フランス情勢の深刻さを精査する(下)
解放の展望の幅広い精密検査も
出来合い排し多様な経験に基づくツール創出へ
労働者内の票移行が鳴らす警報
しかしながら、いくつもの警報は数多く多様だったのだ。票の社会学に関する諸々の調査は、1988年以来のブルーカラー労働者における17%から57%へ、ホワイトカラー労働者における14%から44%へとして、ネオファシスト票の着実な上昇を示している。2012年まで、左翼候補者に対する合計票は先のふたつの類型内で、ネオファシストへの票を上回っていた(ブルーカラー労働者の場合は47%対22%、ホワイトカラー労働者の場合は42%対29%)。
2017年以来、ネオファシストへの票は両者の類型で左翼票と同等になるか、それを上回るようになった。今年、RN票はブルーカラー労働者の中でNFP票の2倍以上になっている(57%対21%)。またホワイトカラー労働者の中でも明瞭だ(44%対30%)。NFP票は中間職(35%対31%)と管理職(34%対21%)の中でのみ、また24歳以下(48%対33%)と24―35歳(38%対32%)の若者内部でRNを上回るに過ぎない。
これは、選挙期日に合わせて関係を作っている、また諸制度(議会、町役場、その他)の機能の枠組みの中で結びつきを確立している左翼諸政党が、労働者階級コミュニティの大きな大衆との間で歪んだ関係を結んでいるという事実の確証だ。そこにはLFIも含まれる。社会自由主義と決別し、多くの決起への実のある関与があり、本物の戦闘的な推進力もあるこの左翼も、中心的な場を被選出代表に向ける形で、選挙期日とその周期的動きに依然としてとどまっている。
選挙で票を獲得するためにネットワーク上でのバズリを作り出そうとすることは、日々の闘争、労働環境、暮らしの環境を組織するための活動と、集団的行動の熱の中で信頼を得るに足るために奮闘する活動と同じ論理には従わない。そして反資本主義諸潮流は、この空間を効果的に占めるには弱すぎる。
労組組織はそれらが存在している部門で、労働者にはるかに近い。そしてそのことが、反応、投票呼びかけ、また取られたさまざまな立場を説明する。つまりそれらの指導者たちは、職場内のネオファシスト票の圧力に気づいている。
諸労組は、今回の2024年の選挙の間、以前一度も起きたことがなかったような決起を見せた。結果は全体的に前向きだ。労組に近いと自身を明らかにする人々による国民議会選第1回におけるNFP候補者に対する投票が過半数を占めているからだ。具体的には、FSU(76%)、CGT(61%)、ソリデール(52%)であり、FO(37%)、CFDT(35%、しかし依然としてマクロン派へは29%)の場合は1位だ。
RNへの投票は、CFDT、CGT、ソリデールに近い者では17%、FOでは27%、そうであってもRN打倒を呼びかけたUNSAでは26%、としてなお重要性をとどめている。この状況を逃れているのはFSUだけだ(4%)。
この10年にわたる展開は興味深く、またネオファシストの危険に関する研究は一定の効果を発揮できることを示している。CGTに近い人々の場合、26%に達した(2017年には15%、2012年には9%)2022年大統領選第1回投票以後、FN/RNへの投票(17%)は後退している。
CFDTに近い人々の場合、左翼の立場の票は2002年以後過半数ではなくなり(2012年の幅広いオーランド支持を例外に)、2017年には48%に達し、2022年には44%だったマクロン派への票は、今なお29%にとどまっているものの減少中、そしてFN/RN票は進展してきた(2017年7%、2022年18%、そして今日なお17%で)。
この30年にわたる労働力の断片化を条件に、諸労組組織が全労働者との永続的で直接的な関係を確保していないことを心にとどめることが重要だ。少なくとも労働者の半数は、三次産業と工業部門両者の小企業で働いている。あらゆる労働組織の断片化、業務時間の個人化、テレワーク、またウーバー化がこの距離を広げている。
労働者階級に活力はあるが…
しかしながら、この国で労働者階級は、EUの他の多くとは異なり活動的だ。そしてこれはあらゆる戦線で、最も多様な形態で見られる。黄色のベスト、警察の暴力を前にした労働者階級居住区出身の若者たち、そしてもっとも近いところではパレスチナ連帯の諸決起、年金防衛の決起、さまざまなデモや環境行動、フェミニストの諸運動、LGBTI、小農民の運動などだ。新自由主義政策に反対の反応を見せないような、単一の層としての被搾取層や被抑圧層などいない。
しかし、ネオファシストが社会的諸決起で可視的でないとしても、これがかれらを全体的な政治の戦場から消すわけではない。全体的な政治闘争に結びつかない厳密に経済的な決起は、解放志向の政治化を生み出すには不十分だ。年金改革に反対した労働者のどれほど多くがRNに票を投じたことか?
