組織化された戦闘的共闘組織に依存しようとはしていない。一方でその共闘組織は、孤立と絶望を打ち破る日々の必要を基礎に底辺の者たちの組織化という目標を自ら設定し、民衆部門に永続的な構造を与えようとしているのだ。それゆえ、NFPは変わることを迫られるだろう!
 そのような統一した政治的で社会的な戦線は、個人化のあらゆるプロセスを打ち破るための、職場や居住区で日々集団的な対応を選挙を待つことなく大衆的な尺度で織り上げる戦闘的グループをあらゆるところで再建するための、全体的力関係を変えるために不可欠だ。
 NFPは一定の希望を、また消されてはならない相当な動員を引き上げることになった。NUPESを経た2回目として分裂が再度表面化するならば、その時その失敗はもっとずっと痛々しくなり、選挙への波及は中期的になおのこと深刻になるだろう。これを避けることはわれわれすべての任務だ。

NFP絶対拒否陣営に分裂を

 全体の力関係はわれわれに有利ではなく、われわれはわれわれの陣営を強化するために、また「NFP以外は何でも」の陣営を可能な限り弱めるために、あらゆることを行わなければならない。われわれの陣営を統一することは出発点だが、さらに進むためにわれわれは、あらゆる機会とあらゆる領域で公式にであれ非公式にであれ、一時的な連携を組むどんな幻想ももたずに、対立陣営を分裂させ、かれらの間にあるさまざまな分裂を際立たせるためにあらゆることを行うことができなければならない。
 オリンピック開会式典のような挿話的な問題であれ、いわゆる社会的な問題や国際的な選択であれ、対立陣営内部の違いを際立たせて持ち上がる政治的な機会はすべて、つかむべき好機だ。

不可欠な解放の展望の再構築

 これは、追い詰められた中で実行されなければならない長期的な任務だ。しかし、目標が真に力関係を逆転することならば それは本質的な任務だ。被搾取層と被抑圧層の新たな政治的表現という、21世紀の解放運動の再構築という問題は、NPA出発時の考えの心臓部にあった。その失敗はその必要を消すわけではない。そしてその必要は今日、底辺の者たちにとって、「名にふさわしい階級」の基本骨格にとって、かつて以上に不可欠になっている。
 社会主義の構想は、「二重の歴史的な危機」の、つまり資本主義的「文明化」の多側面的危機を前にした社会主義的オルタナティブの危機の時代に、幅広い精密検査を必要としている。環境的危機は、未来を想像するわれわれの能力を揺さぶっている。進歩をおかげとする、工業的文明化をおかげとする輝かしい未来という約束はこれまで強力な想像力を生み出してきたが、それは今われわれの背後にあるのだ。
 われわれは、世界的な資本主義の拡大に伴われている社会と民主主義の退化に終止符を打つために、それだけではなく人類史上前例がない環境的破局から人類を救い出すためにも、信頼に足る魅力的な共通の運命を、建設的な構想を軸にした、望ましい基軸、エコ社会主義革命を軸にした民衆諸階級の統一をあらためて創出しなければならない。これらふたつの目的は、ほどきがたく結びついている。
 その考えを闘いの経験に基づいて豊かにする非教条的な革命的マルクス主義者は、かれらが謙遜を示すという条件で、そうした構想の発展に重要な役割を果たすことができる。なぜならば、その再創建は、支配と抑圧のあらゆる形態に反対する闘いからなる運動すべての関与があって初めて存在できるからだ。

教条を排し過去の行動の脱皮を

 われわれが自らに向けて設定しなければならない目的は、ひとつの解放構想をもつ運動、集団、連合、戦線……の、そしてひとつの党の建設だ。そしてその構想とは、資本主義および生産力主義と決別するという、また解放されたエコ社会主義社会を建設するという展望を掲げ、その活動の中心に、決起を通じた、職場、居住区、市民団体、集団的生活における自己組織化を通じた、選挙の周期に従わせることなく民衆的期待への対応を置く構想だ。とはいえその構想でも、選挙期日は力関係建設で重要だという理解は不可欠だ。
 有効となるために抑圧された人々を何百万人と組織することを目的にするそうした政治的ツールは、知的である可能性があるとしてもある種出来合いの構想の固守によってではなく、最も多様な政治的、社会的、また労組のあらゆる経験からはじめて誕生し得る。そのツールは、システムと対決するあらゆる行動形態間の接合を考え直さなければならない。つまり、伝統的な活動一覧の全体の機能と形態への問題投げかけであり、たとえば、あまりに多く儀式的に実行されているものに全体的な意味を与えるために、それら個々の活動を区分けし直し、組み立て直そう。
 目標は、政治的イニシアチブとキャンペーンの意味と場に関する再明確化でなければならない。各々のイニシアチブでは、目的を明確にし、これまでに得られたもの、また少なくとも前進したものの程度を確認しよう。決定的な役割を演じている自己組織化に基づいて、われわれの集団的な力を経験することを可能にするために、それゆえその強化を可能にするために、行動とツールについて考えよう。政治的オルタナティブを生み出すことができるのは、熟考と実践間の交互運動の中にあるのだ。その道を示すのが、「地球の反乱」(急進的な環境運動体、解散命令を受けたが、その後それは無効にされた)の独創性だ。
 この任務に取り組む上では、われわれはその困難さを十分に認識しておかなければならない。
 LFIは反自由主義左翼として中心的で不可欠な場を占めている。その存在はこの間、若者部分の動員と社会運動からの議員誕生にいたるまで、社会自由主義左翼の路線と闘うことを可能にしてきた。それは、一定数の労働者階級居住区内に実体的聴衆を抱えている。しかしその左翼内の相対的な場は、疑いなく部分的に社会運動に向けたその実践と結びついて後退してきた。
 年金改革反対の2023年の大決起開始に際し、JLMは、労組諸組織を欠いた形で彼がこの運動を率いる位置にいる、と考えた。LFIは大デモのイニシアチブをとった。しかしそれは、労組間共闘の動員能力に匹敵するものではなかった。そして、後者に率いられ運動がその全面的な規模を示した時、LFIは、議会内の議事妨害政策によってその障害物になったのだ。(2024年10月25日)

▼筆者は、第4インターナショナルのメンバー、かつNPAの指導的メンバー。(「インターナショナルビューポイント」2024年11月29日)       

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