トランプの始動

諸々のシステムに次々大ナタ
法を無視する事例も
ダン・ラボッツ

　トランプ大統領は着任第１週目、壊れゆく天球を揺り動かし、諸機構をずたずたにし、諸々の法を壊し、大混乱を与えている。その作用にはめまいがする。

政府機構の
完全支配へ

　始めとしてトランプは、司法省と連邦裁の諸決定を逆転させ、２０２１年１月６日の米国議会議事堂での反乱に関わった１５５０人以上を解放するために大統領特赦を利用した。これらの中でも、ふたりの極右指導者、プラウド・ボーイズのエンリケ・タリオ、そしてオース・キーパーズのスチュワート・ローズが釈放された。両者は、治安妨害の有罪判決を受け、22年と18年の刑に服していた。かれらは今や、かれらのファシスト運動を組織する自由を得ている。
　トランプは、政府に対する全面的な支配を欲し、それを始めようと行動中だ。トランプは、その仕事が、経済性と効率性を改善し、浪費、不正、権力乱用を阻止することである、約20人の独立した査察官長を解雇した。同時に、テクノロジーを近代化し、政府の効率性を最大化するために、億万長者のイーロン・マスクをトップに据えた政府効率省（ＤＯＧＥ）を設立した。様々な監視グループと労働組合はＤＯＧＥを止めるための訴訟を提起した。
　トランプはまた、多様性・公平・包摂・説明責任（ＤＥＩＡ）プログラムに基づいて活動する連邦政府の職務すべても廃止した。先のプログラムは、そのジェンダー、人種、あるいは障がいがどうあろうとも、全員のために雇用における公平性を保証することになっていた。彼はＤＥＩＡを「急進的で不経済」と呼んだ。トランプは、政府契約における差別を止めるために、１９６５年にジョンソン大統領が出した大統領令１１２４６を無効にした。

人権と尊厳
に攻撃の刃

　トランプはさらに、連邦政府は男と女というふたつのジェンダーしか認めない、そして黒人と女性の月はもはや今後祝福されない、とも通知した。
　トランプは、南部国境に「国家非常事態」を宣言し、彼が「移民の侵略」と呼ぶものを止めるためにそこに米軍部隊を派遣した。トランプは、難民登録を行うために利用されていたアプリを閉鎖し、今存在している３万人の登録を取り消した。大統領はまた、米国内で暮らし働いているウクライナ、ニカラガ、ベネズエラ、キューバ、ハイチからの３万人の難民に対する人道的一時的猶予をも無効にした。
　今や、一時的保護の資格、もうひとつの一時的居住を認めるプログラムを受けている、そうした他の多くの国出身の何十万人という移民の中にも、怖れがある。そして移民警察は今、以前は禁止されていた病院、学校、教会を標的にできる。トランプは、大統領令による出生地主義市民権を終わりにしようともくろんだ、しかし、ひとつの連邦栽が、彼の行動は憲法違反と明言して彼を止めた。

政府機構の
活動停止も

　大統領は、疾病予防管理センターや国立衛生研究所のような公衆衛生および人道サービス諸機関によるあらゆる活動の前例のない10日間休止を命令し、対外交流および科学的発表や会議すべてを止めた。そしてトランプは、世界保健機構から米国を引きあげさせた。
　トランプ大統領の国家安全保障担当補佐官のマイケル・ウォルツは、国家安全保障会議に雇用された１６０人の補佐官に、家に帰れ、そして新政権がかれらの将来を決めるまで何もするな、と告げた。司法省の20人の公職者も配転された。トランプは、解雇をもっと容易にする「別表Ｆ」として数千人の連邦職員を再分類し終えた。そして、２５０万人の連邦職員すべてから公務員の保護を取り除くこともあり得るだろう。
　トランプは、「掘れ、ベイビー、掘れ」という彼の約束を満たそうと、「国家エネルギー非常事態」を宣言した――米国がいかなる他の国よりも多くの石油を生産しているにもかかわらず――。彼は今、削孔とフラッキング（シェールオイル・ガス抽出のための作業:訳者）のために石油企業にもっと多くの土地を開放中だ。とはいえ、州法と現地の法がそれでも石油生産を規制するかもしれない。彼はまた、気候変動の阻止を目的にした連邦規制すべてをも外している最中だ。
　外交政策では、トランプはメキシコ湾の名称をアメリカ湾に変え、パナマ運河への支配を取り戻したい、グリーンランドをデンマークの所有から米国の所有に変えたい、またそうするために軍事力を考えることもいとわない、と語っている。
　当面、訓令と行動の弾幕が彼の敵対者を圧倒している。（「インターナショナルビューポイント」２０２５年１月27日）