われわれは、それが労働者階級の一部を均質化するかもしれないとしても、ネオファシストの悪魔化それだけでは全体的力関係を変えるには不十分という確信を持って、正面から政治課題に直接取り組まなければならない。民衆的なネオファシスト票の本源に向け行動することが、移民は社会にとってよいことであり問題ではないのだから、抑圧的で排他的な世俗主義の観念に反対し、国際的連帯、公共サービス、などを求め自由な移動の権利を求める戦闘に取り組むことが、さらに実質での譲歩なしに必要を基礎に勤労諸階級のこうした部分とのつながりを結び直すことが基本になる。
被搾取層と被抑圧層は、この時代の精神にどうやって抵抗でき、破局を回避でき、集団的な解放的構想を再建でき、もうひとつの政治的ヘゲモニーを再建できるのだろうか?
最も幅広い統一枠組みの持続を
危険を前にRNが権力を奪取するのを阻止した防衛的な選挙上の高揚は、NFPの立候補の成功を確実化するために、僅かの日々に建設されたこの連合のメンバーだった諸政党だけになることを大きく超えて動員された。活動家諸サークルすべてが、それらの違い、その数多くのまた大きな多様性にもかかわらず、まれな統一として隊列を固めることができ、敗北の結末を心配した民衆諸階級の例外的な決起を可能にし、それに同行した。
底辺の者たちの陣営の統一はこうして、抵抗の極として、唯一の実のあるものとして確証された。権力を握るRNは、PSや環境政党と同じように改良主義や右派の諸潮流も含んで、あれやこれやの形態のそのメンバーすべてを抑圧することで、先の陣営の境界を定めると思われるのだ。
即座のダムとして不可欠なNFPの勝利のためにはこの強力な運動に加わることが必要だった。しかしわれわれは、この政治的なひと続きで止まってはならない。
幕を開けつつある情勢は、RNとの関係を含んで、議会内に単純な過半数を欠く形で、権力維持のためには何でもやる用意がある大統領と諸指導者、およびその観点の押しつけ継続を決意しているブルジョアジーとの関係で、高度に不安定だ。選挙の中でほとんど当然のように達成された統一は、これから続く政治的な危機に立ち向かう目的で、固く据え付けられなければならない。
これを行うために、2、3週間の間存在していたことから始めよう。今後数ヵ月の挑戦課題は、最も幅広い統一的枠組みで共通の敵に対決する共同行動を持続可能な形で実行することだ。その枠組みは、ひとつの関係先としてのNFPに基づく委員会が草の根レベルで、ついでネオファシストの危険に対する抵抗のあらゆる形態を含んで、主要な共同イニシアチブとして全国レベルで組織されるような枠組みだ。そしてその抵抗形態は、労組、市民団体、現存のあらゆる集団形態であり、そこで諸政党は、新自由主義、資本主義と決裂する諸組織とほとんどの改良主義者の両者とも、それらの設定課題や必要を押しつけることのない構成要素のひとつにすぎない。
統一の組織化はあらゆるレベルで、その焦点が議員の行動支援にではなくNFP綱領の最小限の適用に合わせられ、またそれが、マクロン派の新自由主義政策とRN構想両者に反対するNFP綱領の主要要求を軸とした行動で統一してこの方向で進むすべてのことを支持すること、を必要とする。
NFPのメンバー諸党は、違いがあろうとも、そのような見通しに巻き込まれる用意はあるのだろうか? それらは選挙機構であり、そのどれもが、永続的に、民主的に組織化された戦闘的共闘組織に依存しようとはしていない。一方でその共闘組織は、孤立と絶望を打ち破る日々の必要を基礎に底辺の者たちの組織化という目標を自ら設定し、民衆部門に永続的な構造を与えようとしているのだ。それゆえ、NFPは変わることを迫られるだろう!
そのような統一した政治的で社会的な戦線は、個人化のあらゆるプロセスを打ち破るための、職場や居住区で日々集団的な対応を選挙を待つことなく大衆的な尺度で織り上げる戦闘的グループをあらゆるところで再建するための、全体的力関係を変えるために不可欠だ。
NFPは一定の希望を、また消されてはならない相当な動員を引き上げることになった。NUPESを経た2回目として分裂が再度表面化するならば、その時その失敗はもっとずっと痛々しくなり、選挙への波及は中期的になおのこと深刻になるだろう。これを避けることはわれわれすべての任務だ。
NFP絶対拒否陣営に分裂を
全体の力関係はわれわれに有利ではなく、われわれはわれわれの陣営を強化するために、また「NFP以外は何でも」の陣営を可能な限り弱めるために、あらゆることを行わなければならない。われわれの陣営を統一することは出発点だが、さらに進むためにわれわれは、あらゆる機会とあらゆる領域で公式にであれ非公式にであれ、一時的な連携を組むどんな幻想ももたずに、対立陣営を分裂させ、かれらの間にあるさまざまな分裂を際立たせるためにあらゆることを行うことができなければならない。
オリンピック開会式典のような挿話的な問題であれ、いわゆる社会的な問題や国際的な選択であれ、対立陣営内部の違いを際立たせて持ち上がる政治的な機会はすべて、つかむべき好機だ。
不可欠な解放の展望の再構築
これは、追い詰められた中で実行されなければならない長期的な任務だ。しかし、目標が真に力関係を逆転することならば それは本質的な任務だ。被搾取層と被抑圧層の新たな政治的表現という、21世紀の解放運動の再構築という問題は、NPA出発時の考えの心臓部にあった。その失敗はその必要を消すわけではない。そしてその必要は今日、底辺の者たちにとって、「名にふさわしい階級」の基本骨格にとって、かつて以上に不可欠になっている。
社会主義の構想は、「二重の歴史的な危機」の、つまり資本主義的「文明化」の多側面的危機を前にした社会主義的オルタナティブの危機の時代に、幅広い精密検査を必要としている。環境的危機は、未来を想像するわれわれの能力を揺さぶっている。進歩のおかげとする、工業的文明化のおかげとする輝かしい未来という約束はこれまで強力な想像力を生み出してきたが、それは今われわれの背後にあるのだ。
われわれは、世界的な資本主義の拡大に伴われている社会と民主主義の退化に終止符を打つために、それだけではなく人類史上前例がない環境的破局から人類を救い出すためにも、信頼に足る魅力的な共通の運命を、建設的な構想を軸にした、望ましい基軸、エコ社会主義革命を軸にした民衆諸階級の統一をあらためて創出しなければならない。これらふたつの目的は、ほどきがたく結びついている。
その考えを闘いの経験に基づいて豊かにする非教条的な革命的マルクス主義者は、かれらが謙虚さを示すという条件で、そうした構想の発展に重要な役割を果たすことができる。なぜなら、その再創建は、支配と抑圧のあらゆる形態に反対する闘いからなる運動すべての関与があって初めて存在できるからだ。
教条を排し過去の行動の脱皮を
われわれが自らに向けて設定しなければならない目的は、ひとつの解放構想をもつ運動、集団、連合、戦線……の、そしてひとつの党の建設だ。そしてその構想とは、資本主義および生産力主義と決別するという、また解放されたエコ社会主義社会を建設するという展望を掲げ、その活動の中心に、決起を通じた、職場、居住区、市民団体、集団的生活における自己組織化を通じた、選挙の周期に従わせることなく民衆的期待への対応を置く構想だ。とはいえその構想でも、選挙期日は力関係建設で重要だという理解は不可欠だ。
有効となるために抑圧された人々を何百万人と組織することを目的にするそうした政治的ツールは、知的である可能性があるとしてもある種出来合いの構想の固守によってではなく、最も多様な政治的、社会的、また労組のあらゆる経験からはじめて誕生し得る。そのツールは、システムと対決するあらゆる行動形態間の接合を考え直さなければならない。つまり、伝統的な活動一覧の全体の機能と形態への問題投げかけであり、たとえば、あまりに多く儀式的に実行されているものに全体的な意味を与えるために、それら個々の活動を区分けし直し、組み立て直そう。
目標は、政治的イニシアチブとキャンペーンの意味と場に関する再明確化でなければならない。各々のイニシアチブでは、目的を明確にし、これまでに得られたもの、また少なくとも前進したものの程度を確認しよう。決定的な役割を演じている自己組織化に基づいて、われわれの集団的な力を経験することを可能にするために、それゆえその強化を可能にするために、行動とツールについて考えよう。政治的オルタナティブを生み出すことができるのは、熟考と実践間の交互運動の中にあるのだ。その道を示すのが、「地球の反乱」(急進的な環境運動体、解散命令を受けたが、その後それは無効にされた)の独創性だ。
この任務に取り組む上では、われわれはその困難さを十分に認識しておかなければならない。
LFIは反自由主義左翼として中心的で不可欠な場を占めている。その存在はこの間、若者部分の動員と社会運動からの議員誕生にいたるまで、社会自由主義左翼の路線と闘うことを可能にしてきた。それは、一定数の労働者階級居住区内に実体的聴衆を抱えている。しかしその左翼内の相対的な場は、疑いなく部分的に社会運動に向けたその実践と結びついて後退してきた。
年金改革反対の2023年の大決起開始に際し、JLMは、労組諸組織を欠いた形で彼がこの運動を率いる位置にいる、と考えた。LFIは大デモのイニシアチブをとった。しかしそれは、労組間共闘の動員能力に匹敵するものではなかった。そして、後者に率いられ運動がその全面的な規模を示した時、LFIは、議会内の議事妨害政策によってその障害物になったのだ。(2024年10月25日)
▼筆者は、第4インターナショナルのメンバー、かつNPAの指導的メンバー。(「インターナショナルビューポイント」2024年11月29日)
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